●リプレイ本文
●米田時雄の真意
ラスト・ホープのとあるホテル。
そのホテルのラウンジでアポをしていた阿野次 のもじ(
ga5480)は約束の20分前にラウンジで待っていた。
約束の5分前、米田時雄社長がスーツを着こなしてラウンジにやってくる。
「一つ目は落選の基準をお聞きしたかったこと。二つ目は現時点でIMP参入の機会が再度自分が得られるかどうか」
単刀直入に話をのもじは切り出した。
「その前に聞いておきたいのですが、貴女がうちの事務所にこだわる理由はなんでしょう?」
「企画への熱意と興味だけはないわね、食いついてるのは半分以上は確実に負けん気」
「なるほど‥‥やはり、貴女は見込んだとおりの存在でしたね」
米田はそういってフッと微笑む。
「もったいぶらないで教えて欲しいわね」
「答えは簡単なこと。貴女はうちの事務所で扱うには大きすぎる。むしろ、他事務所のライバルとしてぶつけるに相応な存在と思っていたのですよ。書類不備もありましたけれどね?」
「つまり、採用する気はないと?」
「そうなりますね。他にも傭兵とアイドルを個人で両立されている方はいます。彼女達のような立ち位置が貴女には相応しい」
米田はそれだけ済ますと、時計を確認して立ち上がった。
「時間です。それではよき強敵としてうちの事務所の子達と仲良くしてください」
それだけ言い残して米田は去っていく。
のもじは振り返り兵舎へ向かって駆け出した。
●合宿1日目の朝
「んしょ、んしょ‥‥あ、にゃんにゃんさん。今日はどこに行きますの?」
Innocence(
ga8305)は兵舎から合宿所であるULT本部の訓練所へ向かうとき、猫を見つけて声をかけていた。
ワンピース姿で背負ったリュックからは猫のぬいぐるみが顔をだしている。
「Innocence様。寄り道をしていると‥‥レッスンに遅れるであります‥‥」
猫をとことこ追いかけようとしたInnocenceをノエル・イル・風花(
ga6259)が引き止めた。
「にゃんこさんは連れて行っちゃいけませんか?」
「多分‥‥いけないのであります」
首をかしげて聞くInnocenceにノエルは困ったように答える。
そんな時プップーとクラクションが鳴り、ライディ・王(gz0023)がインディースに乗り、荷物を載せてやってきた。
「おはようございます。まだ2人くらい乗れるので乗っていきますか?」
後部座席の窓が開き、ミオ・リトマイネン(
ga4310)が顔を出して挨拶をする。
「おはよう‥‥荷物多いから乗せてきてもらった」
ミオはギターの特訓をしたいとのことで、アコースティックとエレキの二種類を借りてきたのだ。
ライディも買出しに来ていたので、そのついでという奴である。
「私達も‥‥同行させてもらうのであります」
「よろしくお願いしますわ」
ノエルとInnocenceを乗せたインディースは訓練所へと向かった。
●先輩と後輩の交流
訓練所には17人の能力者が集まり、ざわざわっとしている。
男性は3人だが、女性は14人という大所帯だ。
早速、荷物を片付け防音壁のある部屋へと集まる。
「はーい、朝ごはん食べてない人いたらおにぎりあるから食べてね。一杯動いたり、声だしたりするからお腹が空いているとできないよ」
惜しくも本参加できなかった葵 コハルが鮭・梅干・おかか・ツナマヨとか正統派から変わり種まで用意してきた。
「ありがとっ、せっかくだからもらうよ」
雪村 風華(
ga4900)は1つもらい食べだす。
「講師の先生が来る前に、私達で教えれることは教えていくよ。こういう機会もあんまりないからね」
歌詞カードとCDラジカセを持ち鷹代 由稀(
ga1601)が声をかけた。
「そうですね‥‥まずは自分達でできることから‥‥私が正式にリーダーとなりました絢です。皆様よろしくお願いいたします」
緋霧 絢(
ga3668)が全員に向かって一礼をすることから練習がはじまる。
「『Catch the Hope』と『Natural』をしっかり覚えたいかな‥‥。まだまだ新人だから」
数少ない男子の1人。ラシード・アル・ラハル(
ga6190)は生真面目さを見せて気合を入れた。
「ダンスはボクができるから教えるよ『Catch the Hope』も『Natural』もどちらもできるし」
タンクトップにショートパンツというダンスのしやすい格好でジーラ(
ga0077)はラシードの方を叩く。
背丈も年も近く、瞳の色も同じで褐色の肌をした二人はとても絵になった。
「ん〜、姉弟みたいだな。ジーラとラシードって」
カメラを回しつつ小田切レオン(
ga4730)が二人を撮っている。
「ラジカセか?‥‥じゃあ、楽譜あるなら合わせてベースひいてみてもいいか? 歌やダンスもいいけど、バックバンド的なこともやっていきたいし」
瑛椰 翼(
ga4680)がそんなことをいって楽器を探していると、ミオがエレキギターを持ちながら楽譜を差し出した。
「一緒にやってもいい? あと、教えてくれるなら、もっと嬉しいけど‥‥」
ミオは瑛椰と共にエレキギターとベースのチューニングをはじめる。
「がんばっている姿はよいぞ、ギターをどこまでマスターするのか豊富を聞かせるのだ♪」
ルード・ラ・タルト(
ga0386)ことアイドルの『たると』もレオンのようにカメラを回しつつミオへマイクを向けた。
「そうね。一通りIMPの曲をマスターして、バックバンドでも活動できるようにしたいかな? 魅力的なアイドルとして」
ミオがわずかに微笑んで答える。
「次はお前なのだ」
そういって、ルードは加賀 弓(
ga8749)へとマイクを向けた。
「採用されてからアイドルとしての最初のお仕事ですね。不安もありますが精一杯頑張らさせていただきます」
「その気合はきっと民に通じるのだ。コツコツと努力する姿に人は惹かれるのだ」
うんうんとカメラを持ちながらルードが頷く。
「あ、コハルさんと弓さん。日本の舞について教えてもらえませんか? 代わりに歌なら教えられますから、新人の歌ですがお聞きください」
欧州でモデルとして仕事をしていた大和・美月姫はお辞儀をしたあと皆に向けて歌声を披露した。
「あぅ、すこし自信が歌でさえも自信なくしてしまいそうです」
美月姫の澄み渡る歌声に、夕凪 春花(
ga3152)が小さくなる。
そのあと、アイドルたちによる合同練習は昼ごろまで続くのだった。
●歌ってレッスン
「やっとかめ! 皆、ようけぇやっとりゃぁか?」
風華の持ってきたお弁当で昼食を食べていると、米田社長が砕けた雰囲気でやってきた。
「シャチョーさん、採用ありがとうございました。あたしがんばりますよー」
常夜ケイ(
ga4803)は米田を見つけるとペコリとお辞儀をする。
「がんばってほしいでよ、うちの事務所の稼ぎ頭になってくりゃぁせんと。今回は14人6ユニット。歌の講師は美月姫ちゃんに頼むわ」
「え、えぇ!? 私ですか‥‥」
飲んでいたお茶を吹きこぼしそうになりつつ、美月姫が米田に向かって困った顔を向ける。
「冗談だでよ。ちゃーんと講師呼んできとりゃあから、一緒に学んだってな?」
「社長、セクハラだよー」
「セクハラプロデューサー」
美月姫の肩をぽんぽんと米田が叩くと非難の声が上がった。
女性アイドルは時として扱いが難しい。
「食事が終わりましたら‥‥本格レッスンに‥‥入りたいのです」
ノエルの一言で、レッスンが始まった。
歌の講師として来たのは同じ事務所であるアイベックス・エンタテイメントの先輩女性アイドルのグリーナ=イェラウェイである。
「ニホンでの活動は久しぶりデスが、ビシビシいきますヨ」
緑のツインテールを揺らし、勝気な表情でIMPメンバーの前にグリーナはたった。
グリーナはアメリカで人気の出ていたアイドルで、米田が日本の活動として事務所契約をしたのである。
日本での活動は少ないが、コアなファンは多かった。
「基礎の基礎からいきマース。いいですか? これについていけないようでは先が思いやられマスヨ。まずはリラックスしてくだサーイ」
自前の電子キーボードを設置し、姿勢から指示をする。
「伝えたいことをちゃんと伝えるためにも基礎は必要デス。字を書くにも書き順の練習をするようなものヨ」
ただ声を出すことは、簡単なようで難しいことであり、『姿勢・呼吸』の二つを踏まえた上で発声をするのだ。
複式呼吸を何度か繰り返して準備運動を終えたあと、発声練習にかかる。
「何気にスパルタだー」
練習に突撃参加中ののもじが練習の様子をカメラに収めていった。
マネージャーのライディも男性陣を中心にカメラ取りをしている。
「あーあ〜アーッあー!!」
「ノー! ノー! 音程がずれてマース。声の大きさはいいので音感を鍛えてくだサーイ」
たるとが声を出すが、あまりのずれた発声にグリーナがキーボードの鍵盤を1つずつ叩いて音程を合わせる練習をおこなった。
「カラオケもやっていないのですが、歌うって難しいことだったんですね‥‥」
弓がため息をつきながらも、練習に励む。
「グッド。春花は姿勢がイイですよ。あとはお腹から声を出すようにしてくだサイ。ラシードは特殊な発声ができるヨウですが、歌に合わせて使いまショウ」
グリーナがアドバイスを飛ばしつつ、基礎である発声練習が続いた。
一時間ほど発声練習をおこなった後、休憩を挟む。
「皆様、お疲れ様です。コハル様達が用意してくれた飲み物で休憩を取りましょう。たると様はこの後は一緒に練習をしましょう」
絢が汗を拭き、水分補給をしつつルードに向けて真剣な目を向けた。
「な、何故だ! 兄姉様たちにも褒められたのだぞ」
「歌は何を伝えたいのか、それが大切だと思うかな? 音程を取るだけじゃ、聴いてても面白くないと思うよ」
風華が、ルードの言葉を返す。
「一緒に組むふーかが言うのならば仕方ない、練習に付き合ってやるのだ」
チューチューとドリンクを飲みつつルードは絢の指示に従うことにした。
本格的な歌の練習はその後1時間ほど続く‥‥。
●休憩と雑談
「3時のおやつにT点心。あっつあつだよー」
のもじが3時の休憩にと、杜仲茶と桃饅頭を用意してくる。
「おいしそうだがね。俺ももらうでよ」
米田も桃饅頭を食ながら、一緒に休憩をはさんでの雑談をした。
「米田社長、今回は収録に参加できませんでしたがソロで歌を歌ってみたいです。ポップスかバラードで‥‥」
美月姫がレッスンを眺めて燃えてきたのか、そんなことを米田に言い出す。
「チャンスはなるべく作っていくでよ。厳しいかもしれにゃあが、自分で掴んでくりゃあよ」
「社長、俺達男子3人ユニットなんだけど‥‥名前を迷っているんで決めてもらえるか?」
「『IMP男子部』と『knight★mare』の2つなんだな、これが」
レオンと瑛椰が米田に名前と由来も書いたメモを手渡した。
「俺が選ぶなら、『knight★mare』だがねー。マネージャーはどっちがええかね?」
「えっと、僕も『knight★mare』でしょうか? 悪夢からきているところも面白いですし、アイドルの男子って女の子の憧れという部分もありますから」
ライディがお茶を飲みつつ答えた。
「そういえば、わたくしたちのお名前って何か決まっていましたか?」
Innocenceがふわふわした姿を見せつつケイへと視線を向ける。
「あー、忘れてました。シャチョーさん、マネージャー。何かつけてください」
「そうだがねー。Innocenceとケイだから、『Innocent Key』ってところでどうだがね?」
『純粋な鍵』という意味もこめて癒し系で売っていこうという米田の意見だった。
「今回の収録はこれでいくでよ。気に入らなかったら、次までに考えてくれりゃあ嬉しいでよ」
「あ、やっぱり明日で録りまでやっちゃうのね? それなら時間が惜しいからがんばらなきゃ!」
米田の言葉に由稀は気合を入れて立ち上がる。
まだまだ、ダンスレッスンがあるのだ。
●合宿カレー
「ダンスは経験が無かったのですが、足で纏いにならずに終わってよかったです」
春花が大き目のTシャツ姿でタオルで髪を拭きながら、食堂へと向かう。
ダンスレッスンが3時間と続き、びっしょりと汗をかいたアイドルたちはシャワーを浴びて着替えた後、食堂に集まってきた。
「漬物は持参してきたのがありますので、良かったら食べてください」
美月姫が荷物としてもってきていた福神漬けやラッキョウを出し、調理中のアイドルを撮影していく。
「厚切り肉でカツも作るよ。他のアイドルにカツ! ってね」
スーパーで買ってきた厚切り肉に衣をつけて調理を由稀はしていた。
「ニンジンは入れて欲しくないのだ」
「たると様好き嫌いはいけません。野菜は多く食べましょう。カボチャで甘味をつけるのもいいです」
「玉ねぎなら食べれるでしょ? 切ったのを入れて入れて」
一方カレーを作っているルードと絢、そして風華はそんなやり取りをしている。
「じゃあ、あたしは南国風デザートを作ります!」
「スープとサラダでも作ろうかな」
「スープなら、俺のマイブームである「バジル風味のチキンスープ」を作ろうぜ。ベーコンとチキンの煮込みだけど、食べる直前にジェノベーゼソースをかけるとグーなんだよ」
ケイが南国フルーツの缶詰を開けて、ココナッツミルクを使った簡単なデザートを用意し、ミオがサラダを、瑛椰がスープをつくりだした。
「なんというか‥‥、立ち入る場所がない‥‥ね」
「どなたかが言っていたであります‥‥キッチンは戦場であると」
「それ、何か違うと思うよ」
男性であり、現在カメラでキッチン風景を撮影中のラシード、さらに料理があまり上手でないノエルが傍観しているとレオンから突っ込みが飛ぶ。
「おい、手が空いているなら皿とか用意するの手伝ってくれ」
「あ、はい。今‥‥手伝います」
レオンの声かけにラシード達が動き出した。
「あと、あたしの荷物から酒持ってきて。未成年以外は酌につきあってもらうからね」
「はい、取って来ます〜」
由稀の声に春花が荷物のおいてある部屋へとスリッパをパタパタ鳴らしながら、食堂から宿泊している部屋のところまで移動をする。
すると、廊下の窓から、夜だというのに中庭でジーラとグリーナが練習をしている姿が見えた。
「ジーラさん‥‥がんばっているのですね。内緒にしておきましょう。ご飯ができてから呼べば大丈夫でしょうし」
その様子を見ながら、春花は由稀の部屋へとはいっていき酒を取り出す。
「これでしょうか‥‥『純米吟醸 バグア殺し』っと」
それは以前IMPがプロデュースした酒であった。
●合宿二日目の朝は和洋折衷
「やはり、日本人として朝は和定食を食べたくなってしまいますね」
塩鮭を焼き味噌汁を作りながら、弓はふふりと笑った。
由稀などから注文もあるので家族分をまとめて作る感じである。
「私はパンとミルクとバナナかな‥‥作れないってことはないけれど手軽さを優先しちゃう」
昨夜メインで料理をしなかったメンバーがキッチンに立ち、朝食を作っていた。
「ひなふぇすたの日より特訓をしてきたのであります‥‥覚醒」
ノエルがフライパンと卵を片手に覚醒をする。
熱したフライパンに卵を落とし、リズムをとりつつ目玉焼きを焼いていく。
深夜まで個人練習をしていたノエルだが、そんな様子を見せずにせっせとサニーサイドアップを焼き上げた。
「黄身は半熟。私もまだ半熟、うん♪ いいこといったぞ私♪」
それにしても覚醒するとノリノリである。
「ふわー。おはよーございます」
遅れてライディが姿を見せた。
鍵を預かっている身であり、ノエルの練習に付き合って起きていたである。
「おはよう、マネージャー。衣装なんだけどさ、用意は今日の午前中に用意して昼から収録?」
「ふわぁ‥‥そんな流れですね。小道具や衣装で足りないものがありましたら、いってください。米田さんの方からある程度のお金は預かってますので」
「それなら丁度いい。マイクなんだけどさ、ヘッドセット式のが欲しいんだよ」
「裁縫は苦手だけど、費用落とすには仕方ないよね〜」
ライディがコーヒーを飲んでいると次々とアイドルたちが集まり、簡単なミーティングの雰囲気となっていった。
「こうして大勢で食事をするのもいいものですね」
「本当にね。今回はソロデビューなんて‥‥。普通に傭兵やっていたはず何だけど、どうしてこうなるのかな?」
弓が塩鮭とご飯と納豆の朝食を用意し、ジーラがトーストにミルクとバナナの朝食を用意する。
「皆、朝食食べてがんばろう♪」
そして、各自1つずつノエルの半熟サニーサイドアップがだされた。
ノエルいわく味が保証できない。
目玉焼きなのに何故とは誰も突っ込みを入れられなかった。
●収録模様〜『Brack familiar』〜
絢と春花は黒ベースのゴシック系+黒ねこみみ+黒ねこしっぽという、節分時に来た衣装と同じものを着ている。
春花は愛嬌担当ということでフリルなどを多く、アクセサリーも可愛らしいものを持った。
一方、絢はあくまでも普段通りにワインレッドにアクセントをゴシック服の上にいれ、さらに手枷、足枷、首輪などの退廃的要素を強めている。
「この衣装で姉妹をやるのも久しぶりですね。お姉様」
「そうですね。私も久しぶりのお揃いで嬉しいです」
着替え終わった二人は黒猫姉妹といった感じで戯れた。
「いいよいいよー。もうちょっとこー、顔を近づけちゃったりなんかしてさ!」
そんな二人の様子を何時の間にやら、のもじがしっかりとっている。
「う、歌を始めましょう。お姉さま!」
撮られている事に気づいた春花が頬を染め、わたわたとした様子でレコーディングをはじめた。
『My Heart 〜Ver.Love〜』作詞:Aya
♪〜〜
貴方の前では素直になれない 万華鏡なMyHeart
どうして 何故 ココロ 伝えられないの
どうして 何故 オモイ 伝えたいの
ココロは貴方を目指してる
オモイも貴方を目指してる
ココロ 怯えなければ きっと伝えられるのに
オモイ 素直になれば きっと伝えられるのに
この言葉 I Love You
貴方の前では素直になりたい 万華鏡なMyHeart
〜〜♪
二人の静かなラブソングが収録現場に響きわたった。
●収録模様〜ハニーフラワー&ジーラ〜
「衣装はこんな感じでいいのか? 1つだけにしろとは聞いてないのでもめたのだ」
「うんうん、いい感じ。『雪の妖精』としてジャケット取ったときの衣装をアレンジしてみたけれど‥‥良かった」
青と赤のアクセントとして風華がリボンなどを縫い付けていたのである。
腕にはルードには青、風華は赤のリストバンドやブーツを身に着けて動きやすさを重視した衣装となった。
「なんか、二人して朝のお子様向けアニメの主人公みたいだね」
「それはちょっと‥‥いや、否定できない」
撮影を変わったジーラにそんな突込みをいれられ、否定しようとした風華だがルードの格好をみると否定できなくなる。
そんな方向性もちょっといいかもしれないと思った頭を振って、ダンスの練習を始めた。
「ダンスユニットだから、まずは魅せる派手なアクションからPV用とかに撮っておこうね」
「分かったのだ、ムーンサルトでも何でもくるのだ♪」
風華の提案をルードは快く受けて、ポップなリズムに合わせて踊りだす。
打ち合わせて、ジーラもダンスミュージックなため被らないような曲を選んでのダンスだ。
二人でやるからにはそれを活かしての組み合わせ技などを踊る。
「う〜ん、それだとリズム取りづらそうだから、ちょっと変えて‥‥。こうしよっか?」
風華が気ままに踊るルードに意見をだし、踊りを調整していった。
そして、歌もそのダンスに合わせてつけていく。
『駆け抜ける風』作詞:ふーか
♪〜〜
今 未来が見えなくとも
今 希望が掴めなくても
諦めないで 進めるはず
その足がアナタたちには あるのだから
風が運ぶ幸せ 空に映る希望(ゆめ)
明日(あす)を見つめる瞳 駆け出した未来
どんな時も俯かず 前だけを見て
あの光目指して 走り続ける
〜〜♪
二人の歌は幸せと希望を運ぶ元気の出るような歌のサビだ。
未来に希望を持って欲しい子供達に向いているのかもしれない。
そのあと、ついでとジーラの『Yira』というソロ収録が始まった。
ジーラはロックを強めた曲調の前半と情熱的なラテンを合わせた曲調からなるツンデレ仕様で踊る。
歌詞は洋楽もので、自分の過去を漂わせる歌にしあがった。
●収録模様〜『Innocent Key』〜
「Innocence。ストレッチしてまったりほっこりいくよ」
「常夜様、衣装はこんな具合でいいでしょうか?」
Innocenceが着てきたのはモノキニで、パレオがついたものだ。
完成された肢体が惜しげもなくさらけ出され、コサージュのハイヒールを履いた足元もしなやかに決まっている。
モデルとしても十分通用しそうな体をしているが、手に持った猫の縫いぐるみと南国模様のパレオが無邪気さを出した。
「ぬぬぬ、まさかこれほどとは‥‥ま、まったりふわふわ南国の民謡っぽくいきましょ」
ケイはInnocenceの決まりっぷりに汗をたらす。
にくきゅう手袋などをつけようともおもったが楽器が弾けなくなっかため断念した。
そして、昨日からひそかに借りてつかっていたエレキウクレレを鳴らし、ソファーで寝転びならたゆ〜んと歌いだす。
「分かりました。にゃんにゃんさんと踊ります」
エレキウクレレののんびりした曲に合わせてInnocenceが猫のぬいぐるみとともに踊った。
昨日のダンス練習は多く動きすぎて途中ですやすや寝てしまったInnocenceにあったフラダンスに近いゆったりした踊りである。
『癒しのパラダイス』作詞・作曲:常夜ケイ
♪〜〜
今どきドキドキ、することいっぱい
戦争とかー事件とかーみなさんお疲れ
癒しーましょ癒しましょー冷やしてクールダウンー
カモナ、パラダイス♪
愛 wanna パラダイス♪
カモメに乗ってけ〜
まった〜り、ほっこり〜、ゆっくりしませんか〜
まどろ〜み、ほこほこ〜ゆったりいやし〜
ゆっとり〜うとうと〜パ・ラ・ダ・イ・スー♪
〜〜♪
癒しを与える南国ソング。
簡単な振り付けで、誰もが見ていて癒される夏らしい一曲に仕上がった。
●収録風景〜『knight★mare』〜
「8月に大阪でやる一大イベントで披露する新曲だ。ここで良い曲作って、8月のイベントに乗り込んでやろうぜ!」
レオンがモノクロのスーツの上下に赤いネクタイや、その他レザーアクセでキメてでてくる。
「ヘッドセットを仕入れてもらったから、これでマイクを持たずに踊れる」
瑛椰はレオンの衣装に黄色のネクタイや、バンダナで衣装をそろえた。
「よいよ本番‥‥ちょっと‥‥緊張する‥‥」
ラシードはモノクロでも半袖、半ズボンの衣装で青いネクタイを巻いている。
ダンス曲『Fly Boys Fly!』も後での収録となった。
「作詞曲が‥‥収録できて‥‥ちょっと嬉しいかも‥‥」
男性らしい、誰かを求めるバラード曲を3人は熱く、強く歌いだす。
個別パートとサビを一緒に歌う3人ならではの曲構成だ。
『ShininStar』作詞:小田切レオン
♪〜〜
Part:翼
神様に逢った事は 無い と思う
でも 神様に一番近いコを知っているんだ
全てを持ち 全てを失う
孤独なそのコ いつも穏やかに微笑んで‥‥
※サビ
Youre My Only ShininStar
Part:ラシード
もし 神様が祈るとしたら 何に祈るのだろう?
自分自身?
夜空の星?
※サビ
I want to become Your Star
Part:レオン
諦めなければ願いは叶う 君はそう言ったね
未だ見ぬ過去 過ぎてしまった未来‥‥
※サビ
遠い約束 信じて僕は君を待つ
Youre My Only ShininStar!
〜〜♪
ダンスは動きよりも感情を出すような動作にとどめた。
サビの部分をだんだんと感情を込めて最後に遠いまだ見ぬファンへと伝えるように歌う。
3人の出だしとして、ナイトのような一曲が仕上がった。
●収録風景〜『Come Across』〜
「昨日の練習の成果をださないといけませんね」
弓がワンピース姿で収録現場にでてくる。
「朝は和食でがっつり活力補給下から仕事にがんばれるね」
由稀は白を基調にした男物のカジュアルスーツ。アクセサリは銀十字のペンダントという落ち着いた組み合わせだ。
「デュエットですの落ち着いた感じで寄り添うようにと」
「派手さはない方がいいわね。若い子が他にいるんだから」
弓と共に由稀が打ち合わせ、準備にかかる。
イントロが始まった。
『Walkers〜旅人〜』作詞:加賀 弓
♪〜〜
時は戻らない 未来は続く
悲しみも喜びも 明日を作る真実だから
振り向いてもいいけれど 立ち止まらずに歩こう
一歩踏み出せば そこに道が出来る
僕らの歩みが 未来への道となる
楽しいことも辛いことも 明日へと続く現実
過去は戻らない 目を逸らさずに 明日を作る真実を
明日に繋がる希望を紡ぐ道
〜〜♪
弓がメインボーカルで自分のペースで進もうとする旅人の歌だ。
歌い終わると次ぎの曲である、『To you』へと歌いだしていく。
Toyouはメインボーカルが由稀にかわったアップテンポバラードである。
大人の魅力を出した、変わった二曲が仕上がった。
●収録風景〜ノエル〜
「ミオ様、アコースティックギターの協力お願いします‥‥です」
コルセットスカート姿のノエルが、ミオにお辞儀をすると、覚醒をした。
「今日も順調♪ 私に向かうところ敵なし♪」
『Sunny−Side−UP(feat.ミオ・リトマイネン)』作詞:ノエル
♪〜〜
銀色の星が降る夜に
二人を繋げる絆は Destiny
その殻を破り行こう Blue sky
叶えるよ願い My happiness
女の子 DESU★MONO
デートでもバイト?
〜〜♪
サビから入るアップテンポのポップス。
それは恋する乙女の複雑な気持ちを伝える歌だった。
感想ではバックでアコースティックギターを弾くミオにカメラが向く。
ミオはローライズのジーンズにレイヤードのTシャツを着てのソロパートだ。
アコースティックギターの音色が大きく響き、一味違った曲へと仕上がる。
●合宿終了
「皆さんお疲れ様でした。ビデオや衣装を回収します」
収録も終えて、ライディが率先して片付けをはじめた。
「ライディまねじゃーお疲れだねっ。ビデオはいいものを撮っておいたよ」
最終日まで付き合ったのもじからビデオを預かってライディは一息つく。
「編集はアイベックス・エンタテイメントの事務所で行いますから、集めるだけ集めて送りますからね」
気持ちよく疲れた顔をしたアイドルたちを見回し、ライディが一礼を終えた。
「今回の合宿はいろいろとためになりました。今後のマネージングに活かして生きたいとおもいマス」
「皆さん、兵舎にちゃんと帰るまでがお仕事です。今日収録したものは8月のイベントでアルバム配布をしますので、皆さんよろしくお願いします」
ライディは合宿の締めを行い、次なる目標を述べた。
アイドル活動の本格化はここから始まるのである。
がんばれIMP! まけるなIMP!