タイトル:英国王立兵器工廠の憂鬱マスター:御神楽

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/13 23:15

●オープニング本文


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●新機体プラン――報告書
 機体案A――最高の性能を持つ水中用KV。
 地球上の七割は海である。制海権を得る事は、補給・輸送面における絶大なアドバンテージを得る事に繋がる。バグアにはギガ・ワーム等もあり、海上輸送に依存する傾向は弱いと想定されるものの、人類側に海を使わせない為にも、制海権の確保を軽視するとは思えない。その為には重装甲、大火力をメインとしたKVが必要であろう。
 英国海軍の報告によれば、現状、海戦におけるバグアと人類側の戦力比は7:1とも9:1とも想定され、海中戦闘における強力なKVの配備は急務である。
 主な支持者は海軍、及び同退役軍人等。

 機体案B――高い生存性能を誇る中堅KV。
 メルス・メス社のディスタンは高い生存性能を誇っているものの、その機動力に難があるとされている。一方我が社のワイバーンが誇る持戦能力に比べると、生存性能の面では、まだ改良の余地がある。
 一方の中堅KVへ眼を向ければ、そういったKVは更に品薄であると言わざるをえない。パイロットの生命を最優先し、前衛での長時間戦闘に耐えうるKVこそ、戦場に必要なのである。
 攻撃能力を犠牲にしつつも、高い機動性に重装甲を兼ね備え、大容量の燃料タンクを積載する。方向性は大筋で確定しており、明確な方針の元に開発を開始できるであろう。
 主な支持者は空軍、及び英国工廠の経理部門。

 一方、重要なのが各特殊機能。
 現在開発が検討されているのは、ハイマニューバやマイクロブーストを前提とした新型ブーストや、機械的な効率化を推し進める事によるリロードのシステム化。それから、錬力の流れを切り替える事によって戦闘力の効率化を図る新システム。
 あとは売り上げだ。
 マーケティングによればそれぞれ一定の需要が見込める。
 販売台数だけでいえば、水中用KVの方が数は少ないであろうが、利率の面で言えばおそらく大差ない――との報告で、経済的な予測は現在互角だ。もっとも、これも傭兵の生の意見次第で変わりもするであろうが‥‥。


●ルーシー・モントゴメリ
 タバコの煙がぷかぷかと浮かんでいる。
 報告書を手に、ルーシーは寝ぼけていた。タバコの灰がひざの上にぱらぱらと落ちている。熱くないのか傍目にも不思議な光景。
 彼女が面白いと思ってるのは錬力の流れを切り替える効率化システム。かなり難しいものだが、実現すれば非常に面白いシステムとなる。その他のシステムにも、面白いものが並んでおり、彼女は毎日、あれやこれやと数式と会話中だ。
 その上で、最終的に機体コンセプトに合致した完成度の高いシステムを搭載すれば良い。
 問題は機体だ。
 機体案をこれ以上集約する事はどうしても無理がある。
「んーむー‥‥うぼあー‥‥」
「やめて下さい、その声!」
 周囲の言葉も何のその。
 ルーシーは煙草を灰皿ですり潰し、椅子にもたれかかった。
 最高級機水中用KVと、中堅生存重視KVでは、どうしても相容れない。両方同時に開発続行! ‥‥なんて素晴らしい条件でも整わない限り、片方は、切らねばならぬ。
 それを承諾させるなんて並大抵の事ではないし、傍目にも解る通り、彼女はそういう根回しチックなのは苦手中の苦手。
 そんでもって、マーケティングとか軍の出向社員とか、会社には色々な立場の人間がいて、それぞれ皆意見を出している。未だに決め兼ねているのはルーシーだけ。
 そろそろ、意見をきちんと出さねばならぬのだ。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
稲葉 徹二(ga0163
17歳・♂・FT
鯨井昼寝(ga0488
23歳・♀・PN
アリス(ga1649
18歳・♀・GP
アッシュ・リーゲン(ga3804
28歳・♂・JG
雪村・さつき(ga5400
16歳・♀・GP
柊 香登(ga6982
15歳・♂・SN
ロジャー・ハイマン(ga7073
24歳・♂・GP
リュウセイ(ga8181
24歳・♂・PN
エメラルド・イーグル(ga8650
22歳・♀・EP

●リプレイ本文

●Plan.A
 再度の意見調整。
 会議室にはルーシー以外にも数名の関係者が列席している。
「えー、皆さんご苦労さーん。ほいじゃ、ま、ちゃっちゃと始めよっか」
 手を掲げて挨拶するルーシー。
 応じて、雪村・さつき(ga5400)が元気よく立ち上がり、口火を切った。 
「まず、バイパーの貸与権が値下がりした事もあるし、中堅KVの市場は一変したと見て良いと思うわ」
 前回の彼女は、阿修羅とバイパーを基準として、『貧者のバイパー』完成を目指した。しかし、バイパー改が更に優秀となった事もあり、バイパーを越える性能を獲得したとしても、思うような利益は無いのではと予想した。
 そこで、技術的なお披露目、パフォーマンス効果もある水中用高性能機を開発した方が良いのでは、との事だ。
「まぁねぇ‥‥」
 この辺りの主張は、経済に疎いルーシーにもだいたい理解できた。
「私も、前回同様こちらの案を押すわ」
 続いて、鯨井昼寝(ga0488)が声をあげる。
「やっぱり、水中戦において、強力な敵に対抗し得るKVが必要よ」
 最大手のドロームや、独自路線を突っ走るカプロイア等との差別化を図るには、一分野における最強の機体を完成する事の意味は、大きい。
 例として取り上げたのは、件の雷電。とてつもない価格でありながら、重爆撃機として見た場合、その性能は恐るべきものだ。貸与価格だけを除けば傭兵達の反応も上々。高級機を駆るエースパイロットは、それ自体が自社製品の宣伝にも繋がると付け加えた。
「既存イメージから脱却する為には、弱点の無い高品質機が必要、かと」
 エメラルド・イーグル(ga8650)は淡々としている。
 海中戦に適した高性能機は未だ存在せず、配備が急がれている。また、最近の流行は一点に特化したKVよりも、高レベルでバランスのとれたKVだと彼女は主張した。
 この意見には昼寝も賛成だ。
「あえて悪い言い方をしたら、無個性でも構わないとさえ思うしね」
 主な顧客をある程度富裕層に限定すると、幾重もの改造が施されるのは必須だ。となれば高レベルで安定した性能を保持すれば、あとは乗り手次第でどういう使い方も出来るであろうと見ている。
 あわせて、機体に似合った武装や装備、専用ユニットというものを開発する事で、戦闘スタイルに幅を持たせる事も可能と考えた。
「なら、中堅KVに高級水中戦用ユニットをつけるのはどうなんだぜ?」
 拳を握り締め、リュウセイ(ga8181)の大きな声が響く。
 水中用の推進器等を搭載して動けるようにすれば両立できるのではないかと考えての提案。
 ただ――
「コストがえげつない事になりそうじゃない?」
 ルーシーが心配事を口にする。
 確かに防御ユニットを開発して鎧騎士のようなものや、水中に適応できる機体も作れるだろうが、バランス等を考慮したアタッチメント等、全てをシステム化せねばならない。性能的にもかなりの不安が残る。
 雷電と同様に新規武装を開発するのが良いところだろう。
「なら、槍! 射出して飛んでく槍とかどうよ?」
「あぁそういうのなら良いねぇ、簡単だし?」
 にまと笑うルーシー。
 いわばパイルバンカーから一歩踏み込んだ武装か。
「あとは、水中用KVなら電子戦機で潜水艦みたいなのが良い気がするぜ」
「あたしも賛成。空海両用は無駄も多くなるし、水中での機動力を重視する、って事で」
 さつきの言葉にふむと頷くルーシー。
 他の機体と足をそろえられる速力を最低ラインとし、高い拡張性を持った高バランス機体という案件には、ほぼ反対意見は出てこない。ただ、水中専用とするか否かについては、稲葉 徹二(ga0163)から異論も出た。
「もし此方を採用するなら、陸戦も可能とすれば、陸戦を好む傭兵にも売れるんじゃないでしょうか」
 その上で、特殊能力には英国工廠が得意とするブースター系でどうかとの事だ。
「‥‥岩龍等のような特殊電子波長装置はどう?」
 特殊機構の類に話が及ぶに至り、エメラルドは、変わらぬポーカーフェイスで皆を見回した。大規模な戦闘での活躍を志向し、味方全体を底上げする為には最も解りやすい手段だ。
 ただ、その発想は攻撃的で、偵察、支援を中心とするのではなく、前線指揮官として戦う為のものだ。
 可能であれば、10機20機と同型機が集中すれば効果が増すような装置ではどうか、と付け加えたものの――
「んー‥‥そいつはどうかな。そうしたシステムに対応したものを全機に搭載しない限り、ランチェスターとか、あの辺り以上の効果は無いと思うよ」
 首を傾げ、ルーシーは顎に手をやった。
 彼女は暫しぼんやりと考えていたが、突然、リュウセイの言葉に現実に引き戻された。
「あんまり気合入れても頭が疲れてくるし、ここでちょっとお茶といこうぜ」
「じゃあ、マーブルケーキでも‥‥」
 自分の手荷物からチョコレート味のケーキを取り出すアッシュ・リーゲン(ga3804)。リュウセイとしてはこれを機会に軍人の意見もと思っていたが、残念ながら、同席はしていなかった。


●Plan.B
 人数としては、プランBを推す傭兵のほうが多い。
「いよいよどっちが開発されるか決まる、ってか‥‥気合入れて行くか!」
 休憩も終わり、アッシュが手を打ち合わせる。
「俺は前回同様こっちを推す。第一の理由が価格、第二の理由が必要性、って所だな」
 新登場した雷電は、その価格でかなりの注目を集めた。がその一方、彼が主張するように、古参の傭兵でもおいそれと手を出せない。十分な改造も目指すとすれば尚更資金に悩まされる事になるだろう。
 必要性の面では、敵のヤバい機体が皆飛行能力を持っている。つまり応急措置的な意味も含め、全体の底上げの必要がある。
「性能面では火力も捨てられないね」
 赤い髪を揺らす柊 香登(ga6982)。
「火力が低い機体は敵から無視される傾向もあるから、無下にすると前衛としての役割が半減してしまうし、平均以上は叩き出したい。とはいえ全ての性能で高性能を求めるのは難しいから‥‥」
「どちらかを切り捨てなきゃ、なりません」
 徹二が身を乗り出し、アッシュが言葉を繋げる。
「知覚をバッサリと切り捨てちゃ、どうだ?」
「俺ァ、3.2mmレーザーもあるし、知覚を重視するのが良いと思います」
 この辺りはまだ議論の分かれる所だ。
「それから、錬力を維持するのにはあまり意味を感じません」
「へぇ、何でまた?」
「実戦では、錬力が切れる前に戦闘の勝敗はつきます」
 ルーシーの質問に答え、徹二はその上で、錬力は特殊能力の利用回数として捉えられている傾向が強い以上、他を重視すべきと主張した。
「えー、こほん。それじゃ、私からもプレゼンを少し」
 水上・未早(ga0049)が眼鏡を掛けなおす。
 彼女がベースとして考えていたのはワイバーンだ。元々の基本案がワイバーンに近い事もあり、コストダウンを見込める。IRSTには他社製のものを積んでいるが、自社規格のものに切り替える事でコストダウンを図れる。
 そもそも、ナイチンゲールのシステムで十分と考える見方もある。
「それに、どうしても線が細いように感じるの。ワイバーンのエンジンを参考に高出力のエンジンを完成させられれば、機体容積に余裕が出ると思う」
「それの事だけど‥‥」
 ――と、ロジャー・ハイマン(ga7073)が手を挙げる。
「XN−01を再設計できないでしょうか?」
 目標の高機動、重装甲、燃料タンクについて、ナイチンゲールは現在でも十分な性能を保持している。機動性ではハヤブサ、装甲ではバイパー等と良い勝負だ。となれば、これをベースとして新型機を開発しよう、という意見が出ても不思議ではない。
「物理攻撃性能は度外視して、他の強化に回せば、高機動、重装甲を達成可能です」
 ただその一方、バージョンアップでも積載量が増加しなかった以上、単純に燃料タンクを大型化するのは難しいと思われた。
「ですから、錬力の供給を操縦席で操作できるようになれば、錬力の消費を抑えられるかと‥‥」
「前回彼女が提案したもの?」
「――に、近いものと思ってもらって構いません」
 ルーシーに指差されたアリス(ga1649)がきょとんとする。
 彼女としても、自身が提案したシステムとの親和性から、こちらの案を推している。
「ナイチンゲールをベースにするのは、俺も賛成だ」
 ニヤリと笑うアッシュ。
「防御を優先して、次点として回避や生命の強化を図ったらどうだろ?」
 質が重要なのは事実なれど、数が揃わねば戦いにならない。
 彼としては、きちんとコンセプトを纏めて低コスト化をはかりたいとの考えもある。
「いや、防御と回避なら、回避を優先したほうが良いと思います。防御はアクセサリで強化する事も容易です」
 香登の提案にも一理ある。ただ同時に、最初から強ければより強化できる、という見方ができるのも事実だった。
「その辺りの意見はまだ異論あるでしょうが、俺も、ナイチンゲールをベースにするのを賛成させてもらいます」
 徹二が言うのは、主にコスト、開発に当たっての余力の問題だ。
 中堅クラスの既存機体であるナイチンゲールを改良し、中堅機はこちらで補いつつ、海戦機を同時進行で開発してはどうかというもの。ハイマニューバの効率を改良すると共に、新たなシステムを搭載して効率化を進め、拡張性によって性能をカバーできると彼は主張した。
「同時進行ねぇ‥‥」
 煙草の煙を吐き出して、ルーシーが面倒くさそうな顔を見せる。
「売りたくありませんか、ナイチンゲール。‥‥俺ァ良い機体だと思ってるんです。型落ちと切り捨てるには、惜しい」
「うぐ‥‥」
 煙草を咥えたまま、彼女は口をゆがめた。
「ま、まぁ、それはそれとして、他に、特殊能力に関しては、何かある?」
「はい‥‥」
 満を持してアリスは手を挙げた。
「前回、ちょっと説明が足りなかったと思うし‥‥今一度」
 改めて彼女の主張するところに拠れば、起動しているだけで少しずつ錬力を消費するという制約下において、どれだけ効率を上げられるかというものだ。
 弾薬や生命、錬力等、補給の為に後退する要因は何点かある。ただ、こまめな補給を必要とする事は、一時離脱回数が増える事に他ならない。このうちの錬力だけでも余裕があれば、その分長時間戦闘が可能という事になる。
「確かに派手さはないけれど‥‥その分圧倒的な『手堅さ』を持つ‥‥筈。どうかしら?」
 一定の錬力を消費して選択して性能を上げる案も示されたが、これは件の試作機と競合する面もあり、ルーシーに言わせれば、基礎技術が無い分、あちらよりも完成度が劣る可能性があった。
 それに比べれば、既存のブースター技術を生かすほうが有利、とも言える。
「そうだな‥‥他には、リミッターを取っ払うようなのは搭載できないかな?」
 ものはついでとアッシュが提案するも、一時の瞬発力として搭載するにはリスキーで、頑丈な前衛機というコンセプトに不似合いだから、と、ルーシーから釘を刺された。
「他、どちらの機体でも、何か細かい意見あれば聞くぞ〜」
 半ばやけくそ気味に両手を掲げ、ルーシーは最後の意見を募った。


●報告
 さて。
 先の意見を聞いた上で私見を付け加え、ルーシーは案を提出する事にした。
 結論としては『両方必要なもの』という事。中堅機にとってはバイパー改の値下げという強敵があり、水中機にとっては主戦場が空中というネックがある。とはいえそれぞれ、前線からの要望という観点において、一定の需要が見込まれる。
「面倒くせえなぁ‥‥」
 ぼやきつつ、ヤレヤレ仕方ないと言った風に、彼女は報告書を纏め、上司の下へと足を運んだ。
 秘書に通され、居並ぶ上司たちを前にする。
「ルーシーッ、君の意見を聞こうッ!」
「えーっと‥‥極論になりますが、二案同時進行で行きましょう」
 その言葉に、会議室がざわつく。
 まず一方の機体として対案されたのは、件の機体案A、水中用機体だ。
 コンセプトとしては、特に無い。水中戦に特化しつつ、各種の性能は高いバランスで纏め上げる。機体は人型、潜水戦特化に変形する事で、高い水中戦を保持させる。陸上戦への対応は蛇足となる可能性もあるが、上陸戦の展開が可能かどうかは、海戦において大きな差を出す。
 問題は特殊能力で、現状ではお家芸の方向で纏めてハイドロジェット等を搭載するか、電子戦機能を付与するかだ。水中用電子戦機が無いという問題は確かに存在するものの、この高性能機に搭載すべき機能か否かという面において、若干の疑問も残されている。
 あとは、専用の武装を多数開発する事で、需要を伸ばす。
 強力な敵が出てきてから対抗するのではなく、強力な敵が出てくる前に制海権を得るべき、と報告書は締めくくった。
「まぁ、仮称としては以前提案のあったリヴァイアサン。私としちゃ、海の怪物っつーより、その、人間的な俗っぽい国家を守る為の存在っつーか何つーか‥‥」
「ふむ。それで、第二案は?」
 第二案の中堅KVは、ナイチンゲールをベースとする。
 まず最大のメリットは、価格だ。
 既存機の改良だから予算も少なくて済む。
 回避や防御を中心に高い能力を獲得しようとした場合、ナイチンゲールはベースとして悪い機体ではない。そもそもナイチンゲールが普及しなかったのは、致命的な搭載能力の低さ、そして既に時代遅れとなりつつあるその機動力が原因だ。
 まず、エンジンはワイバーンのものを参考とし、大推力を獲得して足の遅さという問題を一気に覆す。これによって他の新鋭機と歩調を合わせやすくする事が可能だ。また、攻撃面においては、攻撃性能を大幅にカットし、システムに余力を持たせる。攻撃のメインは知覚だ。
「その理由は?」
「私見ですが、攻撃に関してはバイパーがあります。はっきり言えばネタが被ってます。それに、知覚兵器なら、ある程度は武器で命中をカバーできますし、敵にとって『嫌な武器』を利用できれば、敵も無視できないでしょ?」
 ルーシーの物言いに、上司達が数名、眉を潜める。
 特殊能力については錬力切り替えによる効率化を図ると同時に、ブースター系で何かを導入するのが堅実、現実的と彼女は付け加えた。
「それに。皆ナイチンゲールが好きみだいですから。これを無下にしちゃあ、英国紳士の名が廃るってもんでしょう」
 なるほど、それはそうだと頷く上司数名。
 気分良さそうに頷く老人達の中には、貴族階級出身の自尊心の高そうな男も混じっていた。
 ところが、英国紳士――なーんて言っている当のルーシーはアイルランド人だ。イングランド人みたいな変態紳士相手には心の中でこっそり舌を出しておき、バグアの次にファッキンである。
 とにかく、まずは報告は終了。
 両案は同時進行での検討を続行し、現実可能性があれば、両方共に開発する、という方向に事は運ぶ事となった。