タイトル:tempestマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/26 01:21

●オープニング本文


その日は空から叩きつけるような雨、そして身を裂くほどの冷たい風が吹きすさぶ日だった。

※※※

本日の天気予報

雨‥‥100%

これが新聞に載っていた本日の天気予報。

外を見ても、雨が止むことなく叩きつけていた。

そして――‥‥1番可哀想なのは、こんな土砂降りの日にキメラ退治に赴く能力者達だ。

今回、問題視されているキメラは緋色の蜥蜴らしい。

外見は気持ち悪く、体の皮膚はそれなりに硬度を持ち、前回退治に赴いた能力者を苦しめたらしい。

そして長く、鋭い舌が遠距離からの攻撃を可能にしているらしい。

「厄介だねぇ‥‥」

本部の椅子に座り、男性能力者が依頼書を見ながらため息混じりに呟く。

「気持ち悪いキメラを相手にして、おまけに天候からも見放され‥‥かなり難しいんじゃないの?」

「ちなみにー、今回の現場は山の中らしいね。ぬかるんだ地面‥‥うわぁ、俺行かなくてよかった」

想像したのか、男性能力者は軽く体を震わせながら小さく呟いた。

●参加者一覧

シア・エルミナール(ga2453
19歳・♀・SN
篠原 凛(ga2560
20歳・♀・GP
シュヴァルト・フランツ(ga3833
20歳・♂・FT
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
九条・縁(ga8248
22歳・♂・AA
鈍名 レイジ(ga8428
24歳・♂・AA

●リプレイ本文

「眼鏡は外していった方が良さそうね‥‥」
 出発前、シア・エルミナール(ga2453)が窓を叩きつけるように降っている雨を見ながらポツリと呟く。
「‥‥人の嫌がる事は進んでやれって言うけど、濡れるのはヤだなぁ」
 はぁ、とため息を吐きながら篠原 凛(ga2560)も止む気配のない雨を見ながら憂鬱そうに呟いた。
「キメラに時と場合を選べ‥‥とは言えませんよね」
 比良坂 和泉(ga6549)が苦笑しながら言うと「まぁ‥‥文句も言ってられないッス」と六堂源治(ga8154)が言葉を返した。
「自分は雨が嫌いではないのですが、今回ばかりはそうではないようです」
 シュヴァルト・フランツ(ga3833)も苦笑しながら呟く。
「まぁ、山の天気は変わりやすいって言うし! 行く頃には晴れてるよ!」
 はっはっはっは! と九条・縁(ga8248)が笑いながら叫ぶ。
「ま、アテにはならないけど悪路と雨の対策をしておいた方がいいだろうな」
 鈍名 レイジ(ga8428)が雨避けのためにコートやゴーグルを装備しながら呟く。
「今回は土砂降りだが、どんな状況でも任務を遂行するのが傭兵だからな、冷静に行くさ」
 威龍(ga3859)が呟き、能力者達は問題のキメラを倒すべく現地へと向かいだしたのだった。

〜山の天気は変わりやすいけれど、今回は変わらなかった〜

「わぁ、見事な――――土砂降り」
 見事な、までは爽やかな笑顔で『土砂降り』という言葉はがっくりとうな垂れながら九条が呟く。
「まぁ‥‥最初から分かっていた事ですしね」
 シュヴァルトは苦笑しながら言葉を返す。
「えっと、キメラとの遭遇予測地点はココとココ、比較的足場が良さそうなのはココとココだね」
 篠原が地図を取り出しながら能力者達に確認をするように問いかける。現場へ到着する前にキメラと戦闘を行った能力者に話を聞き、遭遇地点と足場が良さそうな場所を調べてきていた。
「俺と篠原が引き付ける役目だな、何かあったら無線機で連絡をするようにしよう」
 威龍が呟くと能力者達はキメラ退治の作戦を開始したのだった。

〜引き付け役〜
「まさか『刹那の爪』をスパイク代わりに使う事になるなんて‥‥」
 篠原が苦笑しながら呟き『菖蒲』を手に持つ。そして頭には視界を遮られないように『カウボーイハット』を着用している。彼女なりに考えた悪天候対策だろう。
 作戦自体は難しいモノではなく、篠原と威龍の二人が先行して動き、残りの能力者達は二人より少し離れて行動をする。キメラを発見したら二人が足場の良い所まで誘導を行い、他の能力者は誘導地点に先回りをしてキメラを迎え撃つ――というものだ。
 しかし天候のせいで、作戦が完璧に成功する‥‥とは言えないので能力者たちは多少の緊張を隠せないでいた。
「もうすぐで遭遇予測地点ですね」
 篠原がビニールの中にいれた地図を見ながら呟くと「そうだな、気を引き締めていこう」と威龍が言葉を返した。
 キメラを発見したのは、それから数分後の事だった。土砂降りの中を蜥蜴キメラはズシと重そうな音をたてながら歩いている。
「それじゃ――行きましょうか」
 篠原が呟き、B班に連絡を入れた後に『疾風脚』を使用してスピードを上昇させた後に蜥蜴キメラへと向かって走り出す。
「こんな土砂降りの中をご苦労様――此方としては迷惑なんですケドね」
 篠原が邪笑を見せながら『菖蒲』で攻撃を仕掛ける。不意打ちでの攻撃だった為、蜥蜴キメラの背中を斬りつけたが、ぬかるんだ地面で滑ってしまい、斬りつけが浅かった。
「鬼さんこちら♪ ‥‥っと危ない危ない」
 蜥蜴キメラは反撃を繰り出してきたが、篠原はそれを紙一重で避ける。
「避けろ!」
 威龍の声が聞こえ、篠原は横へと移動をする。それと同時に威龍が蜥蜴キメラの尻尾を掴み、後ろへと投げ飛ばす。
「合流しよう」
 威龍が呟き、後ろからキメラが追ってくるのを確認すると二人は合流地点へと向かって走り出したのだった。

〜豪雨の中で戦闘開始〜

「目標を確認‥‥アレですね、グロテスクな外見に鋭い舌を持つキメラ‥‥報告通りですね」
 シュヴァルトが呟くと「雷作戦――出来るでしょうか」とシアが空を見上げながら言葉を返してきた。
 シアの言う雷作戦というものはピアノ線で結んだ矢をスキルを使って、片方が刺さったらもう片方を上空に打ち出し、雷を落とす――という作戦だった。
 確かに雨は降っているものの、雷の音も遠くに聞こえるだけで落ちそうな感じは見受けられなかった。
「雷作戦――は無理そうですね、普通に戦いましょうか」
 比良坂の言葉に「そうですね、無理はしない方がいいかもしれません」とシアは言葉を返した。
 シアは後衛に回り、シュヴァルトがシアを護衛する役割だ。そのほかの接近戦が得意な能力者は積極的に蜥蜴キメラに攻撃を仕掛け、短時間で倒す――これが今回の作戦になった。
「おらぁ! フルボッコにしてやるから覚悟しろや!」
 九条が『クロムブレイド』を構え、蜥蜴キメラに攻撃を行う。足場が決していい場所ではないので、所々にあった岩を足場にして蜥蜴キメラへと攻撃を仕掛けたのだ。
「くそ、あの長い舌が邪魔だな――‥‥」
 鈍名は忌々しげに呟くと、襲い掛かってくる舌を避ける。
 だが、足場が悪いので完全には避けきれず大きなものではないけれどダメージを負ってしまう。これは鈍名に限らず他の能力者も多少なりとダメージを受けている。
「わざわざ雨の中を移動お疲れ様♪ お礼に退治してあげましょ♪」
 篠原が呟き、蜥蜴キメラの攻撃を自分へと集中させる。攻撃役は他の能力者に任せるという考えなので、篠原は蜥蜴キメラの攻撃を避ける事だけに専念すればいい。
 篠原が蜥蜴キメラの攻撃を避けた時、一瞬の隙を突いてシアが『アーチェリーボウ』で蜥蜴キメラを攻撃する。
 そして二回目の隙が出来た時に六堂が『刀』を振りかぶりながら『紅蓮衝撃』を使用して攻撃を行う。その後、間髪入れずに『流し斬り』を使用して二段のダメージを与えた。
「喰らうッスよ、サムライ・スラッシュ!」
 だが、六堂が着地すると同時に蜥蜴キメラの舌が彼を目掛けて勢いよく向かってくる。
「危ない!」
 比良坂が舌を切り落とすように攻撃を行うが、ぬかるみに足を取られてうまく攻撃が出来ないでいる。
 だが、軌道は変える事が出来て六堂に舌が直撃することはなかった。
「いい加減、退場の時間だぜえっ!」
 九条が叫びながら『両断剣』を使用して蜥蜴キメラの頭を潰すべく攻撃を行った。蜥蜴キメラはそれを避けようとしたのだが、シアの放った矢、そして鈍名が繰り出した攻撃が蜥蜴キメラの動きを一瞬遅らせ、九条の攻撃は見事蜥蜴キメラの頭に直撃したのだった。


〜悪天候の中、任務を遂行した者たち〜

「お疲れ様っ! 怪我した人はいるかな‥‥ってほとんどだね、救急セットで回復しておこう」
 篠原が苦笑しながら救急セットを取り出して治療を始める。
「それにしても‥‥蜥蜴は嫌いな方ではないのですが、アレは限度を超えてましたね。天候とあいまって衛生上極めて不快でした」
 蜥蜴キメラ退治が終わった後、シアが口を押さえながらため息混じりに呟く。確かに土砂降りの中、泥まみれの蜥蜴など気分的にも気持ちのよいものではない。
「無事に倒せてよかったです、とにかく‥‥風邪を引かないうちに帰還しましょうか」
「そうだな、だけどこんな悪天候の中の戦闘はこれっきりにしてほしいな」
 威龍がため息混じりに呟く。
「俺たち傭兵は戦う場所も戦う相手も自分の思うようにいかないのが普通だが‥‥それにしても、さすがに今回の雨責めには閉口したな――次からは妙手があればいいのだが‥‥」
 威龍の言葉に「そうですねぇ」と比良坂が言葉を返す。
「しかし急いで帰還――というにはずいぶん濡れすぎてますからね‥‥まぁ、のんびり帰るとしましょうよ」
 比良坂が雨で額に張り付いた髪を弄りつつ、苦笑気味に呟く。
「俺は帰って風呂に入ってビールが飲みたいッス‥‥冷蔵庫に残ってたかな」
 買って帰るか、六堂は頭を振りながら水を飛ばし、小さく呟いた。
「それには同感だな、熱いシャワーでも浴びて寝たい」
 鈍名が呟き、能力者達は本部に報告するために帰還していったのだった。
 

END