●リプレイ本文
神城が合流地点に到達した時、既に8人の傭兵達が集まっていた。
本部からは通信機が与えられた。
「遅くなってすまない、神城仁と言います」
「あんたがUG(アンダーグラウンド)と言われる地下組織の人間か。会うのは初めてになるかな? 真田 一(
ga0039)だ、宜しく頼む」
「私はヴィス・Y・エーン(
ga0087)よー」
「ちぇ可愛い子ちゃんじゃないのか‥‥って冗談冗談、俺は相麻 了(
ga0224)ってんだ宜しくな」
「然し‥神城と言ったか。始めて逢った筈なのだがな、覚えがあると感じるのは何故だろうか?」
その問いに神城は否定も肯定もしなかった。
‥まぁ良い。知っているのであれば自ずと思い出せるだろう。
「私の名は御影・朔夜(
ga0240)だ」
「御山・アキラ(
ga0532)だ」
「私は、崎森 玲於奈(
ga2010)よ」
「俺は南雲 莞爾(
ga4272)だ」
「‥イリアス・ニーベルング(
ga6358)」
自己紹介が終わった後、作戦会議が始まった。
「仲間からの情報だが、廃倉庫には所々に隠れるスペースがあるが、中央付近はぽっかりと穴が開いたように何も無い、中は薄暗く所々の天井に穴が開いている」
そう言って神城は地図を見せた。
「あー、やだやだ。この手の輩って、よーは自分が好き勝手やりたいだけでバグアの名前を利用してるだけなんでしょー? 絶っ対なーんにも考えてないに決まってるよー」
ヴィスがうんざりした表情で言った。
「しかし、警戒を怠らない方がいい、中央付近に罠が仕掛けられている可能性がある。皆はどう思う?」
御影の問いに全員が肯定の言葉を言った。
「通信や隊列はどうする?」
そう聞いたのは南雲だった。
「それについては私が考えた。まず突撃班と攻撃班に分ける。突入前、倉庫入り口周辺に罠や待ち伏せが無いか確認し他のものと同時に倉庫内に照明銃を打ち込み光ったら光で目をやらないよう注意して突撃班全員で突入、奥に進みつつ索敵、突撃班同士で死角をカバーしあいキメラと鉢合わせたら応戦しつつ双子を探す。双子を見つけたら目晦ましに照明銃を撃ちかける。このとき突撃班の目を光でやらないよう注意する。双子の位置を報告がメインなので目晦ましできずとも良し‥‥通信の方は取り合えたら連絡する‥という感じでどうだ」
全員異論の余地は無く、話し合いの結果、突撃班、真田、御山、崎森、ニーベルング、攻撃班エーン、相馬、南雲、御影、神城に決まった。
「了解! 俺っちは攻撃班な訳ね。ま、仲良くいこうよ神城さん」
「ああ」
相馬に向かって頷いた
道中、相馬が、質問した。
「そういえば、皆なんでこの依頼受けたんだ? 俺っちはまぁ、縁があってね」
誰もが聞いてないように各々何かを考えながら無言で歩いていた。
真田はWBの事について考えていた。
(「それで今回の依頼の方は‥‥WB(ワールドブレイク)と呼ばれるバグアと手を組み世界の崩壊を望む能力者をも含んだ組織、か。‥能力者同士の戦いか。バグアと戦うために能力者となった俺。そうでない者もいるということは聞くが、どうしてそっち側にいることになったのか‥後で考えるとしよう。油断できない相手だしな。その上、できるだけ生きたまま捕獲すること、か」)
(「動機と呼べる物は‥特には。今回は、そう言う依頼が舞い込んできたと言うだけで」)
イアリスは口にするかどうか迷ったが、何か聞かれそうなので辞めておいた。
「皆冷たいですよね神城さん」
いきなり話を振られた神城は曖昧に頷いた。
「相馬、あまり神城を困らせるな」
御影に窘められ、少しへこんだ相馬だがすぐに復活して、かわいこちゃん達の所に向かった。
「あいつは変わらんな」
「そうだな」
御影と南雲は溜息をついた。
案の定相馬は無視され、挙句の果てには、御山に邪魔呼ばわりされていた。
(「ふっ今回も戦闘になれば‥」)
そして廃倉庫に到着した。
まず、あたりの様子を確認し、突撃班前へ出た。
「照明弾発射後、各自覚醒し突撃犯は私に続け」
御山の号令と共に扉を開け、御山、真田、イアリスが照明弾を発射し、突撃隊が中に入った。
●突撃隊
「――“Auferstanden(蘇れ)”――」
イアリスは右肘から先が悍ましい漆黒の竜腕に変化し、覚醒した。
覚醒状態になった4人は、倉庫に入ったが、誰もいないように静まり返っていた。
「死角補う様に慎重に行動するぞ」
敵が見えないという事もあって4人は慎重に行動した。
中央からやや北西の所の、捨てられた荷物の上から2人の人影が見えた。
「どうする?」
真田は罠の可能性もあり、立ち止まり、ひそひそ声でみんなの意見を聞いた。
「行かなければどうする」
「罠の可能性はあるが、このまま手を拱いては相手の思う壺だ」
「行こう」
全員一致で品物と品物の間を通り抜け中央まで走った。
「ようこそ死の舞台へ」
「ちょっと遊んであげる」
「崎森!」
崎森が照明弾を撃った。
これが戦闘の合図だった。
和也がブーメランを投げ、そこを狙って飛び込んできた相手を信也の銃で追い払うといった形の陣形だった。
「‥‥いい動きをしているが、騙しとしては安っぽい演出だよ‥悪いが、渇望の王<<Zairic>>が獲物に選んだ相手を生かせるかどうかは保障出来なくてな‥下手をすれば、ッハハハ‥!!」
先に動いたのは崎森だった。
素早く距離をつめ、蛍火を振り下ろせる距離まで来たが、双子は笑って手を翳した。
(「眩しい」)
あまりの眩しさに崎森は目を瞑った。
そう、双子は手に鏡を仕込んでいて、天井の光を反射させた。
「死にな」
崎森はブーメランで攻撃され、後方に吹っ飛び真田と御山が受け止めた。
「すまない、突っ走ってしまった」
崎森が顔を歪めながら、小さく呟いた。
その隙を双子は見逃さなかった。
「月下上鋭!」
「跳弾」
双子は荷物からジャンプし、和也が三人が固まっている所に目がけブーメランを蹴り、信也は地面に向かって、2丁拳銃の銃弾を発射した
「弾け月鋭」
「守れアミッシオ」
真田は向かってくるブーメランに自分の剣で受けとめようと正面で構え、御山は盾で跳弾をガードしようとした。
凄まじい加速のついたブーメランを完璧に受け止めることは出来ず、じりじりと押されだれもいない角度の後方に流し、御山は、一発はガードする事に成功したが、もう一発は左肩付近に少し被弾した。
「「もうそろそろ終幕だ。いでよキメラ」」
双子はポケットに隠していたスイッチを押した。
「しまった」
「くそっ」
御山や真田が気付いた時には既に遅かった。
4つの品物が、破壊し、中からは4体のケルベロスが現れた。
●攻撃班
「――アクセス」
御影は黄金の獣瞳の発現と銀髪化し覚醒した。
攻撃隊全員が覚醒した後、突撃班より少し間を置き、倉庫の中に入った。
「薄暗いな‥‥やり辛さは向こうも同じだといいがね」
南雲は呟いた。
少し歩を進めると、中央付近から銃撃音や残響音が聞こえ、その付近で照明弾が発射された。
「行くぞ」
中央付近まで走り、近くの遮蔽物に隠れた。
神城は、双子を確認した瞬間、かっとなり前に出ようとしたが、御影に止められた。
「落ち着け、神城。暴走した所で好機は生まれない‥冷静になれ」
「‥すまない」
神城は自分の非を素直に認め頭を下げ、そして‥。
「神城、私が前に出るからお前が奴を止めろ。この状況だ、動きでも息の根でもどちらでも良い」
「なーに、俺っちも御影の制止が無かったら、飛び出していたぜ」
「俺もだ」
「あーら、私もよー」
気を遣われたことに感謝した。
「ありがとう皆」
「だが‥今は待機だ。罠があるかもしれんからな」
少し待った後、4対のキメラが現れ、双子は後方に移動した。
「追うぞ」
5人は走り出した。
「服の端にペイント弾がついてるほうがー、拳銃使いだからー」
そう、ヴィズの案で、ヴィズ1人が先行して隠密選考で隙を見て、気付かれぬようペイント弾を打った。
「分かった」
双子が二手に別れるのを見て、信也を神城とウィズと御影、和也を南雲と相馬という形で別れた
●東崎信也
「しつこいんだよ」
こちらは銃撃戦が展開されていた。
傭兵達のチームは、遮蔽物に隠れながら応戦していたが、跳弾の時はかわすしか無かった。
「‥跳弾使い‥もう一人の≪魔弾の射手≫か。全く、私とは性質が違うとは言え皮肉な話だよ」
御影は小さく笑った。
「共に戦って気付かれないとでも思ったか? あの時の弾丸‥それでなくとも切り札は持っているだろう?」
「さてな」
御影の問いに神城は曖昧な返答をした。
「まぁいい‥今は奴を倒そう」
(「やはりそうかー‥」)
ヴィズは今気付いた。
跳弾と言うのはそう上手い具合に狙えるものだろうか?
地の利は向こうにあるし、もしかしたら何処から如何撃ち込めば、何処に兆弾が飛ぶかを知っている可能性は無いか? 一見何の意図も無く置かれている荷物も、身を隠そうと『そこ』へ誘導する為のものであったとしたら?
神城と御影に手招きし、作戦を伝えた。
「俺は構わない」
「よし、それでいこう」
三人は、信也から姿が完全に隠れる遮蔽物の後ろに隠れた。
「無駄なんだよ」
信也はある角度に向けて発射した。
その音を合図に反撃を開始した。
「さて‥では≪魔弾の射手≫ではなく“悪評高き狼”の爪牙を見せてやるとしようか」
「音速弾」
「いけ〜」
遮蔽物の上に立ち信也を攻撃し・・信也は沈黙した。
●東崎和也
「先ずは一人潰す!」
「さて、始めようじゃないか」
和也の前に、相馬と南雲が対峙した。
「うざいんだよ」
和也はブーメランを投げたが、二人はそれを避けた。
「俺は黒い道化師! 道化師と踊ってみるかい?」
「‥‥成程、面白い使い方だ。しかし俺の前にはもうじき無意味になる‥‥!!」
相馬のトリッキーな動きや、それに乗じて隙を狙った南雲の攻撃を和也は何とか防御した。
一方、相馬と南雲も、和也の攻撃で幾分かの傷を負っていた。
消耗戦になると思っていた矢先、相手に隙が生まれた。
「信也!」
それは信也がやられた時だった。
「戦闘中によそみするなっつーの」
「拘り過ぎたのが、アダとなったな」
「しまっ」
和也気付いた時には既に遅かった。
相馬と南雲の渾身の一撃で和也は昏倒した。
●バクア戦
1人1体任されイアリスは、一体のケルベロスと対峙していた。
だが、イアリスの消耗は激しかった。
ケルベロスの鋭利な爪で、所々に傷が出来ていた。
イアリスは距離を取っていた。
他の3人は既に終わったらしく、この戦いをじっと見守っていた。
そう三人には分かっていた‥‥この戦いには手出し無用だと
(「これで終わらせる」)
「真音獣斬」
黒い衝撃波がケルベロスを切り裂いた。
「グォォォォ〜〜〜。」
怒り狂ったケルベロスは、イアリスめがけ突進した。
「‥なら、瞬閃の抜刀術と言う物を見せてあげる」
瞬速縮地で敵の背後に跳躍し、先手必勝で敵の反応よりも先に抜刀一閃にて斬り伏せた。
「“Auf Wiedersehen(さようなら)”――中々に楽しませて貰ったわ」
●結果
双子を捕縛し、傷ついた物は、救急セットを使用し回復に努めていた。
双子は笑った。
「何がおかしいんだ」
神城は怒りを抑えた低い声色で言った。
「「僕達を捕まえても何にもならないよ‥だって僕ら‥」」
「「WBに栄光あれ」」
突如として傭兵達に悪寒が走った。
「皆走れ」
倉庫の外まで走りきった後、双子が体内に仕込んだ、小型爆弾を作動させた。
結局何も分からぬまま依頼が終わりを告げた。
全てが終わった後‥‥。
(「命を賭けているとは思わない。終われば気付く…これは以前にも経験したと。既知感とは常に事後でありそう言う物だ」)
「神城‥又会おう」
「ああ‥」
御影と神城は握手を交わし、御影はその場から離れた。
「俺も行くか」
「私もー」
「私も行く」
「‥私も」
一様に悔しさを顔に滲ませながら、真田とヴィスと御山とイアリスはその場を後にした。
崎森は不愉快そうに刀を仕舞い独りごちた。
(「私に必要なのは真に渇望を癒せる事のみ‥‥オマエ達では渇望の王の贄さえも勤まらなかったらしい」)
「お先に」
崎森は、不愉快そうにその場を後にした。
(「能力者の裏の世界に関わるのもこれが二度目だが‥‥俺の歩んで来た、光の裏側にはまだ遠い」)
「失礼する」
崎森から少し遅れて、南雲はその場を後にした。
「これからもUGに協力するからさぁ、可愛い女の子を紹介してよぉ」
いまだ緊張が解けない神城に優しく語りかけた。
(「これが今日一番言いたかった台詞なんだよね」)
神城はやれやれといった表情になった。
「今度な‥それよりいいのか? 皆行ったぞ」
「おっといけね〜、絶対だからな〜。」
相馬は走ってその場を後にした。
「WBか‥次あった時には必ず‥」
これがWBとUGの長きに渡る戦いの幕開けだった。