●リプレイ本文
〜空の王者に挑みし能力者達〜
「グリフォンか‥‥子供の頃から好きだった獣ですが、それを相手にする日が来るとはね‥‥」
ふ、と笑みを零しながら翠の肥満(
ga2348)がポツリと呟いた。
「鷹の翼と、獅子の下半身を持つ怪物か‥‥合成物が相手とはな」
冥姫=虚鐘=黒呂亜守(
ga4859)が呟くと「飛んでいる相手は結構厄介ですね」と夜坂桜(
ga7674)が言葉を返した。
「厄介、確かにそうですね‥‥何人も能力者を退けてきたのですから、そろそろ命運も尽きた頃でしょう――この辺で引導を渡して差し上げましょう」
レイ・アゼル(
ga7679)が穏やかな笑みを浮かべて呟く。過去に『グリフォン』と対峙した能力者の中には命を落とした者もいた。
そんな能力者達の無念を晴らすためにも、今回の能力者達が『グリフォン』を倒すしかないのだ。
「そうだな、何処までやれるかわからぬが‥‥やるしかあるまい」
風閂(
ga8357)が拳を鳴らしながら呟く。
「ははは、強敵上等! 気合入れていくぜ?」
おもちゃを見つけた猫のように、猫瞳(
ga8888)が瞳を輝かせながら能力者達に話しかける。
「視界の利きにくい森の中、敵に頭上を抑えられた状態‥‥これ以上犠牲者を増やさない為にも頑張って退治しましょう」
遠倉 雨音(
gb0338)が能力者達に挨拶をしながら呟く。
「ん、初任務頑張る。キメラは伝説に出てくるモンスターを真似たのが多いと聞いたけど本当なのですね」
タリア・エフティング(
gb0834)がぺこりと頭を下げながら呟く。
「そうそう、これは先ほど借り受けてきたネットと森の地図です。地図の方は簡易版なので詳しくは書かれていませんが、おそらく充分だと思われます」
夜坂が少し大きめのネットと地図を見せながら話す。ネットはグリフォンを倒すための罠に使用する為に借りてきたのだ。
能力者達はグリフォンを退治する為の準備を行い、空の王者が待ち受ける森へと向かっていったのだった。
〜空の王者を倒す為に受けた役割〜
能力者達は『グリフォン』を退治する為に班を二つに編成した。
まずグリフォンを誘導してくるのが囮班の夜坂、猫瞳、タリアの三人。
そして囮班がグリフォンを誘導してくるまでに罠の設置を終わらせ、迎え撃てるようにしておく攻撃班が翠の肥満、冥姫、レイ、風閂、遠倉の五人。
「それじゃあ、囮に行ってくるかっ」
猫瞳が呟き、夜坂とタリアの三人で行動を開始したのだった。
〜囮班・命がけの誘導〜
「大きさは‥‥鳥にしては大きく、獅子にしては小さく――という感じですね」
夜坂が少し遠くの上空に見えるグリフォンを見て小さな声で呟いた。空を飛んでいるという事とタリアの『探査の眼』のおかげでグリフォン自体は見つけるのに苦労する事はなかった。
向こうはまだ此方に気づいていないが、いつ気づかれて不意打ちをくらうとも限らないので三人は警戒を強めながら一歩ずつゆっくりと進んでいく。
「さて‥‥この辺からでいいでしょうかね――頑張っていきましょう」
夜坂は猫瞳とタリアに微笑みかけると、持っていた『呼笛』を一定のリズムで鳴らし始める。その音にグリフォンが気づいたのだろう。向こうを向いていた頭がゆっくりと此方へ向けられる。
「此処からが仕事の始まりだな」
猫瞳は予め持参しておいたモノを手に持ち、素早く此方へ向かってくるグリフォンの攻撃を避ける。避けた方向にはタリアが立っていて「しまった」と猫瞳が呟く。
しかし、タリアは『プロテクトシールド』でグリフォンの攻撃を凌ぎ「私は大丈夫です」と猫瞳と夜坂に話しかける。
「攻撃は苦手ですが、防御には自信がありますから」
タリアは呟き、誘導をする為に走り出す。そして夜坂と猫瞳もグリフォンが他の場所へ行かぬように牽制攻撃を仕掛けながら、攻撃班が仕掛け終わっているであろう罠の元へと導いていったのだった。
〜ネットの罠を急いで仕掛けて! そして戦闘開始! 〜
時は少し遡り、攻撃班は借りてきたネットで罠を仕掛け始めていた。少しでもグリフォンに気づかれにくいようにとネットは森と同系色の緑色に塗られていた。
「罠を仕掛けて、引っかかった所を総攻撃――これでよかったのだな?」
作戦を確認するように冥姫がレイに問いかける。
「えぇ、そうです。先ほどから呼笛の音が聞こえ始めているので、グリフォンがやってくるのはもうすぐかもしれませんね」
レイが音のする方を見ながら呟く。耳を澄ませば音が徐々に近づいてくるのが分かる。
「もうすぐ、ですね」
翠の肥満が呟き、次の瞬間にネットの上を横切る。
「ほぅ、天の王者と百獣の王の合わせ技――確かにまともに食らえば命が危ういかもな」
冥姫はグリフォンの攻撃によって抉れた木を見て、感心しながら呟く。
「引っかかってろぉぉっ!」
グリフォンの真正面に立ち、猫瞳が持参してきた『鳥もち』をグリフォンの目に投げつける。鳥もちによって視界を奪われたグリフォンは激しく咆哮しながら、無造作に暴れ始める。
そして、視界さえ見えていれば避けられたであろうネットの罠に足を絡めてしまい、その場に倒れこむ。
「もう飛ばなくて良いです!」
レイが叫びながら小銃『ブラッディローズ』を構え『鋭覚狙撃』と『影撃ち』を使用して翼を中心的に攻撃を仕掛けた。
「鳥もち――確かに目潰しとしては効果が高い――そして、こうすれば確実だな」
風閂は呟きながら長弓『草薙』でグリフォンの両目を射抜き、後に続いて遠倉が『アサルトライフル』で攻撃を仕掛ける。
「好きな獣がキメラとなって戦わなければならないのは――悲しい、のかな?」
翠の肥満は首を傾げながら呟くと『ライフル』で『強弾撃』と『影撃ち』を使用して攻撃を繰り出す。
そして翠の肥満の援護を受けて冥姫が『バトルアックス』を振り上げて『豪力発現』と『紅蓮衝撃』を使用して攻撃を仕掛けた。
「空の王者と呼ばれるグリフォンも、地に堕ちたものよ」
風閂が呟き『ソニックブーム』を使用した後、武器を『イアリス』と『クロムブレイド』に持ち替えて『流し斬り』を使用して攻撃を繰り出す。
目が見えなく、翼も使えない状況でグリフォンが出来る攻撃はほとんど皆無で、能力者達の攻撃を受けるだけだった――のだが、体の羽を無数に飛ばすという攻撃技を隠し持っていたらしく、至近距離、遠距離にいた能力者達は攻撃を受けてしまう。
「こんな‥‥攻撃を隠し持っていたなんて‥‥」
タリアが『プロテクトシールド』でほとんどを防御しながら小さく呟く。前に退治に向かった能力者達の話では、今のような攻撃は話になかった。高い場所からの急降下攻撃のみ――‥‥。
だから、能力者達もグリフォンの動き自体を封じて戦えばいいと考えていた。
しかし、聞いた事のない技を使われて能力者達は多少なりとも動揺を隠せなかった。
「でも、逆を言えば‥‥普段使わない技を使わなければならない状況という事だな」
風閂が呟き、攻撃態勢を整える。
「倒さなくちゃ、あいつが次に襲うのは町だ」
猫瞳が呟きながら、町がある方向を見る。
「そうですね‥‥罪のない人が命を落とさぬよう、ここで仕留めなくてはいけません」
遠倉が『アサルトライフル』を構えながら猫瞳に言葉を返した。
「そう――教えよう。本当に怖いのは空想の怪物じゃなく、現実の人間だ」
翠の肥満が低く真面目に呟くと『ライフル』で攻撃を仕掛ける。
「如何に鷹と獅子であろうと‥‥人の持つ知を乗り越えられぬ」
冥姫が呟き、弱ってきているグリフォンにトドメを刺すべく『バトルアクス』を構える。
「俺が攻撃を仕掛けるから、その後に皆で総攻撃をっ!」
猫瞳が叫び『布斬逆刃』と『急所突き』の二つを使用して、尚且つ空手技の二本抜きを合わせて攻撃を仕掛けた。
「電磁物理攻撃急所指突『猫瞳スティンガー!!』」
叫びながら猫瞳が攻撃を仕掛け、次の瞬間に能力者達が総攻撃を仕掛けて、グリフォンを退治したのだった。
〜空の王者が堕ちし時‥‥〜
グリフォンが退治された後、翠の肥満はグリフォンに向けて一度発砲した。
「死者に鞭打つような真似は残酷かもしれませんが‥‥グリフォンに殺された同胞達への弔いの一発を‥‥やはりね」
翠の肥満は呟き『ライフル』をおろす。
「天と地、その覇者を望むは何時のモノも変わらぬ、か」
冥姫は呟きながら、今はもう動かぬグリフォンを目を細くして見つめた。
「‥‥っ」
夜坂は覚醒状態を解除すると同時に怪我の痛みが体を襲い、痛みに表情を歪めるがグリフォンの前に跪き、グリフォンに手を合わせる。
「ふぅ‥‥疲れましたね。帰ってゆっくり休みましょう」
レイが呟くと「なかなか手ごわい相手であったな」と風閂が言葉を返す。
「でも‥‥初任務がうまくいって本当に良かった」
タリアは安堵のため息をつき、能力者達は使用したネットや、戦いによって散らかってしまった森の中を簡単に掃除をすると報告のために本部に帰還していったのだった。
END