タイトル:週刊記者の買い物マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/23 22:05

●オープニング本文


あれ?

何でこんな事になってるの?

また私が能力者の皆に怒られちゃうじゃんよーっ!

※※※

始まりはマリが「買い物に行って来る〜!」と楽しげに出て行った事からだった。

チホや他のクイーンズ記者達も軽い気持ちで「いってらっしゃい」と見送ったのだが‥‥。

‥‥一週間経った今も帰って来ないのだ。

確かにラストホープを出て、買い物に行くと行っていたから、何日か帰ってこないというのは予想していたが、一週間となるとさすがに心配になってくるわけで‥‥。

「‥‥また何をしてるのよ、あの子は」

頭を抱えながらチホが盛大なため息を吐きながら呟く。

最近は以前のような無茶は多少だが控えているので、大きな無茶をしている事は考えにくい――ハズなのだが‥‥。

その時にチホの携帯電話が着信を知らせる。電話の相手は『マリ』となっていてチホは慌てて電話に出た。

「もしも〜し、マリちゃんでーす」

「ちょ‥‥今何処に居るのよ、三日も帰ってこないってどういう事!?」

チホの剣幕に「ちょ、落ち着いて話を聞いてよ」とマリが電話の向こうで苦笑しながら言葉を返した。

「結論から言うと〜‥‥キメラがいて帰れないんだよね」

えへ、と言葉をつけたしながらマリが話すと「アンタは‥‥」とチホも呆れながら言葉を返す。

「違う違う。今回は本当に偶然なの! 買い物終わって帰ろうとしたらキメラが襲ってきて町が大変な事になってるのよ‥‥」

マリが「はぁ」とため息を吐きながら呟く。確かに電話の向こうではなにやら騒がしい状況で何かが壊れるような激しい音もチホの耳に入ってきた。

「‥‥能力者は?」

「ん〜‥‥まだ来てないみたい――っていうか、騒ぎで要請する暇もないって感じかな、いたた‥‥」

「何処か怪我してるの?」

「え? あ、うん。ちょっと腕をね。そんな事よりチホの方から能力者要請を出しといてくれる?」

宜しくね! とマリは言葉を残して電話を切ったのだった。


※※※

一方現場では、植物系のキメラが町の中を暴れまわっていた。

「さて、どうしたものかなぁ‥‥」

こういう時に『能力者』でない自分が恨めしく思うとマリは心の中で呟く。

目の前で傷つけられる人がいても、助けるために戦う事など決して出来ないのだから。

「‥‥早く助けに来てよ――みんな‥‥」

マリは瓦礫の影に隠れ、空を見上げながらポツリと呟く。

そして‥‥キメラに襲われそうになっている少女が視界に入り、マリは少女を庇うべくキメラと少女の間に割って入ったのだった‥‥。



●参加者一覧

クレイフェル(ga0435
29歳・♂・PN
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
篠原 悠(ga1826
20歳・♀・EP
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
アッシュ・リーゲン(ga3804
28歳・♂・JG
キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
八界・一騎(ga4970
20歳・♂・BM
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER

●リプレイ本文

「全く! 何で電話に出ないのよっ!」
 クイーンズ記者のチホが土浦 真里(gz0004)に先ほどから電話をかけていたのだが、肝心のマリが電話に出ないのだ。
 能力者達が救助に向かった事、そして能力者達が到着した時の合図の事を知らせる為に電話をしていたのだが、マリが電話に出ないのだから伝えようがない。
 その後、チホはアッシュ・リーゲン(ga3804)に電話をかけなおして、マリが電話に出ない事を伝えたのだった。


〜マリは真面目に依頼を出しても、迷惑をかける〜

「いつまでも変わらないトラブル吸引力――掃除機も真っ青や」
 クレイフェル(ga0435)がため息混じりに呟く。冗談めいた口調だが、彼もマリの心配をしていた。
「全くだ、憑き物落としでもした方がいいんじゃないのか? アイツは」
 須佐 武流(ga1461)が呟くと「不幸の星に憑かれてるとか‥‥」と篠原 悠(ga1826)が言葉を返す。
「トラブルがマリさんを呼ぶのか、マリさんがトラブルを生むのか、果たしてどちらなのかしらね‥‥難しい問題だわ。早く助け出してお説教の一つでもしてあげましょ」
 小鳥遊神楽(ga3319)が呟くと「そうだね」とキョーコ・クルック(ga4770)が言葉を返す。
「マリの性格からして、大人しく助けを待っている――とも考えにくいからね」
「でも〜、マリさんなら根性で何とかしてそうですね〜」
 のんびりとした口調で言葉を返すのは八界・一騎(ga4970)だった。
「それにしても偽者騒動といい、マリさんの属性が巻き込まれ型不幸体質に変わってきてるのでしょうか」
 くす、と笑みを浮かべながら呟くのは玖堂 鷹秀(ga5346)で、能力者は準備を整えるとマリがいる市街地へと向かい始めたのだった。


〜混乱する市街地でマリを探せ〜

「こんなところにマリがいるなんて‥‥一刻も早く探さないと‥‥」
 目的の場所に到着して、現場の悲惨さを目の当たりにキョーコが小さな声で呟く。
 町の状況、それは能力者達が考えているよりも遥かに悲惨なものだった。建物は崩れ、犠牲となった人の遺体が視界に入ってくる。
「‥‥これは、本気で探さなヤバいかもな」
 クレイフェルもポツリと呟く。
「そうね、此処に来るまでに決めた班で行動しましょう」
 小鳥遊が呟く。
 そしてアッシュは念のために『照明銃』を打ち上げて、それぞれの班で行動を開始し始めたのだった。

〜A班・須佐、小鳥遊〜
「こんなに人がいたら、マリを探すのも苦労だな――‥‥」
 町――市街地の中をキメラから逃げるように住人が走り回っている。住人達が走り回っているのはキメラも動いているからだろう。
 もし、キメラが動かないモノだったら住人達が逃げ回る必要などないからだ。
「待って、何で町から出ないの? 逃げ回るより町から出た方が――」
 小鳥遊が住人の一人を捕まえて問いかけるが「逃げ場がないのよ!」と住人の女性は半ば叫ぶように言葉を返してきた。
「町から逃げれるならとっくに逃げているわ! 町と外を繋ぐ橋を落とされているんだもの、逃げ場がないのよ!」
「橋が落とされているのか‥‥町はずれに俺達が乗ってきた高速艇がある、とりあえずはそっちへ避難してろ」
 須佐が住人に言葉をかけると「分かったわ、貴方達も気をつけて‥‥」と言葉を返して高速艇の方へと走り出していった。
「一番大きな騒ぎがあるところを目指せばいいのかと思ったけど‥‥町自体が大きな騒ぎみたいだから、何処か分からないわね」
 小鳥遊は呟き、町の状況を見る。確かに『何処』が大きな騒ぎになっているのか見当もつかないほどに市街地は混乱に陥っている。
「――キメラって、アイツか?」
 須佐が構えながら低く呟く。その視線の先には大きいとは言えない植物系のキメラが立っていた。根っこの部分で移動を行うらしく、気持ち悪く蠢いている。
「さっさと倒して、あいつを探さなくちゃな」
 須佐は低く呟き、靴には『刹那の爪』を、そして手には『ジャック』を装備して植物キメラへと近づく。
 小鳥遊は『ドローム製SMG』で攻撃を行い、彼女の攻撃が止まると同時に須佐が植物キメラへと攻撃を仕掛ける。
「はああああっ!」
 須佐は大きく叫び『限界突破』を使用して、高く跳躍をする。そして空中で回転を加えて、勢いのついた『刹那の爪』でかかと落としをして植物キメラに突き刺す。
「これで終わりだ!」
 須佐は植物キメラを踏み台にして再び跳躍をして、もう一度飛び蹴りをくらわす。その際に小鳥遊が『ドローム製SMG』で攻撃を繰り出し、植物キメラがその場から動かないようにしていた。
「‥‥早くマリさんを探さないといけないの、これ以上あなたに時間は割けないわ」
 小鳥遊は冷たく言葉を投げかけると攻撃を止め、須佐がトドメを刺したのだった。


〜B班・クレイフェル、玖堂、篠原〜

「マリさ〜ん、おやつの時間ですよ〜」
 玖堂が手を口元に置いて、まるで子供を呼び出すかのような口調で話している。
「‥‥さすがにこれでマリ隊長が出てくるとは思えないけど、でもマリ隊長だし‥‥」
 篠原は「ううん」と考え込みながら呟く。マリならこの言葉で本当に出てきそうな気がするので、完全に玖堂の行動を否定することも出来なかったのだ。
「それにしてもマリ隊長は何を買いに来たんやろ――ん? 買い物? まさか――ふんどし‥‥いやいや、まさか」
 篠原は首を横に振って、マリを探すことに専念する。探す途中で何人もの住人とすれ違い、クレイフェルは少し申し訳なさそうな表情を見せた。
「一般人も‥‥出来れば逃げるの手伝いたいねんけど‥‥無理やんなぁ」
 クレイフェルがため息混じりに呟く。
「う〜ん‥‥誘導は無理っぽいけど、被害が拡大する前に連絡をくれたマリ隊長には感謝やね。早く見つけんと!」
 篠原が呟き、周りを見渡す。
「一般人まで誘導していたらマリさんの方が手遅れになる可能性もありますからね‥‥高速艇の場所を知らせるだけでも出来るのでは?」
 玖堂の言葉に「せやな! 場所だけでも教えといたるわ」と言葉を返して、すれ違う住人達に高速艇の場所を教えていく。
 キメラを倒す間だけでも高速艇の方に避難してくれていたら、能力者であるクレイフェル達も助かるのだ。
「さっき、須佐達からキメラを一体倒したって言ってたけど――どうやら一体だけやなかったみたいやな」
 クレイフェルは苦笑しながら前方で建物を破壊する植物キメラを見る。
「うわっ、めっちゃ気持ちわるいっ!」
 篠原は両腕を擦りながら、あからさまな嫌悪感を露にした。
「それでは、自分は強化と弱体を使用しますので」
 玖堂は呟くと同時に『練成強化』でクレイフェルと篠原の武器を強化して『練成弱体』で植物キメラの防御力を低下させた。
「にいやんっ! パスっ!」
 篠原が叫ぶと同時に所持していた『ショットガン20』をクレイフェルに投げて渡す。クレイフェルはそれを受け取ると同時に植物キメラに向けて発砲をする。
「おお、中々慣れていますね」
 玖堂が冷静に呟くと「昔とったドンパチ杵柄や!」と得意げに言葉を返した。
「何体いようが関係ないですね――纏めてくたばりなさい」
 攻撃の途中で覚醒を行い、クレイフェルの口調が変わる。彼が『ショットガン20』で攻撃を仕掛け、攻撃が止んだと同時に篠原が前に出て植物キメラに攻撃を繰り出す。
「マリ隊長、この辺にはいないみたいやね」
 攻撃を終え、篠原がストンと地面に降り立つと周りを見渡しながらため息混じりに呟く。
「もしかしたら他の班が見つけている可能性もありますし、諦めずに探していきましょう」
 玖堂の言葉にクレイフェルと篠原は首を縦に振り、マリ捜索を再開したのだった。

〜C班・八界、アッシュ、キョーコ〜
「携帯電話が繋がれば問題なかったんだがな‥‥」
 はぁ、とため息を吐きながらアッシュが呟く。もしかしたらと思いながら『照明銃』を打ち上げたのだが、何の反応も返ってこない。
「あの〜、これ‥‥ボク見覚えがあるんですけど〜」
 八界が地面に落ちていたものを拾い、アッシュとキョーコに見せる。
「「あ」」
 二人は声を揃えて互いの顔を見合わせる。八界が拾ったもの、それはマリの携帯電話だった。
 逃げている最中に落としたのか、それとも何かに巻き込まれて落としたのか、どちらなのか分からないが八界が拾ったものは間違いなくマリの私物だった。
「お兄さん達、あのお姉さんの知り合い?」
 瓦礫の影から声が聞こえて、声の方に三人が視線を向けると‥‥土で汚れた少女の姿があった。
「あのお姉さんって、マリのことかい?」
 キョーコが問いかけると「あのね、私を助けてくれたの」と今にも泣きそうな表情を見せて話し始めた。
 少女がキメラに襲われそうになった所をマリが間に入って助けたこと。
 そして、マリは壁に叩きつけられながらも少女からキメラを引き離すために体を引きずって何処かへと行ってしまった事。
「‥‥状況は最悪じゃねぇか」
 アッシュが呟き「急いでマリを探そう!」とキョーコも少し動揺したように叫ぶ。
「では他の班に連絡を入れておきますね〜」
 八界が仲間から借り受けてきた通信機で他の班に状況を知らせたのだった。


〜マリとキメラ発見! 急いでマリを救え〜

「おなかすいた‥‥」
 地面に寝転びながらマリは小さく呟く。
「‥‥折角、奮発して高級シャンプーで洗った髪が泥だらけ。ちょー最悪。体が痛くて動かないし、キメラ近づいてきているし、ちょー最悪」
 聞いていればいつまでも続きそうな愚痴を零しながらマリは近くにいるキメラへと視線を向けた。
 幸い、マリの姿はキメラからは死角になっていて見えていないが、それも時間の問題だ。
 ずるずる、と音をたてながら近づいてくるキメラに石を投げつけてやろうと痛む手で石を握る。
 そして――投げつける瞬間――‥‥。
「きさまあああっ!」
「マリ隊長!!」
 キョーコと篠原の声が響き渡って同時に攻撃が仕掛けられる。
 篠原は『急所突き』『強弾撃』『二連射』で攻撃を仕掛けて、キョーコは『蛍火』で攻撃を仕掛けた。
 だが、植物キメラの枝がマリを狙って動き出す。しかしキメラの攻撃はマリにとっては運良く、八界にとっては運悪く、八界に当たってしまったのだ。
「いてええええっ! やりやがったなテメェ! お返しだ、コンチクシーっ!」
 八界は叫ぶと『獣の皮膚』を発動して防御して『真音獣斬』を使用して文字通り『お返し』を行ったのだった。
「ンなモンから栄養を取るんじゃねぇよっ! 根腐り起こすぞ!」
 玖堂が植物キメラに向けて叫ぶが、その途端にマリから石攻撃を受ける。
「‥‥私は毒薬かーーーっ!」
 マリの叫び声を聞いて「‥‥あ、これなら大丈夫だな」とアッシュが苦笑する。
 その後、能力者達は総攻撃で植物キメラを倒し、町の中に潜む植物キメラ全て撃破したのだった。


〜マリ保護完了〜
「マリ‥‥大丈夫か? とりあえず、傷は増えてねぇよな?」
 須佐がマリを見ながら問いかけると「うん、ちょっとした打撲と擦り傷くらいだし」とマリは腕を見せながら言葉を返した。
「本当に無事でよかった〜!」
 キョーコはマリに抱きつき、涙ぐみながら叫ぶ。
「無事でよかったですね〜、ボク心配しちゃいましたよ〜」
 八界がマリに話しかけると「‥‥狸じゃないはっかいさんははっかいさんじゃない」とマリが拗ねたように言葉を返す。
 仕方がないので、再び覚醒を行い狸姿を見せてやると「ふわもこーっ!」とマリが抱きついてくる。
「まったく、マリさんはトラブル体質なんだから、ラストホープから出る時はあたし達にきちんと声をかけてちょうだい。あたしの知らないところでマリさんが危険な目にあうのは一番つらいんだから」
 小鳥遊がため息混じりに呟くと「う〜‥‥」とマリは唸り声で返事をする。
「ま、無事で何よりだな」
 アッシュがマリの頭を撫でながら呟くと「アッちゃん、私を子ども扱いしてるでしょ」とジト目で見られる。
「今度からはキメラと関係ない場所でも、能力者の護衛が必要かもしれませんね。貴方には」
 少し嫌味をこめて玖堂がマリに話しかけると「何か、私がキメラ呼んでるみたいじゃん」と口を尖らせて言葉を返した。
 マリの傷などを見て玖堂は回復をしようとも考えたが『超機械』に頼りすぎるというのもどうかと考え、キョーコの持つ『救急セット』に任せていた。
「マリ隊長、ちなみに何の買い物に来てたん?」
 篠原が問いかけると、マリは「よくぞ聞いてくれました!」とバッグから少しくしゃくしゃになった袋を取り出す。
 その中から出てきたのは色とりどりの――――ふんどしだった。
「もうすぐ『ふんどしーちょ祭』じゃん!? だからレンタル用のふんどしを買いに来てたの! これなんかよくない!?」
 そういってマリが見せたのは二枚のふんどし。どうやらペアになっているようで、二枚でハートの形になるという仕様になっていた。
「‥‥うわぁ」
 クレイフェルが引きつった笑みを見せながら「そんなもんのために‥‥」と小さく呟く。


 その後、能力者達は本部へ帰還する高速艇の中で、延々とふんどしのことを聞かされて別な意味でも疲れたのだとか‥‥。


END