タイトル:ランドリーと白の怪盗マスター:みろる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/08/11 11:37

●オープニング本文








 コインランドリー内にある、ドラム型の洗濯機内の清掃をしていた江崎が「あ」とか何か、小さい声を上げた。
「ねえ、西田見て見て」
 その声に、えーとか気だるげに振り返ると、白いブリーフを両手で摘んで突っ立っている姿が、見えた。
「忘れ物」
 とか何か、短く、言う。
「あらー」
 と、西田は頬杖をついた。それで暫くそこに突っ立ってる江崎をじーとか見て、まず、言った。
「白いね」
「白いわ。真っ白だわ、もう長年見てないわ、こんな白いの」
「いやもう白いとしか言いようがないわそれ」
「しかも、無地」
「無地だよ。びし、っと無地だよ。むしろ、無地だよ。ちょっと何かもう見てて、切ない感じすらあるもん」
「哀愁のブリーフだね」
「ねえそれどうすんの」
「どうしようかなあ。こう、壁とかに貼り出しとく? 忘れ物ですって」
「うんそれもう、若干苛めだけどね」
「それで思い出したけど、そういえばさー」
「うん」
「小学校の、プールの授業の時とかにさー」
「うん」
「何でかパンツ忘れてる奴とか、いなかった」
 とか言った江崎の言葉に、西田は、ハッとしたように、頬杖から顔を上げた。「あ、居た」とか、若干凄い発見じゃないのそれ、くらいの感じで食いついて、そこから更に、「居たわ。っていうかさ、そいつどうやって帰ってたのって思うよね。っていうか、パンツ忘れるってどんなけ慌ててたんだよっていうか、パンツ忘れないでしょ普通。ズボン履いた瞬間に、分かるでしょうよだって」って、言ってる内に凄い笑けてきて、ちょっと何か、どうしよう、ツボったかもって、ふと見ると、思いっきり何か無表情に、江崎がこっちを、見ていた。
 ちょっと何かびっくりしてしまうくらいの、温度差だった。
「うん何か西田凄いテンション上がってるけど、そんな面白い話でもないよね、これ」
「だよね、自分でも何か、何でそんなテンション上がったのか、ちょっと分かんない」
 って、ちょっと愕然としちゃってる西田、とかいうのはもう全然相手にせずに、江崎は、突然、「あ、そうだ」と、そのブリーフを長椅子に置いた。
 ランドリーの奥にある扉の奥へ消えていく。そして、茶色い封筒を持って、戻って来た。
「仕事の話あったんだった。はい、これ」
 と、その封筒を西田に差し出してくる。
 江崎はコインランドリーの管理人という、実態の良く分からない仕事の傍ら、仲介業のような事をやっていた。つまり、キメラの出る地域に眠るお宝や、一般人の立ち入りが困難な場所にある曰くつきの品などの回収を請け負い、ULTに勤務する西田に、能力者への仕事として斡旋させるという仕事だ。
 こんなご時世の中にあっても、好事家や収集家は存在するらしく、多少の出費をしても手に入れたい物がある、と江崎の元を訪れる人間は、少なくないらしい。
「実は今回はさ、盗まれたものを取り戻して来て欲しいっていう、依頼でね」
「ふうん」
 愕然から立ち直った西田は、さっそく中身の書類を検める。そして、小首を傾げた。「七色の怪盗?」
「そう呼ばれてる、強化人間の怪盗集団が居るらしい」
「えーうさんくさー」
「俺も詳しくは良く分かんないんだけど、聞くところによると、まあ何か、バグア派の人間が、バグアと手を組んで、その怪盗集団を使って、いろんなお宝を盗んではお金に換えて、いろいろと荒稼ぎをしてるらしい、という事らしいんだけど」
「ホントかよー」
「まあ、俺も、詳しいところは知らない。ただ、今回は、とにかくその中でも白の怪盗と呼ばれる奴らの所から、はいここ、見て。これね」
「黄金の獅子の像」
「そう、黄金の獅子の像を取り戻して来て欲しい、という依頼が、実際に来ちゃったわけ」
「来ちゃったんだ」
「来ちゃったね」
「九十センチ程度の、純金の像だって。まあうん、それなりに高そうでは、あるよね」
「高いんだって、実際」
「で。場所は。えー、雪の洞窟だって。うわー。益々胡散臭い」
「年がら年中、洞窟内に雪が残ってるらしいよ。気候とかの関係で」
「こう、ヒヤっとする感じなのかなあ」
「あと、噂だと何か。すっごい髪の長い女の幽霊」
「えっ、幽霊? え、なに、幽霊が出るの」
「の作りものが」
「何だよ、作りものかよ」
「いきなり、バーッとか出て来て、しかもちょっと追いかけて来たりする仕掛けが、洞窟内にあるらしいよ」
「いや、らしいよってさ」
「うん」
「いやうんじゃなくて、何それ、全然意味不明。それって何か効果あるわけ。だって、ただの作り物なんでしょ」
「まあ作りものなんだけど。でもいきなり出てくるもんだからさー。何かわーとか驚いて、ツルって滑って大怪我をする人、続出中。らしいよ」
「ホントかよ」
「いや、らしいよ」
「いやないでしょそれ、絶対ないわ。だいたいこの怪盗、何でそんな場所をアジトにしてるのか、そこがもう既に分かってないもん」
「あー、白だから?」
「えー白だから、雪ってそれちょっと、安直過ぎなーい? だいたい他にもっと白いもんあるでしょうよ」
「ブリーフとかね」
「そうそう、ブリーフとか」
「やっぱ何かちょっと、頭、おかしいっていうか、ちょっと独特な、変な人達なんだろうね」
「強化人間だもんね。若干おかしくなってても、仕方ないよね」
「そうね、きっとちょっとおかしい人なんじゃない。人っていうか、強化人間だけど」
「物は、強化人間が持ってるのかな。あるいは、何処かに隠してるとか。っていうか思ったんだけどさ、強化人間が出かけてる時を見計らってこっそり物だけ取り戻してくるっていうのもさ、ありっちゃ、ありじゃない?」
「まー。ありっちゃ、ありだけど。でも、どうせなら、倒しておいた方がいいんじゃないの」
「まあそっか。今後のためを考えると、そうかな、やっぱり」
「と、いうわけで今回は、白の怪盗を倒して、純金製の獅子の像を探し出してくること。ってことで。宜しく頼むよ」









●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
鐘依 透(ga6282
22歳・♂・PN
ヤナギ・エリューナク(gb5107
24歳・♂・PN
銀華(gb5318
26歳・♀・FC
鈴木悠司(gc1251
20歳・♂・BM
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA
緋本 かざね(gc4670
15歳・♀・PN

●リプレイ本文







 暗視スコープを装着し終わったヤナギ・エリューナク(gb5107)は、
「雪の洞窟内に白い盗賊、でもって金の獅子像ねェ。強化人間にしては馬鹿ってェか何つーか」とか何か言いながら、腕を組み、仄暗く開く洞窟の入り口を見上げている。隣では、無線機の調子を調べていた鈴木悠司(gc1251)が、そんな彼の足元に目を向け、ふうんみたいに目を逸らし、え、みたいにすぐ見て、つまりは何か、二度見していた。
「何だよ、二度見すんなよ」
「いやなにそのこっそりスノーシューズ。すべらん気半端ないよね」
「おお何だよ、悪ィかよ」
「いやヤナギさん、誰も他にそんなそんながっつがつ、すべらん対策してる人なんていない」
 とか周りを指さしながら騒いでたら何か、思いっきりしゃがみ込みながら、靴用滑り止めスパイクを装着している鐘依 透(ga6282)と目が合った。彼は少しだけ切なそうに顔を伏せたかと思うと、まるで道端に咲く一輪の花のように、めちゃめちゃ健気に、そしてひたむきに、スパイク装着を、再開する。
「うん何だろうあの滲みだす健気さ」
 そしたら今度は、やたら偉そうな雰囲気で仁王立ちした、ジリオン・L・C(gc1321)が割り込んできて、
「なあに、勇者に防寒グッズは必要ない! 何せ、勇者だからな! 心配は要らん、大丈夫だ!」とか何か、言った。
「っていや、聞いてねえし」
「しかも俺が言うのも何だけど、あの人、やたら声がでかいよね」
「だな。怪盗とかに発見されたらあいつのせいだな」
 ってヤナギと悠司に物凄いしらーとした目で見られて、ジリオンは何か、追いつめられた子供、みたいな表情を一瞬した。そして今度はびっくりするくらい小声で、「俺様は、ジリオン、ラブ、クラフトゥ、未来の勇者だ! この熱き魂で、黄金の獅子を取り戻してやるぞ! 黄金の獅子を、そう黄金の獅子をな!」とか何か、ぶつぶつ言ったわりに、最後、きり、とか、やたら決めた顔で二人を、見た。
「何でもいいけどあれだいぶ、黄金の獅子って言葉の響き、気に入ったぜ絶対」
 とか何かやってるその少し離れた場所では、ノーリアクションってこれの事ですよねの代表みたいに、かなり無表情に佇む終夜・無月(ga3084)と、あれ何か、不思議な力的な、呪い的な何か力とか出す感じですか、みたいな雰囲気で、薄っすらと微笑みながら佇む銀華(gb5318)の周りを、ぜーんぜん空気とか読まずに、「雪! このあっつい季節に雪! なんだかこう、体が動きだすというかテンション上がりますよ!」とか、わっふわふ雪に喜ぶ犬みたいに、緋本 かざね(gc4670)が、トレードマークのツインテールをふわんふわん揺らしはしゃぎまわっていた。
 そしたらそこへ何か、「いやもうあっついわー。これもう何だろ。溶けるわ。溶けるわ、この暑さ。溶けるわ」とか何か、若い男性の声が、いきなり、聞こえてきた。
 聞こえたので皆、え、何だ、みたいに、そっちの方向をとりあえず、見た。
 そしたら何か、めっちゃ白い人が二人何か話しながら歩いてくるのが、見えた。
 その場が何か、凄い、「え?」ってなった。
 え、なになに、あれもしかして怪盗? 出ちゃったの、もう出ちゃったの、みたいに茫然としている能力者達に、やがて、怪盗二人がやっぱり「え」と気付いた。
 何かちょっとその場がシンとした。
「え、あ。おーっとお前ら何だー! 能力者だな!」
「出たなー! 強化人間めー!」
 ってそこでしゃしゃり出て来たのはかざねで、「このやろーなにが白い怪盗ですか! 何を盗むんですか! 私の心ですか! ツインテですか!」って、もう全然聞いてない怪盗は、逃げ出すように洞窟の入り口目掛けて走り出していた。
 その姿にいち早く気付いた終夜が、無表情にさっと覚醒状態に入ると、探査の眼を発動し、その後を追う。悠司とヤナギがその後に、続いた。その間にも透は、咄嗟の事に慌てながらも、ペイント弾を装着したSMG「スコール」を、覚醒し、構えている。定まらない照準に苛立ちながらも、すかさず、引き金を引いた。
 逃げ去る一体の怪盗の裾に、辛うじてべちゃ、とペイントが付着した。
「わー何だこれー! 青ーっ!」とか何か悲鳴を上げる怪盗の声が、洞窟内に一瞬こだまし、消える。
「もっと青く‥‥青く染めてやるんだ。白を青に。青く、青く青く青く」
 やがて透が、ちょっと危うさすら滲む執着を見せながら、走り出した。
 その姿を見たジリオンがあ行くのね、みたいに、いそいそと続く。
 のだけれど、ひたすら空気読めてないかざねは、「私の心なんて、気易く盗めると思わないで下さいね! 何せ私は、金のツインテかざね!」とか何かまだ言ってて、やっとハッとわれに返ったら、そこでびっくりするくらい落ち着いた様子っていうか、いやもうちょっとテンション上げて行きませんかみたいに、覇気なく薄っすらと微笑んでいる銀華と目が合った。
「ねえ思ったんだけど」
 といきなり言われたので、「え、はい」とか何かとりあえず、頷く。
「オペレーターの人が言っていた忘れ物ってさ」
「はー」
「彼らのものじゃないの?」






「しっかしあいつら何処行ったんだよ、わりとすばしっこいな」
 ヤナギの呆れたような声が、洞窟内に反射する。
 洞窟内へと逃げ込んだ怪盗は、途中の分岐で二手に分かれ、逃走を続けている。それを追う形で二手に分散した一方の、終夜、ヤナギ、悠司の三人は、薄暗い一本道を、自分達の持つ灯りを頼りに進んでいる。
「そういえばここ、女の幽霊のトラップが出るんだって説明、あったよね」
「あったけど」
 ヤナギが悠司を見て、肩を竦める。「そんなんで驚く奴とか居んのかよ」
 そんで嘲笑とかしたその瞬間、「って言ってたら本当に、出たー!」とかいきなり、悠司がぎゃーとか悲鳴を上げて、その悲鳴に「ってそんなんに驚く奴、居たーーーっ!」とかむしろヤナギも驚いて、その間にも悠司は、「追っ掛けてくる! 追っ掛けてくるよヤナギさんー!」ってしがみついて来て、「おい、しがみつくなって! ただの作りモンだろぉが」とか何か宥めて、っていう小芝居をちょっとやって、ちら、と見たら、びっくりするくらい無表情の終夜がびっくりするくらい無感情に二人を見つめていた。
 むしろ、何ですか、何がですか、みたいなきょとんとした表情をじーとか見られて、
「あ。あ、うん、そうですよね」
 その威圧に、完全にもう負けた気がした。
「あ、どうしよう、突っ込みとかないんだ。全くなしなんだ」
「あなた達は、怖いのですか」
 冷たい口調が、刺すように、言う。
「え、はい、いえ。別に怖くないです。すいません」
 教師に注意された小学生みたいに切ない表情で、悠司はヤナギから、そっと離れる。「でもほらなんか驚かないと仕掛けた人に悪いって言うか何か。あるじゃない、ほらうん」ってちょっと笑って誤魔化そうとして、誤魔化し切れずに、俺何かもう、自分に落ち込みます、くらいの表情で悠司が項垂れる。「‥‥いやうん、はしゃいじゃってごめん」
「何にしても」
 と、そこにぶらーんとかつり下がっている作り物の女の幽霊を抑揚のない瞳で見つめた終夜は、「子供騙しに付き合う暇は無いのですよ」と、聖剣デュランダルを抜き取ると、無慈悲にも一刀両断した。それから、また、二人を見やる。
「引き続き、探査の眼は継続中です。敵の状況把握及び危険察知に努めましょう」
「あ、はい」





「でもとりあえず彼らがここに逃げ込んだということは、何処かに抜け道なんかがあるかも知れないですね」
 洞窟の壁をゴーグル型の暗視スコープで観察しながら、透が、言った。
「でも、明らかにこれ、一本道よ」
 銀華は相変わらず覇気のない表情で答える。「まあ、物音に注意はしておくけど。案外簡単に発見出来るんじゃないかしら」
 そしたらそこで、「ははは!」と、いきなりジリオンが目の前に立ちはだかった。
「なあに。貴様ら、心配は要らん! この、真! 勇者! アーイズ! があれば、怪盗など怖くない。この眼に見抜けぬものはないのだからな!」
 ってその顔を、銀華がものすごーい冷たい瞳で、じーっと、見た。
 とか言ったジリオン自身も、え、あれ何これどうしよう、みたいな、若干キョドり出したところで、「あ、探査の眼ね」とか、やっと彼女が、言った。
「お、おっと何だーおっとー」
「でも何か、幽霊とか、出ちゃうんですよね」
 どちらかと言えば華奢な造りの肩を両手で抱きながら、かざねがそろ、と銀華を窺う。
「うんまあ、作りものけどね」
「あ、何だ。作りもの、あ、そうですか! 作りもの! うんうん、それなら怖くない! だって作りものなんですもんね、ええ、作りものなら怖くないですよ、作りものなら」
 って元気よく前を向いた瞬間、思いっきり、バサー! とか、前方から天井につり下がった幽霊のトラップが飛んできた。
「わギャああ!」とか、ドスの効いた悲鳴を上げたかざねが、慌てて踵を返そうとして、つるって滑って、さあこける! と思ったら、そのままくるーんとか回転して、回転して、回転して、持ち直して、でもまだまだ回転して回転して、「わわわわー止まるタイミングが何か掴めな」
 とかやってるその間にも、また新たな幽霊トラップが、今度は透のすぐ傍の地面から出没してきて、おわーとか驚いた勢いでとりあえず足払いを掛けて、幽霊倒れた! と思ったら、凄いもうテンパっちゃったのか、「ころ、転ぶと痛いでしょー! めーっ!」とか何か、気付けば口走っていて、ハッとする。
「え、め、‥‥めっ?」
 ってすっかり自分の崩壊っぷりに愕然としている透の横では、やっぱり地面から現れた幽霊トラップに、「ひああ!」とか何か、わりと可愛い声で悲鳴を上げ、腰を抜かして避けられずに激突したジリオンの姿があった。
「で、で、でた! でたぞ! 魔王の手先だ! や、やれ! 勇者パーティー出撃だ!」
 とりあえず手をぶんぶんと振り回し、むやみやたらに叫び声を上げ、それで振り返ったらそこには、長い髪の色白の美しい笑みをたたえた女性がゆらーとか立っていて、「いや誰がパーティ」ってそれは普通に銀華だったのだけれど、もう確実に我を失ってるジリオンには完全に幽霊に見えたらしく、「ぎゃああ! ゆ、幽霊が喋っ○※△!」ってもう最後は全然言葉になっていない。
「うん」
 と、やっぱり覇気のない声で、銀華が、言った。「ジリオンさん。ちょっと、落ち着けば」





「さあ、見つけましたよ」
 逃げ去る影を追いかけ、ぽっかりと開けた場所に出た終夜は、壁際に追いつめられた一体を見つめ、静かに、言った。
「うん終夜、一人めちゃくちゃ冷静なとこ悪ィ。これだけは言わせて」
 そしてヤナギは、前方に立つ怪盗の方を見た。「お前ら、アホだろ。つか、アホだろ。明らか行き止まりなのに、洞窟内に逃げ込んでる時点でもう、アホじゃん。どんどん奥とか進んじゃってる時点でもう、確実アホじゃん」
「煩ーい! 飛んで火に居る夏の虫とはこのこ」
 ってそこ全然聞いてない悠司は、懐から無線機を取り出し、「怪盗一体発見したよー!」とか、さっそく報告した。そしたら「こっちも一体発見しましたよ!」とか、かざねの声が、無線機から聞こえる。のだけれど、どうも洞窟内に反響する声の様子から、近い空間に居るような気がした。と、思ってハッと見たら少し離れた別の入り口から、分岐で別れたはずの四人がやっぱり怪盗を追いかけ、同じ空間に姿を現す。
「あれ?」と、
 透が、いち早く三人の様子に気付いた。「皆さん。お揃いで。あ尻尾‥‥」
 そして覚醒の影響で現れた悠司の尻尾をガン見する。
「そっちこそ」
「いやもうお前ら、二体揃って、馬鹿じゃん。同じ場所に戻って来て、馬鹿じゃん」
「煩ーい! 絶対にこの、黄金の獅子は渡さないからな!」
 とか、何か、一体が慌てて広場の奥まった所から黄金の獅子を取り出して来て、思いっきり目的の物の場所まで判明した。
「うんまあ、何でもいいけどさ。何で君達、7色の怪盗なの? 普通悪役なら黒でしょ。つか、最悪5色の方が戦隊モノみたいでカッコイイじゃん」
 って悠司が言うと、それまでその尻尾や耳にもふもふしたいオーラ満開の目を向けていた透が、ハッと我に返ったかのように顔を上げた。
「まさか、七色グラスと、何か関係が?」
「えーないんじゃないですかー」
 ってかざねが言ってる傍から、もう明らか怪盗達が分かりやすく狼狽した。
「な、何言っちゃってんの。七色グラス? はー? 何それ、知らない、ね? 何言ってんの、はー意味不明」
 とかもう喋ってる間に、ドーン、とかいきなり何かが飛んだ。と思ったら、ヤナギのギュイターからペイント弾が発射されている。
「いやまだ喋って」
「うっせーもううっせー」
 と、その隙間から、終夜が無言で駆け出した。相変わらず沈着冷静な表情で豪力発現を発動すると、聖剣デュランダルを振りかぶり接近していく。と慌てて怪盗が応戦状態に入った。と、そこで終夜は素早く起動を変える。
「君は強いのかな?」
 デュランダルを反対の手に持ち替え、怪盗の首を狙う。ガチン、と怪盗の武器が応戦した。
「強くなさそうだよなー。でも、容赦せず行くよ!」
 悠司が叫び声を上げ、先手必勝を発動する。その隙間から、ファング・バックルを発動したヤナギが、飛び出した。「援護するぜ!」と叫んだ彼は、強い白光に包まれる腕を振りかぶり、終夜と応戦中の怪盗の腕を、容赦なく、切り裂く。
 体制が崩れたところを、デュランダルの刃が容赦なく、襲った。
 一方その頃、後方から支援に飛び回るもう一体の怪盗の動きを、透と銀華が封じていた。
「接近戦に持ち込めば有利じゃない?」
 透が、柔かそうな黒髪を揺らしながら無言で頷く。イオフィエルの装着した手を掲げながら、左側から接近した。
 銀華はその間にも、円閃を発動し、右側に回り込んでいる。刹那を発動すると、ハルバードを振りかぶった。ぶうんと槍斧が風を切る。その攻撃を辛くも裂けた怪盗の左腕に、透の、煌く緋色の4本の爪が襲いかかった。
 人と戦うことは辛いけれど、と今しも折れそうになる内心を彼は自ら奮い立たせる。「手は、抜かない!」
「こういう敵との戦いは駆け引きというのが大事なんですよね! よーし、ここは一発! おりゃー!」
 左腕に傷を負う怪盗に向け、更にかざねが迅雷を発動し、突進していく。セリアティスを突き出し、動きを封じたところで、「うおお! 勇者パワー! 全開!!」とか何か、ジリオンが明らか後ろから、瞬天速で突進した。超機械「扇嵐」を振りかぶり、ぱこん、とその脳天を殴打する。
「いまだ! やれ!! 俺様の無敵街道はまだまだ続くぞ、ハアーッハッハ!」
「って後ろから殴っただけだですが、行くぞおりゃー」
 そうして相変わらず突進するかざねの槍が、残った怪盗を撃破した。