タイトル:部隊失踪の謎を調査せよマスター:緑野まりも

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/11/23 22:52

●オープニング本文


「昨日から、第8部隊の定時連絡が途切れ、こちらからの通信にも応答もありません」
「ええい、またか! これで、何部隊目だ! いったい、この地域で何が起っているのだね!」
 もたらされる報告に、UPC南中央軍の部隊指揮官はいらただしげにテーブルを叩いた。報告をした参謀の一人は、困ったように首をかしげるも、問いに答えることはできない。
「おそらくバグアによる攻撃を受けたと考えるのが妥当ですが、この地域へと派遣した部隊からは、そういった報告はなく。突然と部隊が消えてしまうとしか‥‥」
「バグアにやられたのならともかく、原因不明の失踪では話にならんぞ。なんとしてでも原因を突き止めねばならない。だが、これ以上の損害を出すわけにはいかないぞ」
 ジャングルの地図の一角を指し、曖昧な説明で顔を顰める参謀に、司令官は厳しい顔で睨みつける。参謀はその視線に冷や汗を流しながら、今後の案を提案した。
「はい、そこで正規の部隊ではなく傭兵を雇おうかと思いますがいかがでしょう」
「傭兵?」
「はい、ULT(未知生物対策組織)を通じて、エミタ能力者に依頼を出します。依頼内容は、この地域の調査」
「ふむ、それで、失踪の原因の排除もその傭兵達に任せるのか?」
「いえ、傭兵はあくまで調査のみで。調査の結果、バグアないしキメラが存在していた場合は正規軍が駆除します」
「そうか、まぁそれならば軍の面子も保たれるな。失敗しても対した損害にはならない。よろしい、その案でいきたまえ」
「はっ、では早速、ULTに依頼をいたします」
 司令官の指示に、敬礼を返し部屋を退室する参謀の一人。司令官はゆっくりと頷くと、また別の参謀に指示を出す。
「それとは別に、特殊部隊のあの男も現地へ向かわせろ」
「はっ? あの男ですか!? しかし、彼は我々の管轄とは別になりますが‥‥」
「かまわん! 使えるものは使え!」
「承知いたしました‥‥」
 指示を出された参謀は渋々といった表情で敬礼を返すと、部屋を退室する。司令官は、煙草に火をつけ、一口吸ったあと灰皿に押し付けた。
「潜入工作のプロフェッショナルが、どれほどのものか、知るには良い機会だ」

・依頼内容
 南米アマゾンの一地域で、原因不明の部隊の失踪が相次いでいる。この地域を調査し、その原因を突き止めよ。

・地域情報
 アマゾン川流域、熱帯ジャングルに覆われた地域で、UPCとバグアの競合地域。敵味方が錯綜し、収拾のつかない文字道理泥沼状態にある。いくつもの村々が存在しているが、その村が人類とバグア、どちらの味方なのかわからない状態にある。
 今回の目的地域にも、二つの村があることがわかっており。今回の失踪についても、なんらかの情報がこれらの村から得られる可能性がある。これらの村には一応車一台分ほどの道があり、極稀に生活必需品の配給などが行われている。

・村情報
A村 部隊が失踪した地域の付近にある村の一つ。外部への警戒心が強く、よそ者を村に招き入れることはほとんどない。バグアやキメラに対しての備えのために武装しており、場合によっては身分のわからない相手にも発砲してくることがある。基本的に自給自足で生活しているが、極稀に行われる軍による生活必需品の配給を受けている。

B村 部隊が失踪した地域の付近にある村の一つ。A村とは反対に、外部に対して大変友好的で、よそ者も歓迎している。バグアやキメラに対しては、最低限の備えしかしていないが、積極的にUPC軍の駐屯を依頼するなどして対処している。こちらも、基本的に自給自足だが、軍の配給以外にも、別ルートでの品物の確保をしているようで、比較的楽な生活をしているようだ。

・備考
 該当地域への移動は、安全地帯までは高速移動艇で移動し、その後は支給された車両(軽トラック)で付近の村近くまで移動する。その後は、歩行による調査となる。
 作戦上必要であれば、各村への補給物資を運ぶ任を代行することも可能。ただし、その仕事への報酬は一切無し。
 定時連絡や調査報告のための無線機が支給される。大きさは30cm立方体ほどで、背負えば持ち歩くことも可能だが、携帯には適していない。これらの装備は、作戦終了後回収される。
 今回の目的は、あくまで調査であり、原因の排除は軍によって行われる。

●参加者一覧

MIDNIGHT(ga0105
20歳・♀・SN
鏑木 硯(ga0280
21歳・♂・PN
江崎里香(ga0315
16歳・♀・SN
篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
篠崎 美影(ga2512
23歳・♀・ER
青山 凍綺(ga3259
24歳・♀・FT
シェリー・ローズ(ga3501
21歳・♀・HA
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER

●リプレイ本文

 青山 凍綺(ga3259)は軽トラックをゆっくりと慎重に走らせながら、A村へと向かっていた。その荷台には、生活用品の入ったダンボールが詰まれている。
「では、俺は行くぞ」
「はい、おかげで助かりました。気をつけてください」
「凍綺もな。俺は裏から探るが、お前らも無茶はするなよ。それと、人を信じるな。そして信じろ。もう一人にも言っておいてくれ」
「‥‥? はい」
 村へと近づいてきた辺りで、同行していたUNKNOWN(ga4276)が、トラックから飛び降りると、言葉を残し密林の中へと消えていく。彼は、正面から村へと入る凍綺達とは別に、裏から村人に気づかれずに侵入する任を負っていた。
「‥‥遅かったわね」
「あ、MIDNIGHTさん。何かわかりました?」
「この辺りで消えたのは‥‥間違いないようだけど‥‥」
 UNKNOWNが消えてすぐあとに、先行して周囲を捜索していたMIDNIGHT(ga0105)が現れ、トラックに乗り込んだ。凍綺の問いに首を振り、MIDNIGHTは道の先の村を見つめる。
「なにか‥‥わかるといいのだけど‥‥」
「そうですね‥‥」
 トラックは、ゆっくりと村へと近づく。やがて、村の見張りがトラックに気づいたように、銃を構えながらトラックへと近づいてきた。
「何だお前達は!」
「はい、私達、軍からの生活物資の配給を持ってきました」
「配給!? 本当か?」
 見張りが厳しい口調で、問いただしてくるのに対し、凍綺が愛想良く笑みを浮かべながら用件を述べる。見張りは、一瞬ホッとした表情を浮かべるも、すぐに疑わしそうに凍綺達を睨みつけた。
「本当です。中身を見てもらってもかまいませんよ」
「‥‥チェックするから少し待て」
 見張りは荷台をチェックすると、連絡のために一人を村に走らせて答えた。
「よし、いいだろう。中に入れ」

「ふむ、どうやら無事に入れたようだな」
 村へと入っていくトラックを、少しはなれた場所から見守っていたUNKNOWNは、確認したように頷く。
「さて、次は俺の番だな」
 小さく呟き、人の気配の無い場所にめぼしをつけると、UNKNOWNは隠密潜行を使い気配を消し、村への侵入を試みるのだった。

 一方、A村と同じく、失踪地域付近にあるB村では。
「はい、押さないでください。順番ですよ、順番〜」
 物資運搬の代行としてB村へと入った鏑木 硯(ga0280)は、集まってきた村人へ配給を配っていた。B村では、入る際に特に警戒もされず、用件を言えば諸手をあげての歓迎を受けた。
「おぅおぅ、べっぴんさんだねぇ。こんなべっぴんさんが、こんな村に来てくれるなんて。どうだい、うちの孫の嫁に」
「あはは、ありがとうございます。でも、俺これでも男ですよ」
「あらまぁ」
 などと老人に声をかけられる硯。軍服は軍の都合で借りられなかったので、ミリタリー調の服を着てきたのだが、見た目が女っぽいので、どうしても女性と間違えられる。
「そういえば、この辺りでUPCの部隊が行方不明になることが多いって聞いたんですけど、なにか知ってます?」
「さぁ? この村には、よく兵隊さんが寄ってくれるけど、その後どうなったかまではわからんねぇ」
 こちらの話に友好的に話してくれる村人達。しかし、要領を得ない話ばかりで、これといった情報は得られない。
「そういえば、一緒に来た人達、その調査に来たんだってねぇ。面倒なことは早く終わってほしいねぇ」
「そうですね‥‥。バグアなんて得体の知れない宇宙人が、さっさといなくなればいいんですが」
「そうだねぇ」
 硯は、あえてバグアを否定する言葉を口にして村人の反応を見る。しかし、相手は相槌を打つだけで、これといった反応はない。周囲のほかの村人を見ても、特別な反応を示すものはいなかった。
「でもなんだろう、この違和感。むしろ今の現状なら、反応を示さないほうがおかしいんじゃないか‥‥?」
 村人の希薄な反応に、考え込む硯。
「収穫はありましたか?」
 そこへ声をかけてきたのは、篠崎 公司(ga2413)と篠崎 美影(ga2512)。二人は、部隊失踪の調査を直接村に伝え、村内で聞き込みを行っていた。
「いえ、とくには‥‥。一見して平和な村に見えます」
「そうですねぇ。村人の皆さんはとても友好的ですし、穏やかな笑みを浮かべています」
「‥‥‥」
 硯の言葉に、美影がおっとり口調で頷く。しかし、硯はどうにも腑に落ちずに表情を曇らせた。
「たしかに、ここは平和過ぎます。思ったほど生活が苦しいわけでもなさそうですし。こんな激戦区真っ只中の村が? ありえないな」
「公司さん‥‥」
 硯の表情の意味を読み取って、公司が答えて首を振る。その言葉に、美影が少し心配そうな表情を浮かべた。
「とにかく、この村はどこかおかしい。警戒を解かずに、しっかりと調査したほうが良さそうですね」
 と、小声で相談していると、村がにわかに騒がしくなってきた。
「何だいアタシは見世物じゃないんだ、デレデレとイヤらしい目で見てるんじゃ無いよ!」
 騒ぎの中心は、この地域の地図作成という名目で村へと入った、シェリー・ローズ(ga3501)であった。赤い髪、白い肌、そして露出の多い派手な服装でフェロモンを撒き散らしているような彼女に、村の若い男性は興味津々の様子。そんな彼らを、シェリーは一喝するように、きつい視線で睨みつけている。
「わざわざアンタ等の生活向上の為に地図を作ってやるんだ、精々感謝なさいよ」
 そんなきつい口調で話すシェリーは、自らを夜叉姫と名乗っている。彼女が、今後活躍を続ければ、遠からず周囲にもその名で呼ばれることだろう。まぁ、姫というよりも、女王様といった感じではあるのだが。
「目立ってますね。あれだけあっちに注目が向けば、彼女もやりやすいでしょう」
「そ、そうですね‥‥。でもあれはちょっとやりすぎでは‥‥」
「あらぁ、そんなことありませんよ。女王様のコスプレなら、もっと派手にしないと」
「いえ、たぶんコスプレではないかと‥‥」
 感心するようにシェリーを眺める公司達。苦笑する硯に、美影が見当違いなことを答えて、より頬を引き攣らせた。

「なにやってるのよ、あれは‥‥」
 そんな村の様子を、物陰に隠れて呆れたように見ている江崎里香(ga0315)。彼女は、表から入る公司達とは別に、裏から村人に気づかれないように潜入し、こっそりと調査をする任についていた。
「まぁ、おかげで気づかれずに入れたけど。でも目立ちすぎよね」
 なんとなく認めるのが嫌なのか、苦情を呟きながら、里香は村長宅を目指すのだった。
「さて、情報を得られそうなところといったら、まずは偉そうな奴のところかしらね」
 ちなみに、周囲からは彼女の態度が偉そうに見られているとは気づいていないようである。

 再び、A村へ入った凍綺達の様子は。
「荷を降ろしたら、すぐに帰ってくれ。あまり余所者を長く置いておいて、問題を起こされたくない」
「あ、あの〜‥‥。車のエンジンの調子が悪いので、できれば一日だけでも置いて欲しいのですが〜、なんて。あはは、ダメですか?」
「‥‥‥」
 困って懇願するような笑みを向ける凍綺に、表情を顰める村人だが、一応周囲の者と相談しているようで。
「今から帰ると、下手すると夜になってしまいますし‥‥」
「‥‥わかった。一晩泊まったら、朝一で帰ってくれよ」
「たすかります」
 凍綺のお願いに折れた形で、村人は渋々と村への滞在を許可してくれるのだった。
「ちょっと‥‥聞きたいことが‥‥あるんだけれど‥‥」
「なんだ?」
「あたしは‥‥物資配達の護衛で来ているのだけど‥‥。UPCの部隊が失踪してるから‥‥この近くで‥‥幾つも‥‥。何か知ってる?」
「いや、知らないな。村の外のことはほとんどわからない。だいたい、ここしばらく兵隊も来ていない」
「じゃあ、緊急時は‥‥B村から物資調達‥‥できる?」
「村の外はわからないと言っているだろう。隣村がいまどんな状態なのかもわからないよ」
 配給の後、MIDNIGHTの質問に、首を振る村人。彼女の目から見て、村人が嘘をついているようにも見えなかった。
「とにかく、あまりうろうろするなよ。余計な問題を作らないでくれ」
 泊まる場所まで案内されると、そう念を押されてから、村人はその場を後にした。
「村の様子、思った以上に悪いですね」
「‥‥‥」
「みんな痩せこけて、十分な食料も無いのかもしれない。配給の際に、小さな子供にありがとうって言われて、なんか悲しくなってしまいました」
「戦時中なのだから‥‥しかたないわ」
 凍綺の言葉に、小さく首を振るMIDNIGHT。現在、世界中で、こういった生活の苦しい場所が多く存在しているのが現実だ。ラスト・ホープのような高水準の生活環境のほうが極稀なのである。
「この村、シロだな」
「うわぁ、UNKNOWNさん、いつのまに!?」
「‥‥気づいてなかったの?」
 突然の声に驚く凍綺。いつのまにか、UNKNOWNが部屋の隅に立っていた。MIDNIGHTはすでに気づいていたようで、驚いた様子もない。
「村の集会での話を盗み聞いてきたが、部隊失踪については、今回お前達が来るまで知らなかったようだ。キメラへの対策や、食糧問題などがほとんどだった」
 裏側から攻めたUNKNOWNの調査でも、失踪についての情報は得られなかったらしい。
「じゃあ、B村の皆さんに期待ですね」
「そうだな‥‥とにかく朝一にここを出て、合流するぞ。‥‥嫌な予感がする」
 UNKNOWNは、すでに日の落ちた外を睨みつけて呟いた。

「それで、情報は得られたわけ?」
 夜、B村の調査に来たメンバーは、あてがわれた部屋に集まって相談をしていた。シェリーの言葉に、一様に首を横に振るメンバー達。
「しばらくここに滞在したようですけど、その後の足取りは」
「A村へ向かったという話もありましたが、正確なところはわかりませんね」
「困りましたわねぇ。あとは、江崎さん待ちでしょうか」
「アタシも似たようなものね。でも、ここの連中、なんとなく怪しいのよね」
「それは俺も感じました」
 などと相談していると、ドアをノックする音と共に、村長が入ってきた。
「皆さん、こちらでしたか」
「何か用?」
「いえ、お食事をご用意したので、是非にと思い」
「別にいいわ、食糧なら持って‥‥」
「いえ、ご相伴に預かります」
 村長の申し出を断ろうとするシェリーを遮って、硯がそれを受ける。
「ちょっと!」
「ここは、食べたフリをして、反応を見ましょう」
 硯の提案に、シェリーは納得したように頷き、一同は村長宅へと向かうのだった。

「やっぱり、ここのヤツラ、バグアと通じてたのね」
 村長宅を調べていた里香は、村長と村人の話を盗み聞きし、この村がバグアにすでに占領されていることを知る。そして、急いで他のメンバーに知らせようとするのだが。
「まずいわね、皆、村長の誘いにのこのこと乗っちゃってる。あの食事には薬が盛られてるのに‥‥。なんとか知らせないと‥‥むぐぐ!?」
 村長宅に呼ばれた仲間達を止めようと、隠れていた場所から出ようとする里香。しかし、後ろから何者かに口を抑えられ、無理やり引きとめられる。慌てて、拘束を外そうとする里香だったが、巧みな力加減に、上手く身動きが取れない。
「落ち着け、俺は敵じゃない」
「むぐ?」
「お前達と同じように、この村の潜入調査を依頼されたものだ」
「‥‥‥」
 耳元で囁かれる言葉に、不審に思いつつも、抵抗を止める里香。相手は男のようで、しかも自分より上手であることに、抵抗は無駄であることを悟ったのだ。
「なかなか賢いな。でだ、彼らは食事を食べるフリをして、相手の反応を見るようだ。俺達ももう少し様子を見る、いいな?」
「‥‥わかったから、胸の手はどけてくれない?」
「おっと、こいつは気づかなかった」
 男の言葉通り、仲間達は食事を食べるフリをして、しばらくして眠るように机に突っ伏す。それを確認した村長達は、彼らを縛って隠し倉庫へと連れて行ってしまう。
「どうやら、あそこが捕虜の収容場所のようだな」
「へぇ、やるわね。ま、あたし一人でもできるけど」
 男はあっさりと見張りを昏倒させると、隠し倉庫の戸を開ける。里香はその手際のよさに、感心するのだった。
「待たせたわね」
「遅いわよ」
 中へ入り、里香が声をかけると、すぐにシェリーが返事をする。縄は自力で解いていたようだ。
「あの、隣の人は?」
「こいつは‥‥」
 硯が、里香と共にいる男に視線を向けると、里香が答える前に男が前に出る。
「俺は、UPC特殊部隊所属の、マーキュリーという者だ。目的はあんたらと同じ」
「マーキュリー? 水星?」
「そうだね、ほかにもギリシャ神話でのヘルメス、ローマ神話でのメリクリウスの英語読み、また水銀という意味もある」
「単なるコードネームだ、気にしないでくれ」
 美影の言葉に、公司が詳しく説明を始める。マーキュリーはその様子に苦笑し、すぐに出てくるように促した。
「捕虜はこれだけか」
「ああ、俺達より前に捕まったやつらは、すでにバグアによって連れ去られた後だ」
 捕虜は数人、どうやら最近失踪した部隊のようであった。彼らの話では、以前の捕虜は、キメラ闘技場と呼ばれる場所へと連れて行かれたらしい。
「キメラ闘技場?」
「なんでも、キメラと人間を戦わせて、キメラの実験をしたり、生き残った者をバグアのヨリシロにするとか‥‥」
「なんて酷い」
「実験と選別を同時に行う場所か、理には適っていますね」
 捕虜の話に、顔を顰める硯と、冷静に納得する公司。
「捕虜が逃げたぞーーー!!」
「まずい、さっさと逃げるぞ。車はもう使い物にならなくなっているだろう、走るぞ!」
 どうやら村人に気づかれたようで、急いで村を脱出する一同。しかし、村人達は銃器を向けてくる。
「美影! ぐっ‥‥」
「公司さん!? 怪我を!!」
 途中、美影を庇い、公司が怪我を負う。また同じように何人かが、傷を負ってしまった。美影の治療スキルも、超機械を持ち合わせていなかったために使用ができない。
「ここはアタシに任せな! ふぅんアタシを殺ろうってのかい? 面白いねぇ、サァかかってきな!」
 刀を抜き、しんがりを務めるシェリー。身体の周囲を黒いオーラが包み込み、楽しそうにニヤリと笑みを浮かべる。
「嫌な予感的中か。皆、早く乗れ!」
「UNKNOWN!!」
 そこへ現れたのは、A村に向かったメンバー達。急遽A村から飛び出し、B村へと向かっていたのだ。凄い勢いでトラックを走らせてくると、全員を荷台に乗せ、追いかけてくる村人達を振り払い急発進。そして、なんとか逃げ切ることが出来るのだった。

 その後、報告を受けた軍によって、B村は地図から消え去ることとなった。一同は、後味の悪いものを感じつつ、帰路へと着いた。