●リプレイ本文
●部外者でごめんなさい
「暑い暑いと自宅で嘆いていたら、『プールで泳げる良い仕事があるよ』と言われ受けたものの‥‥CM撮影なんて聞いてなかったわ」
宇治グリーンビーチランドに来てリーゼロッテ・御剣(
ga5669)はため息をついた。
「大丈夫、初めては緊張けどいつも通りにやれば問題ないよ。‥‥といってもボクだって、キャリアが長いわけじゃないんだけど」
アイドルグループであるIMP所属ではないリーゼの肩をジーラ(
ga0077)は揉みつつ緊張をほぐす。
「わ、すごい‥‥京都って、こんなプールも‥‥あるんだ」
以前は古都としての京都に訪れていたラシード・アル・ラハル(
ga6190)は現代じみたプール施設に思わず驚きの声をあげた。
「君たちがアイベックス・エンタテイメントの依頼できた傭兵かな?」
現場ディレクターらしい人が訪れた能力者たちに声をかけてくる。
「新人アイドルの美月姫です。まだ、新人で皆さんにご迷惑をお掛けするかもしれませんが精一杯がんばりますので、本日はよろしくお願いします」
大和・美月姫(
ga8994)が声をかけてきたディレクターに一礼をしながら元気に挨拶をした。
「あの‥‥私はIMPじゃないんですけど、大丈夫ですか?」
リーゼはおずおずと手を上げてディレクターに話しかける。
「その辺は問題ないですから、もちろんアイドルの方を優先させてもらいますけれど」
「それなら安心しました。邪魔にならないようにがんばります」
「あ、ボクはモブ扱いでお願いします。今回が初CMという新人を前に出してください」
リーゼがディレクターの言葉に安心していると、ジーラがお願いをした。
新人になれてもらうためと、裏方を学びたいというジーラなりの心遣いである。
「ジーラ先輩、ありがとうございます。CMですが、スポットを撮影をしていただいて編集という形にしていただきたいなと思うのですが‥‥」
「ここで立ち話もなんですから、撮影の方法はスポンサーの要望も合わせて調整しましょう」
ジーラの言葉に喜び、微笑む美月姫にディレクターはフードコートの方へ案内をしていった。
CMはスポンサーの意見も重要である。
夏の日差しが照りつけるプールにてスポット撮影での収録準備が進みだした。
●CMソングぅー!
「わたくし、頑張りますの‥‥常夜様やスタッフの皆様、よろしくおねがいいたします」
Innocence(
ga8305)が胸の前で手をぎゅっと握りながらペコリとお辞儀をする。
「にくきゅうデュオ『Innocent Key』はCMソングを歌って踊りたいです〜」
スタッフを目の前に常夜ケイ(
ga4803)もInnocenceと同じようにお辞儀をした。
「良いCMを撮影して、施設の知名度と集客力のアップを図りたいところよね」
スタッフと打ち合わせに今のメンバーの中では一番キャリアをつんでいるミオ・リトマイネン(
ga4310)がイメージしているものを話す。
「俺はフードコート制覇でいきたいところ。CMソングのBGMも担当しても構わないけどよ」
瑛椰 翼(
ga4680)は宇治グリーンビーチランドの施設マップを見ながらフードコートの内容を吟味した。
「家族向け15秒、カップル向け30秒でいいでしょうか?」
「家族向けを30秒のつもりでいたけど‥‥施設の説明メインで」
ケイがウキウキ気分で話をすすめようとしたとき、ミオが突っ込みをいれる。
「施設の説明を家族向けとすると15秒ではまとまりきらない場合がありますね」
ディレクターも説明を加えた。
他の傭兵達は施設の一つ一つ見せ場をスナップ式にとっていくつもりだったので、それらをまとめるにしても時間は長い方がいい。
「カップルバージョンは今いる人の中で男役、女役を出さないとキツイか? それでストーリー仕立てにすればそれっぽいかも?」
瑛椰がカップルバージョンについて意見を投げかけた。
「見知らぬ人と一緒でも私は大丈夫ですの♪」
だが、回答はInnocenceから返ってくる。
少しの間、空気が止まった。
「Innocenceさんはあたしと一緒にCMソングとダンスで〜。常に一緒に動こうね」
「そうね」
「それがいい」
ケイの提案にミオや瑛椰も大きく首を盾に振って納得する。
Innocenceだけは何が起こっているのかいまいちわかっておらず、ただ首をかしげるだけだ。
「えっと、ロック調でいこうと思います。こんな感じの〜」
その空気を返るようにケイがウクレレ片手に歌いだす。
「スポット撮影もOKもらえたようだから、着替えを済ませて撮影に移りましょう」
スポンサーからもケイの曲は評価されたため、ミオの掛け声と共に能力者たちは水着へ着替えに向かった。
●美男美女いいとこ撮り
「白ビキニでリーゼさんとお揃いですね」
「でも、中身が‥‥中身がっ!」
着替え終わった美月姫と一緒にリーゼはシャワーを浴びるがモデルとしてバランスの取れている美月姫の肢体に引け目を感じずにはいられなかった。
「悲しむより笑ってわらって〜撮影のときないていちゃ、終わらないよ」
ジーラがリーゼの背中をたたいて励ます。
「白スク水なんて狙っていますね」
「は、恥ずかしいからそれは言わないで‥‥ボクだって、これしかもってきてなかったこと後悔しているくらいなんだから」
ミオと共に着替え終わってきたジーラがスク水姿で恥ずかしがった。
小麦色の肌に白いスクール水着がまぶしく光る。
「でも、私やリーゼさんのローレグやタンキニビキニと違って、美月姫さんのはチューブトップでとても素敵です」
「そ、そうですか? 私はミオさんのような‥‥その‥‥」
美月姫はちらちらとミオの体を見た。
細身ながらもミオの胸はしっかりと存在をアピールしている。
「どっちにしても自信のもてる体をしている二人が羨ましいよ‥‥でも、受けたからにはきっちりやらないとね」
リーゼはミオと美月姫を眺めて、深呼吸をした。
「あ‥‥来た。あれ‥‥? ケイとInnocenceは?」
青いトランクス形の水着に着替え終わっていたラシードが女性陣を出迎えながら、見かけない二人の所在を聞く。
「二人とも水着忘れちゃったようだから、そのままの格好で撮るシーンを考えてやるとか調整するみたいだよ」
「そっか、残念だな。水着姿みたかったんだけど‥‥。浮き輪もって来たぜ」
ジーラがケイとInnocenceのことについて答えていると小道具の準備をしていた瑛椰も戻ってきた。
「準備できたのなら撮影入りますよ」
カメラマンが強い日差しの中、重たいカメラを担ぎながらアイドルたちに声をかける。
「今、いきます」
そして、撮影が始まった。
まずは15秒バージョンとしてカップルで派手なシーンで撮影をする。
波の起きるプール。
そこには1人寂しく波打ち際に佇む美月姫がいた。
チューブトップの白いビキニ姿の美月姫は周りで遊ぶ小麦色の少女や、ハイビスカスの髪飾りをつけた女性が浮き輪に乗って楽しそうに遊んでいる。
「はぁ‥‥」
美月姫の口からため息がもれるも、波の音に消された。
声をかけてくる赤毛の男を断り、一人波打ち際を歩き出す美月姫。
「つまんないな‥‥」
そう呟いたとき、ザッパーンと大きな波が美月姫を襲いだした。
「え‥‥きゃぁ!?」
「だいじょう‥‥ぶ? 遅れて‥‥ごめん」
波に足をとられ、溺れそうになる美月姫をラシードが手をひっぱって救った。
「もう、遅刻は‥‥嫌だよ」
「うん‥‥。約束‥‥する」
びっくりしながらも美月姫は最高の笑顔をラシードに向け、二人は飛び込み台の方へと駆け出していく。
【気になるあの人と 宇治グリーンビーチランド】
ナレーションが入り、撮影にOKがだされた。
「初めてで‥‥緊張、した」
カットの声で飛び込み台から飛び降りて戻ってきたラシードはパーカーをスタッフから受け取り一息つく。
「私もカメラはカメラでも映像の方はなれていないのでドキドキでした」
美月姫も軽く体を拭きながら、一発でOKが出たことを喜んだ。
アイドルとしてCM撮影をするのは二人ともはじめてのことである。
「二人ともいい演技でしたの♪」
Innocenceが拍手をして二人を迎えた。
「良かったよ〜。歌にあった雰囲気なのも素敵!」
テーマソング担当したケイも雰囲気のよさに感動している。
本当はケイ自身がやりたかった演出なのだ。
「休憩したら30秒のためのスナップを撮っていきますよ。早く終わらせましょう」
ディレクターがカメラマンに休憩をさせながら汗を拭う。
日差しはまだ高かった。
●CM編集そして遊べ!
「よし!」
覚悟を決めたミオがウォータースライダーに滑り込む。
ザッパーンと飛沫を上げて着水し、プッハぁと頭を振るい水を飛ばして水面へミオは顔を出した。
その次のシーンでは宇治グリーンビーチランドの入り口で、ケイとInnocenceがワンピースに大きなストローハットのお揃い姿で歌を歌いだす。
海を見ようって
チープな言葉じゃ
私の心は靡かない
Innocenceの手にはぬいぐるみが抱かれ、ケイの手にはウクレレで体を上下させてリズムをとった。
飛び込み台から、順番に飛び込むラシードと美月姫が写り綺麗な姿で水面に吸い込まれる。
君と行こうって
陳腐なフレーズ
私の他にもいるでしょ?
再び、Innocenceとケイのシーンに戻って二人の歌が続いた。
そして、フードコートにシーンが写る。
「あー、この宇治抹茶アイス美味しい!」
リーゼがタンキニ姿でフードコートのアイスを食べ、隣にいる瑛椰もトランクス水着でテーブルにポテトやお好み焼きなどを並べて食べた。
シーンはまたInnocenceとケイに戻る。
ホ・ントに・好き〜なら
わ・たしを・気に〜なる
ビキニビキニビキニBEGIN!
好きに好きに君にGREEN!
サビに入ると、二人が踊り、シーンが二人と同じ踊りを踊っている各自に変わっていった。
SURF ON〜丘サーファ〜
COME ON〜おいかけてよ〜
伊達じゃないでしょ?
ルーフのボードは
あなたのテクで酔わせてよッ
乗ってけ乗ってけグリーングリーン
宇治グリーンビーチでのってけーーーー
【家族みんなで 宇治グリーンビーチランド】
最後は入り口のInnocenceとケイに戻り、ナレーションと共に締める。
「ふーん。こうやって編集するんだね」
CMの編集作業を手伝いつつ、出来上がった映像を眺めていたジーラは関心した。
「せっかく歌がありましたんで、それを使ってという感じですね。いいところが上手く使いたいです」
編集を担当しているスタッフは汗を拭い答える。
「ボクの要望なんだけれど、ホームページなんかで流せる各施設の説明が入ったプロモーションビデオなんかもあればなぁとは思うんだけど、今回は必要ないかな?」
「ホームページデザインはうちの仕事ではありませんが、事務所のページで流せるバージョンも考えてみましょうか」
「そうしてくれると嬉しいかも。ありがと」
思いがけないスタッフの回答にジーラは少し照れながら答えた。
「ジーラちゃん、遊ばないの? 澄み切った空の下で流れるプール♪ 最高よ〜♪」
部屋にひょいとリーゼが顔を出し、緊張のない笑顔でジーラを迎えにくる。
「うん、今からいくよ。リーゼもそうやって素の笑顔で撮影していたらきっとボクよりアイドルっぽいと思う」
「あはは、そうかしら〜? ジーラちゃんの枠を取って活躍するのも面白いかな?」
「それだけはやめて! あ、その‥‥なんでもない」
一瞬、大きく否定したジーラだった。
しかし、すぐに恥ずかしくなり声が小さくなる。
(「アイドルかぁ‥‥私のママも歌手だった頃とかこういう仕事もやったのかぁ〜‥‥? ‥‥ママの娘だもん‥‥あたしだって出来ないことはないはず‥‥!) 」)
そんなジーラをながめ、リーゼは心の中でアイドルというのも悪くないかなと思い始めていた。