●リプレイ本文
●2008年×月×日 AM09:00
「お待たせしました。今回参加する傭兵達の名簿、並びに搭乗機のリストです」
「うむ、ご苦労。参加KV12機か‥‥まあ4機ずつ3チームの対抗戦でキリがいいな」
UPC陸軍演習場の一角、臨時指揮所として設けられたテントの下で、正規軍の将校と部下の士官が話し合っていた。
「えーと、チーム名の件ですが‥‥実はまだ1チーム、申告がないんですけど‥‥」
「構わん。それらしく『アルファ』とでもしておけ」
士官の質問に、やや素っ気ない態度で答える将校。
実は今回の模擬戦、元々は別のUPC将校が企画したものなのだが、上層部の人事異動で急に担当が代わったため彼が監督役を任されたのだ。
将校が双眼鏡を覗くと、広大な演習場の平地と、十字路を描くように交差した川の光景が目に入った。
本日正午をもって、あの場所を「戦場」として傭兵同士のKV戦、オペレーションネーム『傭兵大戦』が開始される。
といってもあくまで模擬戦なので、兵装の類は全てダミー。たとえばディフェンダーは模擬刀、銃器はゴム弾を使用し、機体各所に取り付けたセンサーで命中・ダメージ判定を行うルールだ。
「近頃はバグア軍が鹵獲KVを改造して投入してくるケースも報告されておるしな。傭兵達にとっても、こうして互いに技量を競い合う機会があっても悪くなかろう」
ルールはごく単純。交差した川の両岸4箇所に陣地が設けられ、そこには旗の入った箱が設置されている。3つのチームに分かれたKV部隊にそれぞれ1つずつ(第3チームのみ2つ)陣地が与えられ、他2チームの陣地の箱を壊すか、KVを直接倒すかして、生き残ったチームが勝利者だ。
まあ軍にしてみればKV対KV戦のデータ収集、傭兵側にとってはレクリエーションを兼ねた演習なので、優勝したから何か賞品がもらえるというわけでもないが。
ちなみにこれは傭兵側で打ち合わせた合意事項として、「空中移動及び空戦禁止」「箱は地上に設置」の2点がルールとして追加されている。
なぜなら空戦を行うには戦闘エリアが狭すぎるし、箱を川の底に隠したら水中戦キットを装備していない通常KVでは潜航することができず、試合自体が成立しなくなってしまうからだ。
「あのう、ちょっと気になったんですが‥‥」
詳しいルールが列挙された書類をめくりながら、士官が尋ねる。
「第3チーム『天狼』だけ陣地が2箇所になってますよね? この場合、箱を2つ壊された時点で敗北ということですか?」
「ん? そういえば、前任者の引き継ぎ書類にはその辺りが書かれておらんな‥‥」
将校はわずかに思案し、
「まあ『最初の箱を壊されたら敗北』で良いのではないか? でなければ、陣地が多い分『天狼』が一方的に有利になってしまうからな」
きっかり正午に試合開始。いわゆる「三すくみ」のまま長期戦にもつれこむのを避けるため、開始後5時間ごとに制限エリアを狭め、エリア外になる前に陣地を移動しなかったチームは「敗北」という決まりだ。
(「しかし模擬戦とはいえ、覚醒状態でKVを操縦するには乗っている能力者自身も練力を消費するわけだから‥‥現実問題として5時間、10時間とぶっ通しで戦い続けるとは考えにくいがな」)
そんな事を考えつつ、将校はのんびりとマグカップのコーヒーを啜った。
●AM10:00〜戦闘準備
やがて日も高くなり、時計の針が午前10時を回ろうとした時――。
ラスト・ホープの方角に現れた12個の小さな点が、傭兵達の操縦するKVの機影となって演習場上空に飛来した。
試合開始にはまだ余裕があるが、少しでも先んじて状況を自軍の有利に進めるべく、前準備のため彼らは早めにやってきたのだ。
なぜならばこの模擬戦、陣地を守るための障害物やトラップ(もちろんダミーだが)の設置を禁じていないからである。
今回参加の傭兵、及びチーム分けは以下の通り。
第1チーム「アルファ(仮称)」:如月・由梨(
ga1805)、NAMELESS(
ga3204)、飯塚・聖菜(
gb0289)、青海 流真(
gb3715)
第2チーム「混沌騎士団」:クラーク・エアハルト(
ga4961)、カルマ・シュタット(
ga6302)、イスル・イェーガー(
gb0925)、美環 響(
gb2863)
第3チーム「天狼」:漸 王零(
ga2930)、終夜・無月(
ga3084)、砕牙 九郎(
ga7366)、神無月 るな(
ga9580)
「KVでの体育大会、面白そうですね。無月さんと別の班ですけど、容赦はしません」
ディアブロで着陸した由梨は、別チームに所属する恋人が搭乗するミカガミを遠目に眺めやった。
今回ははしなくも敵味方に分かれる形となったが、それはそれ、これはこれ。
チームの勝利のため、手加減するつもりなどさらさらない。むしろレクリエーションだと思えば、あえて恋人のKVと戦うことに何となく胸のときめきすら覚える。
「負けるのは嫌いですからね」
戦闘エリアの中では北西の一角に陣地を構える由梨達のチーム「アルファ」は、4機のKVを陸戦形態に変形させて立ち上がると、まず旗を収める箱の強度を確認した。
箱は縦横1.5mほどの立方型。金属製でかなり頑丈なコンテナといってよい。
「ま、KVのパワーで殴られたらあっという間にペシャンコだろうけどな」
ディアブロの指先で箱の表面を軽くつつき、NAMELESSが苦笑する。
次に彼らが始めたのは、陣地の周囲に無数の塹壕を掘る事だった。KV各機の機体も予め演習場の土の色に合わせて迷彩塗装を施してある。
つまり、最初から防御を重視した塹壕戦を展開する方針であった。
「俺はまだ未熟だから、むやみに動いてもやられるだけだろう。だったら、自分の陣のエリアで待機し、一瞬で勝負をかける」
スキンヘッドで長身巨乳の美女、聖菜が男勝りの口調で言いつつ穴を掘る。
「相手チームは強そうだから、奇策を用いないと、勝てない以前に戦えないよね」
やはり翔幻でせっせと塹壕を掘りつつ、ドラグーンの流真はチラっと川の方へ視線を向けた。
聖菜とは対照的に身長145cm、青い髪を長く伸ばしたあどけない美少女のような流真だが、実はれっきとした二十歳の男である。
ひととおり塹壕を掘り終えると、彼らは別に穴を掘り、肝心な旗入りの箱をそこへ隠した。
「あまり共通事項の無いメンバーが集まったものですね?」
クラークは同チームの顔ぶれを見回して苦笑いした。
まあチーム名「混沌騎士団」もそれが由来かもしれないが。
「KV版騎馬戦みたいなものですか。思いっきり楽しみましょう。そして勝ち残りますよ!!」
少年とも大人とも言い切れぬ中性的な美貌にポーカーフェイスな微笑を湛え、楽しげに響がいう。
一方純粋に「強くなる訓練のため」との動機で参加したイスルは、やや緊張したように押し黙っていた。
戦闘エリア内では南東の角、すなわち由梨達のチームとははす向かいの陣地に集結した「混沌騎士団」の面々は、やはり到着直後から陣地内に遮蔽物(コンテナ、装甲板、鉄板など)を配置し、自分たちや箱を守る盾代りの防壁を構築し始めた。
ただし防戦一方ではなく、チームの4機をさらに2機1ペア(クラーク&カルマ、イスル&響)に分け、イスル&響が箱の防衛、クラーク&カルマが他チームの攻撃を担当と、攻守のバランスを配慮した方針をとっている。
またイスルのウーフーが電子戦機の強みを活かし、チームの情報通信を確保することになっていた。
ただしウーフーのジャミング中和装置はあくまでバグア軍の電子ジャミングに対抗するための機体特殊性能であるため、この状況では結果として敵チームまで電子支援する形になってしまうのはいた仕方ないが。
「さて、せっかくだし優勝目指して頑張るか」
陸戦形態で立ち上がった漆黒の雷電のサブアイカメラで周囲の地形を把握し、王零はじっくり策を練った。
彼が属するチーム「天狼」は、戦闘エリアの北東と南西、2箇所の陣地を持つという点で他の2チームとやや条件が異なる。
2つの箱(旗)を守らねばならないデメリットはあるが、これは同時に「2箇所の陣地から敵チームを狙える」というメリットでもあった。
そこでまずエリア南西に王零&無月、北東に九郎&るなを初期配置。それぞれの陣地周辺には鋼線ネットや落とし穴、クレイモア地雷のトラップを張り巡らし、また予め軍に要請して準備して貰った資材を使いKV各機が身を護る即席のガレージを築き上げた。
ちなみにSES兵器がバグアのフォースフィールドを破るには能力者の練力付与が必須条件となるが、この「練力」は能力者の体から離れた瞬間から減衰を始め、急速に効果が薄れる。
KV兵装の空対空ミサイルの射程距離が(在来型戦闘機のAAMに比べ)極端に短いのも、地雷や固定機雷といった設置式兵器がワームに対して殆ど通用しないのもこのためであるが、皮肉な事にフォースフィールドを持たない友軍のKV(陸戦形態時)に対しては、通常兵器の地雷でも充分に効果があるのだ。
序盤は専守防衛に徹し、相手が素通りする場合は手を出さない。
他の陣営のどちらかが倒れたら残りの方へ攻め込む。
目指すは箱の破壊ではなく、敵機全滅――これがチーム「天狼」の基本方針である。
「大規模作戦以外で協闘するのは初めてですね? よろしくお願いしますです♪」
九郎と共に北東の陣地を守るるなの雷電から、純白にカラーリングされた無月のミカガミに挨拶の通信が送られてきた。
「フム。まさに三者三様‥‥といった所か。これはどうなるか見物だな」
双眼鏡で3チームの動向を観察していたUPC将校が、興味深そうに呟く。
「そろそろ時間ですね‥‥」
腕時計を覗いた士官が、部下の兵士に合図を送った。
川を挟んで対峙する傭兵3チームの陣地構築がほぼ終わり、いよいよ臨戦態勢に入ったとき――指揮所の方角から試合開始を告げるサイレン音が鳴り響いた。
かくして始まった「傭兵大戦」。
果たして勝利を握るのはどのチームか?
●12:00〜戦闘開始!
「アルファ」「天狼」の2チームが防戦主体でいく関係上、序盤戦で最初に攻勢に出たのは「混沌騎士団」のクラーク&カルマだった。
「さて、作戦通りにいきましょうかカルマさん?」
両肩に「守護騎士」のエンブレムを描き、機体を白くカラーリングしたクラークの雷電、そしてカルマのディアブロが動き出す。
まず北側の橋を渡って「天狼」陣地の前を横切るが、「序盤は専守防衛」と定めた九郎とるなの雷電は攻撃して来ない。
そこでクラーク達もトラップ類に警戒しつつ「天狼」陣地の前は素通りし、そこから西側の川へと向かう。
その途中でクラーク機がクレイモア地雷の1つを踏んだ。
小規模な爆発と共に散弾代わりのゴム弾がバラバラと雷電の機体に命中。センサーがダメージを伝えるが、重装甲KVの損傷はさほどでもなく、かまわず突き進む。
その様子をガレージの奥から見守りつつ、クスリとるなが笑う。
「兵法の基本ですね」
このまま「混沌騎士団」の2機が「アルファ」陣営に攻め込んでくれれば、結果として「天狼」が漁夫の利を得られるからだ。
クラークとカルマは西側の川岸まで到達したが、予想に反して「アルファ」側からの砲撃はない。
実は由梨のディアブロは箱から400mほど離れた位置の塹壕に身を隠して狙撃態勢をとっていたのだが、川向こうの目標を狙うにはまだ距離が遠い。
一方、川の深さは50mもあるので通常のKVでは渡河できない。クラークとカルマは、やむなく唯一の進入路である橋を渡り始めた。
そのとき、不意に川の中から水中キットを装備した流真の翔幻が水飛沫を上げて浮上、127mmロケットランチャーをロックオン。見事な奇襲――といいたい所だったが、残念ながら遠距離兵器であるこの兵装は戦闘機形態でしか使用できなかった。
逆にクラーク機からスラスターライフルの猛反撃を受け、慌てて幻霧を展開して水中に退避。
アイデアはよかったが、兵装の選択を誤った。
流真の翔幻はこの他に水中用ディフェンダーを装備していたが、これは相手も水中に来てくれない事には使いようがない。
その後反撃らしい反撃を受けることもなく、クラークとカルマは橋を渡りきった。
渡ってすぐの地点に地雷と落とし穴のトラップが仕掛けられていたが、これはカルマが機槍ロンゴミニアトの先端で地面を探り、怪しい地点を避けていく。
さらに前進したとき、塹壕に身を伏せた由梨がスナイパーライフルRよる狙撃を開始。
「行くぜぇーーっ!!」
タイミングを合わせるようにして前方の塹壕に潜んでいたNAMELESSが部隊の先陣を切って挑み掛かるが、エース級のKV2機を相手に回してはさすがに分が悪い。
「ナナシさん、今回は敵同士です。お互いの健闘を祈ります」
といいつつ、ヒートディフェンダーで反撃するクラーク。
ハンマーボールを振り回しての奮戦も虚しく、間もなくNAMELESSは指揮所から最初の撃墜判定、及び戦闘エリア離脱の勧告を受ける。
その後クラークは由梨機の射撃地点を狙ってグレネードランチャーを発射、続いてカルマと共に本格的な突撃に移った。
広範囲に及ぶグレネードの被弾によりダメージを受けた由梨機はいったんブーストで後退、聖菜のR−01と合流して最後の防戦を試みる。
聖菜は内心の動揺を隠せなかった。彼女としてはNAMELESSが何らかの破壊工作を行ってくれれば、それに連携して奇襲を仕掛けるつもりでいたのだが、頼みの僚機が真っ先に墜とされてしまったのだ。
それでも持ち前の闘志をかき立て、ブレス・ノウを起動させディフェンダーでの斬撃を狙うも、渾身の一撃は虚しくかわされ、クラークの砲撃、さらにカルマの機槍を浴びて力尽きた。
「このままでは終わらせません!」
陣地を守る最後の1機となった由梨が、ハイ・ディフェンダーをかざして敢然と塹壕から飛び出した。
実力的には、今回参加メンバーの中でもトップクラスに入る由梨である。
カルマが仕掛けてきたスパークワイヤーをかわし、一気に斬り込んでいく。
だがそこで、ブーストをかけたクラークの雷電が由梨機の傍らを突破。穴の中に隠していた箱を見つけ出されてしまった。
『そこまで! アルファ・チーム、陣地の陥落により失格!』
無情にも指揮所からの通信が入る。
「悔しいですわ。実戦なら、ここからでしたのに‥‥」
唇を噛み、川から上がってきた流真と共にすごすごエリアから離脱する由梨。
せめて無月のいる「天狼」と手合わせしたかったが、それすらも叶わなかった。
時刻はまだ1時間と経っていなかった。
●13:00〜決戦! 騎士VS狼
由梨達のチームがエリアを出る最中、残りの2チームはそのままの位置で待機。
10分ほどの間隔を置き、再び模擬戦は再開された。
「混沌騎士団」VS「天狼」、4機対4機の決戦となるが、クラーク&カルマがアルファ・チームの陣地があった北西の陸地に残されたため、十字路型の川を挟んでそれぞれ2機ずつのKVが睨み合う状況となった。
「漸さんと終夜さん‥‥味方ならこれ程心強いものは無いんですけどね」
川の向こうにある南側の陣地を眺めやり、クラークがコクピット内で肩をすくめる。
試合は再開したものの、傭兵達のKVはなかなか次の動きを見せなかった。
「天狼」チームとしては王零&無月、九郎&るなのどちらを動かしても1方の陣地ががら空きになってしまう。
一方イスル&響が陣地を守る「混沌騎士団」はクラーク&カルマが遊撃部隊として自由に動けるものの、アルファ・チームとの戦闘で(データ上)機体損傷を負っているので、今回の参加メンバー中「最強タッグ」ともいうべき王零&無月と正面からやり合うのは、どう考えても得策ではない。
そんなわけで、4箇所に布陣した計8機のKVは、各々の思惑で身動きがとれなくなってしまったのだ。
将棋でいうところの「千日手」という状況である。
『試合中断! このままではらちが明かん』
指揮所のUPC将校からKV各機に通信が入った。
『仕切り直しだ。クラーク、カルマ両名のKVはいったん自軍の陣地へ戻りたまえ』
正規軍としては試合の勝ち負けがどうあれ「KV対KV」戦闘のデータさえ取得できればそれでよい。
正直「あまり無駄に時間をかけられても困る」というのが本音であった。
「混沌騎士団」「天狼」が各々初期配置に戻ったのを確認後、試合再開を告げるサイレンが鳴り響く。
「皆にいと高き月の恩寵があらんことを‥‥」
無月が穏やかに呟き、パートナーの王零と共に動き出す。
この状況で「天狼」チームが取るべき戦法はひとつ。
九郎たちとも呼応して、2つの橋から南東エリアにある敵陣地に攻め込む――つまりは総力戦である。
それを悟った「混沌騎士団」側も、西と北の橋を渡って突撃してくる敵チームを迎え撃つべく砲撃態勢を取った。
「‥‥こちら防衛班、イスル‥‥敵の接近を確認、迎撃します‥‥。‥‥接近はさせないよ‥‥。狙い撃つ‥‥!」
北から進撃してきた九郎とるなの雷電が手前に設置した防壁に阻まれたところを、イスルのウーフーがスナイパーレーザーと長距離ショルダーキャノンによる砲火を浴びせかける。
「橋を渡る‥‥って‥‥うかつだよね‥‥」
響のS−01も、イスルと連携してスナイパーライフルD−01で狙撃。
とはいえ敵も重装甲KVの雷電が2機、そう易々とは墜ちない。
「この勝負、もらったってばよ!」
「道を開けなさぁい♪」
力ずくで防壁を排除した九郎とるながついに「混沌」側陣営内に侵入した。
九郎の雷電はほぼ同時に西の橋から突入した王零とタイミングを合わせ、グレネードランチャーを発射。
そこから先はKV4機が入り乱れての混戦である。
「天衝と月狼の隊長と戦える機会なんて滅多に無いですからね! 楽しませて貰いますよ!」
楽しげに口許を緩め、クラークは温存していた試作リニア砲で無月の機体を狙う。
だが無月のミカガミは持ち前の運動性でこれを回避、2対象同時攻撃の可能なダブルリボルバーでクラーク、カルマ両機に応戦した。
王零もこれに連携しヘビーガトリング砲を掃射。
「‥‥射撃戦では埒があきませんね。突撃します、援護をよろしく」
ディアブロにブーストをかけたカルマが、機盾アイギスで身を護りつつロンゴミニアトで漆黒の雷電に挑む。王零もまた、セミサキュアラーを掲げてこれに応じた。
一方、イスルと響は北から侵入した九郎&るなと交戦に入っていた。
「イスルん、腕を上げたわね。響くんも、やるわねぇ♪」
ヘビーガトリング、対戦車砲により中距離からの攻撃を繰り返するなに対し、
「‥‥っ! させないよっ‥‥ウーフーは意外と硬いんだ‥‥!」
イスル、響も一歩も引かず応射を続ける。
実戦と見まがう激しい攻防が繰り広げられたが――。
最終的には総合戦力で勝る「天狼」が「混沌騎士団」の4機から撃墜判定を勝ち取り、模擬戦を制する事になった。
「みなさん、どうもお疲れ様。良い戦いでした」
試合終了後、クラークはにっこり笑い参加者一同にコーヒーを振る舞った。
傭兵達は互いの健闘を称え合い、最後は全員で翼を並べたKVを前に記念撮影。
最後は監督役のUPC将校自ら、参加メンバーを前に労をねぎらう謝辞を述べた。
「本日は諸君らの健闘で実に有意義なデータを収集することができた。今後も戦場やルールを変えてこのような模擬戦を重ねることで、また新たなKV戦術を編み出すヒントが得られるかもしれない」
もっとも来年、「傭兵大戦2009」は開催されるのか?
――それは将校自身にもよく判らなかったが。
<了>
(代筆 : 対馬正治)