タイトル:WB試験マスター:御影友矢

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/19 20:18

●オープニング本文


 〜福岡〜
「ここは‥‥」
 少女は眼を開けると、そこは見知らぬ場所。
 少女は家を持たず、その仲間の所に居候していた。
 でも仲間は‥傭兵達によって‥。
 その事で少女は恨んでいなかった。
(「弱い者は殺されていく運命でしかない‥今の殺戮の時代では‥」)
 ただ‥こんな所に寝た覚えも無い。
 周りを見渡すと、薄暗いが、観客席の様に段差で座る所があり、何かの会議室みたいに、細長いテーブルに椅子が11個ある。
「ようこそ、WBへ」
 今の今までその気配に気付かなく驚いたように声のしたほうを振り返る。
「と言っても、ここは地下三階の最下層だけどな」
「きゃははー、私達の気配に気付かなかったみたいだね〜」
「状況も把握できてないみたいだし、そういう風には言うな」
「‥以下同文」
「‥‥」
 1人だけでなく少女を含め、そこに6人の人物がいる。
 驚きより軽い恐怖を少女は感じる。
(「‥噂には聞いていたけど、これ程までとは」)
 全員が互角かそれ以上だと、少女は直感的に感じていた。
 考えた挙句、少女は大人しくする事にする。
「まずは私達の紹介から始めようか。噂は知ってると思うが、『世界を崩壊させる』事を目指している狂った組織の中心『Eleven Pests(11人の疫病神)』 ‥」
「と言っても、ここには5人、全部で10人しか居ないけどな」
「その通りその通り」
「お前も察しただろ‥私達の意図が」
「‥異議なし」
「‥‥」
 照明が点き、少女はまた驚く。
 そう、この組織、WBの中心『Eleven Pests(11人の疫病神)』 はどうみても10代〜30代の男女達だった。
(「えっ‥」)
 その中に‥知っている顔を見つけ少女は驚く。
「No5の事は知っていて当然か‥お前‥刹那の姉と同僚だからな」
(「何で私の名前を‥って、当然の事ね」)
 単に誘拐だったらこの時点で既に殺されていると刹那は感じる。
「さて、察しての通り、Eleven Pestsの入隊試験だ。刹那に拒否権はない‥拒否した瞬間殺す」
 殺気が膨れ上がり、刹那は、思わず後ろに飛びのく。
「すまない、怖がらせてしまったみたいだ。手始めにここら辺にいるキメラを‥」
「悪い、やり過ぎて、禁止令が出た」
「なのだ〜なのだ〜」
「今日の『死神部隊』を決めるじゃんけんで、負けた腹いせにね」
「‥その通り」
「‥」
 死神部隊とは、Eleven Pests内のじゃんけんで決められた、その日の担当者4人の事。
「全く、お前らは‥仕方ない本番にいくか。熊本にいるある人物を24時間以内に殺して、ここに戻ってきて貰いたい‥傭兵は既に手配してある‥時間をオーバーすると時限爆弾が作動してお前は死ぬ‥お前の体内には最新型の時限爆弾を入れた‥だから、ショートさせようとは思わない事だな」
 そして時限爆弾を作動させた。

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
翠の肥満(ga2348
31歳・♂・JG
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
木場・純平(ga3277
36歳・♂・PN
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
王 憐華(ga4039
20歳・♀・ER
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
神無 戒路(ga6003
21歳・♂・SN
リュウセイ(ga8181
24歳・♂・PN
八百 禮(ga8188
29歳・♂・DF
優(ga8480
23歳・♀・DF

●リプレイ本文

 制限時間16時間前、刹那は傭兵達との合流地点まで来て‥固まる。
(「何であの人がここに‥」)
 それは、刹那の伝言を受け取った人。
 だが、傭兵に依頼したからその可能性は‥。
 鳴神 伊織(ga0421)も、軽く驚きを見せたが、仕掛けてくる様子は無い。
「今回一緒に戦うことになる、神楽刹那です」
 神楽が最初に自己紹介し、一通り自己紹介を終えた後、時間が無い事もあり移動しながら作戦を立てる事になり。
 それぞれが依頼について考えている中、翠の肥満(ga2348)は気が重くなっていた。
(「‥‥あまり気の進まない仕事ですねえ。依頼主は胡散臭いわ、このご時世に人狩りだわで。と言いつつ高額の報酬に釣られてしまうとは、トホホ、我が心未だ未熟なり」)
 漸 王零(ga2930)はこの依頼に対し危険な感じがしていた。
(「何かきな臭い気もするが、まぁ、依頼だしそこは割り切ってやるしかないな。だが‥‥‥いや我は我のなすべきことをするしかないな」)
 漸はそう思いなおす。
 八百 禮(ga8188)はこみあげて来る、笑いを抑え。
(「何か依頼その物より、其の背景に後ろ暗いものを感じますね。嗚呼、こういう不定形の好奇心は大概首を絞める事に為るのですが‥止めましょう、詮索は好きですが今は余裕が在りませんので」)
 葛藤に一区切りつけ、思考を切り替える。
 鳴神、遠石 一千風(ga3970)、王 憐華(ga4039)、神無 戒路(ga6003)は刹那の下に集まっていた。
「随分とせっかちな依頼主も居たものだな。ここの領主は何をやってるって言うんだ!?」
 何時も通りの依頼のつもりに思っている遠石だが、依頼内容の不明瞭さや制限時間に引っかかり刹那に質問する。
 ちらりと、鳴神の方を向いて。
「すいません。私も詳しく聞いたわけではないので」
 と言い、その視線で鳴神は刹那が何か隠しといると分かり。
「刹那さん何か隠している事があるのじゃないのですか?」
 優しく尋ねた。
 鳴神はWBとの関連性があるか疑っている。
(「やっぱり‥隠せませんね‥」)
 このままもやもやしたままでは連携に支障をきたすと思った刹那は、言える範囲内で、正直に話す。
「やはりそうですか」
「人の命をなんだと思っているんだ」
「刹那さん可哀想です」
 鳴神、王、遠石は悔しそうに言い、一様にやりきれない表情になり神無は無表情だったが、心の中では依頼に対するむなしさを感じていた。
「スパークマシンによる解除は可能ですか?」
 鳴神の質問に刹那は首を横に振る。
「それはできないと、釘を刺されました‥やったら爆発すると‥だから時間内に終わらせないと‥」
 刹那は独り言の様に呟いた。

 話しながらで、時間もないため大まかな事しか決められず、意見が分かれた為、決まった事は3点。
●囮班:潜入班1班:潜入班2班=7:3:3に分かれて行動
●囮班は正門付近の壁を破壊し正面突破し屋敷奥まで敵を誘導し、退路を確保する。
●その間に潜入班は中央付近の両側にあるドアを破壊し侵入しシステム管理室の破壊と領主を刹那に渡す事が決まり、2時間後屋敷に着いた。
 失敗すれば、即、死に繋がる状況。
 下手をすれば、爆弾が作動してしまう可能性もある。
「何辛気臭い顔してんだ。祈っといてやるよ。」
 リュウセイ(ga8181)は自爆装置が爆破しないよう『GoodLuck』で祈っておく。
「お代はデートな」
 リュウセイは軽口をたたき。
「何を、言っているのですか貴方は」
「戦闘前に不謹慎ね」
 鳴神と緋室に窘められるが。
「そういえば伊織、戦闘依頼で一緒だな。エキスパートの真髄をみせてやるぜ」
 本人はいたって効いて無い様子。

●囮班侵入
 各自配置につき。
「―――敵性存在確認。R.O.C.K. On‥」
「アイテール‥限定解除、戦闘モードに移行‥」
 南雲 莞爾(ga4272)と緋室が呟き覚醒し他の者も覚醒を済ませる。
「派手に引き付けましょうか」
 王の弾頭矢で破壊する案もあったが逃げるときの事も考え、緋室 神音(ga3576)、八百、優(ga8480)が壁を破壊し、警報がなる中、内部に突入。
 正門付近にいた2、3人のボディーガードと2体の警備ロボが居て。
(「―――悪いが、時間が無いんでな。‥‥手早く片を付けさせて貰おうか」)
「私は貴方達の敵です」
 優が呟き、南雲はそう考え、全員で素早く昏倒v破壊し。
「くくく、派手に壊しましょうか」
「破壊します」
 八百と優が正門と壁を破壊し、7人は屋敷内に入る。
 一同が見たものは、階段と天井まで吹き抜けになっていて、二階から一階を見下ろす事ができ大広間に続く大きな扉がある。
 待ち構えたかのように、二階から6人ほどのボディーガードが降りてきて1階には警棒を持った8体の警備ロボが居る。
 南雲や緋室・・いや全員がこの時点でうすうす感づいてと思うが、当初の予定通り、応戦しつつ徐々に奥へと移動していき。
(「まずいわね」)
(「誘導されている‥か」)
(「くくく、何があるのでしょうね」)
(「なんか違うわ」)
(「誘導」)
 囮とばれているか分からないが、巧妙に奥に誘導されている。
 だか、ここで行動を間違えれば、失敗する可能性もある。
 今は一階の部屋を調べ終わり、最初に居た敵を大方片付け屋敷奥の方で立ち止まっていた。
「俺達を罠に嵌めようとは言い度胸じゃねーか」
 木場・純平(ga3277)が声を張り上げ。
「窓に防火シャッターがありますが、私の弾頭矢で破壊しますから大丈夫ですよ‥それより、連絡した方が宜しいんじゃないですか」
 王が木場の意見に同意する。
「そうだな、退路寸断や包囲されては元の子も無い」
 南雲は言い知れぬ不安を振り切り、潜入犯に連絡し、屋敷最後部に移動。
 最後部は大広間続く大きな扉があり、5メートル先に裏門がある。
 後は扉を破壊し、退路を作る。
 この時ばかりは、全員が安堵していた。
 それが一瞬の内に凍りつく事に‥。
 防火シャッターが、突如としてなくなり、両方の壁一面にびっしりとある窓から見えたもの、それは‥。
 ライフルを持った能力者のボディーガード10人と、手が銃になっている警備ロボ10体。
 そして‥‥。






 銃弾の嵐が鳴り響く。

●潜入犯
(「汝に恨みはない‥‥だが、これも依頼でな。悪いがあきらめてくれ」)
 通信が入ってきた後扉を破壊し少数いた敵を素早く殲滅した後、部屋に領主が居ないか確認し、慎重に行動しながら、二組は通信機で連絡し二階に居るだろうと推測。
 両側から鳴神と刹那が壁からちらりと1階部分と2階部分を見る。
(「おかしいですね」)
(「罠かもね‥」)
「ようやく俺の出番だぜ」
 リュウセイは探索の眼を使用し‥‥冷汗を流す。
(「1階大広間の扉の前の地下に銃型警備ロボ多数、2階からボディーガード6人‥しかも能力者かよ」)
「やばいぜこれは、俺が動くから皆に動かないよう言ってくれ」
 リュウセイの表情から、翠の肥満と刹那はかなり危険な状況に追い込まれたことを知る。
「分かりました。僕は隠密飛行で援護に回ります」
 通信機を使い、あちら側から神無も援護する事になり、リュウセイは颯爽とフローリングフロア中央まで出た。
「ばれちゃぁ仕方ねぇ! この俺が相手だ、先に行きたきゃかかってこい!」
 一瞬静寂後、20体近くの警備ロボが姿を現し、隠れていた2階ボディーガードも姿を現す。
「こりゃやべぇ〜」
 リュウセイは、翠の肥満と神無の牽制で何とか、元の位置に戻った。
「まったく、あなたは無茶をする」
 だが所々に傷を負っていた。
「へへへ、エキスパートも役に立つだろ」

「警備ロボはともかく、同業者(能力者)を敵にまわしたくないな‥‥」
 翠の肥満の戦っている上での感想
 警備ロボは一直線でしか攻撃できず、動きも遅いがボディーガードの方は統率が取れていて、かなりの手足れで厄介。
 残り時間13時間。
 警備ロボは翠の肥満と神無などの活躍で半数になったが、ボディーガードは、無傷。
 帰る時間を考えると、そんなに猶予は残されていなかった。
(「どうする‥それにしても‥」)
 膠着状態が続き、漸は胸騒ぎを感じる。
 その予感は‥最悪な物になる。
「侵入者諸君‥いや、あいつらの犬め、そろそろ諦めたらどうだ‥あ〜面白い物を聞かせてやろう」
 スピーカー越しに聞こえる声は、領主だと全員が感じたが。
 次の瞬間全員が凍りつく。
 録音された声と音は、銃弾の嵐に、囮班の怒号、悲痛、叫び声。
 そして‥漸の何かがぷつりと切れる。
「貴様ら」
「駄目です漸さん」
 鳴神の制止を振り切り、警備ロボの銃弾で傷を負っても、速度は変えず、1人で2階を目指す。
「仕方ありません。加勢します」
 2階が漸に注意がいっている内に、鳴神もそこから飛び出し、ソニックブームで一掃する。
 反対側に居る3人も飛び出した。
「漸さんが危ないです。ですから刹那さん達と私が向かいますので、神無さんはしたからサポートおお願いします」
 神無は頷く。
 いくら漸が強くても相手は6人、ソニックブームと流し斬りの奇襲で2人倒したが、肩は裂け、服は血に染まり、両足を撃たれ、もはや動けない状態の所を鳴神達の加勢や神無の援護でで、倒したが。

「‥ぐ」
 正門から突如現れた4人の加勢に不意をつかれた神無。
 ファイター2人の剣で、両方袈裟斬りにされ、スナイパーに腹を打たれ、ビーストマンに吹っ飛ばされ神無は気絶。
 そう‥彼等が領主の切り札、一番強い人物達だった。
 神無と漸が動けない状態のため4対4。
 しかし、相手も実力者なため時間がかかる事は誰が見ても明らか。
(「やるしか無いですね」)
「刹那さん、リュウセイさん、翠さん行って下さい」
「なに言ってんだ伊織」
「いくらあなたが強いからといっても、無謀過ぎるにもほどがあります」
「鳴神さん」
 鳴神は真剣な表情で相手を見下ろし。
「2人とも依頼を忘れたのですか‥自分の役割を果たしてください刹那さん‥大丈夫です。私はこんな所では死にませんから」
「すまねぇ伊織」
「約束だから‥絶対に死なないで」
「あなたはこのような場所で死ぬような人間ではないと、僕は信じていますよ」
3人はその場から移動する。
(「参ります」)

●囮班は‥
「手酷くやられたものね」
「そうだな」
 なんとか大広間に逃げ込んだが・‥状況は最悪と言ってもいいほどで。
 一番後方に居た王が、全身を撃たれ昏倒状態。
 後の者もそこらじゅうに被弾し、今動ける者は緋室と南雲の2人だけ。
 即席のバリケードは築いたが、破られるのも時間の問題。
「2人でやるしかなさそうね」
「分かった」
「待て、俺もやる」
「私も、やるよ」
「くくく‥こんな面白い事‥加勢するに限りますよ」
「やる」
 よろよろと歩み寄る4人。
「死ぬかもしれないわ‥それでもいいの」
 緋室の問いに頷く4人。

 そして、ドアが破られる。
 幸運だったのは警備ロボが居なかった事。
「抜く前に斬ると知れ――剣技・桜花幻影【ミラージュブレイド】」
 緋室の攻撃で前方に居た2人を倒し。
 すぐさま瞬天速でグラップラー3人は虚を突かれた奇襲をかける。
 南雲と遠石の目にも止まらぬ一撃で、心臓部を突き。
「おらぁぁ」
 木場は後ろから手を回しジャンプし、半回転してバックドロップの体制となり、相手の首をへし折る。
 注意がそちらに向いた相手。
 3人の後ろから、八百と優の増加させた一撃で首筋を斬る。
 だが7人倒したはずなのに、残り6人。

 何とか倒す事には成功したが、全員が立つ気力も無いほど疲労困憊。
 全員がこの依頼の成功を祈り、思いを仲間に託す。

●戦鬼姫
 鳴神と対峙している敵は驚いていた。
 相手は1人、こちらの圧倒的有利。
 まず、敵の女が二階から跳躍し渾身の一撃を放ち、ガードした剣が折れ1人死ぬ。
 続けざま、1人が背中をぶった斬られ即死。
 スナイパーの6発の攻撃は当たったが何も無かったかのように振り向き、衝撃波を放ち倒れ、1人だけとなる。
 その攻撃は鬼人の様に強く、勝ち目はもう無い。
 だが彼には、ある人からここを任され。
 命を賭けてもやらなければならない。
 彼はそう思っている。
 彼は善戦していたが‥20分後武器を弾かれ、
「貴方に恨みはありません‥ですが依頼のためここで死んで貰います」
 彼は静かに眼を閉じる。
(「すいません‥恵比寿さん」)
 彼の命は散っていく。

●領主と対決
「トラップがいくつかある、気をつけろよ。領主は一番奥の部屋だ! 間に合えよ、このやろうっ!」
 リュウセイが先行し、罠を掻い潜り領主の部屋にたどり着き、時計を見る。
 残り11時間・・もはや一刻の猶予も残されてない。
 全員が注意しながら部屋に入る‥。
 そこはモニターが多数あり、警備システム管理室。
「あそ‥」
 リュウセイは最後まで言えなかった。
 突如として割れんばかりの痛みが脳内を駆け巡る。
 そうこの部屋には、特別な周波数を絶えず発生させ、能力者のエミタに干渉。
 今の、全員の様に、頭を抑え蹲る。
 だが、そんな状態になっても2人は刹那をガードしていた。
「これで終わりだ」
 領主が姿を見せ、その手には起動スイッチ。
(「あれを壊せば‥くっ‥きついものがありますね」)
 頭を抑えながら、機を窺っていた。

「しぶといな貴様ら」
 15発目の銃声が鳴る。
 領主はじりじりと痛めつけるタイプなのか急所は外していた。
 それが領主の致命的ミスに繋がる。
「お前の味方全員やられちまったみたいだぜ!!」
 最後の力を振り絞り、リュウセイは声をあげる。
「何!」
 領主はモニターの方を振り向く。
(「好機は、今ですね」)
 ライフルを持ち、スイッチを破壊する。
 そして‥。
「‥‥止めは、刹那さんなのでしょう? 僕は、ここまで。後はあなたの問題だ」
 翠の肥満はライフルを収める。
「まて、頼む! 殺さないでくれ」
 腰が抜け逃げようとする領主
「‥‥さようなら名も知らぬ領主」

 こうして依頼が終わった。
「憐華大丈夫か! 凄い傷だ。くそっ守れなかった」
「漸、凄い顔‥漸も1杯怪我している‥もしかして私のため」
「ばっばかやろう、そんなの言えるか」
 全員が生存を確認し、喜び合う。
「時間が無いのでこれで失礼します‥皆さん本当にありがとう御座いました」
深々とお辞儀をし、ここから去ろうとした刹那を鳴神は呼び止める。
「伝言は、お伝えしました。何か伝えたい事はありますか刹那さん」
 鳴神達の方を向く
「ごめんなさいと‥伝えてください」
 その目には涙が浮かんでいく。
 そして刹那は去っていく。
「これが私の咎なのでしょうか‥やりきれないものですね」
 前回の力不足が招いた結果を思いながら‥そう呟き。
「こんなのってありかよ」
 刹那に何もできぬまま終わって悔しむ遠石。
 さっきまで喜んでいた全員の表情が暗くなる。
 そう‥全員が理解していた。
 次出会った時は敵になるかもしれない‥と。