●リプレイ本文
本部から4つの無線機と一つの使い古された暗視ゴーグルが貸し出された。
正午過ぎ、草むらの前に、今回依頼に来た8人の傭兵達がいた。
「まずは自己紹介からしようか・・知ってる者もいるようだが、俺の名は終夜・無月(
ga3084)」
「久しいな終夜‥私の名は御影・朔夜(
ga0240)だ」
「私、鳴神 伊織(
ga0421)と申します」
「俺は大山田 敬(
ga1759)ってんだ」
「‥烏莉(
ga3160)」
「‥歪十(
ga5439)‥と申す」
「私はアンジェリナ(
ga6940)だ」
「‥ティーダ(
ga7172)よ」
各々自己紹介が終わった後、終夜が今回の作戦の事に関して最初に切り出した。
「みんな分かってると思うけど、確認しとくよ‥今回の依頼は少女の捕獲で、7人の仲間がいて夜にしか現れない‥ここまでは良いかな?」
全員が頷いた。
「まず少女の確保だけど、誰かやりたい人はいるかな?」
「誰もいなければ私がやります」
そう言ったのは鳴神だった。
「君には複数人の相手をしてもらう事になるから遠慮してもらえないかな」
「私の方こそ皆の事を考えずにすいません」
鳴神が少女の事を気になったのはある理由があった。
話し合いの結果、少女の止め役にはティーダに決まった。
「私が必ず捕まえて見せるわ」
そして次の話題に移った。
「俺としては通常班と潜行班の二つに分かれて、選考班は昼の内に草むらに入り、通常班が後から草むらに入る‥と言うのはどうかな?」
終夜の案に添った形で話し合いになり、通常班を終夜・鳴神・歪十・アンジェリナ・ティーダ、潜行班を御影・大山田・烏莉に決まった。
「くれぐれも気をつけてね。」
「ふっ、誰に言っているんだ」
「だいじょうぶだぜぇ〜」
「‥参る‥」
3人は草むらの中に入っていった。
しかしこの作戦には1つの懸念材料がある事を皆が理解していた。
●夕方
潜行班を除く5人が草むらの前で思い思いの事を考えていた。
(「今回も人の相手ですか‥。今は人類同士で争っている場合では無いと思いますが‥そんな理屈は相手には関係ないでしょうからね。こういう事をしている以上、自分が斬られる覚悟も出来ているでしょう。手加減は必要ありませんね‥消えて頂きましょうか。」)
鳴神はそう思っていたが、一つ気になることがあった。
(「個人的に少女の血色の目が気になりますね‥確かめたい事が出来ましたので捕まえて話を聞きたい所ですが‥」)
歪十は今回の依頼の事について考えていた。
(「今回の任務はキメラじゃなくて人間だが、戦うのであればしかたがない・・・こちらも全力を出させていただく」)
ティーダは少女の事をどうやって止めるか考えていた。
(「‥少女必ず止める‥どんな事をしてでも‥」)
アンジェリナは、何も考えず時間が来るまで眼を閉じていた。
そして、終夜は皆の心配をしていた。
「それでは行こうか‥皆にいと高き月の恩寵があらんことを‥」
太陽がすっかりと消え、5人は草むらの中に入っていった。
●夜
潜行班の3人は昼から今まで、草むらの中を丹念に調べ所定のポイントで待っていた。
念の為潜行班は全員が無線機を持っていた。
「――アクセス」
御影は黄金の獣瞳の発現と銀髪化し覚醒した。
全員が覚醒し隠密潜行を使い通常班と付かず離れずの距離を保って後をついていった。
歩いて20分最初に異変に気付いたのは烏莉だった。
「‥囲まれている」
その言葉と同時に、7人の男が出てきて、3人に襲い掛かった。
ここは彼女達の庭‥囲むのは動作も無かった。
「――別に、驚くほどの事でもない‥これも既知の範疇だ」
(「この全員攻撃を食い止めれば‥必ず終夜たちが来てくれるはず」)
「これでも食らえ」
大山田は長い黒紐と棒切れを用意し棒に紐を結び付けたものを作っておいていた。
(「当たるかどうかは運次第」)
‥があえなく避けられた
「馬鹿やってないで‥来るぞ」
もう2m付近まで接近していた。
銃を持ち一人に狙いを定め攻撃した。
頭と胸に被弾しその男は倒れ、その穴をつき、全体攻撃から逃げようと試みたが、倒れた男の後ろに少女がいた。
「誰かは分からないけど・・ここで死ね」
「‥くっ」
銃で身を守り、背中を合わせ、三人は何とか致命傷にはならなかったが、肩口を斬られ、特に少女に斬られた烏莉は、肩口の他に、右脹脛を斬られ立っているのやっとの状態だった。
「アラ、まだ生きてたの」
少女の眼はすでに血色だった。
「私の刀は‥私は血に飢えている‥もっと血を‥!」
一斉に少女達はその場から距離をとった。
「そこまでだ」
5人が潜行隊を守るような位置に戻ってきた。
「大丈夫か?」
「ああ何とか‥しかし烏莉が‥」
「‥大丈夫だ‥」
終夜は烏莉の状態を見た。
「無理はしない方が良いよ‥ここを生きるためには‥大山田は烏莉を少し離れた所に退避させてくれ‥皆行くぞ。」
●終夜&御影
終夜と御影は3人の男と対峙していた。
位置は少し終夜が前にいる形だった。
「――Was gleicht wohl auf Erden dem Jagervergnugen――、誰一人逃れる事など出来はしない――この“悪評高き狼”の爪牙からはな」
「さて、いこうかな」
3人と対峙し最初は、気配を消した攻撃に苦戦を強いられ、怪我をしている御影を庇いながらの終夜の方が疲労していた。
「大丈夫か終夜?」
「なんとかね」
なんとなくだが二人は察知していた‥次が最後の攻撃になる事を。
距離は5m、草むらで身を隠し、3方から男達は走り出した。
だが、二人とも、既に気配は感じていた。
背中合わせになり、2m狙いを定め撃ったが、左二の腕に被弾しただけで、男達は止まらなかった。
眼前に3人の男が剣を振り下ろした。
男達は勝利を確認したよう、にやついた顔だった
「「甘い」」
御影が主兵装二連続射撃に続く二連射発動の二連続射撃で頭と胸を撃ち、終夜が首を切り裂き、くるりと回転して、2人の銃断が額に命中した。
「私と無月――“双月の狼”を甘く見たな」
自身の想定と違えた事でありながら、それさえも既に知っていたとする既知感に‥酷く詰まらなさそうに一人ごちた。
「さて、みんなが心配だから先を行こう。」
●鳴神
鳴神は2人の男と対峙していた。
(「少女の事が気になりますし、手間はかけれません」)
だが、相手が二人のため、決定打を与えることができず、疲労だけが蓄積していた
(「仕方ありません」)
鳴神は眼を閉じた。
(「馬鹿め」)
男達は4mほど離れた場所から鳴神に向かって走り出した。
(「今です」)
「───もう、お逝きなさい」
体中が炎のオーラを纏い、一人を袈裟斬りし、もう一人を流し斬りし、二人は倒れ、鳴神は少女とティーダが対峙している方を向いた。
●ティーダ
ティーダは少女と対峙していた。
少女は他の男達と違って、隠れもしなかった。
「あなたの相手は私です」
「そのようね‥あなたには血の渇きが癒せるかしら」
フェイント、牽制を繰り返し、間合いを取りながら気を惹きつけ、隙があれば四肢を狙って攻撃を行っていたが、少女は嘲笑うかのように、避けていた。
途中、何者かの気配を感じていたが、少女が制した。
いつの間にか人が居ない所に誘導されていた。
「そろそろ飽きてきたし、終わりにしましょう‥貴方の血はどんな味‥」)
(「それなら」)
ティーダは瞬天速で、眼前まで近づき疾風脚を放ったが既にそこにはおらず、ティーダの背後4mの所にいた。
「死なない程度にしといたわ」
手足の所々から血が噴き出し、ティーダは倒れた。
(「何が何でも‥逃すことだけは」)
引き際かどうかを考えていた少女の足をティータが静止させた。
「よほど死にたいらしいね」
●アンジェリナ&歪十&?
アンジェリナと歪十は一人の男と対峙していたが、事態は劣勢で、致命傷は避けているものの、所々に血が滲んでいた。
「歪十後ろだ」
「むっ」
気付くのが一瞬遅れ、男が振り下ろした刃で、袈裟斬りにされたが、深い傷ではなかった。
「‥ふっ」
アンジェリナ全てのスキルを使った攻撃も相手には肩を少し切るぐらいの傷にしかならなく急所は避けられた。
歪十がアンジェリナに耳打ちした。
「分かった」
歪十が前に出て、敵の男が剣を薙いだ。
「破」
筋肉で剣を歪十の体から抜かせなかった。
「せい」
アンジェリナの渾身の一撃が敵を襲った‥かに見えたが、致命傷は与えられなかった。
そして、歪十の力が抜け、アンジェリナに、右肩に敵の剣が突き刺さった。
だが今の一撃で、敵も相当の傷負い、仲間が次々と敗戦しているのを感じとり、逃げようとした‥がその一瞬の隙が命取りになった。
「‥死ね」
背後に隠密潜行で機会をうかがっていた烏莉がナイフで相手の首を突き刺した。
アンジェリナは紙で刀の刃を挟み、根元から先までなぞるようにして血をふき取りゆっくり鞘に収める
「――任務完了」
ここにいるのは負傷者ばかりで後は仲間に任せる他無かった。
●決着
少女はティーダに止めを刺そうとしたが、鳴神が駆け寄り、少女一旦離れた。
(「やっぱり‥そうなのですか」)
少女の瞳が血色に染まっているのを見て、確信した。
(「止めなくては」)
少女と鳴神が戦闘に入り、互角の勝負を演じていた。
「強いのね‥久々に本気になれる」
少女の空気が一瞬にして変わった。
(「これは‥神楽さんと同じ」)
凄まじい速さで鳴神の手前まで来て、一撃目は何とか防いだが、2撃目と4撃目と5撃目で左肩と右肩と右脹脛が裂けた。
鳴神は剣で体を支えていた。
「神楽さん‥」
少女は驚きを隠せない目で鳴神を見て、納得したかのように、刀を納めた。
「お姉ちゃんの友達ね‥私は刹那‥お姉ちゃんにあったら伝えておいて、速くこっち側の人間になれば楽になる‥とね」
3つの足音が近づいてきた。
「潮時ね」
少女は足音と反対側の方向に走っていった。
そう、その足音は終夜達だった。
「終夜!! 肩かしてくれ!!」
「いいけど?」
といって大山田は終夜に飛び乗り肩車をしてもらって少女の脚を狙い撃った。
が、間一髪の所で少女には当たらなかった。
「くそ外した‥‥ってあり〜!!」
(「落ちた」)
「やれやれ何やっているんだか。」
御影はため息を一つ零した。
「あなたは‥俺と似ていますね‥進んだ道は違いますが‥」
立ち上がり金色の目で少女去っていくのを見ながら、そう呟いた。
再び少女‥刹那が傭兵達の前に現れるのは、少し先の話だった。