タイトル:ランドリーと赤の怪盗マスター:みろる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/09/07 11:50

●オープニング本文








 コインランドリーの奥の、生活スペースに続く扉から、金魚の餌とか持って、江崎がふらーとか姿を現した。
 そのまま、カウンターに頬杖ついて座る西田の前を、チラ、とだけ見て、さーとか通り過ぎた。と、思ったら、「えっ」とか何か呟いて、凄い勢いでバッとか振り返った。
「ちょ、え。えー」
 そのままじろじろ見てくるので、西田は、「なによ」とか何か、鬱陶しげに答える。
「いやなにってお前えー、まじかそれ」
「いやだから何よ」
「いや何って、あのはな、鼻血、出てるよ」
 茫然として指をさされ、「は?」と、西田は、自分の鼻を拭う。
 指先に、血がついた。
 途端に「えー!」とか絶叫して驚き、「ちょ、えうわ、マジで。何これ、え」とか何か、更に慌てて反対の手で拭う。
「え、つか何、あえて出してんの、それ」
「いや何であえて出すんだよ!」
「いやもうちょっと待ってろって。今ティッシュとか持ってくるから」
 って人が鼻血出してんのに、ちょっと笑いながら江崎がまた扉の向こうに消える。
 その間に西田は、ランドリー内にある水道で、とりあえず手を洗い、顔を洗った。そしたらちょうど良いタイミングで、「はい」とか何か、後ろからタオルが差し出されたので、受け取った。
 顔を拭いた後で、また「はい」とか差し出されたティッシュの箱を受け取る。
 それを「いやー意味不明」とか小首を傾げながら鼻に詰めていたら、「はい」とか何か更に、茶色い封筒を差し出された。
「え、何これ」
「いや、依頼」
 江崎はコインランドリーの管理人という、実態の良く分からない仕事の傍ら、仲介業のような事をやっていた。つまり、キメラの出る地域に眠るお宝や、一般人の立ち入りが困難な場所にある曰くつきの品などの回収を請け負い、ULTに勤務する西田に、能力者への仕事として斡旋させるという仕事だ。
 こんなご時世の中にあっても、好事家や収集家は存在するらしく、多少の出費をしても手に入れたい物がある、と江崎の元を訪れる人間は、少なくないらしい。
「えーまたあの、胡散臭い七色の怪盗?」
「そう。次は、赤です」
「今お前、絶対俺の鼻血見てこれ思い出したよね」
「うん」
「いや、うんて。いやいやうんて。人の鼻血で何思い出してくれてんのよ」
「うんでね。また今回も、盗まれたものを取り戻して来て欲しいっていう、依頼なんだけど」
「バグア派の人間が、バグアと手を組んで、その怪盗集団を使って、いろんなお宝を盗んではお金に換えて、いろいろと荒稼ぎをしてるらしいとかいう、うっさんくさい話だよね」
「しかも若干こう何か、アホの匂いが濃厚になってきた、怪盗の人達ね」
「今回取り戻してくるのは‥‥赤いルビーって。これまたベタだな」
「燃えるようにあっかいルビーね」
「でも、燃えてはないよね」
「燃えてはないね。燃えてたら普通に大変だしね」
「っていうか場所がこれ、このクソ暑いのに、マグマの洞窟って」
「マグマの池がこう、点在する洞窟らしいよ。しかもさ、何かこう、中あっついからね。暑過ぎて、めちゃくちゃ機嫌悪くなる人続出中らしい」
「何なの機嫌って」
「だからこう、日頃の鬱憤が爆発したりとか、普段気にならないちょっとした事に苛っとしたりとかしちゃうんじゃないの。要するに暑さで何か凶暴になるんだね。ほんで、中で喧嘩して仲間割れとかして、出てくるとか、そういうのわりとあるみたいだから、気を付けた方がいいかもね」
「だいたい、この怪盗馬鹿じゃないの、こんなクッソ暑いところに」
「でもクッソ暑いから、中々人は近づかないし、近づいても喧嘩したりとかして奥まで進めないとかあるんじゃないの。それにほら、やっぱり何だろう、赤いから」
「いやいやいやいや、前も言ったけど、赤だからマグマって安直だからね。だいたい、もっと他に赤いあるでしょうよ」
「うん鼻血とかね、ふ」
「いや、笑わないでくれる?」
「だってもう、何でマイルドに鼻血とか出してんのか全然分かんないんだもん、びっくりだわお前」
「物はあれかな」
 って、さっさと西田は話を変えることにする。「前回同様、強化人間が持ってるか何処かに隠してるかは分かってないんだね。強化人間が出かけてる時を見計らってこっそり物だけ取り戻してくるっていうのもさ、ありっちゃ、ありだけど、でもどうせなら、倒しておいた方が、いいんじゃないの、みたいな感じで」
「ってことで、今回は、赤の怪盗を倒して、赤いルビーを探し出してくること。宜しく頼むよ。あと、ティッシュだいぶ赤くなってきてるから、変えた方がいいよ」









●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
鐘依 透(ga6282
22歳・♂・PN
ヤナギ・エリューナク(gb5107
24歳・♂・PN
鈴木悠司(gc1251
20歳・♂・BM
緋本 かざね(gc4670
15歳・♀・PN

●リプレイ本文





「あれが問題の洞窟のようですね」
 辰巳 空(ga4698)は、赤の怪盗が潜んでいるらしい洞窟を物陰から確認し、言う。
 敵の強化人間は二人、と聞いていた。
 こちらの戦力は六人で、しかもこの辺りは火山地帯であの洞窟の中は相当暑いらしい。空は、内部での直接勝負は、分が悪いのではないか、と考えていた。
 そんなわけで、ここで一気に仲間に陽動作戦をお願いし、強化人間達をおびき出しておいて、自分が隠密潜行を発動し、あの中へと接近するのが妥当ではないか、とか思い付いた彼は、さっそく、仲間に陽動作戦をお願いしよう、と後ろを振り返った。
 時にはもう何か、緋本 かざね(gc4670)が、明らか全然、強化人間を警戒していない大声で、「あっついですよ! なんですかこの洞窟! マグマってなんですか! よくもまぁこんなとこにルビーとか隠しますよね。やっぱりどっかイッちゃってるんですかね! 怪盗どもは!」って、陽動作戦して貰う前から、すっかり何か騒がしかった。
 とか思ったらそこへ、ゆったりとした足取りで追いついて来たヤナギ・エリューナク(gb5107)が、「今度は赤い怪盗に赤いルビーねェ」とか何か咥え煙草で言って、ふう、とか煙を吐き出す。
「燃えるように赤いルビー‥‥ピジョンブラッドってヤツか? それだと高く売れるんじゃねえの。やっぱここは奪ったあかつきには俺らで売って」
「はい出たこれ、赤い怪盗に赤いルビーに、赤いヤナギさんね」
 すかさず鈴木悠司(gc1251)が、ヤナギを指さす。
「ホントだ! 赤い‥‥!」
 その言葉に、今更凄いびっくりしたかざねが、大袈裟なくらい愕然とした表情で口元に手を当てた。「赤過ぎる‥‥!」
「うんかざね、それは何かリアク間違ってる気がすンだけど」
「だから驚くほど赤いんだってヤナギさん。もうあれだよ、そんだけ髪が赤いんだから、もうむしろバグア側ってことでいいよね。っていうかむしろ、赤い服も着てもういっそ、全身赤い2人組に紛れても全然問題ないんじゃないかな」
「問題ないんじゃないかなって悠司さ、問題なくは、ないよね?」
「あ、めっちゃ睨まれてるー、けどその睨みっぷりがもうボス的じゃないかなっていうね」
「つかだいたいさ、どうせまたアホな怪盗なンだろ‥‥それを俺と一緒にするってお前」
 って文句言ってたら何か、左手に美しく煌く緋色の爪イオフィエルを装備し、右手に、紅い薔薇の刻印のついた小銃ブラッディーローズを構えた鐘依 透(ga6282)が、いつでも準備完了です、くらいの覚醒状態で、「そうなんです」とか何か、急に言った。
「あ、もしかして透さんもやっぱり、ヤナギさんは赤い怪盗の一味」とか、悠司がふざけているのを、めっちゃ真顔で振り返った透は、「赤の怪盗も、きっと、アホです」とか何か、凄い真剣に、言った。
「え、あうん。あれ? どうしたの透さん、そんな真顔で」
「そしてそんな覚醒状態で」
「だからどれだけ間抜けな登場をされても今回は動じません。動じるものか!」
 力を込めた彼の言葉に合わせ、覚醒の影響で現れた四肢を包む青白い光が、感情の高ぶりに応じるように輝きを増す。って凄い何か、本気なんだけど、本気なだけに何か、切ない感じがした。
 それを少し離れた場所から見ていた終夜・無月(ga3084)は、「ま、相変わらずでしょうね‥‥」とか何か無表情に、言った。そのまま、「また振り返ったら、敵がのこのこ歩いて来てたりして‥‥」とか何か言いながら洞窟を振り返ったら、水蒸気的な何か白い煙に覆われた洞窟の入り口に、人影が、見えた。
 と思ったら、やっぱり普通に何か、赤い怪盗だった。
 あーやっぱりねーみたいな空気で、一同は、とりあえず、見た。あと、もしかしたら必要ないんじゃない? くらいの勢いだったけれど、一応、覚醒した。
 とかいうのを、じーっと見ていた赤の怪盗は、「え、なに」とか何か、凄い普通に、言った。
「いやいやいやいや、落ち着き過ぎだろ」
「っていうか、どっからどう見ても赤いんだけど、きみが赤い怪盗なんだよね? ルビー盗んだよね?」
 悠司が確認すると、「あーはいはいそうスねー」とか何か、赤い怪盗が、赤い首筋とか撫でながら、凄いだるそうに、言った。「盗んだねー。で、何?」
「うわ何だろうこのやる気のなさ。何か、腹立つー!」
 覚醒の影響で現れた、犬っぽい耳とか尻尾とかを、ムキッと悠司が逆立てた、と同時に、いきなり、だだだだ、と散弾小銃の銃声が響いた。
 見れば、すっかり準備万端だった透が、準備万端だったが故に、青いペイント弾を、すかさずもう撃っていた。
 冷静な表情で、右手に、爪のついた左手を添え、両手で反動を押さえながら、ブラッディーローズを構えている。
「うわちょーマジもうほんとこの服ちょーレアなんですけど。え何これ、青いじゃん。めちゃくちゃ青いじゃん。やだもー分かったって。ほら、ルビーは返すか」
 だだだだだだ。
「って俺まだ喋ってんのに、そっちの人思いっきり撃って来てんじゃんもうマジ何それちょー本気じゃん、こえーだりーうぜー」
 とか、何かいろいろ言ったわりに中身が全くない、とか怪盗は無駄過ぎることをして、とりあえず、洞窟の中へと走り出した。
 背後から、また、だだだだだだと、透のブラッディーローズが。
「透さん、凄い普通の表情だけど、もしかしてあれ、相手のチャラさに、切れてるんじゃあ‥‥」
「いやもうちょ待っ」
「待ちません。今回こそは、待ちません」
 相手のチャラさも、完全に打ち消してしまうかのような生真面目さで言った透が、相手を追って走り出す。
 そこですかさず、瞬天速を発動したヤナギが、素早く相手の前へと回り込み、退路を断った。
「洞窟の奥とか行かせねえから。暑いし。俺、暑いの、嫌いだし」
「出た、ヤナギさんの俺様」
「あいつの持っているルビーは偽物ですね」
 事前に、ルビーについての情報を仕入れていた空が、さっと調達しておいた写真を確認し、呟く。「本物は恐らくこの奥か‥‥宝石は偽物を掴まされ易いですからね」
 そして他の仲間に怪盗が気を取られている隙に、隠密潜行を発動すると、洞窟内部へと歩みを進めて行く。
「じゃあ嬲り倒してやるか。なあ? マグマのように溶けてみるか、お前」
 とか何か、すっごい残忍なくせに何か、整った目鼻立ちや色白の肌も手伝って、意外と美しいっていうか何か、変な妖艶さをたたえた笑みを浮かべるヤナギの背後を、終夜が通り過ぎて行く。
「どうしよう。ヤナギさんが本領発揮過ぎて、怖い」
 ってあんまり怖がってなさそうな口調の悠司が言った。
「だいたい、全身真っ赤って何ですか。戦隊のヒーロー気取りですか! じゃあ私はピンクポジション狙うってもんですよ! というか、目に悪い! ちかちかする!」
 ってあんま何言ってんのか良く分からないのだけれど、いつも通りの自由発言をしながら追いついて来たかざねが、ジャーンと懐から、今回の武器を取り出した。見た目は大きなアイスキャンディー(ソーダ味)そのもので、触れるとどうやら、冷っとするらしい。
「さてさて、今回の武器はこれ! 氷剣IスキャンDです! 見た目冷ややかでおいしそう! こんな暑い中、少しでも涼しい気持ちになれる貴重な一品! あたりがでたら、もう一本! でなけりゃやっつあたりー! おりゃー!」
 ってそのまま突進しようとしたら、
「あ、そういやさ」
 とか、いきなり口調を変えたヤナギが、かざねを振り返った。
「そういや今回はかざねコプターは出ねェのか?」
「あ、そうだそうだ。またあれ見せてよ。かざねこぷたーとか言って回転するやつ。前から気になって気になって」
「なるほど! かざねこぷたーを御所望ですね! 了解です。行きますよー、かざねー」
 とか何か言ったかざねが、急に勢いを失くし、はーとかおじいさんみたいに背中を曲げ、溜息をついた。
「な、何どうしたん」
「駄目ですー。あついー、だるいー、冷たいとこに行きたいー。なんでこの洞窟クーラー効いてないんですかー? 暑過ぎて、私の自慢のツインテもしょんぼりですよー。ツインテしょんぼりだと、私駄目なんですよー、元気がなくなるんですよー。ああ、駄目だ、体に力が入らない」
「どこがどういつもと違うのか全然分からないけど、とにかくそんな仕組みだったなんて驚きだ!」
 って、物凄い白々しい感じで驚いた小芝居とかした悠司が、「でも頑張れかざねさん! かざねこぷたーを出すその日までは!」とか何か、無駄に応援し出した。
「悠司、それは、何、サボってんのかよ」
「ん? 別に手ェ抜いてたり、休んでる訳じゃナイヨ。かざねさんを応援してるダヨ。敵の動きとか見つつ、かざねこぷたーを応援シテイルカンジダヨ」
「何でちょっと片言になってんだよ、お前」




 その頃、洞窟の奥に進んだ空と終夜は、明らか見張りとか立ってもうそこにルビー隠されてんですよね、みたいな敵の保管庫を発見していた。
 二人は頷き合い、ルビー奪還の作戦に出た。
 まずは終夜が、黒刀「炎舞」を構え、静かに敵の前へと出る。金庫を守っていた赤の怪盗が、ハッとしたように終夜を、というか、刀身から炎が立ち上る「炎舞」を見やった。それに気を取られ、すっかり攻撃の手が止まっている。
「羨ましいですか」
 無表情に、終夜が指摘すると、「はー何言ってんの、羨ましくなんかねえし」って、明らか図星さされた感じで動揺し出した怪盗、とか、自分で聞いといて実は全然興味ありませんでした、みたいに、終夜が瞬天速で相手への間合いを詰めた。
 慌てて戦闘態勢! となる寸前で、その隙に射程内へと歩み寄っていた空が、子守唄を発動した。
 柔らかな歌声が、洞窟内に響く。ふわふわと船を漕ぎ始めた怪盗が、そのままパタ、とその場に崩れた。
「それでは私は、金庫を調べましょう」
 空は金庫に近づき、エマージェンジーキットの中身を広げる。「鍵は破壊してしまいましょうか」
 その声を背後に、終夜は怪盗へ止めをさした。





「うんだからさ、そこの赤い奴。正座してよく聞いて。ね? 悪役っぽくないでしょ、赤は。赤だけは駄目だよー。完全ヒーローカラーでしょ? 其処の所、ちょっと確りした方がいいよ。幾らバグアでも。そういうのはきちんとしなきゃでしょ!」
 喋ってる内に何か感情が高ぶっちゃったのか、ムキッと、悠司の尻尾が逆立つ。
 その尻尾をすかさず、どうどうと宥めるようにもふもふし出した透が、「ところで、七色グラスについて、何か知りませんか?」とか何か、その後を浚う。
「あ、ちなみに、口答えとか禁止だから。喋るなら七色グラスの事だけね。他の事に関しては発言権無いから。もうさ、さくっと言っちゃってくれないとさ、俺気になって気になって、何かもう睡眠とかもちゃんと取れなくて、昨日なんて12時間くらいしか眠れてないからね」
「めちゃくちゃ寝てんじゃん、お前」
 すかさずヤナギが突っ込む。
「うんそしてヤナギさんはもっと俺に優しくした方が良いと思うんだけどね」
 って若干、反抗した悠司をヤナギはあーそーみたいに若干、眺めた。そして、「あのさ悠司‥‥思ってたんだけどさ、すげえ暑くるしいわその姿‥‥なぁ、それって独りガマン大会ってヤツなの?」とか何か言いながら、じりじりにじり寄り出した。
「いや、え? ヤナ‥‥何して、ちょ、や」
 嫌がる悠司へと、得体の知れない淫靡な印象すら滲ませた濡れた金色の瞳でにじり寄るヤナギの手には、何故か、いつの間にか辺りの水蒸気で温められたと思しきあっつあつのレッドカレーが。
「コレ食べてみな、ほら、折角のガマン大会に相応しいだろ? 俺ってば超優しいじゃん。なあ?」
「やめてやめて! やばいやばい、赤いヤナギさんやばわちちちち」
「とにかく、自爆なんて真似は許しません。いいですか、貴方が今ここで死んだら、青いペイント弾が更に火を噴きます。青いまま死にたいですか? むしろ死して尚、青くなりたいですか? 赤の怪盗のプライドがそれを許しますか? せめて赤いまま死にたいのではないですか」
「やばいやばい透さん、マイペースに話進めてるけど目がやばい。しかも段々何言ってんのか分からなくなってきてるし」
「あれは、相手のチャラさプラス暑さに相当苛々してきてンな」
「可哀想に。人格変わってきちゃってますよ、まあ、私のツインテがしょんぼりするくらい暑いですし、仕方ないですよね」
「あんなにいつも繊細に微笑んでいる透さんを、若干Sっけの出た透さんに変えてしまうなんて。暑さ、恐るべし」



 とか何かやってる間にも、ルビーの奪還に成功した空と終夜が洞窟内を走り、出入り口付近で戦う仲間の元へと走っている。



「ちがだからー、七色グラスはー、俺達がそれぞれの色を埋めに行って」
「えーでもそれっておかしくない? あれって確か、胡散臭い古文書とか何かが場所を」
「いやそれは知らないけど。埋めたのはとにかく俺達だよ」
 能力者達は顔を見合わせた。

 その、瞬間。
「って油断させてる間に‥‥!」

 先頭を走る終夜は、前方に見える赤い怪盗が、仲間に向け襲いかかろうとしている姿を確認した。すかさずそれに向け、ほしくずの唄を発動する。
 英語の歌詞が、艶やかな声で再現され、洞窟内に響き渡る。


 怪盗が、突然、突拍子もない声を上げながら、やみくもやたらに突進してこようとした。
「ええええ! いきなり何してんの何してんの」
「危ねえ!」
 すかさずファング・バックルを発動したヤナギのエーデルワイスが、ザシーッと、赤い怪盗へ攻撃を加える。
 喉元を掻き切られた怪盗が、叫びを上げながら、その場に倒れ込んだ。
「危なかったぜ。意外と戦う気あったんだな、コイツ」


「お待たせしました」
 その頃、宝石の入っていると思しきケースを片手に追いついた空が、その中身を、かざねに向け差し出していた。
「わー、ほんとに真っ赤ですねー」
 ケースの中身を覗き込み、かざねが感心したような声を上げる。
「そうです、これが本物のルビーです」
「でも、あれですよねー。私が怪盗なら、そんなのよりお菓子とか、後はそうですね、お菓子とかを、目標にしますよ!」
「そうですね。ただ今あなた、お菓子二回言いましたけどね」
 空が冷静に指摘する。
 とかいうのをちょっと真顔で見つめたかざねは、「くそーかざねこぷたー!」とか何か、全部をその勢いで無かったことにしてやれ、くらいの乱暴さで、真燕貫突を発動した。翼の紋章が氷剣「IスキャンD」を持つ腕の周囲を舞う。そのまますっかり虫の息で倒れ込む怪盗に、止めをさした。
「それにしても、あの七色グラスを七色の怪盗が埋めていたなんて。古文書はバグアが用意していたという事なんでしょうか。まさか‥‥でも‥‥ふむ」
 そして透は一人、顎を摘み、そんなことを呟いていた。