●リプレイ本文
「人形の中に紛れ込むなんて‥‥余計な知恵をつけましたね」
呆れたようにため息を漏らし、レイ・アゼル(
ga7679)がポツリと呟く。
「今までにも前例はあるような気がしますが、今回は場所が厄介ですね‥‥」
鳴神 伊織(
ga0421)がレイに言葉を返す。
厄介な場所――‥‥それは『人形館』の事だ。同じような人形の中に紛れているなら不意打ちをくらう可能性も少なくはない。
「でも‥‥折角人形が集められても忘れ去られるように置かれているなんて物悲しいですね」
鳴神が呟くと「ボク知っているんです」とエイドリアン(
ga7785)がポツリと呟く。
「‥‥知っている、とは‥‥?」
エリク=ユスト=エンク(
ga1072)が問いかけるとエイドリアンは小さな声で話し始めた。
「その人形館って日本各地から曰くつきの本当にヤバイ人形を押し付けられる形で成立しているという噂がある事‥‥たぶん面白半分に誰かが流した作り話だとは思うのですが‥‥」
「‥‥ただの噂である事を願います」
レイは少し体を震わせながら呟く。
「しかし――人形型までいるとはな、もはや何でもあり‥‥だな」
月村・心(
ga8293)が呆れたように呟く。
「そういえば、今回の任務について情報が少なすぎたのでUPC本部に問い合わせてきました」
麻宮 光(
ga9696)が人形館の見取り図、人形の配置図などを能力者達に渡しながら話していく。
「日本人形を模したキメラだなんて‥‥何だか許せません!」
見取り図を見ながら赤宮 リア(
ga9958)が怒りを交えた声で呟く。
「ま、幽霊退治みたいなモンだと思えばいいか」
麻宮はため息混じりに呟くと、赤宮と同じく手を怒りで震わせながら見取り図を見る秘色(
ga8202)の姿が視界に入ってきた。
「廃街の人形館となれば、埃も積もっておろうの。キメラが侵入しておれば、散らかっておるかもしれんのぅ―――――‥‥片付けたい」
最後の言葉に能力者達は「え?」と聞き返すように秘色を見る。
「思い切り整理整頓したい、掃除したい、その為にもキメラをボコるぞえ!」
掃除の為に!? とは誰も言葉を返せず、能力者達は掃除――もといキメラ退治の為に問題の人形館へと向かい始めたのだった。
〜朱色と藍の着物を着たキメラ〜
人形型キメラが複数存在するかもしれないという事から、能力者達は班を二つに分けて行動する事にした。
一斑・鳴神、エイドリアン、麻宮、赤宮の四人。
二班・月村、秘色、エリク、レイの四人。
上記二つの班で行動を開始し始めたのだった。
〜一斑〜
「それにしても『人形館』というだけあって沢山の日本人形がありますね」
一階を一斑が担当する事になり、結構な数の人形を見て鳴神が呟く。日本人形の中にはショーケースに飾られているもの、キメラが暴れて無造作に投げ捨てられているもの、様々だった。
「‥‥間違って壊した人形が実は『アタリ』で、これから毎晩枕元に立って覗き込んでくるようになったら怖いですね♪」
静かな人形館の中、エイドリアンが楽しそうに呟く。彼女は人形に恨まれる方が、人形に混じって狙っているキメラよりは怖くない――そう言っていた。
「何かキメラが残した痕跡があれば良かったんだけど‥‥まぁ何もあるワケないか」
麻宮がため息混じりに呟き、日本人形を見ながら不自然な点がないかを確かめていく。
「わぁ、綺麗‥‥こんなにも美しいお人形たち‥‥出来れば不要な破壊は避けたい所ですね」
赤宮が日本人形を見ながら感激したように呟き、落ちている人形はショーケースに戻していく。
何体かの人形を戻していき、藍色の着物を着た日本人形に手をかけようとした時、麻宮が違和感を感じる。
ここの人形達は長い間ずっと放置されていたのだ。だから必ずある『物』がないとおかしい。
しかし、赤宮が手を伸ばした人形には『それ』がないのだ。
「危ないっ!!」
叫んだ時には少し遅く、能力者達は藍色の着物を着た日本人形から攻撃を受けてしまう。
「何で分かったんですか?」
鳴神が麻宮に問いかけると「埃だよ」と短く言葉を返してきた。
そう、この人形館全体が埃っぽく、どの人形にも埃が積もっているのに人形型キメラには埃がほとんどついていなかったのだ。
「本当に日本人形そっくり‥‥しかも襲い掛かってくるし‥‥」
エイドリアンは震えながら『バスタードソード』で攻撃を仕掛ける。
だが、小さく素早い日本人形型キメラはエイドリアンの攻撃を避けて、赤宮に攻撃を仕掛けようと走りだす。
「なるべく人形達は破壊させません、日本人形ならば火に弱いはず‥‥食らいなさいっ! 虎の子の弾頭矢――爆炎式!」
赤宮は『強弾撃』を使用した後『弾頭矢』で攻撃を仕掛ける。赤宮の攻撃を受けて日本人形型キメラは壁に叩きつけられる。
「さて、冥府に帰る準備は出来ているんだろうな」
麻宮は低く呟き、覚醒を行う。日本人形型キメラは壁に叩きつけられて動きが鈍くなってきている。
「供養の必要は無さそうですね‥‥もう、お逝きなさい」
鳴神は呟き『月詠』を構えて『豪破斬撃』と『紅蓮衝撃』を使用して日本人形型キメラに攻撃を仕掛ける。
「貴方の行為は――美しき日本人形を侮辱する行為です。散りなさい」
赤宮は呟き、攻撃を仕掛けて日本人形型は倒されていったのだった。
〜二班〜
時は少し遡りて二階を捜索する二班の話へと移る。
「こんな事に使うのは‥‥初めてだから‥‥どうなるかな」
ポツリとエリクは呟く。普段から視覚に頼らずに気配や物音に敏感な彼ならば人形型キメラの微妙な気配に気がつくかもしれないという事で探査役を任せたのだ。
「あぁ、これは‥‥掃除のし甲斐があるのぅ。早くキメラをボコって掃除をしようぞ」
秘色は人形や埃の散乱している人形館を見て、うずうずとした様子で呟く。ちなみに彼女の格好は割烹着姿と、見事なお掃除ルックで任務にきていた。
「キメラ掃除じゃし間違いではなかろう?」
秘色の言葉に月村が苦笑を交えて「そうか」と言葉を返した。
二班は人形を軽く小突いたりして見極めを行っていた。
しかし、中々見つからない事に能力者達は少しイラだちが募り、日本人形型キメラをどうやって見つけようか悩んでいる時にエリクが「そこ‥‥何かいる」と呟き、能力者たちはエリクが言う方向を見る。
それと同時に足元を駆けるように日本人形型キメラが攻撃を仕掛けてくる。靡く髪がまるで刃のように鋭く、重傷ではないものの能力者達はダメージを受けてしまう。
「調べている事に気づいたか、もう少し待っていてくれれば楽だったのにな」
月村は呟き『アーミーナイフ』を構え、日本人形型キメラの髪を裂くように攻撃を仕掛ける。
「‥‥行くぞ」
エリクは洋弓『アルファル』で攻撃を仕掛け、日本人形型キメラはエリクの攻撃を避ける為に多少の隙が生じる。
その隙を見逃さないように『イアリス』で攻撃を仕掛けた。
「人形は可愛いものじゃが、キメラなれば‥‥疾く去ね」
秘色が攻撃を終えるとレイは「よくも手間をかけさせてくれましたね」と小銃『ブラッディローズ』で『鋭覚狙撃』『強弾撃』『影撃ち』を使用して攻撃を仕掛けた。
レイの攻撃が終わると、月村が接近攻撃で日本人形型キメラを蹴りつけて壁に叩きつける。
「‥‥殲滅、確認」
月村の攻撃が終わった後、他の能力者達も総攻撃を仕掛けて日本人形型キメラを退治したのだった。
〜楽しい楽しいお掃除タイム〜
「さぁ! キメラも退治したのじゃし掃除をするぞえ!」
日本人形型キメラを二体倒し終わったあと、能力者全員で他にも潜んでいないかを確認して、休憩をしている所に秘色が叫んだ。
彼女は割烹着の袖をたくし上げながら、落ちている日本人形をショーケースに戻していく。
さすがに戦闘を行ったので、全ての人形が無傷というわけにはいかなかった。壊された人形を抱き上げ「ごめんね‥‥」と赤宮は悲しそうに呟く。
「一応、こういうのって供養した方がいいの――か?」
麻宮が首を傾げながら呟くと「そうですね、その方がいいでしょう」と赤宮が言葉を返す。
「はー‥‥ただの人形だけになってよかった」
エイドリアンは日本人形型キメラが倒されたことを知ると、安堵のため息を吐き、安心したように呟く。
エリクとしては日本人形を元の持ち主の所に返してやりたいと考えていたが、全ての人形を返してやることも出来ず、数体を返してやることに決めた。
「はぁ‥‥疲れた‥‥けど、今からまた疲れそう」
レイは呟き、嬉々として片付けをする秘色を見たのだった。
その後、ほとんど一日がかりで人形館を綺麗に片付けると能力者達は疲れのためか、げっそりとした表情で本部へと帰還してきたのだった。
END