タイトル:人食いのジャングルの謎マスター:緑野まりも

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2008/03/23 04:37

●オープニング本文


 南米ジャングル。ここでは、バグアとUPCが日々小競り合いを続けている。UPCはほとんど補給が受けられない状態ながら、ゲリラ的戦法で抵抗を続け。バグアはバグアで、大きな戦力を動員するわけでもなく、キメラなどを用いて消極的に人類へと攻撃を行なっている。おかげでこの地域は泥沼のような膠着状態になっており、どこが人類が優勢で、どこがバグアが優勢なのかもわからない状況であった。
「二人とも警戒を怠るな! いつどこから敵が攻めてくるかわからないぞ」
 三人のUPCの兵士がジャングルを進む。彼らの任務は斥候。地形の把握、敵の位置などを探り、少しでも有利に戦うためのものである。しかし、見通しの悪いジャングルの中では、いつどこから襲われるかもわからない。彼らにとって、これは決死の覚悟が必要なほど危険な任務であった。
「くそ、嫌な感じだ。誰かに見られてるような‥‥」
「落ち着け、あまり意識しすぎると、逆に周りが見えなくなるぞ」
 隊長を先頭に、部下の兵士が二人、周囲を警戒しながら後ろを付いていく。兵士達は、生い茂った草木の影に何かが居るのではないかと緊張しながら、ゆっくりと進んでいく。熱帯特有の蒸し蒸しした感じ、草木に遮られ光の届かない薄暗い森、絶えず警戒しいつ襲われるかもわからない緊張、全てが兵士達から精神力を奪っていく。
「はぁはぁはぁ‥‥」
 ジャングルの中は静かで、聞こえてくるのは自分達の息遣いと、草木を分け入る音だけ。否が応でも緊張は高まっていく。
「まて‥‥なんだこの違和感は‥‥」
 隊長がふと何かに気づいたように眉を顰めて、周囲を見渡す。しかし、何も見つけることは出来ない。敵どころか、鳥も獣も‥‥その鳴き声さえ。
「静か過ぎる‥‥。いくらなんでも、動物の鳴き声さえ聞こえないはずが‥‥」
 普段のジャングルならば、静かと言っても動物の鳴き声はひっきりなしに響き渡っているはずだ。だが、いまはその声さえ聞こえない。
「おい、そういえば、最近ジャングルに斥候に出た部隊が戻らないことが多いらしいぞ」
「ああ、俺も聞いた。なんでもある地域へと向かった部隊の消息が途絶えるとか‥‥」
「それって、この辺りじゃないのか?」
 後ろの兵士達がざわめき始める。たしかに最近、兵士の失踪が相次いでいる。その理由はわからず、おそらくバグアのキメラに襲われたのだと思われているが。また兵士が失踪する場所は大体決まっており、その場所がいま彼らがいる辺りだというのだ。
「隊長、引き返しませんか。何か危険な雰囲気が‥‥」
「バカを言うな。我々はまだ何も見つけてはいない。雰囲気がおかしいから帰りましたでは、報告にならんぞ。せめて、キメラの一匹でも確認せねば‥‥」
 兵士の意見に、渋い顔をしながら隊長が首を横に振る。たしかに、なにかおかしいのだが、それが何故おかしいのかわからない。彼らの視界には、いまだなにもおかしな存在は映らないのだ。‥‥しかし、危険はすぐそばまで迫っていた。
「うう‥‥いったいなにがいるって‥‥ひっ!?」
「おい、どうし、っ!?」
 兵士の短い悲鳴に、仲間が確認しようとするが、その兵士も最後まで言葉を吐くことができない。それは突然だった、なにか紐のようなものが首に巻きつくと、強い力でそのまま締め付ける。しかも、紐は手足にも巻きつき、身体を拘束して身動きが取れなくなる。そして兵士達は首を絞められたまま窒息してしまう。
「なっ! バカな、何もいないはずだぞ! 一体どこから!?」
 辛うじて、襲われずにすんでいた隊長が、兵士達の哀れな様子に驚きと恐怖の声を出す。周囲には敵らしい姿はない。あるのは、兵士達がつるし上げられた木々だけ‥‥。
「どこだ! どこにいる! うああぁぁぁ! ひぁっ!?」
 恐慌状態となり、銃を乱射する隊長。しかし抵抗虚しく、どこからか巻きついた紐のようなものに絡め取られ、抵抗する力を失った彼は、やがてダラリと手足を伸ばし、持っていた銃を落とすのだった‥‥。

「最近、ジャングルで兵士の失踪が相次いでいます。皆さんには、その調査を行なってもらいます」
 後日、ジャングルでの原因不明の兵士失踪を重く見たUPCは、ULTに傭兵の応援の依頼を出すこととなった。エミタ能力者に、失踪の調査を行なってもらい、その対策を立てるためである。
「失踪は、ほぼ一定の地域で起きています。UPCも何度か調査の部隊を送りましたが、原因はわからず、被害が増える一方です。敵勢力の姿は発見できず、まるで森に食われているような‥‥。同地域への侵攻諦めることも考えていますが、原因がわからなければ、他の地域でも同様のことが起きる可能性があります。皆さんには、その原因の調査を行なって欲しいのです。敵の罠ならば、その罠の内容を。キメラならば、どのようなキメラなのかを調査してください。ただし、目的はあくまで調査、原因がわかり次第、無用な交戦は避け帰還するようにお願いします」
 依頼を受けたあなた達は、ジャングルの地に降り立ち。深い森の中、未知なる敵の調査を行なうこととなった。

・依頼内容
 ジャングルのある地域で起きている兵士の失踪を調査せよ
・概要
 ジャングルの一定地域で、兵士の失踪が相次いでいる。その原因を調査し、無事に帰還して報告すること。
 バグアのキメラか罠によるものと思われるが、同地域でのキメラの姿は発見できず。
 今回はあくまで調査であり、原因を究明することが最優先で、その対策や駆除は別件となる。原因がわかり次第、速やかに帰還、報告すること。
 原因調査に必要な最低限の支援はUPCから行なわれる。ただし、調査に特に必要で無い物、高額な物、武器類の貸与は行なわれない。

●参加者一覧

アグレアーブル(ga0095
21歳・♀・PN
メアリー・エッセンバル(ga0194
28歳・♀・GP
月宮 瑠希(ga3573
17歳・♂・FT
朏 弁天丸(ga5505
18歳・♀・EL
古河 甚五郎(ga6412
27歳・♂・BM
比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
ツァディ・クラモト(ga6649
26歳・♂・JG
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG

●リプレイ本文

 南米ジャングル。UPC部隊の失踪が相次ぎ、その原因の調査を依頼された一行は、二つの班に分かれてジャングルの奥地へと進んでいた。
「暑い‥‥ジャングルってなんでこんなに暑いんですかね」
 つい最近もジャングルに訪れていた周防 誠(ga7131)は、うんざりした様子で呟く。熱帯雨林特有の蒸し暑さ、木々に光を遮られた薄暗さに、慣れない者は余計に不快感を感じてしまう。
「そうですね。はい、お水です‥‥水分補給はしっかりしないと」
「すいませんね。それにしても、こんなに広くてごちゃごちゃしてる場所で、失踪の原因を探すのは骨だね」
 ペアを組んだ月宮 瑠希(ga3573)から水筒を受け取り、軽く喉を潤して、誠は改めて周囲のジャングルを見渡す。木々が生い茂り、これといった道も無く、草木が視線を遮り見通しも悪い。いつどこから敵に襲われるともわからず、また一歩間違えば遭難しかねない様子に、誠は小さくため息をついた。
「ジャングルでは、入ってくる情報が多すぎる。音も、光も、物も、匂いも、気配ですら。だから、其処に何かが紛れ込むのは難しくない。まるで、部屋の中で、物を失くした時のよう」
「そいつは凄いですね。どんだけ散らかってるんだか」
「す、周防さん、女性の方にそれは失礼ですよ。す、姿が見えない敵なんて、映画に出てくる敵みたいですね♪」
「そうですね、よく部屋で物が無くなります。でも大抵そういうときは、目の前にあるのに、見過ごしてしまっているのです。少し余裕を持って、広い視点で探せば見つける事ができるかもしれません」
 ジャングルの様子を自分の部屋に例えるアグレアーブル(ga0095)に、誠が呆れたような言葉を口にする。瑠希が慌ててフォローを入れるが、アグレアーブルはあまり気にした様子ではなかった。
「それにしても、入った者が死体も残さず消えるなんて、まるで人食いジャングルだねぇ。バグアも芸が細かいと言うか何と言うか」
 誠達のA班と付かず離れずの位置で探索を続けるB班。ツァディ・クラモト(ga6649)が覇気のない様子で呟く。普段からこんな調子なので、特にやる気がないわけではないのだろう。
「いっそのこと、フレア弾で焼き払った方が‥‥」
「冗談じゃない! 熱帯多雨林、いわゆる熱帯雨林は一度破壊すれば、元には戻らないの! しかも、熱帯雨林は地球の酸素の多くを生産している場所なんだから、失えば大変なことになるのよ。わかる!」
「え、ああ、すいません‥‥」
 ツァディの言葉に、メアリー・エッセンバル(ga0194)が少し怒ったように説明する。彼女は、植物博士と呼ばれるほど草木の知識に富んでおり、また愛していた。メアリーの剣幕に押されて、ツァディは頭を下げた。
「それにしても、ジャングルは初めてだけど、珍しい自生植物が多くて楽しいわね」
「そうですか。でも、気がついたら後ろの誰かが居なくなった‥‥、なんてベタな展開は勘弁です。ってイズミンどうしたの?」
 興味深そうに、周囲の草木を観察するメアリーを横目に、ツァディは相方の比良坂 和泉(ga6549)に声をかける。
「え? あ、俺ですか?」
「そ、和泉だから、イズミン。なんかソワソワして、メアリーから視線を外してるようだけど?」
「い、いえ‥‥。実は俺、女性に慣れてなくて‥‥」
「ああ、そういえばここに来るまでも、なんか落ち着かない様子だったしね」
「は、はい‥‥」
 ツァディの言葉に少し慌てた和泉は、恥ずかしそうに女性恐怖症について答える。それを聞いて、ツァディは納得したように頷いた。
「メアリー、化粧っ気は無いけど、美人ですもんね。そういえばメアリー、ここに来る前に会ってた人はなんなの?」
 ツァディは思い出したように、来る途中メアリーに声をかけていた北柴のことを聞いた。
「彼? 知り合いよ、準備を色々手伝ってもらったの」
「それだけ? 指輪預かってましたよね?」
「能力向上のためのアームリングを借りただけよ。帰ったらちゃんと返します」
「さいでございますか。てっきり、彼氏かと思ったのに」
「それはないわよ、知識人として尊敬はしてるけど。それに、ちゃんと他に好きな人はいるわ」
「それはそれは‥‥」
 メアリーのあっさりした返事に、少し残念そうに肩を竦めるツァディ。横で話を聞いていた和泉は、困ったように周囲を見回しているのだった。
「そろそろ部隊が失踪した地域に入りますよ。皆さん注意してください」
 地図と方位磁石を確認していた古河 甚五郎(ga6412)が全員に注意を促す。
「失踪の原因である罠、ないしキメラを見つけたら。この発信機を取り付けます。そして、取れないように補強します、もちろんこれで!」
 UPCに申請して預かった発信機を取り出した甚五郎。そして続けて出したのは、粘着テープ、いわゆるガムテープである。甚五郎はガムテープをいくつにも切り分けると、自分やメアリーの服に貼り付けた。
「ああ、そんなベタベタと」
「大丈夫、跡は残りませんから。きっちりガムテで補強すれば、そう簡単には剥がれることはないですよ」
 妙にガムテープに対し自信満々の甚五郎に、仲間達はちょっと呆れるのであった。

「空気が変わった‥‥」
 目的の地域についた後、もっとも早く異変に気づいたのはアグレアーブルだった。彼女の直感が、よくはわからないが、今までと何か違うと知らせていた。アグレアーブルはすぐに能力を覚醒し、短く切りそろえられていた赤い髪が長く伸びていく。
「敵ですか?」
「わからない‥‥でも、鳥や虫の鳴き声が聞こえない」
「まいったね、言われるまで気づかなかったよ」
 瑠希の問いかけに、小さく首を横に振るアグレアーブル。だが、彼女の言うように、いつのまにか周囲には生き物の気配が感じられなかった。誠もそのことに気づき、神経を研ぎ澄ます。この辺りには、動物達が恐れて近づかない何かがあるというのか。
「とにかく‥‥警戒していきましょう」
 近くに居るB班も、どうやら周囲の異変に気づき、警戒を強めたようだ。三人は覚醒しながら、周囲を警戒して進んでいった。そしてそれから少しして、それは突然襲い掛かった。
「!!」
 先頭を歩いていたアグレアーブル、その足元から蔦のようなものが、触手のように動き絡み付いてきた。草木に紛れていたために、一瞬対応が遅れ、身体を拘束されるアグレアーブル。瞬天速で離れようとしても、絡みついた蔦が邪魔で身動きが取れない。
「いけない‥‥助けないと。死蝶に魅入られて‥‥逝け」
 瑠希は刀に手を掛けると、素早い抜刀で蔦を切り裂き、覚醒し現れた金色のオーラが、蝶の形となって残像のように舞う。そしてアグレアーブルの身が自由になる。
「いったいどこから‥‥、こう木だらけじゃ、特定が難しいね」
 誠は、発信機付きの矢を弓につがえながら、蔦の出所を確認するが、周囲には同じような木ばかりで、判別が付かない。
「だったら‥‥!」
 再び襲い掛かってくる蔦、それをアグレアーブルは避けるどころか、逆に自分の腕を差し出して絡ませる。そしてそれを思い切り引っ張った。蔦はピンと伸びて、その先にあるものを明確にさせる。
「そこか‥‥当てる!」
 蔦の先に照準を合わせると、誠は矢を放った。落ち着いた誠の矢はまっすぐに目標目掛けて飛び、一本の木に突き刺さる。
「夢霧幻流‥‥霞!」
 続けて、瑠希が二刀の刀による抜刀術を繰り出し、木に深い傷を与える。しかし‥‥。
「再生!?」
 木に付けられた傷は、見る見るうちに治っていき、再び蔦による攻撃が繰り出されてくるのだった。

「A班の様子が!」
 蔦に襲われたアグレアーブルに気づいた和泉達は、急いでA班のもとに向かおうとしたが。
「メアリーさんあぶない!」
「ぐっ!?」
 甚五郎の声も間に合わず。突然木の上から襲い掛かってきた蔦に、メアリーが絡め取られる。そしてそのまま、首を強い力で締め付けられた。慌てて引き剥がそうとするメアリーだが、首だけでなく両腕も拘束され、簡単にはいかない。
「はっ! 大丈夫ですか?」
「ゴホゴホッ! はい‥‥大丈夫です」
 甚五郎が鋭い爪で蔦を切り裂き、解放されたメアリーが酸素を吸い込んで咳き込む。再び繰り出される蔦の攻撃を避けながら、二人は攻撃の主を見極めようとした。
「‥‥あの木! 他の木と比べて、不自然な成長をしている!」
 そして、メアリーの植物博士としての勘が、一本の木の不自然さに気づく。一見すればただの木、だが庭師の経験がそれに気づかせた。
「ダメージを与えてみればわかりますよねっと!」
 メアリーの指示に、ツァディが銃でその木を狙い打つ。すると、銃弾を受けた傷が、みるみると治っていった。
「通常の植物にはありえない、急激な再生! やはり間違いない、あれはキメラよ!」
「どうやら今回の部隊失踪。こいつらの仕業のようですね。よし、それじゃ発信機をつけるから、蔦の相手をよろしく頼みますよ」
「わかりました!」
 その様子に、メアリーが断言する。それを聞いて、甚五郎が取り出した発信機に接着剤を付け始めた。その間、和泉が刀を構えて蔦の相手をする。
「準備OK! 瞬速縮地!」
 接着剤を付け終えた甚五郎は、目にも留まらぬ速さでキメラ樹に接近すると、発信機を取り付ける。そして、これまた早業でガムテープでがっちりと×字に補強した。
「これも一緒に食らいなさい!」
 ついでに、メアリーはキメラ樹の根元をナイフで切り裂くと、そこに蛍光塗料をぶちまける。水分と共に吸収させ、あとでわかるように色を付けさせる狙いだった。そうして、目標をマーキングすると、素早くその場を退く。すぐに蔦が追いかけてくるが、間合いを取ると届かない様子であった。
「A班の様子は?」
 安全を確認した後、アグレアーブル達の心配をするメアリー達。だが、A班も窮地を切り抜けて、安全圏まで間合いを取ったようであった。
「自分達の目的は、退治ではなく調査です。早々にこの情報を持って帰還しましょう」
 ツァディの意見に全員が頷き、撤退を始めようとする。
「待って! なにか様子が変だわ!」
 しんがりを務めていたメアリーが、キメラ樹の異変に気づく。突然キメラ樹が身を震わせたかと思うと、メアリー達の足元に弾丸のような何かを放ってきた。
「これは‥‥種子!? まずい、蔓系植物は‥‥一度繁殖されると面倒なのよねっ!」
 しかし、それは弾丸による直接な攻撃ではなかった。それは植物の種子だったのだ。いち早くそれに気づいたメアリーであったが、種子の成長は早く、一瞬のうちに小型の蔦を伸ばしてくる。
「危ない!」
 蔦に襲われるメアリーに、和泉が素早く飛び出してくる。刀で蔦を切り払い、メアリーを庇うが、その蔦もすぐに再生し、今度は和泉に襲い掛かってはその身を拘束する。
「ぬぅぁああああ!」
 だが、和泉は豪力発現を使い、一時的に筋力を高めると、無理やり蔦を引き剥がした。
「再生とか面倒なやつですね!」
 ツァディの銃のSESが活性化され、弾丸が強く撃ちだされる。それは、蔦の根元に当たり、一瞬蔦を怯ませる。その隙に、メアリー達はその場を退却するのだった。

 その後、帰還したメアリー達によって、植物型キメラの存在が報告される。草木の姿で、周囲の森に紛れ込み、近づいてきた獲物を捕食する。失踪した部隊も、このキメラ樹に捕食されたと思われる。そして、キメラ樹は再生能力を持ち、種子によってその数を増やすようであった。
「あなた達の想いは‥‥僕達が背負いますから‥‥安らかに眠ってください」
 報告後、瑠希は志半ばに消えていった兵士達を思い、祈りを捧げる。だがしかし、やつらを完全に駆逐しなければ、今後も犠牲者は出るであろう。
「結局、目印になる発信機も、焼け石に水ということですか。このジャングルに、どれほどのキメラ樹が放たれているのかわかりませんからね‥‥」
 甚五郎が苦々しげに呟き、一行は再びキメラ樹と対するであろうと予感していた。