タイトル:フレイム・マウンテンマスター:みさき

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/09 14:22

●オープニング本文


●九州南部 国見山地
 サイレンがけたたましく鳴り響かせ、消防車の群れが走っていく。
 山には火が上がり、勢いよく燃え上がっている

「いそげ! 急がんと燃え尽きる!」

 耐火服に身を包むがたいのいい男たちがホースを持って走っていく。
「放水!」

 幸いにも火は消し止められたが、既に今月に入って6回目。
 この時期はそこまで乾燥していないはずだから異常事態とも言うべき状況である。
 どの山火事も何とか被害が大きくなる前に食い止めることができているため、今のところは何とかなっているのだが。

「全く、もう今月で6回目か」
 中年の隊員がつぶやく。
「ただでさえ戦争で忙しいって言うのになぁ」
「いたずらとか、放火の類でしょうか?」
 若い隊員が尋ねる。
「いかにもありえそうだが、これは違うだろう」
「どうしてです?」
「いたずらとか放火なら、もっと目立つところでやるだろう。それにだ」
「それに?」
「原因がわからねぇんだとよ」
「え? どういうことですか?」
「だからな、燃え始めた原因が分からんのだとよ」
「まさか木が勝手に燃え出したとでも?」
「そんなわけねぇだろ。大体季節外れ過ぎるんだよ。ホントなら山火事ってのは乾燥する冬から春にかけてだ。こんな時期ってのがそもそもおかしいんだよ」
「これで最後だといいんですが」
「胸クソわりぃがな。原因がわからねぇと対策も立てられねぇ」
「キメラとかの可能性はないんですか?」
「そういえば、でっかい動物みたいなのを見たって話がある。だが、もしホントだとすると俺たちはお門違いだな」

この事態を重く見た消防本部はUTCに調査を依頼することにしたのだ。

●参加者一覧

幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
朝霧 舞(ga4958
22歳・♀・GP
ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
番場論子(gb4628
28歳・♀・HD
天原大地(gb5927
24歳・♂・AA
相賀翡翠(gb6789
21歳・♂・JG
五十嵐 八九十(gb7911
26歳・♂・PN

●リプレイ本文

 原因不明の山火事が頻発するという現場を訪れた六人の能力者達。
 調達した近辺地図を細い指でなぞりながら、番場論子(gb4628)は口を開いた。
「最初の火元はここ。そして、次が‥‥」
 地図を覗き込みながら状況を再認識したヨグ=ニグラス(gb1949)が、こてりと首を傾げた。
「んと、大きな動物は、必ず火事のあった場所に出るのですよね?」
「情報によれば、そうなっているな」
 簡易消火器の使用方法を確認しつつ、そう言ったのは天原大地(gb5927)だ。
「うーん。それではー、ココを中心にー‥‥こう、三つに区切って、捜索しましょうかー? 先ほど、消防団の方にお話を聞きましたらー、この区分けしたエリア全てで、姿を見たそうですからー」
 ラルス・フェルセン(ga5133)が、手にしたペンで地図へと線を引いていく。
 班分けは事前に行っていたので、後はどの班がどのエリアの捜索を行うのかを決めるだけだ。
「無線チャンネルは‥‥これで設定を‥‥」
「了解っと。取りあえず、五体満足で帰れる様に、皆で頑張りましょ」
 自身の無線機を調整し終えた幡多野 克(ga0444)が、言葉少なに他のメンバーへとそれを見せ、頷きながらチャンネルを合わせた五十嵐 八九十(gb7911)が他のメンバーの顔を見渡した。
 無線を持っているメンバーもまた、チャンネルを合わせる。
「固まって出てこない限りは、各班撃破の方向でいいですか?」
 貸し出された消火器をチェックしながらの朝霧 舞(ga4958)の提案に、全員が頷く。
「んじゃ、各班、検討を祈る!」
 そう行って直ぐ、相賀翡翠(gb6789)はチラリと天原へと視線を移した。
 自らの故郷、鹿児島の直ぐ近くで起こったこの事件に一番心を痛めているのは、彼なのではないか、と。

 1班メンバーは番場、ラルス、五十嵐の3人だ。
「よっ‥‥と!」
 進む方向に邪魔な小枝を発見した五十嵐が、アーミーナイフでそれを切り落としていく。
 木ごと切り倒してしまうのが一番早いのだが、それでは折角の緑がもったいない。
「とはいえ、万が一戦闘で延焼してしまったら大変です。なるべく先手を打ちたいところですが」
 地面と前方を交互に見やりながら呟いた番場に、既に覚醒していたラルスがすっと地面へとしゃがみ込んだ。
 す、と地面を撫でる様に触りながら、ふいに視線を眇める。
「番場君、五十嵐君。どうやら近場にいそうですよ」
「焦げ臭い臭いがしますね」
 その言葉に、ピリッとした空気が漂う。
 各自、武器を握り締め、いつでも戦闘可能な様にと覚醒し準備を終えた、その瞬間。
 まだ残った木々の隙間から、大きな動物が飛び出して来た。
「ラ、ライオン!?」
 鬣を持った大きなネコ科動物 ――姿だけはライオンだが、間違いなくキメラだ。
 何故なら、その鬣は赤く燃え盛り、足元からも小さな火がたっているのだから。
「1班、キメラ1体と遭遇しました」
 ラルスが無線を介して他のメンバーへと連絡を入れた。
「これ以上火事を起こされては意味がありません。早急に、仕留めましょう」
 ランス「サドキエル」を軽く振った論子が、竜の鱗で防御力を高め、そのまま竜の爪で攻撃力も高める。
 一気にキメラへと肉薄し、弧を描く様にランスを一閃させた。
 不意を衝かれたキメラの腹部へと、赤い線が走る。
「援護しますよっ!」
 後方からスコーピオンを構えた五十嵐が、キメラの意識を逸らすべく足元へと威嚇を込めた攻撃を仕掛けた。
 一瞬、体制の崩れたキメラをラルスが見逃すはずもなく、洋弓「アルファル」の弦を引く。
 ファング・バックルで攻撃力を引き上げ、更に急所突きで敵の弱点である首へと、矢を放った。
 瞬間、咄嗟に身を翻したキメラだったが、ラルスの矢は首ではなく腹部へと突き刺さる事に成功する。
 雄叫びを上げたキメラが、反撃すべく開いた口から炎を吐いた。
「その程度で、ドラグーンのAU‐KVが焼けるとでも?」
 直撃を受けながらも、スキルで引き上げられた防御力とAU‐KVの強固な鎧のおかげで、ダメージは浅い。
「近付きすぎ、ですよ!」
 スコーピオンで懸命に援護射撃を続ける五十嵐のお陰で、近すぎた距離がほんの僅か開く。
「そろそろ終わらせましょう。火事の元は、この1体だけではないはずですから」
 論子は再び竜の爪で攻撃力を引き上げたザドキエルを、体の回転させた力を利用してもう一度一閃させる。
 首筋を斬りつけられたキメラが、悲鳴を上げる。
「まずは1体」
 布斬逆刃を使用したラルスのアルファルから放たれた矢が首を貫通し。
 まず1体が、地に倒れたのだった。

 2班メンバーは幡多野、朝霧、相賀の3人だ。
「足場が不安定ですから、気をつけましょうね」
 朝霧の提案に、頷きながらも地図を確認していた相賀は、器用に足元の木の根等を避けていく。
 彼らの足元には、大きな獣の足跡が続いている。
「‥‥1班がキメラ1体と遭遇‥‥撃退した、との事です‥‥」
 無線からの連絡を受けた幡多野の言葉を受けた後、少し考える様に手を顎にやった朝霧が
「素早い、という事ですから‥‥」
 そう言い、上をじっと観察して。
「上には、いない様ですね」
 どうやら木の上からの強襲を受ける事はなさそうだ、と少しだけ安堵の息を吐いた。
 が、次の瞬間、相賀がピタリと足を止めた。
「さぁて、消火開始かね?」
 眼前の茂みから現れた1体のキメラを見て、相賀は挑戦的に唇を引き上げる。
「火は料理に使うモンだ。山火事なんてふざけた事に使うんじゃねぇよ!」
 手にした夜刀神を翻し、布斬逆刃を使用しながら一気に切り込んだ。
 柔らかめの腹部を狙った一撃は、腹部へと確実に傷を負わせる事に成功する。
 その後ろから飛び出してきたのは幡多野だ。
 流し斬りでキメラの側面へと回り込み、まず一閃。そしてそのまま急所突きを使用して腹部を深く切り裂く。
 キメラの咆哮が響く中、朝霧は可能な限りキメラへと近づき、盾で自身を庇いながら小銃「S‐01」の引き金を引く。
「煩いうえに、暑苦しいわね」
 ポツリと呟いた朝霧の言葉が通じたわけではないだろうが、キメラはぎろりと彼女へと視線を向けた。
 そのまま口を開き、火炎を吐き出そうとしたのを確認して、朝霧の前へと相賀が躍り出る。
「くっそ、この野郎。俺は料理じゃねぇよっ!」
 そのまま少し距離をとり、武器を拳銃「ライスナー」へと変更する。
 GoodLuckを使用しながら、今度は首筋を狙って銃弾を叩き込む。
「さぁ、どんどん削りますよ」
 S‐01の引き金を引きながら言った朝霧が狙うのは、さっき相賀がダメージを与えた首筋だ。
 よろめいたキメラへと再度肉薄した幡多野が、首筋めがけて流し斬りでまず一撃。
 そのまま刃を翻して、急所突きで首を切り落とした。
 倒れ伏したキメラを確認して、幡多野は無線で他班へと連絡を入れたのだった。
「2班、キメラ1体と遭遇。撃退した」

 3班メンバーは天原、ヨグの2人だ。
「他の班も順調にキメラを倒してるみたいですよ」
 無線からの連絡に、ヨグは前を歩く天原へと声をかけた。
「こっちもそろそろ出てくるんじゃないか?」
 知り合いである2人だからこその会話だろう。
 彼らの足元には、キメラの足跡が続いている。
 ヨグは既にAU‐KVを身に纏っていた。
「んと。風向きは‥‥こっちが風上を取れればいいんですけど」
「今のところ、前から敵が来れば取れるだろ」
 僅かとはいえ、火に風は厄介だ。
 蛍火で枝を切り落としていた天原が、ふと足を止める。
「どうかしたですか?」
 手で動きを止める様に指示されて、ヨグが小声で問いかければ。
 天原は、小さく口角を引き上げて答えるのだ。
「おいでなすった‥‥」
 ガサガサ、という音と共に、天原とヨグの前から姿を現したのは、ライオンに酷似したキメラだ。
「3班、キメラ1体発見したですよ。これから攻撃するです」
 無線での連絡を終えた次の瞬間。
「じゃ、突っ込むぜっ!」
 蛍火を軽く握った状態で、天原はスマッシュを使用しキメラへと一気に迫る。
 そのまま刃を翻して、腹部を切りつけた。
「風上に行かれると困るですよ。そのままそこにいて下さいねっ!」
 後方からヨグが真デヴァステイターの引き金を引き、威嚇を込めて足へと3発叩き込む。
 唸り声を上げたキメラが、近くにいた天原へと口を開き火炎を吐き出すが。
 炎を浴びながらも天原は怯まず、更に間合いを詰めていく。
「その程度で俺を止められると思うなぁっ!!」
 懐に入れば外れることはない。
 両断剣で攻撃力を叩き上げ、天原は蛍火を大きく振りかぶった。
 そのまま、一気に振り下ろせば、キメラは見事両断されて、動く事も出来なくなったのだった。

 全ての班は、万が一の為に捜索を続けていた。
「こちら2班。どうも俺達のエリアにはもう敵はいないみたいだな」
「えと、3班です。ボクたちもあと少し‥‥。すみません。たぶん、これで最後です。1体見つけました」
「1班ですが、ヨグ君と天原君はその敵をお願いします。2班は今、どの辺りですか?」
「ちょい待ち。あーっと‥‥悪い、ヨグ、天原。俺達は今1班のエリアに近いな」
「では、こちらに来てもらえますか。‥‥敵が1体、出ました」
「2班了解っ!」

 無線での会話を終えた後、ヨグは天原へと声をかけた。
「大地さん。ボクたちだけで頑張らないといけないみたいですよ」
「大丈夫だろ。さっきと同じ要領でいけばいい」
 2人の眼前に立つ1体のキメラは、まさに飛び掛らんといわんばかりに体勢を低く、唸り声をあげている。
「‥‥テメェらの炎、断ち切らせてもらうゼッ!!」
 チャキっと蛍火の刃を鳴らして、天原は一気に駆け込んだ。
 そのままスマッシュを使用してキメラの腹部を切りつける。
 あまりの痛みに、キメラはヨグや天原ではなく、全く正反対の方向へと口を開いた。
「マズイッ!」
 放たれた火炎が、近くの木へと直撃した。
「ヨグ、消火器!!」
「分かったですよ!」
 貸し出され、各自持っていた消火器を使って、ヨグは燃え上がった木へと向かう。
 これ以上山火事を起こすわけにはいかない。
 必死の消火作業を行うヨグの後ろで、天原がギッとキメラを睨み据えた。
「この猫ヤロウ。俺の地元近くで、ふざけた真似しやがって!!」
 活性化で急速に癒えていく自らの傷を確認する事もなく、蛍火を握り締める。
「大概にしろよっ!?」
 振り上げた蛍火は、両断剣で攻撃力を底上げされていた。
 一気に振り下ろした次の瞬間には、キメラは真っ二つになって動かなくなったのだった。
「大地さん。延焼は食い止めたですよっ」
「‥‥こっちも、終わったぜ」

 そして1班の眼前に立つキメラも苦戦を強いられていた。
「3班も終わったみたいですね。こちらも早めに済ませましょう」
 竜の爪でザドキエルの攻撃力を引き上げ、自身は竜の鱗で防御力を高めた論子が、一気にキメラとの間合いを詰める。
 自身の射程に入った瞬間、ランスを一閃させれば、それは見事に腹部へと命中した。
 援護の為に後方からスコーピオンの引き金を引いている五十嵐が、ふと目を眇めた。
「3班の方は少し、延焼したみたいですけど、もう火は消えたみたいですね」
 無線の向こうから聞こえてきたヨグの声に、その場にいた論子とラルスが僅かに安堵した。
 その瞬間、自分が最後の1体だと感づいたのか、キメラが大きく口を開く。
 そのまま火炎を、能力者目がけてではなく、樹木に向って放った。
「しまった‥‥!」
 小さく呟いたラルスが、洋弓「アルファル」の弦を急いで引き絞る。
 早くしなければ、また大きな山火事が起きてしまう。
 急所突きを使用して、論子が切りつけた腹部目がけて矢を放つ。
 見事、目標へと突き刺さった矢に、キメラが咆哮をあげた。
 と、1班目がけて数人の足音が近づいてきた。
「2班合流! 消火活動はこっちが引き受けた!」
 相賀の言葉と共に、幡多野と朝霧も姿を現す。
 その手には消火器。
「任せました」
「はい。皆さんは、キメラを」
 相賀、幡多野、朝霧が消火活動を始めたのを確認して、論子は手にしたザドキエルをきゅっと握った。
「もうこれ以上はさせません」
 突きへと攻撃方法を変えた論子のランスは、見事腹部を貫き。
「このまま足止めします。ラルスさん、とどめを!」
 後方から、スコーピオンで足を撃ち抜いていく五十嵐。
「これで終了です」
 ラルスの洋弓「アルファル」は、急所突きで攻撃力をあげていた。
 腹部と足を縫い付けられ、避ける事の出来ないキメラの喉元を、ラルスの放った矢は見事貫いたのだった。

 僅かに延焼があったものの、大きな山火事になる事はなかった。
 合計5体のライオン型キメラを無事、退治した能力者達は、後始末として万が一残されていては困る小さな火も全て消化してから、依頼を終えたのだった。

 END

(代筆:風亜 智疾)