●リプレイ本文
●鰹討伐隊結成!
「久し振りだな‥‥姫さん‥‥と、山戸。真面目に‥‥やってんのか?」
くくっと笑いながら、玖堂 暁恒(
ga6985)は平良家の座敷に上がりこんで平良・磨理那(gz0056)に挨拶をした。
「玖堂っ! お前も暇だな‥‥」
山戸沖那は出雲にいたころから顔見知りである玖堂がいて喜ぶも、沖那はすぐにそっぽを向いて毒づく。
「磨理那様お久しぶりです。しかしながら、怖いもの知らずというか‥‥チャレンジャーというか‥‥」
敵である鰹ギルマンのイラストを受け取った菱美 雫(
ga7479)は汗をたらした。
図鑑で見るような鰹に人間の手足の生えた鰹ギルマンは食欲をそそるとは思えない姿である。
それでも食べたいといって依頼を出すのだから磨理那の我侭っぷりは酷いものだ。
「あー、お嬢ちゃんよ。UPC軍からロープとか投網などを借りたいんだが場所しっているか?」
筋肉 竜骨(
gb0353)が大胸筋をピクピク動かして磨理那に聞きだす。
「近畿地方のUPC軍には顔が利くのじゃ、それに今回の依頼はうちの爺がそなた達に頼んだようじゃからの。必要なものは用意するのじゃ」
扇を広げ、自らを扇いで磨理那は答えた。
「そういうこった‥‥この姫さん‥‥ただの我侭な子供じゃ‥‥ねぇってこと」
くくっと玖堂が再び笑い竜骨の肩を叩く。
「ほらほら、鴨川の料亭まで案内するから俺についてこい。おいていくぞっ!」
「あ、磨理那様。癸(みずのと)預かって欲しいの」
『まっているからがんばってくるんだよー』
話している間にロープなどを用意してきた沖那が能力者達をせかしだし、あわてた乙(
ga8272)は腹話術の人形であるティディベアを磨理那に渡した。
「がんばって活きが良いのをとってくるのじゃぞ!」
「逝きがいいといったほうがいいのかも‥‥あ、いや何でもありません」
能力者たちにエールを送る磨理那の言葉に雫はポツリと突っ込みを入れる。
決して笑えない冗談であった。
●KENJYO KENJYO せよ!
『ネメネメネメネメネメネメ!』
「まさか本当に手足が生えた鰹が居るとは‥‥」
謎の鳴き声と共に料亭で暴れる鰹ギルマンを、回り込んだ川側から見た鈴原浩(
ga9169)は狼狽する。
「料亭の女将でありやがるですか? 平良・磨理那っつーお嬢様からの命令です。鰹を収める氷を敷き詰めた容器を用意しやがるです」
不気味なキメラをものともせず、シーヴ・フェルセン(
ga5638)は靴を脱ぎながら料亭に筋肉や乙、雫と共に座敷へあがった。
「女将から氷と入れ物もらったから、とにかくお嬢様に渡すのだけ確保頼む!」
沖那が準備できたことを知らせると、座敷にいる能力者たちが頷き合って攻撃にでる。
「手足が生えてて気色悪いからさっさと散って俺の腹ん中に食されな!」
筋肉の盛り上がった力を振るい、竜骨はセリアティスの『流し斬り』で側面に回りこみ、えらの部分を狙って一撃で貫いた。
『ネメー!』
謎の鳴き声を挙げながら口をパクパクさせて鰹ギルマンの一体はその場に倒れる。
手足を痙攣させている姿も不気味だった。
「こいつの手足排除して一匹確保するから、あとは外に追い出してくれ」
沖那が倒れた鰹ギルマンの手足を斬って捨てながら、他の能力者に頼む。
「そうなの。シーヴ、網の端を持って欲しいの。一緒に追い出すの」
あまりの光景にぼうっとしていた乙は沖那の声で我に返った。
そして、シーヴと共に網を広げて一気に料亭に上がりこんでいる鰹ギルマンを外へと追い出しにかかる。
フォース・フィールドで抵抗されるが、竜骨もセリティアスを横にして料亭の座敷から鰹ギルマンを押し出た。
「あーうっ! 蚊に刺されて大変だったよ」
呉葉(
ga5503)が蚊に刺された腕をかきつつ、じゃぱーんと川に追い出されてきた鰹ギルマンをヴィアを片手に倒しに向かう。
足は長靴を装備しているので浅い川でも安心だ。
呉葉を中心に待ち構えていた能力者たちがギルマンに襲い掛かる。
挟み撃ちの作戦は成功していた。
「手足バラバラで川下りしたくなかったら、とっととお家に帰りな!」
鰹ギルマンに攻撃するとき、呉葉の髪が真紅に染まり口調が荒くなる。
「何やろ。シュールすぎて言葉が出て来ぉへん。けど、無粋やさかい消えてもらいますわ」
瞳を赤くし、鰹ギルマンを鼻で笑いながら曽谷 弓束(
ga3390)は長弓で射抜いた。
両者とも覚醒で性格が変わっている。
「狩りの開始‥‥いや、漁の開始かな?」
鈴原もニヤリと笑い水晶体のような物で覆われた腕で鰹ギルマンを屠った。
そうして、普段と違った性格の能力者を沖那は複雑な心境で眺める。
過去に起きた自分の過ちを振り返って‥‥。
●タタカイ
「もう一匹確保頼む出やがるです。手足はお任せ」
『紅蓮衝撃』+『急所突き』でエラから中骨を狙ってシーヴのコンユンクシオが煌く。
一撃必殺で〆られた鰹を沖那がばらして箱詰めを行った。
「うち‥‥弟が食いたいっつーんで‥‥もう一匹確保‥‥頼むぜ」
「手とか足も、鰹味か確かめてみたい気もするの」
玖堂の思い出したかのようにいうと、乙が側面に回っての流し斬りでさらに一匹のギルマンが箱詰めされる。
「俺はいやだぞ。これを食うのは‥‥」
料亭用、お持ち返り用、食用の3匹の確保が終わると戦闘は鰹ギルマンを退治する方向に向かった。
「えっと‥‥『練成強化』をします。皆さんこんな気持ち悪いは早く退治してしまいましょう」
雫が曽谷、鈴原に練成強化をかけ出す。
「山戸、久し振りに勝負をしないか? これからどちらがより多くのギルマンを捌くかだ」
戦闘に積極的にでず、鰹ギルマンを捌いていた沖那を見た玖堂が声をかける。
玖堂は沖那が出雲にいたときからの知り合いであり、沖那が過去覚醒症状で性格が変異したため一般人を過って殺してしまった事も知っている一人だ。
「お、おう‥‥覚醒‥‥」
明らかに声が震えながら沖那は一呼吸をおいて力を込める。
一瞬だけ沖那の足元から風が巻き上がり手に持った夕凪が淡く光った。
「それが‥‥おまえの本当の‥‥力ってか?」
今まで見たことのない沖那の覚醒症状に気をつけつつ、玖堂はフランベルジュでギルマンの頭を潰す。
「今の力かな‥‥本当かどうかはまだわからない」
沖那も夕凪を振るい『ソニックブーム』で鰹ギルマンを捌いた。
鰹ギルマンたちも減ってくるが、川の石を持ち上げて投げたり体当たりしてきたりと手足を上手く使った攻撃をしてくる。
『ネメネメネメネメー!』
「やる気になったか‥‥だが、甘い。アサシンスキル‥‥シャドーエッジ」
体当たりなどをロエティシアで受け流し、側面のエラへ『流し斬り』を当てて鈴原は攻撃をした。
本来急所を狙うのは別のスキルであるため、応用技である。
「手足が面倒だ! 邪魔をするな!」
呉葉のヴィアが『布斬逆刃』で光を帯び、焼ききるようにギルマンの手足を裂いた。
「川が真っ赤になってきやがったです‥‥」
シーヴがボソリと逃走路を塞ぎ、並み居るギルマンを大剣の平で力任せに弾く。
その足元は数々のギルマンの死体により赤く染まりところどころで内臓が泳いでいた。
「逃げようたってそうはいきまへん。料亭の修理費は払えへんのやさかい、その身で落とし前つけてもらわへんとな」
狙撃眼を使い逃げようとするギルマンを逃さず曽谷は射抜いていく。
「これでラスト! 運が良ければ、食ってやるよ」
竜骨が最後の鰹ギルマンを貫き、20匹はいた鰹ギルマンはすべて倒れた。
「引き分け‥‥のようだな」
5匹分の倒したギルマンのヒレを持ち玖堂は沖那を見る。
「俺だって‥‥やるだろ?」
沖那の手にも5匹分のヒレがあった。
「みなさん‥‥あの、この‥‥死体はどうしましょう‥‥」
「タタキというより、ネギトロ状態ですね」
惨状を目の前に呟く雫に覚醒をといた鈴原がため息をついて答える。
水面に浮かんでいるのは文字通り死んだ目をした魚であるギルマンだ。
手足をもがれたものなどが17匹が川に浮かび、流れずにいる。
「細かくくだいて流すでやがるですか?」
「そうだね。鰹のタタキだから、叩けばいいんだよ!」
大剣を片手に驚きの解決策を出すシーヴに呉葉がヴィアを大きく振りかぶる。
「あ、あのね‥‥呉葉さん。タタキはそういう料理じゃなくて‥‥」
戦闘で傷ついた仲間を治療しながらも雫は呉葉にタタキという料理について説明をしだす。
結局、食べないギルマンは生ゴミとして丁重に処理された。
●鰹美味 ああ鰹美味 鰹美味
「意外といけますね」
「あ、あんな気味の悪い見かけのくせに‥‥お、美味しいです‥‥っ」
磨理那の屋敷に戻り、鰹料理の宴が始まる。
タタキや山かけ丼などが並び一斉に食べていた。
グロテスクな外見とは裏腹に鰹ギルマンは美味い。
「川を上ってくるだけの運動してはることやし、身が締まってはるな」
曽谷も手足が生えていたことなどを右から左へ受け流してタタキを食べていた。
「これがタタキなんだ‥‥なんでタタキっていうの?」
呉葉は珍しい料理を興味深々に眺める。
「諸説色々あるのじゃが、指で薬味を叩き込むというのが多いかもしれぬの。鰹は傷みやすいから薬味を刷り込み、さらにあぶって表面を焼いたものをタタキと呼ぶのじゃ」
磨理那がもぐもぐと笑顔で鰹のタタキを食べつつ呉葉の疑問に答えた。
そうしていると、玖堂が料理を皿に盛ってやってくる。
「折角だからな‥‥俺も作らせて貰った、ぜ‥‥‥」
「ほほーこれは何じゃ?」
『これはカルパッチョっていうんだよ』
「癸は物知りなの」
洋風料理は初めてなのか、興味を惹かれる磨理那に癸を腹話術で喋らせて乙が説明をした。
「一仕事終えた後の食事は格別だぜ! お替り!」
「10杯目だぞ。能力者って良く食うんだな‥‥」
「沖那もシーヴも能力者でありやがるですが、それぞれです」
山かけ丼をお代わりする竜骨を眺め唖然としている沖那にシーヴが近づき声をかける。
「それぞれか‥‥」
シーヴの言葉に思うことがあるのか、沖那は俯いて箸をとめた。
「大兄様が『友人』に宜しくと言いやがってた、です。‥‥シーヴも戦うの怖いですが、支えてくれる人がいりゃ、きっと大丈夫」
無表情ではあるが、シーヴの瞳には強い力が宿っている。
信じるという思いだ。
「そうだよな‥‥二度とああいう事にならないよう、逃げちゃいけないんだよな。そこのお嬢様の我侭を聞く奴がいないといけないし、いつまでも先輩達の厄介になるわけにもな‥‥」
沖那は自分に言い聞かせるように呟いたあと、シーヴの目を見てしっかりと答えた。
最後の方は照れくさいのか小声になり、山かけ丼をかこんで沖那は誤魔化す。
「おお、そうじゃ。雫、乙、呉葉よ。妾の前に来るのじゃ」
宴も終わりになった頃、磨理那が3人を呼び出した。
「そなた等に京の平和を守った称号を授けるのじゃ。呉葉には『一撃必殺の乙女』、菱美 雫には『戦場の癒し手』、乙には『ちゃれんじゃー』を授けるのじゃ。名に負けぬよう精進せよ」
磨理那が立ち上がり、三人へ扇子でビシビシと指しながら称号を授与する。
三人は一礼をして、称号を受け取った。
「お嬢様よ。俺には何かないのか? いろいろやってるからくれてもいいだろ?」
その光景を羨ましく思ったのか沖那が磨理那にねだるように声をかける。
「そなたはまだまだじゃ、謙虚なき姿勢を見せよ!」
「そ、そんなぁ‥‥」
「くくっ、ここだけ、は俺の勝ち、‥‥のようだな」
がっくりする沖那を玖堂は笑いながら眺めていた。