●リプレイ本文
宝探しとか子供の頃好きだったなー、とか、どちらかといえば、何となーくその古文書の場所を訪れたカルマ・シュタット(
ga6302)は、何か、キメラが出現した途端に迅雷とか発動して、結構凄い勢いでだーとか走りだしていった鐘依 透(
ga6282)の背中を、どちらかと言えばあーそうですかー、そうなっちゃいますかーくらいの面持ちで、見守っていた。
覚醒状態に入った彼は、そのどちらかと言えば繊細な風情の漂う四肢に、淡く青い光を纏いながら、大人しそうな顔して意外と自己主張するんです、みたいに、その体より巨大な炎斧、インフェルノを振り回している。
カルマは何かとりあえず、隣を見た。そしたら隣に立っていた立花 零次(
gc6227)もこっちを見ていて、決して別に真面目にやってないわけじゃないけど、この若干乗り遅れた感じはどうしよっか、みたいに顔を見合わせた。
「これー」
とか言って、カルマはちょっと頭をかき、それから、続ける。「どうしよう」
「まそーですねぇ」
零次はそっと顎を摘み、少し目を伏せそれから、カルマを見る。「とりあえず、覚醒しておけばいいんじゃないですかね」
「だよな」
その更に隣では、フローラ・シュトリエ(
gb6204)が、基本何でもいい、みたいな顔でやっぱり透の背中を見つめていて、「ま、いっか」とか何か、何を納得したかは分からないけれど何かを納得したらしく、ぶわ、と覚醒した。エネルギーガンを構え、狙いを定めた。かと思うともうさっそく、引き金を引いている。凝縮したエネルギーの塊が、キメラの脚を撃ち抜いた。
巨大な斧と共にキメラ達の渦中へと飛び込んで行った透は、その隙を見逃さず、まるで仲間を庇うかのように飛び出した一匹のキメラの攻撃を、軽やかなステップで、避けた。かと思うと、そのまま、ぐい、と上半身を捻る。
ぶうん、と風を切るインフェルノの重みが腕に圧し掛かる。赤い炎の模様の描かれた黒い刃の重みが、唸るキメラ達を牽制していく。遠心力に引っ張られるようにして、一瞬飛び上がり、着地した足が、砂を噛む。
「援護、するかー」
目の前で繰り出される、どちらかといえばアクロバットな大技を見守りながら、カルマは双槍「連翹」を構え、走りだして行く。
透の攻撃に面食らったキメラが、おろおろと回避しようとするのを、二本に分離した連翹の片方の槍で突き刺し、足止めした。
「ですね。引き立てて差し上げましょう」
曲刀「黒耀」を構えた零次もまた、反対側の方向へと走り出し、フローラと三人で、三角形を描くようにキメラを囲み、中心で今まさに技を繰り出さんとする透を援護する。もうどうしていいか分からないでとりあえず襲います! みたいに、飛びかかってきたキメラを、すかさず抜いた黒耀の刃で、横一直線に、切った。
「さあ、敵は囲みましたよ」
透は、自らを奮い立たせるかのように、念じる。
技の狙いはフルスイングの高速循環。隙を最小にして最大破壊力を連発すること。攻撃範囲の広さで広範囲の悪を滅ぼす。
その気圧ですら、悪を滅ぼさんかとするように。
回転斬撃を繰り出し破壊力の暴風と化す技。
「さあ、捜索の邪魔をしないで欲しいわ」
「今だ、鐘依さん」
振り終わりの勢いに乗じて、透は、刹那を発動する。インフェルノを握りしめる手が淡い光を帯び、四肢の青い光と相まって、まるで、彼自身が一つの希望の光のようにも見え――。
未完成の技を繰り出し、風に乗りながら、彼は、陽を舞う風のように真っ直ぐと力強く進む『恋人』の姿を思い出す。自分もそうなりたい、そう在りたいと願い――。
「飛燕円舞――!!」
とか何か、意外と頑張る外の人らとは打って変わり、教会を行く四人は、だいたい狼みたいなって何だ、とかいう話で盛り上がっていた。
発端は緋本 かざね(
gc4670)が「赤いグラスに、狼キメラですかー。‥アレですかね。狼さん。赤ずきんと赤グラス、間違ったんですかね?」とか何か言い出して、それに毒島 風海(
gc4644)が、「いや、想定敵戦力は、狼みたいな、キメラですよ。だから、狼ではないんですよきっと。狼モドキ」と、訂正を加えたことで始まった。
「狼臭いってことは、そうだな。きっとあれだ。珈琲豆とヒマワリの種くらいの違いなんじゃないか」
とか何か國盛(
gc4513)が言ったので、かざねは何かちょっとえ、と彼の顔を見て、「え、ヒマワリの種と珈琲豆って全然違いますよね、大丈夫ですか」と思わず、言った。
「こーなんだろう、雰囲気でこー想像してみたらこー」
「似てません」
「そうだよな。俺何か、疲れてるのかな」
そしたら何か、マルセル・ライスター(
gb4909)が、「ワンコのキメラかァ。俺さ、実家でワンコ飼っててね。ミニチュアダックスフントなんだけど、とても可愛かったよ」とかもうすっかり狼でも何でもない話を言いだして、おまけに、何故かじーっとかかざねを、見た。
「あ、どうしよう何か、いらんこと言おうとしてますよね、マルセルさん」
とかいうそれには答えず、AU−KVの開いたフェイスガードから覗く、いまいち何を考えているのか分からない、美しい少年人形のようなくりんとした二重の瞳で、こちらを見つめるだけ見つめ倒したマルセルは、「かざねって、何か、ミニチュアダックスっぽいよね」とか、意外とそうでもないことを、言った。
でも、余計には違いないので、「また余計なことを‥」と言って流しておくことにした。
けど、流れなかった。
「そうだ。LHに帰ったら、ワンコを飼おう。名前はかざねで」
「だからマルセルさんは本気でやりそーだから怖いんですよ」
「えへ☆」
「いや、可愛くないですよ」
「だからこの際、狼もどきはですね」
そこで風海が真面目な声で話を戻したかと思ったら、同じ真面目な声で、「とりあえず便宜上、吉田と呼称したらいいですよ。複数居たら、吉田ABCという感じに振り分けて、ですね」とか、何か凄いマイルドに意味不明なことを言った。
それだけでも、ヒマワリの種とは言ったけれどわりとまともな方だと自覚している國盛は驚いたのに、そこにまた同じだけマイルドにマルセルが、「あ、ねえねえ、中村、は駄目かな」とか乗っかっていくので、凄い戸惑った。
「おいかざね。どうしよう。こいつらは何を喋ってるんだ、俺には全然分からないんだが」
「私に聞かないで下さいよ」
「中村は駄目でしょう。吉田ですよ」
「基本は吉田だけど、中村もあり、みたいな感じにしたらどうだろう。とか言ってたら、あ! 吉田だ!」
とマルセルが教会の入り口を指さし、指さしたかと思ったらもう、突進してくるキメラに向かい、装輪走行を開始している。その間にも竜の翼を発動すると、速度を上げたAU−KVミカエルが、ずしゃあ、と皆とキメラの間に滑り込んだ。
ミカエルによって最大限に肉体の能力を高められた華奢な体が、三匹いる内の一匹のキメラの突進を、がっちり、と拒んでいる。
「ねえ。そうは‥いかないよ?」
不敵な笑みを浮かべて、呟く。その背後では、白く美しい槍セリアティスを構えたかざねが、「あーこれは確かに惜しいなー。ああ凄い残念。惜しい。狼臭い。こんなに狼臭いのに、狼じゃないなんて」とか何か思わず、言っていた。
「惜しいよな。むしろ、おしんだよな」
「あれ國盛さん何ですか」
とか見たら、國盛は瞬天速を発動していて、もーいない。
「あー吉田だまさしく」
若干あいたた残念ですね、くらいの口調で風海が言う。それから「では、吉田の位置を把握します」と真面目に言い、先見の目を発動した。彼女のエミタが活性化し、次々とキメラの位置状況を捉えていく。「そして、伝達びびびびー」とか、何かふざけているのか真面目なのか、めちゃくちゃ無表情なガスマスクのせいで全然分からないけれど、こめかみにあてた両手を、ひらひらさせながら、かざねに向ける。
「前衛ならば、西側のあの吉田Aに向かうのが良いでしょう」
「教会での戦闘って、槍使いとしては一度やってみたかったシチュなんですよねー。これで赤い槍で剣士と対峙とかだったら、燃えますよね!」
とか何か意味不明なことを口走ったかざねは、だっと西側に駆け出し、キメラまでの距離を詰める。真燕貫突を発動した。「さてさて、お邪魔な狼さんにはそろそろ退場してもらいますよ! 真燕貫突で、戦闘シーン、閉幕!!」
翼の紋章が、セリアティスを操るかざねの腕を覆うように舞い上がる。槍の先が、キメラのフォースフィールドを貫き、その肉体を切り裂く。
「さあ。手は抜かない」
マルセルはがっちりと掴んだキメラを睨みつけ、竜の瞳を発動した。バチバチバチ! とミカエルの頭部にスパークが走りぬけ、彼を取り囲む周囲の空気がぴりぴりと殺気を帯びる。「苦しまないように‥一撃で、送る。ドラッヘ・ヴァルカン!」
「こちらもいつまでも遊んでるわけにはいかないな」
脚甲「インカローズ」を装着した足でキメラの顎を蹴りあげた國盛は、「俺は歳なんでね」と、超機械「シャドウオーブ」を構える。
「‥次は優しい命に生まれてね」
マルセルが、そっと瞳を閉じながら呟く。「おやすみ」
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その頃ネズの木の周辺では、「探す手がかりみたいなものはなかったわけだし、俺はこの、双槍と木の枝で作った即席のダウジング棒で探してみようと思う」とか何か言ったカルマが、まさしくその分離させた双槍「連翹」で作った即席のダウジング棒で、何かを探り当てたところだった。
そしたらその地面を見て顔を上げた彼が、自分でも若干びっくりしたのか、「ダウジングを舐めちゃいけないね。最近まで使う人もいたらしいしね」とか何か、微妙に、照れてるのか得意げなのか、良く分からない言い方をした。
それで最終的には「まぁこの探し方だと地に埋まっていること前提だけどな」とかさりげなくアドバイスっていうか、もしかしたら埋まってないこともありますよ、みたいに言ったのに、透はもう聞いてない。
これでもか、と全開覚醒っていうか、覚醒満開で地面を掘りだした。見ているこちらがちょっとどうしたらいいか分からなくなるくらいの掘りっぷりだった。
シャベルを申請していたフローラも、その隣のスコップとか無かったので、バスタードソードで掘っちゃおうかな、みたいな漠然としたことを考えていた零次も、思わずその、「頑張ります、平和が欲しい」とか何かぶつぶつ言っていて、凄い何かを切望してるってことだけはがんがん伝わってくる必死さが、若干危うい彼を、呆気に取られたように見つめる。
「でもさー」
真っ先に立ち直ったのはフローラで、じゃあ掘って貰いましょーくらいのライトさでシャベルに寄りかかりながら、言った。「七色のグラスってね。そういうのは眉唾物が多そうよね。ま、興味がないわけじゃないけど」
「だいたいKVが飛び回り、島が動き回る時代に古文書とはまた古風過ぎますよね」
「あれそれってちょっと古文書馬鹿にしたんだ?」
思わずカルマが突っ込むと、何かゆらーとか顔を上げた零次が、何も言わず顔を戻し、「でも、これで見つかったらダウジングっていうか運ですよね。三人もGooDLuck使ってる人、いますし」とか何か、言った。
「あれそれってちょっとダウジング馬鹿にしたんだ?」
「それにしてもほんとに出てくるのかしらねー。赤いグラス」
「出てきますよ、きっと」
祈るように掘り続ける透が呟く。むしろ彼が人の話を聞いていたことに、フローラは若干驚く。
「それに、土が少し、柔らかい。きっと、これ、誰かが掘り起こしたんですよ」
「確かに。埋めて隠したとしても。グラスを直接埋めているとも考えづらいし、箱のようなものに入っているなら地面に掘った痕跡は残るはずだしな」
「ええ、時が経って埋もれていても、掘り起こせばこのとおり‥あ」
「お」
「何か出てきました!」
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とか言ってる外とは打って変わって、やっぱりめちゃくちゃ暢気な教会の四人は、祭壇に風海が立ち、「かざねが次のレベルに上がるには、546の経験が必要です」とか何か言ってるかと思えば、何だか無性にかざねがワンコに見えて仕方がなくなったマルセルが、すっかりワンコを可愛がるように「よしよし良い子良い子、よーしよし」とか何か嫌がるかざねの顎とか頭とかを撫でたくっていた。
「うーもー、マルセルさ」
「あーねえねえかざね。ほらこれバッフェル」
「ば、バッフェル? って、何ですか?」
「ドイツ風の固焼きワッフル。バニラクリームをサンドしたもの。教会でよく配られるお菓子さ」
「あ美味しそうなお菓子」
「ねぇ、かざね。もっといっぱい可愛い顔してくれたら、こっちの抹茶サンドのをあげるんだけどなぁ」
「じゃ、じゃあ、許しちゃおうかなあ‥って言うわけないですよ! 馬鹿にしないで下さいわーん!」
「チッ」
「ああ。そういえば、教会の探索って前に一度やりましたよね」
相変わらず祭壇の上をふらふらしてる風海が何気なく「えっと、確かあのときはナメく」とか言った途端。
「はっ! 教会! そ、そうだ! ‥ナ、ナメク‥‥」
突然、かざねの体がガタガタガタとか震えだした。かと思うと、ぷつぷつと頬にじんましんとか浮き出しだして、めちゃくちゃ可哀想なことになった。「なめく‥なめくじ‥」
そんな中でも國盛だけは、懺悔室なんかも隈なく調べてたりしたのだけれど、真剣に調べてたがゆえにふらふらしてる風海が、その辺に飾ってある何かちょっと若干高価そうな像をごそごそ調べてるうちに、ポキ、とか腕のところを折って、そっと元に戻したのを見ていなかった。
「ねー、ボスどうですか、そっちはー」
とか何食わぬ顔で言われたのに顔を上げ、國盛は「いや、ないな」と小首を傾げる。
「実はこっちにちょっと気になるものがありましてね」
「気になるもの? ふむ」
「これです、ボス。触ってみてください」
「これが、どうしたん‥お」
「あー! ボス、こーわーしーたー!」
とか何かやってたら、そこで無線機がぴぴぴ、と音を発した。「はいはい」と受けるとネズの木の周辺を調べていたカルマからで、「見つけたみたいだ。赤いグラス」と、そんな報告が聞こえて来た。
背後でフローラが、「何か変わったところとかあるかちょっと見てみてるんだけど、何だか物凄く精工な窪みが、ほら、鍵穴のようなの。それが、グラスの底の部分に作られているだけで、後は、そうね。取りたて変わったところはないみたいだわ。装飾は、きれいだけど」とか何か言っているのが、聞こえる。
「なるほどね」と、風海は頷き、一度通信を切った。皆を見渡す。
「まぁなんですか。キメラを倒すという行為自体は、人の為にはなってましたけど。依頼としてはフザけてましたね」
それから無表情なガスマスクで國盛を見やった。「ほんでボスは、これ壊しに来ただけですしね」
「お前だろ!」
「プヒヒ」