タイトル:らぶげっちゅ れべる4マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/30 01:39

●オープニング本文


ボクは愛されたいだけなのにぃぃぃっ!

何でみんなボクを拒否するんだーーーいっ!

※※※

ボクは今までに三人の女性(男含む)にフラれたという経歴を持つ‥‥。

そこでボクは考えてみたんだ!

ボクの何がいけなかったのかを!!!

そこでたどり着いた答えは――三人の女性(男含む)に男を見る目がなかったんだと気づいたんだよ!

つまり、ボクは何も悪くない!

そうだよね、ボクが悪いわけないよね。

こんなに一途にラブオーラを送り続けているんだから!

だからボクは新しい初恋を探すことにしたんだ、そして――出会ってしまったんだ!!

黒髪のミステリアスな女性に!!!

でも今までのことがトラウマとなっているのか、彼女に話しかけたこともないんだ‥‥。

いつも遠くから見ているだけ‥‥。

でも、これじゃいけないと気づいたんだよ。

だから、彼女のところまでボクを送っておくれ!!

※※※

「――――うぜぇ」

女性能力者はコリオからの手紙を見て、ため息混じりに呟く。

ちなみに彼女はそんなにガラが悪いわけではない。コリオのみにこんな態度になってしまうのだ。

「‥‥今回は『らぶれたあ』はナシか?」

男性能力者が問いかけると、女性能力者は一枚のフロッピーディスクを見せてきた。

「‥‥半端なく文字数が多くなったらしくて、今回はフロッピーにいれてきたって」

女性能力者は呟く。普通のフロッピーディスクなのだが、コリオの『らぶれたあ』を保存しているだけで何故か異様な雰囲気を醸し出しているような気がするは気のせいだろうか。

「あれ? でもこの場所って最近キメラの報告がなかったか?」

「そうなのよ。しかも‥‥この辺は民家なんてないはずなのに」

女性能力者と男性能力者は互いに顔を見合わせて、嫌な予想が頭によぎる。

「「まさか、コリオの今度の相手って‥‥」」


●参加者一覧

葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
門鞍将司(ga4266
29歳・♂・ER
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
オーガン・ヴァーチュス(ga7495
40歳・♂・BM
榊 紫苑(ga8258
28歳・♂・DF
猫瞳(ga8888
14歳・♂・BM
オブライエン(ga9542
55歳・♂・SN
タリア・エフティング(gb0834
16歳・♀・EP

●リプレイ本文

〜年中、頭の中は常夏! コリオ・4回目の恋をする〜

「次の相手見つけ(ちゃっ)たんだ‥‥今回はまともな人だといいねぇ‥‥」
 ははは、と苦笑しながら葵 コハル(ga3897)がコリオに話しかけると「四回目の初恋さ! ははははは!」と盛大な高笑いで言葉を返してきた。
「まぁ、なんだ‥‥この前も言ったけどよぅ‥‥複数回の時点で『初恋』じゃねぇんだってばよぅ‥‥」
 オーガン・ヴァーチュス(ga7495)が呆れを通り越して、哀れみの視線を送りながらコリオに話しかけるが、当の本人の耳には届いていない――というより耳を手で塞いで聞かないようにしていた。
(「また、コイツか? やれやれ、懲りる&諦めるという事を知らないのか‥‥ジンマシン出そうだ‥‥」)
 一人小さなため息を漏らしながら心の中で呟くのは、榊 紫苑(ga8258)だった。
「今回の相手はどんな人なの?」
 葵が肘で軽くコリオをつつきながら問いかけると、コリオは「聞きたいかい? 聞きたいよね?」と聞いてくれるのを待っていたかのように話し出した。
「ボクは何度も続く失恋で生きる自身をなくしていたんだ‥‥だから自分を探す旅に出て――彼女に出会ったんだよ!」
 外見は艶やかな黒髪を靡かせ、憂いた表情で森の中に立つミステリアスな女性と出会った事を嬉々として一時間程度聞かされ、能力者は出発前からぐったりとする羽目になった。
「‥‥‥‥‥‥ん?」
 異変に気がついたのは葵だった。コリオが『彼女』を見た場所を確認するために任務地の場所を確認した。
 そして気づいたこと――今から行こうとしている場所に民家は近くにない。
「みんなー、しゅーごー」
 葵が口笛を吹く真似をしながら、能力者『だけ』を集合させる。
「ねぇ、コリオの今回の相手って、まさか‥‥」
 苦笑気味に呟く葵に「キメラでしょうねぇ」と門鞍将司(ga4266)がのほほんとした表情で言葉を返してきた。
「前回の男性に続き、今回はキメラですか‥‥いい加減、貴方の目はビー玉ですかと突っ込みたいんですけど‥‥」
 盛大なため息を吐きながらリゼット・ランドルフ(ga5171)が呟く。
「‥‥色々と難儀な奴じゃの」
 オブライエン(ga9542)がコリオに哀れみの視線を送りながらため息混じりに呟く。
「人を好きになるのは良い事ですけど、節操がないのはいけませんね――その前によく生きて帰って来れましたね」
 タリア・エフティング(gb0834)が呟くと「確かに」と能力者達はコリオをある意味尊敬の眼差しで見たのだった。
「今回はいつもと違って、告白する前から失恋確定ですが‥‥強く生きて欲しいですね」
 リゼットが呟くと「また自分に泣きついてくるんですかね」と榊は後に待ち受けているであろう運命を考え、再び深いため息を吐いたのだった。
「そんで、実際キメラは倒さなくちゃならんけどよぅ‥‥あいつはどうすんだ?」
 オーガンが親指で少し離れた所に座っているコリオを指差して他の能力者に問いかける。
「‥‥納得させるのは難しいかもしれないですね――それと、キメラを倒すところは見せない方が‥‥」
 榊の言葉に「でも隠す事は出来んじゃろ? 真実を伝えるべきと思うが‥‥」とオブライエンが言葉を返した。
「キメラだから仕方ないとはいえ、好きな人を目の前で殺されるという点には、同情してしまいますね」
 リゼットが呟くと「アイツもとことん運がねぇよなぁ」とオーガンも頭を掻きながら小さく呟く。
 結局、能力者同士で話し合った結果、コリオには真実を話す事になった。


〜明かされた真実、その時コリオは‥‥〜

「残念だけど‥‥『あの人』は諦めて‥‥ね?」
 出発直前、葵がコリオに申し訳なさそうに問いかけると、コリオは状況を把握出来ていないのか目を何回も瞬かせている。
「え? 諦める? 何で? はっ! もしや‥‥キミ、ボクのことを好――」
「んなワケあるかーーーっ!」
 何処までもプラス思考なコリオに思わず葵は大きなツッコミを入れた。
「今回はぁ、物凄く大変な方に恋しましたねぇ。何せキメラですからぁ」
 キメラ、という単語にコリオは固まって「‥‥本当、に?」と泣きそうな表情で問いかけてくる。
「何で見てもいないのに、そんな事が分かるんだい!? 違うよ、きっとキメラは別にいるんだよ!」
 必死なコリオに「目を覚ませ」とオブライエンが言葉を返す。
「お主が愛してしもうたのは人ではない。キメラじゃ」
 オブライエンの言葉にコリオはがっくりとうな垂れて「‥‥この目で見るまでは信じない」と呟いたのだった。
「見るのは構わねぇけどよぅ、今回も武器なんか持ってきちゃいねぇだろうなぁ?」
 コリオのポケットなどをオーガンが調べると、ナイフ、剃刀、カッターと穏やかでないものばかりが出てきた。
「ほい、またまた没収なー」
 オーガンはそれらを全て取り上げる。もしこのまま持たせていたら、この刃が自分達に向けられるかもしれない、そう考えたのだ。
「それでは、出発しましょうか」
 タリアが呟き、能力者達はキメラを倒すため、そしてコリオは『彼女』の無罪を証明する為に目的の場所へと向かい始めたのだった。


〜麗しきは黒髪の艶女〜

「彼女を見たのはどの辺りなの? どんな人?」
 森に向かう途中、タリアがコリオに話しかけると、彼は「う〜ん」と『彼女』と出会った時のことを思い出しているのか、唸りながら言葉を返してくる。
「森の中で迷いかけた時だから、入り口を少し進んだ所かな。どんな人って‥‥不思議な人、かな?」
 不思議な人? とタリアが聞き返すと、コリオは首を縦に振って肯定した。
「靡く髪が凄く綺麗なんだよ! それに風も吹いていないのに髪を靡かせていて不思議な人だった!」
 風がないのに髪が靡いている=髪を操るキメラという方程式がタリアの中で組み立てられ『気づけよ!』と心の中で突っ込みを入れた。
「でも‥‥彼女がキメラだって皆は言ってるし‥‥これは渡せそうにもないかな」
 折角書いたのに、とリボンで飾られたフロッピーを見ながら悲しそうに呟く。
「‥‥ねえ、なら私が届けてあげようか? もし本当にキメラでも能力者の私だったら対処できるし」
 タリアの提案に「そうしてもらっていいかい!?」とコリオはフロッピーを預けてきた。
「それにしてもぉ、らぶれたあの量も増えたのですからぁ、前にも申し上げましたが恋愛小説家を目指してはいかがでしょうかぁ?」
 門鞍がにこにことして問いかけると「そうかなあ」と照れたようにコリオは頭を掻いた。ちなみに門鞍は『恋愛小説家を目指せば?』と提案しただけで『文才がある』と誉めたわけではないのに、コリオは何故か照れている。
「あ、でも‥‥代理で渡したら彼女は気を悪くしないかな‥‥」
 悩み始めたコリオに「女の子に代理で渡してもらうのも効果的ですよ」とリゼットが会話の中に入ってきた。
「ほ、本当かい?」
「もちろん。代理で渡す=照れ屋さんという事で好印象を与えられるかもしれないですよ」
 リゼットの言葉に「そうかあ! 宜しくね!」とタリアの手を強く握り締めた。
 その様子を見て「単純でよかった」とリゼットは安心したように小さく呟いたのだった。
「あ! いた!」
 コリオが呟くと、前方を指差す。そこにいたのは黒い髪を靡かせて、黒いドレスのようなひらひらとしたものを纏う妖艶な女性だった。
「それじゃ、渡してくるね」
 タリアはコリオに笑みを残して、女性へと小走りでかけていく。
 そして、門鞍と榊はコリオが暴走しないように監視役として彼の側にいることにした。その後の能力者達は戦闘班なのだが、オブライエンは一応念のためという事でコリオの動向に注意をしながら戦闘を行う――これが此処に来るまでに決めていた作戦内容だ。
 囮役としてタリアがフロッピーを渡すようにして、女性がキメラなのだとコリオに認めさせる――‥‥相手の攻撃方法もまともに分からない状態で囮役として出るのは危険だったが、コリオを認めさせるにはコレしか方法を思いつかなかったのだ。
「えぇと、コリオさんて人から預かっているものがあるんだけど――‥‥」
 タリアがコリオから預かったフロッピーを取り出して、女性に渡そうとした時――風も吹いていないのに女性の髪がふわりと浮き、タリア目掛けて襲い掛かってきた。
「――――――‥‥そんな‥‥」
 フロッピーはガシャンと音をたてて地面に落ち、それの上に髪が貫いて地面へと突き刺さる。
 そして攻撃を受けたタリアも多少のダメージを負ったようだが、戦闘に支障はない。むしろ一番ダメージを受けたのは遠くで見ていたコリオの方だろう。
「コリオさん、あれが‥‥貴方が恋したキメラです。お辛いでしょうが‥‥真実なんです」
 門鞍が覚醒を行いながら呟き『練成強化』を使用して能力者の武器を強化して『練成弱体』を使用して女性型キメラの防御力を低下させた。
「ま、待ってくれ! ボクに話を――‥‥」
 暴れ始めたコリオに榊は小さくため息を吐いて、持ってきたロープでコリオを縛る。
「ま――‥‥」
 コリオが『待ってくれ』と呟きかけた時にオブライエンが『鋭覚狙撃』を使用して、女性型キメラへと向けて小銃『バロック』で攻撃を仕掛けた。
「悪いが、容赦をするつもりはない」
 コリオの耳にオブライエンの冷たい言葉が入ってくる。タリアが攻撃されて、確かにキメラなのだとコリオの頭では理解出来ている。
 しかし、理解出来ているという事と認めるという事は全く別物なのか、もしかしたら――という気持ちがまだコリオの中に残っていた。
「本当に‥‥紛らわしい格好だなぁ! 男を一人惚れさせるとは、罪なキメラだぜぃっ!」
 オーガンが『メタルナックル』で髪の攻撃を受け流しながら叫ぶ。
 ちなみに彼にとっての最愛の人は亡き奥さんと一人息子らしいので、女性型キメラがどんなに美人だろうが可愛かろうが興味はないらしい。
 攻撃を受け流す、オーガンはそれを数回繰り返すと女性型キメラの肩を強く掴んだ。
「さぁて、毎度おなじみ! ブン投げてやるぁーーーっ!!」
 オーガンが大きな声で叫ぶと、女性型キメラを持ち上げて、他の能力者の方向へと思い切り投げつける。
 やはり、女性型という事で大して重くも無くオーガンは楽に投げる事が出来た。
 そして、女性型キメラが着地点にいる能力者達へ向けて攻撃を仕掛けようとするが、後ろから追いかけてきたオーガンが『メタルナックル』で攻撃を仕掛けて、それは遮られたのだった。
「‥‥着地するまで待つ、なんて人のいい事はしないよっ!」
 葵が呟き、上半身を『エアストバックラー』で隠しながら持っていた『蛍火』で攻撃を仕掛ける。
 何故『エアストバックラー』を使用しているのかというと、相手が『女性型』という事で『魅了』の能力を持っているかもしれないと危惧したからだった。
「本当に‥‥何でコリオさんは『変な人』にしか恋しないのかしら‥‥」
 リゼットがため息を吐きながら『豪破斬撃』を使用して『ベルセルク』で攻撃を仕掛ける。彼女の攻撃が終わる刹那に葵は『豪破斬撃』と『急所突き』を使用して女性型キメラに攻撃を仕掛けた。
「‥‥本当にキメラだったなんて‥‥」
 能力者達の戦いを見て、コリオが涙を目に溜めながら小さく呟いた。
「大丈夫ですよ。コリオさんの純情を踏みにじったキメラを倒す為に私はサポートしているのですから」
 門鞍の言葉に「‥‥キミが女だったらなぁ‥‥」とコリオは小さく言葉を返した。
(「あれ? 何か今の発言、おかしくないか? 女だったらって‥‥自分は?」)
 門鞍とコリオの会話を聞いて、榊は納得がいかないようだったが、戦闘中&これ以上厄介に巻き込まれたくないという気持ちから、心の中に押しとどめる事にした。
 その後、能力者達が総攻撃で女性型キメラを攻撃していた為か、決着は意外と早くついて、女性型キメラの前で佇むコリオの姿があった。


〜全てが終わって、コリオは新しい恋を探すために旅立つ‥‥のか? 〜

「本当にキメラだったんだね、ごめんよ」
 コリオが珍しく素直に謝ってきたのを見て、能力者達は『よっぽどショックだったんだ』と哀れみの視線をコリオに送る。
「なんてゆーか‥‥焦ってる、じゃないね。そんなに急がないでもいいんじゃないカナ? まだまだ時間はあるんだから、ゆっくりと『出会うべき人』を探していかない?」
 さすがに可哀想に思えてきたのか、葵がコリオへ慰めの言葉を投げかけた。
「そうですよぅ。きっと次がありますぅ」
 門鞍も「ファイトです」とコリオが新しい恋へ進めるように背中を押すように言葉をかけた。
「まぁ、なんだ‥‥今回は‥‥ちょいと、残念だったな」
 コリオの周りだけ空気がどんよりとしているのを見て、オーガンも慰めの言葉をかけるが、コリオからの返事はない。
「一つ、お主に言っておきたい事がある」
 オブライエンがコリオの前に腰を下ろし、咳払いをしながら言葉を続けた。
「一方的な愛は愛とは言わん、それは憎しみじゃ。そして憎しみは更なる憎しみを生む。最後は総じて悲惨なものじゃ。愛し、そして愛し返されることを愛と呼ぶんじゃよ」
 お前さんの事を愛してくれる人がおるかもしれんよ、オブライエンは言葉を付け足しながら言うと、コリオは俯いていた顔をあげた。
「でも、キメラにまで恋するなんて‥‥ボクは‥‥なんて節操がないんだあああっ!」

 気 づ い て い た の か

 恐らく能力者の心の中が見事に今、一致しただろう。
「こ、今回は相手がキメラだったので、こんな結果になりましたが、そのうちにコリオさんにも良い出会いがあると思うので気を落とさないで――」
 くださいね、と続くはずの言葉はタリアの口から発せられる事はなかった。
「こうなったら!」
 ぎっと鋭い(というより執念深い)瞳で榊へと視線を向ける。
「‥‥ボクを嫁にしてくれえええええっ! こうなったらボクと結婚するのはキミしかいない! コンビニの新発売商品もいち早く教えるからさああああ!」
 いらないオプションをつけてくれるな、と榊は心の中で呟き、コリオから逃げるように全速力で走って帰りだす。
 もちろん、他の能力者達は標的が自分になっては困るので、とりあえず放っておく事にした。

 その後もコリオの『恋の追っかけ』という名前の『ストーカー』は数日続き、さすがの榊も依頼人だと知りつつも攻撃をしたくなったのだそうだ。


END