タイトル:百鬼夜行 九尾再来マスター:緑野まりも

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/20 02:00

●オープニング本文


「もう春だってのに、寒かったり、暑かったりと不安定な天気だなぁ」
「まったくだ、これもあの宇宙人の仕業じゃないのか?」
「ははは、そりゃいくらなんでも無いだろ」
 日本のある町で、住民が世話話をしている。最近の近況、このところの寒暖の変化についてなど、他愛の無い世話話の中で、あることについての話になった。
「そういや、隣町がキメラにやられてしばらくたったけど、あれはどうなったんだ?」
「ああ、まだ町への封鎖は解かれてないみたいだな。かなり酷いらしいぜ」
「一時期はここも厳戒態勢ってやつで騒然となったからなぁ。なんだっけ、狐の化け物?」
「たしか九尾の狐だっけ? 昔話とかに出てくる妖怪。傾国の美女に化けて、国を滅ぼすとか」
「美女かぁ。それだったら俺の前にも現れてくれないかなぁ」
「馬鹿言え、美女って言ったって化け物だぞ。それに、エミタ能力者が無事におっぱらったって話じゃないか」
 以前に別の町を襲ったというキメラの話。隣町が壊滅してから数ヶ月がたち、住民達の不安も薄れ始めていた。しかし、それは何の前触れも無く現れる。
「なんだ? サイレン!?」
「もしかして、九尾の狐‥‥!?」
 突如、町に響き渡るサイレンの音。いわゆる緊急避難警報に、住民達は驚きと不安を感じる。と同時に、少し離れた場所から獣の雄たけびと爆音が聞こえ、住民達はすぐにパニックになって我先にと逃げ出し始めた。やがて、姿を現した九つの尾を持つ黄金の獣は、毒ガスを撒き散らしながら町を破壊していく。そして九尾の狐は、尻尾を分離させ生み出した小型のキメラを率い、瞬く間に町を壊滅へと追いやるのであった。

「今回のキメラは大変危険であると判断されているため、熟練の能力者を対象に募集を行っています。実績の少ない方は申し訳ありませんが、参加を控えていただけるようお願いしたします」
 そう前置きがなされ、ULTで依頼を受けた能力者達は、オペレーターに詳しい内容の説明を受ける。今回は、よほど危険なキメラが相手なのだろう。
「以前、日本の町を壊滅させた大型狐キメラ『九尾の狐』が再び現れました。今回は、このキメラの退治をお願いします」
 その依頼は、以前にも現れ猛威を振るった『九尾の狐』を退治するというものであった。
「前回の調査で、九尾の狐の能力がある程度わかりました。高い攻撃力と素早い身体能力、非物理に対する防御力を併せ持ち、肉体の高速再生もする大変強力なキメラです。加えて、毒の息を吐き出したり、九つの尻尾を分離させて、小型狐キメラを生み出すこともできるようです。放っておけば、大きな災害となることは間違いありません。再び姿を見せたこの時に確実に退治しなくてはならないでしょう」
 高い戦闘能力に加え、数々の特殊能力も備えた強力なキメラ。前回の調査のおかげで、その能力を知ることはできたが、それはこのキメラの危険性をより明確にするものであった。九尾の狐が現れた地域は、瞬く間に破壊され廃墟となっている。早々に脅威を取り除かなければ、被害は広がるばかりだ。
「現在、九尾の狐は壊滅した町に留まっている模様です。UPCからも観測部隊が派遣されており、キメラの現在位置の把握が行われています。皆さんは、早急に現場へと向かい、キメラの退治を行ってください」
 能力者達は、オペレーターからキメラの資料、前回の交戦レポートなどを受け取り、すぐさま現地へと向かう準備を開始するのだった。

・依頼内容
 日本の町に出現した、大型狐キメラ『九尾の狐』を退治せよ
・概要
 日本のある町に、妖怪を模した大型狐キメラ『九尾の狐』が出現。これを退治し、周辺地域の安全を確保すること
 この依頼は、熟練のエミタ能力者を対象として募集が行われる。九尾の狐は大型のキメラで戦闘力が高く、様々な特殊能力を有しているため大変危険と判断されるため
 今回は、UPCからキメラの所在を把握するための観測部隊が派遣されているため、共同作戦を取ることを推奨する。ただし、観測部隊はキメラとの戦闘を行うことができないので注意。また、物資などの支援も行われないため、必要な物資は各自で用意を行うこと
 作戦期間は、現地到着後三日以内を想定している。それ以上の交戦は危険と判断され、部隊は撤退することとするため注意すること

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
古河 甚五郎(ga6412
27歳・♂・BM
旭(ga6764
26歳・♂・AA
優(ga8480
23歳・♀・DF
柊 理(ga8731
17歳・♂・GD
ミルファリア・クラウソナス(gb4229
21歳・♀・PN
フェイト・グラスベル(gb5417
10歳・♀・HD
ウェイケル・クスペリア(gb9006
12歳・♀・FT
エイミ・シーン(gb9420
18歳・♀・SF
ムーグ・リード(gc0402
21歳・♂・AA

●リプレイ本文

「いました、あれが九尾の狐ですねぇ」
 依頼を受け現場へと急行した一行が、UPCのキメラ観測部隊の報告を受け、現場へと向かった先。そこには黄金の毛皮と九つの尻尾を持った、巨大な狐キメラ『九尾の狐』の姿があった。前回の九尾の調査に参加し、今回のメンバーで一番、敵の実力を知る者の一人古河 甚五郎(ga6412)は九尾を指し示し険しい表情を浮かべる。
「九尾の、狐‥‥凄い‥‥」
「ふふんっ、狐位で獅子の称号に勝てる筈ないのですっ!」
「化け狐‥‥か、雪女‥‥としては放っておけないですね」
「‥‥巨大、狐‥‥デス、カ‥‥。コノ、クライ、禍々しク、テ、モ‥‥やハリ、胸、ハ、痛み、マス、ネ」
 伝承に語られる九尾の狐そっくりのその姿に、柊 理(ga8731)、フェイト・グラスベル(gb5417)、エイミ・シーン(gb9420)、ムーグ・リード(gc0402)がそれぞれ感想を漏らした。そして誰もが、遠くからでもわかる禍々しいほどの威圧感を感じている。
「今回は風下ですが、相手は相当感覚が鋭いですわ、要注意ですわよ」
 甚五郎と同じく九尾と交戦したことのあるミルファリア・クラウソナス(gb4229)が、全員に注意を促す。前回は風上に居たせいで九尾に気づかれてしまった経験を活かし、今回は風の向きにも注意しているが、おそらく臭い以外の感知力も高いと予想された。
「毒ガスに爆弾、ですか。確かに大量殺戮兵器としては効率が良さそうな組み合わせですね」
「ん〜、なかなか興味深い研究対象だねぇ」
 報告にあった九尾の能力を頭に浮かべ旭(ga6764)が顔を顰める。彼らがここにたどり着く途中にもその被害の痕跡がありありと残っていた。そんな中、九尾を興味深く眺めるドクター・ウェスト(ga0241)。彼にとってはこのキメラも、今までに研究してきた数々のキメラの一つでしかないのだろうか。
「救えなかった人達のため、そしてこれ以上の被害を出さないために私達ができることをしましょう」
「んじゃ、ちっと張り切っていこーじゃねぇか」
 やがて九尾の間合いへと近づき、優(ga8480)は途中で見かけた被害者達を想いながら、静かに戦いの開始を告げる。ウェイケル・クスペリア(gb9006)がその声に意欲的な笑みを浮かべ九尾との戦いが始まった。

「来ましたよ、小狐達です! 自爆に注意してくださいねぇ」
 戦いが始まり、こちらへと気づいた九尾は、早速尻尾を切り離し6体の小狐キメラを生み出す。甚五郎の警告に頷いた一行は、作戦通り小狐キメラと九尾本体への攻撃部隊に分かれ攻撃を開始した。
「ちょこまか速い‥‥でも自爆される訳には行かないんだ!」
「自爆‥‥ソレハ、生物、トシテ、不自然、ナ、行為、デス」
 それぞれがバラバラの軌道で飛び掛ってくる小狐達を、理とムーグが射撃にて迎撃する。しかし、小狐達の動きは素早く、なかなかそれを捉えることができない。
「本体攻撃の邪魔はさせませんわよ」
 やがて接近して来た小狐を、ミルファリアが九尾を攻撃する仲間を庇うように相手をする。大剣を振るい、小狐が仲間の邪魔にならないよう意識をこちらに引き付けた。
「セイ! ヤア!」
 その間に、忍者の衣装を纏った優が二刀の刀で九尾へと斬りつける。だが、九尾の動きも素早く、そう簡単には当たりはしない。そして反撃による鋭い爪の一撃が優を襲う。
『mode: guard style』
 そこへ割って入ったのは旭。旭は盾を構え、九尾の一撃を受け止めようとする。ちなみに、音声で流れたのは彼が特注したAI拡張ユニット『OCTAVES』で、装備に装着すると使用者の状態やスキル発動などを音声で知らせてくれるというものだ。
「くっ!」
「旭さん!」
 かろうじて攻撃を受け止めた旭だったが、その衝撃は凄まじく、旭の身体を吹き飛ばす。旭は近くのビルの壁に叩きつけられ苦悶の表情を浮かべた。
「やりやがったな、てんめぇ!」
「ウィルちゃ! 気をつけて!」
 その様子に、ウェイケルが荒々しい口調で攻撃。エイミの練成強化を受けた鉄扇を叩きつけダメージを与える。だが、九尾はそれをものともしない。
「これならばいかがです!」
「耐性があると分かっていても、我輩にはコレしかない!」
 フェイトの乗ったAU−KVが、3mを超える巨大な斧を振るう。あわせてウェストもエネルギーガンによる射撃を行った。それらの攻撃は、一見九尾にダメージを与えたかに見えたが、その傷は瞬く間に再生してしまった。
「ふむふむ、再生の様子はどうかね〜。なるほど‥‥」
 しかし、それは予想通りのことであり、ウェストは再生の様子を見逃さないよう観察する。そして、敵の全身の傷が同時に再生していることに気づいた。
「博士危ない!」
 だがそこへ、一匹の小狐キメラがウェストに向かって襲い掛かってきた。そしてそれが直感的に『自爆する』と思った瞬間!
「そうはさせませんよぉ! ガムテで!」
 咄嗟に甚五郎が獣突で小狐を吹き飛ばした。と同時に爆発し爆風を撒き散らす小狐。距離が開いたおかげでウェストと甚五郎は被害を免れた。ガムテはよくわからないが。
「そろそろ撤退する頃合ですね」
「ええ〜い、引かねばならないとはね〜!」
 その後、しばらく抗戦を行った一行は、優の判断と共に一時撤退を決めた。悔しがるウェストであったが、あくまでそれは事前の作戦通り。用意しておいたタイヤに火をつけて、煙と異臭を周囲に撒き散らし撤退を行う。
「フラッシュ行きます! 直視しないで!」
「これでも食らえ!」
 理が閃光手榴弾で視覚を塞ぎ、その隙を見てウェイケルが香水を投げつけ、九尾の嗅覚を完全に麻痺させる。そして一行は何とか無事に九尾から逃げることに成功した。

「と、先ほどの戦いで、九尾に対しては一度に集中してダメージを与えることが効果的のようだね〜」
 九尾から撤退した一行は、九尾の動きを観測部隊に任せ、作戦会議と休息をとることにした。ウェストの観察により、九尾の再生力を上回るダメージを一度に与えることが効果的と判断され、それにあわせた作戦が構築されることになる。
 そして日が明けて早朝、一行は準備を整えると再び戦いの場へと向かう。伝承に語られる最強クラスの妖怪、それを模したキメラを確実に滅するために。

「ひゃっはっはっ! では、作戦開始なのだ〜!」
 観測部隊の情報通り、九尾は破壊されたビルをねぐらのようにして身を休めているようであった。昨日のダメージは完全に癒えており、切り離したはずの尻尾も9本に戻っているように見える。やがてウェストの掛け声と同時に、全員が能力を覚醒、事前に決めた通りの配置につく。九尾もそれに気づき、一行に向かって動き出すが先手を取ったのは能力者達だ。
「さて、と。もう十分、愉しんだだろ。これで終わりにしよーぜ? それ、今回はあるだけ全部くらいやがれ!」
 まず最初にウェイケルとエイミが、持っていた香水の瓶を九尾へと投げつける。複数の瓶が九尾やその付近の地面に当たり、瓶が割れて香水をばら撒いた。モワッといった感じで、いくつもの香水の香りが混ざり合い、人でさえ鼻をつまみたくなるほどの異臭が周囲に満ちる。
「ご自慢の嗅覚には、ちっとばかし刺激が強すぎちまったか?」
「ふふっ。鼻が利くと‥‥コレはかなり効くでしょう?」
 これには九尾も堪らず顔を逸らして苦悶の表情を浮かべ、寝床であったビルの壁をぶち破りその場から離れようとした。
「悪いですが、逃がすわけにはいきません」
「ふふっ‥‥昨日と同じと思わない方が、良いかもしれませんよ?」
 しかしそれに、ビルの外で待ち構えていた旭とフェイトが立ちふさがる。九尾は一瞬足を止め二人に対し威嚇のうなり声をあげた。
「っ!!」
 と、そこへ、足元に矢と弾丸が突き刺さり九尾が咄嗟のジャンプでそれを回避する。少し離れた見晴らしの良い場所に陣取った理とムーグによる射撃だ。
「そう簡単には当たりませんか」
「牽制、ニハ、十分、デス」
 二人の射撃は、回避されたとしても十分な牽制となり、九尾の動きを阻害するのに効果的である。特に鼻を潰され感知力の低下した九尾には厄介な代物であろう。九尾も不利を感じたのか、旭達を避けて別の路地へと逃げる。だがそこへ、道を塞ぐように瓦礫の山が降ってきた。
「トラップ成功! こちらは行き止まりですよ」
「けひゃひゃひゃ! まさに檻に入った獣同然なのだ〜!」
 瓦礫の山は甚五郎のトラップ。完全に道を塞ぎ九尾を袋小路に閉じ込めることに成功し、ウェストが歓喜の奇声をあげた。
「はぁ!」
 そこで、ビルの上から飛び降りるように、九尾へと斬りつける優。侍の衣装に着替え、両手に持ち替えた刀による、九尾の首を狙った一刀両断。ウェストにより練成超強化を受け、気合と共に繰り出された斬撃が、九尾を切り裂く。さすがに一撃で首を切り落とすことはできないが、肉を深く切り裂かれ九尾が苦痛の声をあげた。
「さすがに一度に多くのダメージを与えれば再生が追いつかないはずなのだ。一斉に攻撃だー!」
「おとなしく、僕の剣の錆におなりなさいませ!」
 間髪居れず、ミルファリアが大剣を振るって攻撃、九尾の脇腹が切り裂かれ鮮血が飛び散る。しかし、さすがに九尾も然るもの、大きなダメージを受けてもなお反撃の態勢を取り、周囲に毒ガスのブレスを撒き散らした。
「くっ、まだまだ‥‥ですわよ」
「大丈夫‥‥、やれます!」
 狭い袋小路がゆえに回避は困難。優とミルファリアは毒ガスを受け苦悶の表情を浮かべるが、抵抗値の高い二人はなんとかそれを耐える。しかしその隙を突き、九尾の尻尾が切り離されて小狐キメラが姿を現してしまった。
「ちょーまじ面倒ですわよね‥‥尻尾さん‥‥」
「ですが見てください、相手の数が」
 敵が増えたことに苦笑を浮かべるミルファリア。だが優の指摘通り相手を良く見れば、前回よりも数が減っている。
「なるほど! もしかすると尻尾キメラの数には限界があって、見た目ほど昨日の戦いの分から回復してないのかもしれないねぇ」
 ビルの屋上からそれを観察していたウェストは、その様子に仮説を立てて頷いた。
「大丈夫ですか!」
 そのうちに、旭達も戦線に加わり、九尾を取り囲むように全員が揃う。そして九尾と能力者、お互いの全力による総力戦が始まった。
「そう何度も、やらせません!」
「‥‥貴方、タチ、ノ、動き、ハ、一度、ミマ、シタ‥‥サヨウ、ナラ」
 まず最初に素早く飛び掛ってくる小狐。ジグザグに飛び回る相手に、ムーグが点ではなく面を抑えるように弾をばら撒き、動きを止めた一瞬を捉えて理が速射を行う。
「自ら命を落すより‥‥僕の剣に斬り捨てられた方が名誉ですわよ‥‥?」
「ストップ・ザ・自爆ですよ、ガムテ‥‥じゃなくて真音獣斬で!」
 そこへ、ミルファリアの斬撃と甚五郎の衝撃波が追撃し、小狐を蹴散らした。
「君の相手は僕だ! さぁこい!」
『set heavy strength』
 その間に、旭が九尾の前に立ち盾を構える。そして九尾の鋭い爪を受け止めるが、今度はスキルにより瞬間的に力を上げ吹き飛ばされること無くそれを受け流した。
「いまです! 両断剣流し斬り!」
「これがあたしの本気ってやつだ!」
 攻撃の隙を突き、優とウェイケルが九尾の側面からの攻撃。後ろ足の太ももを切り裂き、九尾がガクンと膝をつく。
「私の戦斧は竜をも屠る、というのはどうでしょう」
 そして、フェイトの巨大な戦斧による重い一撃が九尾の頭部に叩き落された。額を割られ飛び散る鮮血。だがそれでも、九尾に止めを刺すことは出来ない。受けた傷は再生し、九尾の抵抗は収まることが無い。ダメージを与えては再生するの繰り返し、そして一行に対しての激しい反撃に、能力者達も徐々に疲弊していく。
「キリがありません‥‥わよ!」
「戦いを長引かせてはこちらが不利ですね‥‥」
 小狐を撃破し、九尾への攻撃に参戦したミルファリアだがなかなか決定的なダメージを与えられず苛立ちの声をあげる。優も現状の状況に少しずつ危機感を感じていた。
「けひゃひゃ、諸君よく見たまえ! キメラも消耗してきているぞ!」
 だがそんな中で、ウェストは冷静に九尾を観察し、相手も確実に消耗していることを見抜いていた。先ほど切り離した尻尾は再生していないし、一見塞がっているように見える傷も、実際は完全には再生しておらず少なからずダメージが残っている。ウェストの言葉に、一行は萎えそうになった気力を再び立て直らせた。
「‥‥再生能力、トノ、力、比べ、デス、ネ‥‥嫌い、ジャ、ナイ、デス」
「そうさ! 再生するなら、再生できなくなるまで攻撃し続ければいいじゃねーか!」
 ガトリングで弾丸をばら撒きながら言うムーグの言葉に、ウェイケルが同調し声を上げる。他の者も同じく気合を込めて、九尾への攻撃を強めていく。そしてやがて、その勢いは九尾の再生能力も上回り‥‥。
「こんなの‥‥嫌い、かなっ!」
「シャドーボール! あ〜んど! ロケットパンチ!」
 理の弾頭矢と、エイミの黒色エネルギー弾&ロケットパンチが炸裂。それまでのダメージも加え、九尾も瀕死の様相を見せてきた。
「さぁ、我輩の力を受け取り止めを刺すのだ〜!」
『charge crimson impact & sonic boom! Set up ok!!』
「食らえ! ライト‥‥ブリンガー!!」
 そこへ、ウェストの練成超強化を受けた旭の渾身の一撃。全身を赤い炎のオーラに包み、剣から放たれる音速の衝撃波が、九尾の頭部を切り裂いた。そしてついに、九尾は力尽きたかのようにその巨体が地に伏すのであった。その様子に、ようやく安堵する一行。
「ウェルちゃ〜、ん〜、終わりましたねぇ」
「ちょ、こんなとこで‥‥」
「待ってください! まだ終わってない!?」
 だが戦いが終わってエイミがウェイケルに抱きつきまったりしようとしたとき、九尾の近くに居た旭が異変に気づく。そう、まだ九尾は生きており、最後の力を振り絞ったのだ。
「っ!!」
 盛大な爆発音と共に、その身体を爆散させる九尾。その直前に、咄嗟にその場を離れた一行は被害を受けることは無かったが、周囲の瓦礫が吹き飛びその威力を物語っている。
「まさか、本体まで自爆するとはね」
「でもこれで終幕‥‥ですわね‥‥」
「むぅ、これでは死体を調べることもできないではないかぁ〜」
 やがてその光景に顔をしかめながらも、これで完全に戦いが終わったことに一行は今度こそ安堵して傷を癒した。
「‥‥‥」
 そしてその後、動物を愛するムーグが九尾に黙祷を捧げ。一行は依頼を完了、その場を後にする‥‥。だがしかし、まだ全てが終わったわけではないことを彼らが知るのは、帰還してしばらく後のことであった。