タイトル:がんばれサバイバルマスター:三橋 優

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/18 12:13

●オープニング本文


 ダークファイター神崎奈々、金髪碧眼の日英ハーフ18歳。
 若いながらベテランと呼べる傭兵。
「全世界のダークファイターの中でも千本の指には入る実力の持ち主ですわ」
「指、多過ぎじゃろ!」
 合いの手を入れるのは田沼ヴィクトール。白髪混じりの日葡ハーフ54歳。
 この春に能力者になったばかりのフレッシュな新人グラップラー。
 2人が今、何をしているかというと。
「救助、来ませんわねー‥‥」
「参ったのー‥‥」
 遭難していた。

 焚き火の周りに刺した魚の串焼きを1本取り、はもはもと齧る奈々。
 海水を蒸留して得た真水を飲み、海水から得た塩を魚にふりかけて食べる。
 なんとまあ見事な適応力。
「しかし‥‥私の阿修羅は大破炎上しちまったし‥‥」
 ヴィクトールが岩山に突き刺さったスクラップを見る。
 脱出できて本当に良かったと思える光景だ。
「わたくしのナイチンゲールも、飛べませんし無線もつながりませんわね‥‥」
 奈々の方は、海面から半分だけ顔を出している機体を見る。
 はあ、と2人揃って溜め息。
 インド洋の偵察任務。
 嫌な予感はしていたが、ヘルメットワームの集中砲火を浴びて沈むとは。
 少しは改造しておくべきだったかなあ、と思いつつ夜空を見上げる。
 あと少しで帰還できたのに。
 撮影していた岩龍は無事に帰れただろうか?

「まあ赤道直下なのが救いっちゃ救いかのぉ」
 海に落ちた奈々の服もすっかり乾いている。‥‥塩のせいで感触は悪いが。
「積んでおいたエマージェンシーキットがこれほど役に立つとは思いませんでしたわ」
 とりあえず多少の打撲や出血はあれど、今のところ命の危険は無い。
 しかし。
「なんでまたあつらえたように無人の孤島に‥‥」
「キメラがうろついてるんですかしらねー‥‥」
 どこから来てどこに向かう途中なのだろうか、墜落してから今日1日だけで2体の鳥キメラを倒した。
 海に魚キメラがいるかも知れない事を考えれば、島に落ちたのはまだ幸運だが。
「明日は川を探してみるかのぉ‥‥」
「真水、必要ですものね‥‥」

 星空を見上げて、奈々は呟いた。
「‥‥他の方々は無事でしたでしょうか」

●参加者一覧

綿貫 衛司(ga0056
30歳・♂・AA
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
菱美 雫(ga7479
20歳・♀・ER
セレスタ・レネンティア(gb1731
23歳・♀・AA
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
前園・タクヤ(gb5676
35歳・♂・GP
フィー(gb6429
12歳・♀・JG

●リプレイ本文

●墜落

 島影を利用して砲撃を避けようと急降下した綿貫 衛司(ga0056)だが、地形を見誤り立て直しに失敗。
 しかしそこは熟練のパイロット、変形着陸を試みる。
 さいわいHWの方は今の砲撃が最後だったようだし、操縦に集中しさえすれば変形着陸も充分可能。
 いや‥‥
 制動距離がやや足りないか?
 重々しい轟音とともに、鬱蒼と茂る木々の中に突っ込んだ。
 ‥‥。
 ふう、と息をつく衛司。
「いくら重装甲とは言っても貰い過ぎはやばい、と思ったのが裏目に出ましたかねぇ‥‥」
 衛司は機体の損傷を調べにかかった。


 同刻。
「くっそ、俺としたことが墜とされるとは‥‥俺もやきが回ったかな」
 本来の愛機『ウシンディ』をメンテナンスに出していたカルマ・シュタット(ga6302)などは不幸に不幸が重なった。
 いかに予備機とはいえ、あんな敵にやられる腕ではないはずだが。
 いや、嘆いても仕方がない。
 数箇所しかない損傷はことごとく致命的な所だが、全体を見ればかなり綺麗なもの。
 あとあと機体を回収する事も考え、なるべくクッションになりそうな所に不時着しようとした結果‥‥
 また轟音とともに森に突っ込む機体ひとつ。


 不慣れな操縦で墜落した者、運悪く痛恨の1発をもらってしまった者。
 それぞれの理由で、この大きな孤島に不時着せざるをえなかったのだ。
 そして、不幸に不幸が重なった者がもう1人。


 ――ザ‥‥ザザ‥‥
 こちらブラボー6、例の赤い奴に瞬殺され‥‥
 ザッ‥‥主翼に一発食らっ‥‥ベイルアウトする
 CSAR(戦闘救難捜索)願う‥‥
 ちょうど島が見えた‥‥ブラボーリーダー
 聞こえていたらACC(救難本部)へ連絡してくれ
 キメラの有無は不明
 パラレスキュージャンパーは用心しろ
 ああ、こちら三島玲奈(ga3848)。スナイパー‥‥
 グシャ――


●生存

「使えねえっ!」
 ばしん、とコンソールを叩く前園・タクヤ(gb5676)。
 無線機能がノイズまみれなのである。
 かなり壊れにくくできているはずだが、壊れたものはしょうがない。
「‥‥島が静かなのはいいけど」
 少なくとも近辺にHWの影は無し。
 しかし墜落・不時着した機体は、今生きている機能だけでは探せないし。
 こちらから探しに行くか。
 手っ取り早く使えそうなものをまとめ、タクヤは地面に飛び降りた。
「ほっ!」
 むわっとした暑苦しい風に乗って漂ってくる緑の匂い。
 熱帯の、空気だ。


 べしっ。
 タクヤとは違う意味でコンソールを叩くはハミル・ジャウザール(gb4773)。斜め45度で。
「‥‥やっぱり直りませんね」
 当たり前だ。ノーヴィ・ロジーナじゃあるまいし。
 こちらはうまいこと速度が落ちきってから海面に不時着したおかげで、パイロットに怪我もなく。
 しかも。
「念の為にと思って、色々持ち込んでおいて良かったです」
 出てくるわ出てくるわ、テントに飯ごう、ランタンにライター、ポットセット。
 グローブにスパイクと装備も充実、奥からレーションまで出てきた。
 準備万端すぎる。
「これだけあれば、何とかなりそうな気が‥‥」
 携帯品にまとめて浜辺に降り立つ。
 靴に感じるサラサラした砂の感触が心地よい。
 この砂の質なら良い寝床になりそうだ。
 満潮にそなえて海の高さを覚えておき、ハミルは飲み水を探しに歩いて行った。


 燃料タンクのチェックを終え、一息つくカルマ。
 爆発するようなことは無さそうだ。
「あ‥‥っと、応急手当応急手当」
 額をぬぐったところで、それが汗でなく血であることに気付いた。
 シートの後ろから救急セットを取り出し、てきぱきと手当てをしてゆく。
「こちら、カルマ‥‥くそ、壊れているのか」
 機体の無線機は通じず。
 苛立ちまぎれにコクピット床に叩きつける。
 びよんびよんと空しく壊れたマイクがぶら下がった。
 能力者である自分が怪我をするほど派手に不時着したのだし、少しの故障は無理もないか。
 仕方がない。
「日が暮れるまでにできるだけ食料になりそうなものと飲み水は確保しておかないと‥‥」


「えっ、ちょっ、爆発する?」
 かたや燃料タンクが無事でなかった機体がここに。
 玲奈は慌てて機外に出るが、そこは森の中。
 飛び出したつもりが、ガクンと後ろに引っ張られる。
「!? うわ〜一張羅のセーラー服が引っかかってるよ!」
 仕方ない。
 覚悟を決めるのは一瞬だった。
 びりっ。
 直後、盛大な爆発音が、またも島を揺るがした。

 爆発のせいで断崖の下に落っこちてしまった玲奈。
「SOS、SOS‥‥」
 海水に半身漬かりながら無線機に向かって呼びかけるも‥‥通じない。
 周囲は閉じた浜辺ときた。
 大ピンチ。
 しかし、何か悲壮感が薄いのは‥‥
 爆発の余波でボロボロになった服の下半身が、どういうわけかブルマ(赤)だったせいだろう。
 本当になぜなんだ。


●合流

「故障してる‥‥離陸は無理ね‥‥」
 着陸の衝撃で損傷が変な部分に拡大してしまったらしい。
 軽く息をつき、セレスタ・レネンティア(gb1731)は使えそうなものを荷物にまとめる。
「軽火器とエマージェンシーキット‥‥後はライター‥‥」
 とりあえず最優先は水場だ。
 海水を蒸留してもいいが、この季候では燃料になりそうな枯れ木も少ないだろう。
 キット内の燃料にも限りがあるのだ、水の確保は早めにしておきたい。
 あとは‥‥明るいうちに他のメンバーをできる限り探そう。
 肩からかけたサブマシンガンを構えて、海岸を歩くセレスタ。
 その行く手には。

 ゆるやかな流れになっている河口で、ハミルが水をポットセットにくんでいた。
 周囲は熱帯植物の木立ち。多少涼しい。
「うん‥‥確保です」
 入れられるだけ水を入れて、海岸に引き返す。
 しかし能力者の頑強な抵抗力があるとはいえ、生水を飲むのもどうだろう?
 沸かして湯ざましを飲むようにしようか。
 と、その時。
「動かないでください‥‥!」
 海岸の方から、セレスタが声を発した。
 銃口はきっちりハミルの方を向いている。
 どういう状況かと思うが、とりあえず腰の銃を確認し、セレスタの方を向くハミル。
 そこでお互い、同じ任務に参加した傭兵だとわかった。
「あ、どうも‥‥」
「‥‥失礼しました。突然人影が見えたもので」
 ハミルが両手を上げると同時にセレスタが銃口を下ろし警戒を解く。
 さて、1人でなくなったのは大きい。
 眠る時の見張りも交代でできるし。
「とりあえず、見通しのよい所に拠点を張ろうと思うのですが」


 水源を求めてぴょんぴょんと山を走破するフィー(gb6429)。
 足元は岩だらけ。川が近いのかも知れない。
 高い所に登れば墜落した機体の煙が見えるかも、という考えから山を登っている。
 こういう野山は彼女の得意分野だ。足音も立てず岩場を飛び移ってゆく。
「あ‥‥」
 フィーの耳が、いち早くせせらぎの音をとらえた。
 ほんの少し表情が明るくなり、水場に近付くと‥‥
 すぐに木の陰に隠れる。
「‥‥敵‥‥」
 鳥キメラだ。川の中の岩についたコケをつついているのだろうか?
 岩から崩れた石がクチバシを打ち、フォースフィールドの赤い光が走る。
「‥‥」
 あまり体力を浪費したくない。
 キメラが飛び去るまで待とう。

(「1匹か‥‥知能も鳥と変わらねぇみたいだが、念のため隠れとこう」)
 ここにもキメラから隠れた男が1人。タクヤである。
 ただでさえKVの操縦で残り錬力が少ないというのに。
「‥‥!?」
 ふと近くの木陰を見て。
 タクヤはあやうく覚醒しそうになった。
 ほとんど森の背景に溶け込んでいるフィーの姿を確認したからである。
 フィーの方もタクヤに気付いたようで‥‥キメラを指差して少し首をかしげる。
 倒すか、という事か?
 タクヤは静かに指で×印を作った。
 こくん、と頷くフィー。
 そしてそのままキメラの観察に入る2人。忍耐の戦いが始まった。


●それぞれの夜

「本格的な生存自活はいつ以来でしょうか‥‥」
 迷彩服を纏い、いかにもレンジャー兵といった姿の衛司が火を囲んでいると、微妙に物騒な雰囲気が出る。
 まして、UPC軍服を着たセレスタも一緒では。
 ‥‥そう、衛司も合流できたのだ。ハミルとセレスタの起こした火の煙を頼りに。
 ハミルもたいがい準備万端だったが、3人揃うとその持ち物の充実ぶりは圧倒的。
 あんたらどこの野戦部隊だ。

「では、今夜は1人ずつ交代で見張りに立ちましょう」
 時刻は‥‥9時くらい。
 ラストホープ時刻に合わせたSASウォッチから計算し、セレスタは最初の3時間の見張りを買って出た。
「火は動物を寄せ付けない効果があるようですが、キメラはわかりませんから」
 警戒を緩めるつもりは無い。
 てきぱきと食事に使った道具を洗い、拭いてエマージェンシーキット内におさめる。
 今夜の夕食はハミルの獲った魚と、衛司が切ってきた食用花、アロエ少々。


 所変わって、こちらはカルマと合流したタクヤ&フィー組。
「いやほんとラッキーだったな」
「一人は‥‥さびしい‥‥会えて‥‥よかった‥‥」
 山の上の方に不時着したため、うろついていた2人とあっさり出会ったのだ。
 幸運にもカルマ機コクピットの風防部分が無事だったので中に入って休むことができる。
「こんな事になるならいつも使っている槍でも持ってくるべきだったな」
 この島にキメラがいる事を聞き、カルマはぼやく。
 ナイフの持ち合わせはあったものの、やはり武器は欲しい。
 すぐ側で得物の点検をしているフィーを見るとなおさらそう思う。
 そのフィーは何やら微妙な表情であるが。
「‥‥‥‥遭難した‥‥けど‥‥何時もの生活と‥‥変わらないような‥‥」
 実にワイルドだ。
 普段どんな生活をしているのだろう。


「食える?‥‥空腹に怖いもの無し夏の夜」
 断崖絶壁の下の孤独な玲奈は。
 元はウミヘビであろう丸焼きを思い切って口に運んだ。
 あ、意外とおいしい。
「気楽にいこうよドンマイドンマイ」
 なんか歌いはじめた。
「遭難少女玲奈〜私は島一番の美女♪」
 無線機に向かって、微妙にアニソンっぽい歌を。
「でも無人島です〜♪」
 このまま夜を明かすつもりらしい。
 しかし。
 この状況からどうしろと。
「あはは、助かるのかな〜‥‥白骨死体で発見されたりしてね」
 流木や岩を浜辺いっぱいに使って、5メートル程度の『SOS』を書いてはあるけど。
 こんな所にいて気付いてもらえるのだろうか?


●救助隊!

 まだ薄暗い時間から、2機の救助ヘリは海と島を探していた。
 各機体から救難信号は出ているはずだが、バグアのジャミングもあるので近付かなければわからない。
「神崎さん‥‥無事だといいんですけど‥‥」
 治療道具と薬を医師鞄に詰めて、菱美 雫(ga7479)は他の傭兵とともに救助に来た。
 要救助者のリストに、以前知り合った神崎奈々の名を見たためだ。
 知り合った経緯というのが『奈々の心肺蘇生をしたこと』だというのだから‥‥
 雫の嫌な予感はとどまる所を知らない。
「の、能力者が頑丈とは言っても‥‥万が一のこととか、ありますし‥‥」
 奈々のみならず、今回はかなり多くのパイロットが不時着せざるをえなかったようだ。
 心配である。

「あ、あれ!」
 島が見えたと思ったら、早くも墜落した機体をひとつ発見。
「えっと、こ、ここの島の地形図は‥‥と」
 ヘリの操縦者から資料を受け取り、無線機の周波をいじりつつ、呼びかけてみる雫。
「み、みなさ〜〜〜ん、き、救助部隊が来ましたよ〜〜〜」
 ‥‥その声で、操縦者が脱力して突っ伏した。


 ちょうど同刻。
 朝早く起きていた衛司達は、さっそく食料を確保していた。
「この模様なら毒はありません」
 蛇だけど。
 衛司とセレスタが蛇をさばき、ハミルは火の勢いを保つ。
 結局、夜間も敵襲は無かったし睡眠は充分。平和な朝である。
 その時。
 衛司が受信待機にしておいた無線機が、意味のある音を発した。
「んっ」
 焼き蛇を急いで飲み込み、返事をする。
 名乗ったのは向こうからだった。
「‥‥了解、こちらから照明銃による合図を行います。方角は島の南南西の海岸。はい」
 無線で会話しながら、荷物から照明銃を取り出す。
 衛司は微笑むと、セレスタとハミルに告げた。
「救助が来てくれたようです」


 そして山の上の川では。
「あとはこいつをぶつけて‥‥っと!」
 覚醒して小石を持つと、それを川の中の岩に激しく叩きつけるタクヤ。
 その衝撃は岩を揺るがすほどで。
「いっちょあがり、これで充分だろ」
 あらかじめ岩の下に誘導しておいた魚が気絶している。見事な漁法。
 その川辺では、岩場から少し離れたところの野草を摘むフィー。
 ナイフで野生の果物をもぐカルマ。
 キメラもいる島なので油断はしていないが‥‥なんだかキャンプにでも来ているような。
 いやタクヤとフィーが野生に溶け込みすぎなのだが。
「ん?」
 ふと音が聞こえたような気がして3人は空を見上げた。
 見慣れた、ラストホープのショップで売っている照明銃の光。
 とすると‥‥


「ありゃりゃ、少尉さん。いやあ‥‥恥ずかしながら帰って参りました」
 雫の乗っていない、もう1機の方のヘリに救助された玲奈。
 そこには偵察依頼の時に解説してくれた人がいて。
 冗談めかしながら敬礼し、玲奈はパイロットと笑いあった。
 一時はどうなる事かと思ったが。


「火傷の手当ては済みました‥‥カルマさんと玲奈さんは、エミタのメンテナンスをしたら一応医療センターに」
 多大な疲労までは回復できないが、雫の手により、皆の傷はほぼふさがった。
 頭を打った2人は一応ちゃんとした設備で診てもらうとして。
「あと‥‥発症はしなくても保菌者になっている事があるかも知れないのでチェックを受けて‥‥」
 説明をしながらも、雫は気が気でない。
 ここまでの皆に傷が少なかったのは安心ではある。
 が、まだあと2人‥‥
 もう島を1周しているはずなのに。

「あ‥‥」
 島を1周してきた所で。
 衛司達の煙に引き寄せられたのか、残り2人の姿が見えた。
 わりと元気そうに手を振っている。
 しかしその腕や足に巻かれた包帯を見ると、着陸するのももどかしそうに、雫は砂浜に飛び降りた。
 ほ、と田沼じいさんが驚き。
 飛び降りた雫に、奈々がかけよってくる。
「雫さん!? え、えっと、大丈夫ですかしら?」
「こ‥‥こっちのセリフですよ‥‥」
「え?」
 雫は差し出された奈々の手を握り、目を潤ませている。
「よかった、この前みたいな大怪我でもしていたら、ど、どうしようかと思ってました‥‥!」
 本気で心配していたようだ。
 その真剣な様子に、奈々も心打たれる。
「ありがとう‥‥ございますわ、雫さん‥‥」


 終わってみれば、24時間も経たないうちに迅速な救助が完了。
 命の危険は多少あったとはいえ‥‥今回に限って言えば、それほど悪くない経験だったかも知れない。
 長い傭兵稼業、こんな事もあるさ。