タイトル:ランドリーとティアラマスター:みろる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/21 09:43

●オープニング本文






 西田はぼんやりと乾燥機の中で回る衣服を眺めていた。
 赤や青や緑が、丸い円の中で、舞い上がり、また、落ちる。
「ねえ」
 と、コインランドリー内にある水槽の金魚に餌をやっていた江崎が、言った。
 何となく返事を発するのが億劫な気分だったので、無言で、見やった。長身の背中が、少し屈むようにして、水槽の硝子を叩いている。その中に居る金魚に向けて喋ったようにも、見えた。
 見えたので、また、乾燥機に目を戻した。
 暫くするとまた、「いい天気だね」と、聞こえた。
 金魚に天気なんか分かるわけないのに、と思った。思ったら、何か、「金魚に喋ってるの」とか何か、口から出ていた。
 自らの発した声が、コインランドリーの安っぽい室内に、ポツンと声が浮かぶ。
「金魚に喋ってるわけ、ないじゃん」
 江崎の声が、背中で、答えた。
「そうなんだ」
 とか、結構意外とそこはどうでも良かった気がしたので、いい加減な返事をして、ハッとしてふと見たら、もう江崎が隣に座っている。
「金魚に喋るわけ、ないじゃない」
 端整に整った顔が間近にあった。
 とりあえず何か鬱陶しかったので、「でもさ」とか顔を背けて、話を変えた。
「そんなに欲しいのかな、ティアラ」
「欲しいんじゃないか、ティアラ」
「またこれ、宝石満載の金ぴかのやつだったら分かるけどさ、これってただの錆びた、鉄の塊じゃないの」
 隣の丸椅子の緑色のビニルの座面から、茶封筒を取り上げ、中身を取り出す。江崎から貰った、今回の任務の資料が入っていた。
 江崎はコインランドリーの管理人という、実態の良く分からない仕事の傍ら、仲介業のような事をやっていた。つまり、キメラの出る地域に眠るお宝や、一般人の立ち入りが困難な場所にある曰くつきの品などの回収を請け負い、ULTに勤務する西田に、能力者への仕事として斡旋させるという仕事だ。
 こんなご時世の中にあっても、好事家や収集家は存在するらしく、多少の出費をしても手に入れたい物がある、と江崎の元を訪れる人間は、少なくないらしい。
 茶封筒の中に入っていた資料を、江崎の手が横から奪う。
「曰くのあるものらしいよ。幸せを呼ぶティアラだとか、何か」
「明らかに幸せよりも不幸を呼びそうだけど」
「悪魔は悪魔のふりして現れないっていうのと、似てるよね」
「似てないよね?」
「要するに、ある資産家の元屋敷の蔵に眠ってるという、このティアラを持って来てくれれば、それだけでいいんだってば」
 興味もなさそうに、自らが作成した資料のページを繰っている。「簡単でしょ」
「キメラが襲って来たために、今は誰も住んでない元資産家の屋敷なんでしょ」
「そうね、キメラがキメラが襲って来たために、今は誰も住んでない元資産家の屋敷だね」
「ってことは、キメラが出るんだよね」
「そうね、キメラは出るよね」
「そんな所にこんな錆びた鉄の塊取りに行けっておかしくない」
「じゃあ、笑っても、いいよ」
「誰かが危険に晒されるかもしれない、とかは考えないんだね」
「そうね、基本その辺はどうでも良いんじゃない。多分、ティアラのことしか、考えてないだろうし」
「なめてるよね」
「むしろその人からしたら、このティアラなめんな、って話かも」
「絶対、友達になれない」
「蔵は西側と東側に二つある。そのどちらかにティアラが眠っている、らしい」
「何でもいいけどさ」
 西田はそこで、回り続ける乾燥機を指さした。「これ今日、何か長くない」
「そうかな」
「延々、回ってる気がするんだけど」
「じゃあ今日は長めに回しちゃいますよ、みたいな気分なんじゃないの」
 どうでも良さそうに言った江崎の横顔を、何となく、暫く眺める。「あのさ。気分で動く機械とか、困るんですよ、管理人」
「俺のコインランドリーの機械は、俺に似せて、気分屋さん特別仕様なの」
「あのね。もう一回言うけど、気分で動く機械とか、困るのね、管理人さん」
「じゃあ、もう止めて取り出しちゃえばいいじゃない」
 そう言われれば、そうなのだけれど、西田は何となく納得できず、「それは」と拗ねる子供のように顔を伏せる。
「だって何かちょっと、勿体ない感じがするし」
 江崎は、書面に目を落としたまま、愉快げに小さく唇をつりあげた。








●参加者一覧

幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
セシリア・D・篠畑(ga0475
20歳・♀・ER
ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
要 雪路(ga6984
16歳・♀・DG
秘色(ga8202
28歳・♀・AA
エクリプス・アルフ(gc2636
22歳・♂・GD
リズレット・B・九道(gc4816
16歳・♀・JG
壱条 鳳華(gc6521
16歳・♀・DG

●リプレイ本文





「それはな、幸せを呼んでおるのではなくての」
 屋敷の周りに居るというキメラを探索している最中、秘色(ga8202)が、さもこれからわしは良いことを言うぞ、とそんな表情で、こう、述べた。「キメラを呼んでおるのじゃよ」
 どう頑張って見ても、鉄の塊にしか見えない、不穏なティアラの外見について述べた言葉だったが、どちらかと言えばそれは、言ってはいけない呪文を唱えてしまった状況に近かった。
 え、と思わず幡多野 克(ga0444)は、外見だけを見れば、美人なお姉さんにしか見えない彼女の顔を見やる。けれど、どういうわけか彼女はすっかり得意げで、むしろ、どうじゃ、上手い事言うじゃろ、わし、くらいのどや顔だった。
 そんなどや顔されてもどうすれば、と、とてつもなく下らないことを、さも得意げになって言うオカンの生態に戸惑う息子、みたいに、克は、無表情な顔を伏せる。
 そのやり取りを眺めていたエクリプス・アルフ(gc2636)は、内心で「オカン。頼むから、やめてくれよ」と、克の横顔に、思わず勝手なナレーションを付けた。
 その密やかな遊びがばれたとも思えないけれど、ハッとしたように顔を上げた克が、じっとアルフの方を見た。
 アルフはそのまま何かゆらーとか、隣を歩いていたリズレット・ベイヤール(gc4816)の方へ顔を向け、「お、今回もよろしくなのですよ」とか何か言って、すかさず今のくだりを無かったことにしてみようとしたのだけれど、勢いで押そうとしたわりに、はあ、とかため息をついた彼女のテンションが全然付いて来てなかった。
「よろしくお願い致しますね‥」
 とか何か、探査の眼を発動した彼女は、紅いメッシュの入った銀髪の髪を微かに揺らし、ちら、とアルフの方を見て、すぐに目を伏せる。それから、「‥今回はティアラ捜索ですか‥蔵にあるということは貴重な物なのでしょうね‥」とか、明らかにあんまり興味もなさそうな風情で呟いた。
「ティアラね。綺麗なものなら私にも似合うが、今回のは、ちょっと、違うな」
 壱条 鳳華(gc6521)が、同じく興味もなさそうに便乗したかと思うと、「私に似合うと言えば、こういうものを言うんだ」とか何か誰も聞いてないのに、持ち物の中から真珠をあしらった銀製の豪奢な冠、白帝の冠を取り出した。頭に掲げている。
「いやあ、やっぱり、従姉さんと似てますね」
 アルフに言われ、何処を見てそう言われたかは分からなかったけれど、大好きな従姉に似ていると言われた事は嬉しかったので、とりあえず「そうかな」と、鳳華は気分を良くする。
「ええ、そっくりですよ。その冠はネタ振りか何かだと解釈したら良いんですよね?」
「何だろうこの不気味な威圧は」
「しかしその前に」
 集団の少し前を、ロジー・ビィ(ga1031)と共に歩いていたセシリア・D・篠畑(ga0475)が、抑揚の抜け落ちた、能面のような表情で言った。「‥先ずは全員で周囲の敵掃討なのです」
 それは、自動音声案内よりも抑揚のない機械じみた声だったけれど、そんな彼女がどういうわけか、討伐という言葉にハマったかのように、「綺麗に掃討」とか何か呟いて、更に「兎に角掃討。どんどん討伐、がっつがつ討伐、ばっつばつ討伐、むやみやたらに討」とか黙々と呟きだしたので、これは機械の暴走、あるいは誤作動なのではないか! と、要 雪路(ga6984)は、すっかり、慌てた。
「ちょちょちょ待ち待ち、セシリア、大丈夫かいな」
 しかし友人たるもの、そんなセシリアの事はすっかりお見通しでしてよ、と言わんばかりにマイペースなロジーは、「蔵の中‥伝説のぴこハンが眠っているかもしれませんわ!」とかすっかり自由な事を言って、どういうわけか手に持っているぴこぴこハンマーを、ピコピコと叩いた。「セシリア。どう思いまして?」
 うきうき、ランランと目を輝かせて、セシリアを振り返る。いやそんなん、めちゃめちゃ冷たく「どうとも」とか言われるに決まってますやん、とか何か雪路が思った矢先、「はい‥きっと、伝説のぴこハンが」とか何か彼女が思いっきり無表情に同意するので、思わず、「えー!」とか大声を上げた。
「ど、どうした、雪路」
 鳳華が慌てる。
「いやごめん、ちょっと取り乱した」
「あそういえば。雪路。一緒に依頼に来るのは初めてだね。よろしく。レッドの力、見せてもらうよ?」
「でもウチのんレッドというよりオレンジやけど、ええのん? いやほら、告知は、アスタロトの赤募集ーやったやん」
 無邪気に話す女子二人を聞くでもなく聞いていた克は、告知って‥何だろう、とか凄い気になったけれど、女子二人が余りにも無邪気過ぎるので、何も言えない。
「ほな壱条はん、折角やし、名乗りみたいなの考えとく? ウチはー‥紅蓮の食い倒れ、アシュレッド! とか? ほんで、壱条はんは、高飛車仕様、アシュブルーとかで」
「何故私だけ、仕様の話なんだ。しかも高飛車仕様って、何だ」

 するとそこで、突然、茂みなどを重点的に探していた秘色が顔を上げ、「おや、まことにおったわ」とか何か、恬淡に言った。
 それが余りにも泰然自若としていた為に、一同は、え何が居たんですか、虫とかですか、とか思ったのだけれど、「ちと触ってみたい気もするが、出っ歯過ぎる故噛まれると痛そうじゃ。残念じゃの」とか何か言った彼女が、突然覚醒状態に入ったのを見るのに至り、え、キメラなの! と、慌てて追従する。
 覚醒状態に入った秘色は、銀色を帯びた青に変化した双眸で、しっかりとキメラを見据えた。見つかったなら仕方ないので開き直ります! みたいに、わらわら、と姿を現し始めたキメラの一体に向かい、直刀「鬼蛍」を構え、すかさず両断剣を発動する。頬を撫でる春風のように、柔らかさとしなやかさを伴った動きで、キメラへと接近した。剣を振りだすと、意外と素早くそれを避けたキメラが、くるん、と回転し尻尾を振り回してくる。それを剣で受け止めた。「うむ、しっぽが束子のようじゃ、ゾリゾリするわい」
「尻尾が‥‥尻尾がふわふわ‥ふふふ‥」
 その様子を眺めていたリズレットが、恍惚とした表情で、呟いている。「これはあれですね‥もうモフモフしかありませんよね‥‥」
「おっとーリズレットさん、大丈夫ですか」
 いつの間にか、まるで何処の正義の味方ですか、みたいなフルフェイスヘルメットを被ったアルフが、その背中に呼びかけた。が、全然聞いてない彼女は、「最近お姉様にお会い出来ず‥溜まった鬱憤を紛らわすのに‥丁度いいかも‥」とかすっかり危ない。ライオットシールドを構え、自身障壁とGooDLuckをこっそり発動し、しっぽもふもふ大作戦を敢行した。
 きょとん、とした目でこちらを見てくるりすに向かい、じりじりと、にじり寄って行く。
「いやいや、リズレット、アカンてアカンて」
 朱と真紅のツートン色のAU−KV「アスタロト」を装着した雪路が、猛スピードで装輪を回転させ近づいてくる。「激情のスノウロード、アシュレッド推参! やでー!」
「レッド、話が違うじゃないか!」
 こちらは蒼がかった銀色のAU−KV「アスタロト」を装着した鳳華が同じく装輪を猛回転させ追いついてくる。
「リス型キメラね。この前も似たようなのと戦ってきたが‥愛らしい動物をでかくするのがバグアの趣向なのか?」
 呆れたように言って、竜の角を発動させる。優美な外観の天剣「セレスタイン」を構えた両手と頭部に、パチパチ、と閃光が走った。
「ウチの歌を聴けェー! 突撃隣の晩御ハァートォォ!」
 こちらも竜の角を発動させた雪路が、エレキギターの形状をした超機械「ST−505」の弦を爪でかきむしるようにした。「今や壱条はん、パチキかましたれー!」
 言われなくてもいってやるさ、と言わんばかりに、風のように飛び出した鳳華は、「次は、キメラなんかじゃなく、愛らしい姿に生れてきなよ。L’eclat des rose!」セレスタインを振りかざし、キメラの体を裂く。
「さて、ではこちらも、とどめと行きますよ」
 宣言したアルフが、瞬即撃を発動し空中に向け跳躍した。両脚を一緒に蹴りだしながら、くるくると回転をつけ、まるでドリルのようにキメラに向かって落ちて行く。「これが必殺キックですー、どーん」
「リズレット。怪我ない? ほら、飴ちゃん食べる?」
 雪路が言うと、リズレットはちょっとしょんぼりとして呟いた。「飴ちゃんより‥リゼの‥もふもふしっぽ‥」

「‥それにしても大きなリスは可愛くないですね。可愛くないです」
 冷静な表情のまま、覚醒状態に入ったセシリアが、言った。赤く変化した瞳で、抑揚なくキメラを眺めている。血管のように赤い模様を浮かび上がらせた手には、しっかりと真っ黒な拳銃のような超機械、ブラックホールを握っていた。
 牽制するように黒いエネルギー弾を放ちながら、背後で覚醒状態に入ったロジーの動きを確認している。二人で頷き合うと、セシリアが、練成超強化を発動した。
 ロジーが走り出す。覚醒の影響で現れた、羽根のようにも見えるその闘気の蒼に、セシリアの超機械から放たれた虹色の光が混ざり、神々しい光を放った。
 美しい銀髪をなびかせた彼女が、ソニックブームを発動すると、二刀小太刀「花鳥風月」から衝撃波が飛び出し、数体のキメラの体を薙ぎ払う。
「あの尻尾もふわふわに見えてるだけで、意外と重そうだし」
 月詠を構えた克が、間合いを取りながら呟く。
「‥尻尾‥あれはまあ、可愛いとも言えますけれども‥微妙ですね」抑揚なく言ったセシリアがまた、「可愛くないです」と付け加える。
「うん。あの歯で齧られるのは痛そうだよね」そう言いながらも、急所突きを繰り出すタイミングを見計らう。
「あの飛び出した歯も‥そうですね‥可愛くないです」
 克は何かちょっと無言でちら、とセシリアを見やり、それからまた、キメラを見た。ん、あれ、もしかして、可愛いと思ってますか、とちょっと思った。
 そこへ飛び込んできたロジーが、残ったキメラに花鳥風月の刃をぶつける。彼女のつける薔薇の香水の香りが、ふわりと、風に乗って鼻腔を突いた。
「だけど。キメラは野放しにしても百害あって一利なし」
 克はそう呟くと、急所突きを発動し、月詠のすらりと伸びた刃で、キメラの首を突き刺した。




 ランタンの薄い灯りの中、暗視スコープを着けて物凄い熱心に蔵の中を見ているセシリアの横顔があった。
 懐中電灯を手に「下から顔を照らしてみたくなるよの」などと多少ふざけたことを言っている秘色や、「蔵の中にバイクがあったら持って帰ってもいいと思います?」とか何か、不真面目な発言をしているアルフとは明らかに違う、凄まじい集中力を滲ませている。
 アルフは、あんなに真面目に探すなんて偉いな、衛兵の鏡だな、とか何か反省はしないけれど尊敬はした。そしたら何か、棚とかを必死に見る彼女の唇から、思わず、といったように、「‥素敵なピコハンでもあれば、ロジーさんがきっと喜んで下さるのに‥」とか何か、小さな呟きが、漏れた。
 俺の尊敬を返して、と思った。
 その背後で、ぴこハン、ぴこハン、伝説の黄金のぴこハン、とか、まさしく自分の手にあるちゃっちぴこハンでピコっとか拍子を取りながら、すっかり自由にぴこハン探しを実施していたロジーが、ふと、蔵の奥で声をあげた。「‥あら。これは何でしょう? 隠し扉‥?」
 じっとその重そうな鉄の扉を見つめる。
「この中に‥伝説のぴこハ‥いえ、ティアラが隠されているかも知れないですわね」
「うんもうぴこハン以外、興味ないんですよね」
「ええそうですのよ、ここはとりあえず明けてみるのがお宝探しの醍醐味ですの!」
「これこれ、ロジーや。危ないからよしておくのじゃ」
 すっかり過保護なオカン、みたいな顔で秘色が止めるのも聞かず、ロジーは颯爽と扉の向こうへ入って行く。彼女の体が消えた瞬間、ガチ、と嫌な音が響いた。え、と慌てたアルフと秘色の二人が、取ってを掴む。「開かぬぞ!」
「セシリアー! 閉じ込められましたのー」テンションが上がり過ぎて、嬉しがっているのか困っているのか、良く分からない声で、ロジーが叫んでいる。
「ほんとだ、開きませんねー」緊張感なく、アルフは言って肩を竦める。それから、「ぴこハン‥」とか何か言いながら、全然こっちに気付かずに、棚とか一生懸命見ているセシリアを見やった。
「セシリアー!」
「‥それにしても、この壺はなかなか面白いですね‥」
「セシリアー!」
「‥なるほど‥これがサムライ‥でも、まあ、あまり可愛くは無いですね」
 あれ、わざとですか、とかいうくらいセシリアは、漲る好奇心のせいで、すっかり周りの声が聞こえなくなっているらしい。面白いので、もう少し見ておくことにしようかしら、とアルフは、思った。
「やはりこれはこの蔵の、見るからに呪われ品収集にしか見えないあれらの品のせいではないかのう」
 秘色が飄々と言って顎を摘む。
「ですね」


 一方東の蔵では、「子供の頃‥キャンプとかで宝探しゲームしたの‥思い出すな‥。雰囲気‥少し似てるかも‥」とか何か呟く克が、埃っぽい棚の、埃っぽい箱を取り出し、今まさにその中身を検めようとしている所だった。中を開くと、まさしく、依頼の品であるティアラが出てきて、呆気なさに、少し、戸惑う。
 彼はそれを手にとって、目の高さに掲げてみた。そんなマイペース過ぎるくらいマイペースな克の背後では、三人の女子が騒いでいる。
「はい、壱条はん。これ見て何か、面白いこと言うてみー」
 とか何か、突然言い出した雪路に、「面白いことだと? ふん、私にだって面白いことくらい言えるよ」と、鳳華は近づこうとして、その途端そこにあった物に蹴躓き、ドカッとか何か物凄い音を立て、何をしたらそういうことになるんですか、みたいに派手な転び方をした。
 大量の埃をごほごほ、と手で払いのけながら、雪路がいやいや、と苦笑する。「面白いこと言うて、言うたんやで。面白いことして、言うてないで」
「面白いことを、したわけではないんだ」
「せっかく、なぞかけ考えてきたのに。壱条はんの物ボケと掛けましてェー今回の依頼品と、ときますゥ〜。その心は〜。どっちも御蔵入りや」
 とかその隣で、「埃っぽいですね」とか何かリズレットが、懐から超機械「扇嵐」を取り出している。「前回は埃を飛ばして綺麗にしようとして失敗しましたけど‥今回はきっと‥」
「ちょ、待ち待ち、何でそこにあえて挑戦するんや、リズレット」
「待て、そうだ、リズレット。そんな風を立てたりしたら!」
「‥今度は力加減を間違えないように‥」
「うわあああ!」
「ティアラを持ってるだけで‥幸せになれるなら‥いいけどね」
 呟いた克は、ぎゃあぎゃあ騒ぐ三人の女子の姿を振り返り、ひょい、と眉を上げた。それから、すぐに、立ち込める埃に眉を顰めた。