●リプレイ本文
●もっともイカしたKV『W−01』
「テンちゃんのために何か役に立ちたかったのです。今回の改良試験で普及してくれるといいなぁ」
要(
ga8365)はサンフランシスコに向かう高速移動艇の中、外の景色を眺めて呟いた。
「テンちゃんいいよね、大規模作戦でも活躍したからその幅を広げたいね」
「自分が欧州攻防戦で無事生還できたのも偏にこの機体のおかげに他ならない。活動範囲を広げようじゃないか」
「砂漠想定ってことだから、今後中東攻略を視野にいれているんだろうな」
潮彩 ろまん(
ga3425)の言葉に鯨井起太(
ga0984)、ジュエル・ヴァレンタイン(
ga1634)が同意を示す。
「烏賊さんの改良機に初乗りできるってことなのでやってきたのですよ。イカさん好きとしては是非とも!」
おそらく、今回依頼を受けた能力者の中では一番テンタクルスが好きと自負する美海(
ga7630)は気合を入れた。
「楽しく、そして実のある試験になりそうです♪」
要がころころと笑っていると高速移動艇は雲を抜け、サンフランシスコの海岸が窓一面に広がっている。
W−01とプライベートビーチが能力者達を呼んでいるように見えた。
●夏だ! 海だ! 開発だ!
「よし、ついに来た! 来たよ〜! 青い海に白い雲! そしてナイスバディな美女と新型機のあるプライベートビーチ! イヤッホー!」
『完全ナンパマニュアル』とでかでかと書かれた本を握り締め、風見トウマ(
gb0908)はサンフランシスコの大地におりたった。
「たまんねぇぜ! 海の無い岐阜じゃあありえねぇ楽園だなぁおい! いたたたっ、耳引っ張るな!」
「遊ぶのは仕事が終わったあとだ‥‥」
トウマの耳を引っ張りつつ、威龍(
ga3859)が砂浜から実験場へ引きずっていく。
「社長‥‥は居ないのか‥‥防塵装置をユニット化する話とか聞きたかったんだが」
W−01の実験場に到着し、ツィレル・トネリカリフ(
ga0217)は周囲を見回すもミユ社長の姿は見当たらなかった。
「急に別件の仕事が入ったようでして、ミユ社長はこられるかどうか‥‥。私は今回の実験を担当しますフレア・パーライトと申します」
ビキニの上に白衣を羽織った妙齢で発育のいい体をした女性研究員が資料を片手に能力者たちに理由を話す。
「ミユ社長と新兵器の話ばしたかったとですが、しかたなかですな」
守原有希(
ga8582)はいろいろと頭をひねって出した兵器案を手に残念がっていた。
その間にも実験に使うKVやKVパーツも共に実験場に運び込まれている。
「兵器開発部門の担当者を一人呼んでいますので、共に話をいたしましょう」
フレアは話を切り出しつつ、能力者たちを会議室へと案内をした。
会議室にはフレアとそっくりな女性が立っている。
こちらはフレアとは違って普通の格好だが、妙齢で発育のいい部分はそっくりだった。
「私はぁーコロナ・パーライトですぅー。ここで水中兵器の開発をぉーおこなっていますぅー」
女性は間延びした口調でそう名乗って、能力者全員と丁寧に握手をかわすと開発会議が始まる。
「えっと、私からいいでしょうか? 私は『蛍雪』のようなビームコーティング弾がいいなと思っています」
「それをニードルガンをベースでやれば、コストが安くなると思うとです」
ヤヨイ・T・カーディル(
ga8532)はレーザー砲などの重量過多を懸念し意見をだした。
それは有希も同じだったらしく同意を示す。
同じ意見だった二人はお互いを見合って微笑みあった。
「ミユ社長のほうでもぉーエネルギーカードリッジの試験をおこなわれているようなのでぇー、カードリッジそのものをぉー射出する非リロードタイプならぁー、可能かもしれませんですぅー」
コロナはメモをカリカリと取りつつこの場で返事を出す。
「次は俺だな。カッター状のスクリューを使って切り刻むだけじゃなく姿勢制御にも使える武器はどう?」
「それはぁーツインジャイロがぁー似たような性能をもっていますのでぇー、姿勢制御もぉーやれなくはないかとぉー使い方次第ですねぇー。テストしないことには分かりませんがぁー」
「なら、ブーストを取り付けて突撃〜みたいな‥‥水中で移動の補助にも使える武器はどうかな?」
「水中用ブースターとなるとぉー高くなりそうなのでぇー、スクリュー式になるかもしれませんがぁー近接武装の射程を延ばす形の装備はぁー検討の余地はあるかと思いますぅー」
ジュエルの提案に対して、コロナは悩みながらも懇切丁寧に間延びしつつ回答をだした。
「それじゃあ、水陸両用の武器ってことで、こんなのはどうかな?」
ろまんが提示したのは名前に恥じない『浪漫』武器と呼ばれる分類のものである。
形状は鎖鎌で地上のときは分銅で、水中時は鎌でそれぞれに専用SES機関を内蔵するというものだった。
「これは新しい発想ですねぇー。開発としてもぉーそれほど時間がかからずできるかもぉーしれません」
コロナは純粋な傭兵の発想力に驚きつつも、メモを取る。
「あ、あの〜遠くからキメラをまとめて捕まえたりする武器は難しいでしょうか? す、水陸どっちでも使えると便利だと思うのですけど‥‥」
「まとめては無理ですがぁー、射出式捕縛網なら可能なレベルだと思いますぅー」
おずおずと質問する要に対してコロナは微笑み答えた。
最後に美海が机をバシンと叩いて気合を込めて意見をだす。
「美海は水中ならではの浮力、冷却機能により地上では保持が難しい大型高重量高出力の非物理兵器が欲しいのですよ、万能砲撃装備です」
「わわっ、基本的に水中用兵装はぁー冷却面で依存しているわけではないのでぇー地上装備と重量条件が一緒ですぅー。ただぁー、現在の帯電粒子砲をぉー水中対応するのは難しいのですぅー」
美海の気合に気圧されつつ、コロナは答えた。
技術レベルとして量産化の目処が立ちそうにないのは事実である。
SES兵器というものは射程距離が伸びるほど威力が減衰してしまう物なのだ。
「それでは新兵器開発はこの辺でぇー有意義が意見が聞けて良かったのですぅー。その他プランがありましたらぁー後で資料をもらいますぅー」
コロナは立ち上がると深く礼をして開発会議は終了した。
●イカ、参る
「『ボクに不可能はない』といっても、機体性能の不具合はどうしようもないからね」
起太は移動のための操縦システムの確認をおこなっていた。
ホバーシステムの調子は上々であり、1〜2mほど機体を上昇させて動く。
『ブースターで安定もできるし、速度に目をつぶれば戦闘機形態でも車並みには使えるといったところか』
一緒に動くジュエルがそんなことをいう。
「次は水中から水上へ浮くのをやってみようか」
『オーケー』
『そのあとは交代してよー』
『そうですよー』
『燃料の補給とかで時間を使いますと遊べなくなりますよ』
プライベートビーチをぐるっと周って、戻ろうとするときパラソルを広げて試験の様子をみているろまんと要に交代要求をされた。
二人とも水着姿だが成長途中の凹凸のなさが目立つが、サングラスをかけたフレアの水着姿は魅力的である。
『いい映像が取れたな。あとで持ち帰ろう』
ジュエルがそんなことを言いながら起太と共に水上へホバーを入れたまま進入した。
そして、ホバーシステムをきってゆっくりと進水していく。
エレベーターが下るかのような感覚が二人を襲うも、気持ち悪さはなかった。
「水深50mへ進入完了。うん、いい感じだ」
『浮上して立ち上がるぜ』
起太が具合を確認し、ジュエルの声と共にW−01は水深50mから上昇し、水面に変形して立ち上がる。
ホバーシステムのメインは人型形態でも上手く作動していた。
脚部の推進システムを応用しているので、外見面の変更も目立たない。
『くじらみたいなのです!』
『うぉーすげー、何かかっこいい!』
水上で立ち上がる姿に美海とトウマもはしゃいだ。
そのまま立ちホバーで戻ってきた機体のパイロット交代の時間がくる。
『よーし、テンちゃんパワーを見せるよ!』
『はいです〜』
ろまんと要は各々今回持って戦わせる武器の用意をした。
●渚でしんどいバトル
「俺の摩天楼で砂漠戦がどこまでできるか試させてもらおう‥‥今回はそれほど問題にならないが」
『LM−01に勝てないようじゃ、ゴーレムや亀なんざ夢のまた夢になる。それじゃあサブマシンからの脱却なんてできない』
ツィレルも運んできたLM−01のコックピットからそんなことを呟いた。
特殊電子波長装置はあくまでもヘルメットワームに対しての機能であるため、今回の実験では切ってある。
『ボクの氷雨は今日も血に飢えちゃってるぞ☆』
『こちらも水中用ガドリング準備できました〜』
ろまんが乗っている実験用W−01が振るう水中用太刀「氷雨」は水中で抵抗なく使える素材であるが、陸上でもその力は衰えず使用できた。
要が乗る実験用W−01の水中用ガドリングも水陸しかし、どちらでも使用可能のようだ。
しかし、熱感知型ホーミングミサイルは無理である。
地上で使えるとはいえ、水中と違い、感知する熱の数が多すぎるからだ。
「それじゃあ、2対2といこうか‥‥いくぞ!」
威龍の掛け声と共にLM−01が2機、砂地を駆け出す。
KVの中では高機動を誇るLM−01は、砂浜程度の砂地なら十分実力を発揮できた。
だが、砂漠戦となると専用のタイヤといった装備への換装は必要だ。
『ヒット&アウェイができたとしても、姿勢制御がきつくなりそうだ』
ツィレル機が移動をしつつレーザー砲を要機へ放つ。
『テンちゃん回避ッ! というわけにはいきませんかぁ』
ホバーシステムで機動力が上がったとしても旋回速度や回避能力まで高まってはおらずレーザー砲を受けW−01が大きく揺れた。
『ブーストオン! 凄い、地面を滑るようにすり足出来る‥‥えーい、面・面・胴ーっ!』
浮き上がったろまんのの乗る実験用W−01は砂をエアーで巻き上げつつ氷雨で威龍機を斬り去った。
「ちっ、砂地での利便性は高いようだ。だが、格闘戦ならこちらも負けない!」
威龍機がディフェンダーを振り上げて斬りかえす。
『防御対応はテンちゃんの得意とするところなのだ!』
威龍機の攻撃も、ろまん機の扱う氷雨が受け止め、嬉しそうな声が聞こえてきた。
『だが、サブマシンどまりになる』
『サブマシンかどうかは使う人次第です♪』
距離をとろうとツィレル機が動こうとするところを要機が水中用ガドリングで追い立てる。
ガドリング砲の火線はLM−01を捕らえ装甲を削った。
『ちっ!』
ツィレルが舌打ちをして反撃にでようとしたところでフレアから通信がはいる。
『その辺で交代して頂戴。これ以上やったら、せっかくの実験機が壊れてしまうわ』
まだ試験は残っているのでこれ以上暑くなるわけにもいかず、W−01の操縦者の交代及びLM−01の整備をおこなうこととなった。
●使ってみよう 試してみよう
「蛍雪もアイアンクローは使用できると‥‥」
ヤヨイはディアブロに搭乗しつつ、武装の使用確認をしていく。
蛍雪は直接レーザーを出さない分、雪村に近い使い方ができた。
『こちらのトライデントも十分出力だせそうです』
トライデントとディフェンダーをかざし、有希のR−01が近づいてくる。
日も西に傾きだしている時間であり、プライベートビーチでは試験の終わった威龍や、トウマ達が遊んでいた。
「早く私達も遊びたいですね‥‥」
『そうですな』
ヤヨイが微笑みながら呟くと有希も同意する。
『遅れたのですよ。人工筋肉を搭載した実験機で二人まとめて相手するのです!』
ざっぱーんという波の音が聞こえてきそうな気合の入った声で美海がW−01で2機のKVの前に立った。
「それでは、いざ勝負!」
『こちらから行くのです!』
ヤヨイ機や有希機が構えていると、美海機が攻撃を仕掛ける。人工筋肉のαとβを搭載し、借りたニードルガンで二機に対し、それぞれ2回の攻撃をおこなう。
『手数が増えているのです』
おぉと美海は驚いた。
「ホバーシステム油断できませんね」
『ニードルガンは陸上でも十分使えるとですか』
W−01の攻撃を防ぎつつ、ヤヨイと有希も驚く。
『それは実験機によるものなので、実際にそこまでのポテンシャルを出したものになるかどうかはミユ社長しだいですね‥‥私としてはいきたいところですが』
しかし、フレアの言葉に3人はふぅと息をついた。
●夕暮れのアバンチュール
(「水着間違えちゃいました‥‥」)
試験後、白のスクール水着姿で浜辺を歩いていたヤヨイに澄んだ声がかかる。
「ごめんなさい、遅れちゃったわね? 水着を買ったのに急な仕事が割り込んじゃったから」
ヤヨイがそちらを振り返ると、サングラスに青いショートヘアのミユ・ベルナール(gz0022)社長が大胆な水着姿で立っていた。
「社長がきたー! しかもすごく大胆な水着! よっし、気合がはいってきた!」
トウマは待ちに待った時が来たと大喜びである。
「ミーユしゃっちょ。一緒にビーチバレーをやりましょっ。こんなときじゃないからやれないしっ」
「分かったわ、時間が短い分たっぷり遊びましょう。手加減はしないわよ?」
ろまんの誘いにミユは笑顔で答えて、砂浜へ駆け出した。
白い肌で質量間たっぷりの胸が大きく揺れる。
(「そういえば、PM−J8は腰部背面に排熱機構が用意されている。機密性に問題が無い分、W−01を砂漠で使用する際に排熱に問題は無いのだろうか‥‥?」)
人数あわせとして借りだされたツィレルが駆けてくるミユ社長の胸をジーっと見ながら考えた。
「ツィレルさん、胸ばかり見てエッチ‥‥です」
「ホントホント、いやらしーぜ」
「ジュエルさんも一緒に見てたじゃないですか〜」
同じように見ていたジュエルのこともあり、ツィレルは要に大きく誤解されている。
「ほら、鼻の下伸ばしていないでビーチバレーはじめるぞ。仕事をしたなら、遊びも思いっきりだ」
「そうそう。仕事も遊びも全力で楽しまないとね」
ハーフパンツ姿の威龍とミユがツィレルに追い討ちをかけていった。
「ふふふ、この俺の必殺アタックで社長の心も射止めてやるぜ!」
トウマはどこからわいてくるのか分からない自信を声高らかに宣言する。
「そう簡単に美海は落ちないのですよ!」
そして、その宣言に対して、美海もなぜか自信ありげに返した。
「よーし、それじゃあレディファーストでいくよぉ〜」
ろまんがビーチボールをサーブして、勝負がはじまる。
頭をフル回転させて、相談や実験をおこなった後の自由をミユも能力者たちも日の沈むまでのひと時を精一杯楽しんだ。