●リプレイ本文
「やっぱり、ジャングルはいいわね」
依頼を受け、南米ジャングルへと向かった一行。カノンタートルの迎撃に、村からジャングルへと入ると、ロッテ・ヴァステル(
ga0066)が何気なく呟いた。
「その言葉には、賛同できないね〜」
しかし、ロッテの言葉にドクター・ウェスト(
ga0241)が首を横に振る。彼も、何度もジャングルへと入っていたが、そのたびに重い超機械が足かせとなって、蒸し暑く足場も悪いジャングルで苦しんでいた。
「でも、これだけは置いていくわけには行かないね〜」
それでも、超機械を手放すことはできない。サイエンティストとして、無くてはならない装備だからだ。
「しかし‥‥着物を着てジャングルに入るのも慣れてきましたね‥‥」
「もっと動きやすい服にすればいいんじゃないですか?」
「いえ、私にとってこれが一番動きやすいのです」
「はぁ‥‥」
着物姿でジャングルを進む鳴神 伊織(
ga0421)に、クリストフ・ミュンツァ(
ga2636)が不思議そうに言うが、伊織は気にした様子も無く答えた。
「クリストフ様、どんな服装でも、着慣れれば思うように動けるものでおざりますよ」
「そうなんでしょうね」
ヴァルター・ネヴァン(
ga2634)の言葉に、クリストフは納得した様子で頷いた。
「それにしても、今度のキメラはタートルワームを縮小したようなヤツラだよね。まあ、砲撃戦能力を持ってるだけで自爆装置を持たない辺り、まだ救いが有るけどね」
「でも亀型‥‥何で亀型なのでしょう‥‥しかもバージョンアップて‥‥」
事前に漸王零が纏めてきた資料を見て、MAKOTO(
ga4693)が少し考えるように呟く。それにナオ・タカナシ(
ga6440)が不思議そうに首を傾げた。
「亀‥‥可愛いよね‥‥」
「か、可愛いですか?」
「あはは、相変わらずきみは面白い趣味してるよね」
そんな中、アグレアーブル(
ga0095)が呟く言葉に、ナオは苦笑し、MAKOTOは可笑しそう笑う。アグレアーブルの興味は常人とは少しずれてる気がする。
「みんなそろそろ注意して。作戦を開始するわよ」
その後、キメラとの遭遇ルートに近づいた一行は、ロッテの指示で3班に分かれキメラの捜索を開始した。そして、ほどなくして密林を並んで進むタートル達を発見する。
「守りを固めて遠距離から、か‥‥姑息ね」
木々に隠れながら、タートル達を観察する一行。ロッテは珍しく怒気の孕んだ声で呟いた。どうやら、自然に紛れ利用するキメラの姿が気に入らないようだ。
「丸いフォルム。太い脚の曲がり具合も、とてもcute。キメラなのが残念、です」
逆にアグレアーブルは、そのタートルの姿を興味深そうに眺めている。ゆっくりと進むその様子まで、彼女のツボのようであった。
「ふむ、見た目はアイアンタートルとあまり変わらんな〜。むしろ、同じと思わせておいて油断させる作戦かね〜」
ウェストは、以前に戦ったタートルと比較して観察する。姿形にあまり変化はなく、一見すると以前との違いはわからない。
「あ、皆さん、水をどうぞ。それにしても砲撃の射出口はどこでしょう? それらしいところは見当たりませんね」
ナオは持ってきたミネラルウォーターを仲間達に回す。おかげで、ここまで移動してきた疲労が少し抑えられた。そして、水弾を放つというタートルに、なにか砲台のような射出口が無いかと観察したが、それらしいものは見当たらない。
「単純に口からかもしれないですね。どっかの怪獣みたいに」
「そうね‥‥ともかく、始めましょうか。やつらを、これ以上人里に近づけないほうがいいでしょう」
クリストフの意見に頷きつつ、ロッテが作戦開始の合図を出す。一行は、再び三班に分かれ、タートルの迎撃作戦を開始するのだった。
「さぁ、当ててみなさい‥‥こっちよ!」
ロッテは軽いフットワークで、タートルを挑発するように目の前で動く。それに対し、タートル達は首を左右に振りロッテに狙いを定めると、水弾を吐き出した。拳大の水の塊がロッテに向かって飛ぶ。それを、ロッテは素早い動きで紙一重に避けた。
「っ! かなりの威力ね」
目標を失った水弾は近くの木に当たり、その木をへし折る。当たれば、ただではすまないだろう。ロッテは、足元をすくわれないように注意しながら、自然を上手く使って攻撃を回避しつづける。
「隙有り! はぁっ!」
ロッテが注意を引いているうちに、伊織が一気に近づき、刀を振るう。力強く、また洗練された剣技が、タートルの長く伸びた首を切り裂く。しかし、さすがにタートルの皮膚は硬く、一度で断ち切ることはできない。
「相変わらず硬いですね‥‥ですが、弱所も変わらない筈」
その硬さに、眉を顰める伊織だが、追撃とばかりにナイフをタートルの目に突き刺した。さすがのタートルも、それは効いたらしく、悲鳴のような声をあげて暴れる。その攻撃を、軽く避けて、伊織は間合いを取った。
「動きは遅い‥‥でも、狙いは正確‥‥素早く動きかく乱するのが有効‥‥」
アグレアーブルは、脚力を強化し、タートルの攻撃を回避しながら観察する。淡々とした口調で、分かったことを報告しながら、攻撃のチャンスを伺う。
「こういった戦いは、あまり私のスタイルではないのでおざりますが」
ヴァルターは後方に攻撃が行かないように、あえて狙われやすいように動く。放たれた水弾を盾で受け流しながら、じりじりと近づいていく。時折、アグレアーブルが影に隠れて盾代わりにするが、それも作戦のうちだった。
「水場のキメラならば、雷が苦手なはず‥‥」
隙をついて、アグレアーブルが接近する。その手には、雷を纏ったナイフを握っており、それをタートルの首に突き入れた。
「やっぱり、雷が効いた」
刃は硬い皮膚をほとんど傷つけられなかったが、その雷撃を受けたタートルは苦しそうに身体を振るわせる。どうやら、雷撃が苦手のようであった。
「雷撃に弱いのでおざるか。ならば、チャンスでおざりますな」
その様子を見逃さなかったヴァルターも、雷を纏った長剣を振り上げると、豪破斬撃で赤く光るそれでタートルの首を切りつける。威力の乗った攻撃は、皮膚を切り裂き、身体の内部から雷撃で痺れさせた。痛みで暴れるタートルは、尻尾を振るいヴァルターに叩き付けるが、それをがっちりと盾でガードした。
「このチャンス、逃しませぬ」
そしてそのまま、ヴァルターは再びタートルの首を切りつける。今度は、紅蓮衝撃により全身を赤く燃え上がらせ、渾身の一撃を放った。それにはさすがのタートルも耐え切れないようで、がっくりと首を落とし絶命した。
「ふむ、なるほど、思ったほど射程は長くないようだねぇ。威力も‥‥耐えられるかもね〜」
タートルの動きを観察するウェスト。発射口、攻撃の射程、威力などを確認し、タートルの性能を見極める。もちろん、自分から当たりにいって確かめるようなことはさすがにしないようだ。
「この距離なら、ぎりぎり攻撃の当たらない所から弱体を掛けられそうだね」
目測を誤らないように注意しながら、ウェストはタートルに近づき、練成弱体をかける。エネルギーガンから謎のエネルギーが照射され、タートル達の身体を柔らかくしたようだ。
「けひゃひゃ、我が輩の眼鏡にはまだまだ可能性がある〜!」
何を言っているのかと思うが、ウェストの眼鏡は改造につぐ改造で、もうすでに何かよくわからないくらい効果があるようだ。通販で宣伝している開運ネックレスのようなものだろうか。
「ドクターの弱体もかかったみたいだし、僕でもダメージが与えられるかな!」
タートルが弱まったのを狙って、クリストフがライフルを放った。強弾撃で活性化されたSESが、雷の弾丸を吐き出し、タートルを傷つけていく。そして反撃の水弾は、木々などを盾にして回避する。ちゃっかりヴァルターの影に隠れたりしているあたり、計算高い。
「ドクターの作戦も成功したみたいだし、私もお仕事しようかなっと!」
ウェストの護衛をしていたMAKOTOが、チャンスを狙ってタートルへと接近する。そして、雷が宿った槍を振るってタートル達の注意を惹いた。
「ナオ君、いまだよ!」
「はいっ!!」
そこへ、MAKOTOの指示に、ナオが弾丸を放つ。それはただの弾丸ではなく、貫通力を高めた特殊弾丸。しかも、雷撃を纏っており、硬い皮膚を突き抜けたそれは、タートルを苦しめる。
「よし! これで〜! 吹っ飛べ!!」
その苦しみで動きが止まったタートルに、MAKOTOは跳躍して一気に接近、渾身の力で槍を突き通す。その衝撃に、重いはずのタートルが勢いよく吹き飛び、近くの別のタートルに衝突した。甲羅同士のぶつかる凄い音が、ジャングルに響く。
「ほ、本当に吹き飛びましたよ‥‥」
その様子に、ナオは目を丸くした。事前に説明されていたが、実際にタートルが吹き飛ぶ様子を見れば、驚くしかない。思わず覚醒が解けてしまったようだ。ナオは慌てて覚醒しなおすと、衝突したタートル達に射撃を繰り出すのだった。
「どうしたの? そんな動きじゃ、私は捉えられないわよ!」
覚醒し、少しサドッ気が出ているロッテが、タートルを翻弄しながら蹴り穿つ。靴には、SES搭載の爪が装着されており、素早い動きと共に、蹴りを繰り出す。
「っ!?」
しかし、ロッテはちょっとしたミスを犯してしまう。注意していた足場であったのに、一瞬足を取られて態勢を崩してしまった。そこへ、間髪いれず水弾が放たれる。
「くっ!」
何とか避けようとするロッテだが、避けきれずにその攻撃を身体で受けてしまう。一瞬、ダメージに耐えるように顔を強張らせるロッテ。
「‥‥ふぅ、下着に耐性を付けておいてよかったわ」
だが、意外にもダメージは少なかった。というのも、彼女の下着は雷属性を持っており、水の攻撃に耐性があったのだ。ちなみに、色気の無いボクサーパンツである。
「‥‥‥」
「大丈夫ですか、どうかなさいました?」
「いえなんでも、なんとなく嫌な気配を感じただけ」
押し黙るロッテに、伊織が心配して声をかけた。それに、ロッテは首を横の振って答える。余計なことは言わない方が身のためのようだ。
「そろそろ終わりにするわ。堕ちろ、夢無き眠りへと‥‥ラ・ソメイユ・ペジーブル」
「ええ、終わりにしましょう‥‥この一刀で断たせて頂きます」
そう言い放ったロッテと伊織。ロッテは、跳躍すると身体を一回転し、そのままの勢いで強烈な踵落としをタートルの脳天に叩き落し。伊織は、全身に紅蓮衝撃のオーラを纏い、全力を込めた一刀がタートルの首を切断した。そして二体のタートルが、音を立てて地に伏す。
「あまりしつこいと嫌われますよ」
「そろそろ錬力も少なくなってきました、一気に片付けましょう」
残す一匹も、すでに後方からの雷撃射撃でフラフラになっていた。クリストフとナオが、強弾撃で一気に方をつける。
「もういっちょ、吹き飛べ!」
そして最後に、止めとばかりにMAKOTOがタートルを吹き飛ばした。すでに力尽きていたタートルは、ひっくり返って動きを止める。そして、ようやく戦いは終了した。
「作戦終了、皆お疲れ様‥‥」
「はぁ、疲れました」
ロッテの作戦終了の言葉に、ナオが肩を落としてため息をついた。タートルの硬さに戦いは長引き、スキルも使ったので錬力を相当使ったのだ。他の者達も、一様に疲れた様子を見せる。
「や、やっと、我が輩も終わったのだ〜」
ウェストにいたっては、戦闘後に全員の傷の治療も行なった。まぁ、眼鏡パワーのおかげで結構錬力も余っていたようだが。
「甲羅、部屋のインテリアにしたい、です」
「がんばれば持って帰れないこともないけど、できれば勘弁してほしいなぁ」
アグレアーブルが、物欲しそうに亀の甲羅を見ている。表情は変わらないが、たぶんかなり欲しそうだったが、MAKOTOも疲れていたのでさすがに重い甲羅を持ち帰る気にはなれなかったようだ。
「さ〜て、楽しい楽しい解剖調査だよ〜」
少し休んで、ウェストがタートルの死体を調べ始める。思ったよりも元気だ。といっても、たいした機材もないので簡単なことしかわからない。
「ふむぅ、弾丸を吐き出す仕組みはわからないが、アイアンタートルを改造した感じがするねぇ。意図的な改良ということだろうか?」
「更に強化された亀が出て来たりするのでしょうか‥‥出来れば、御免被りたいものですが‥‥」
「可能性は否定できないね! まぁ、詳しい調査は、UPCにでも任せるしかないかぁ」
ウェストの言葉に、伊織が肩を竦めてため息をつく。逆にウェストは、どことなく楽しそうな声で頷いた。そしてその後はUPCに任せ、一行は依頼を完了し帰るのだった。
ちなみに、キメラからエミタが回収されることは無かったらしい。
「そ、そうなのか〜〜!!」
それを聞いたウェストが、白い何かを吐き出して放心したのは後日の話である。