●リプレイ本文
〜調査に向かった能力者を捜索する為に〜
「これが今回行方不明になった能力者の資料だ」
出発前、御影・朔夜(
ga0240)は本部に赴き、洋館の調査に向かった能力者2人の外見などをオペレーターの女性にプリントアウトしてもらって、今回一緒に任務を行う事になる能力者達に渡した。
「私も二人の関係とか詳細データを閲覧してきたね、あと洋館の過去の所有者についても少し調べてきたよ」
斑鳩・眩(
ga1433)もメモを取り出しながら呟く。
まず、今回行方不明になった能力者は『白垣 大地』と『西沢 弘』という名前で両名ともファイターとして活動を行っていた。
「所持していた武器は二人とも月詠、決して弱いとは言えない能力の持ち主だったらしい」
御影が「洋館について聞かせてくれるか?」と言葉を付け足しながら問いかける。
「洋館の持ち主は老人男性で一年前に死亡、身よりもなく別荘だった洋館は手入れもされず、そのまま――そして今に至るという所だね」
斑鳩が説明を終えると「キメラかバグアが潜んでいる可能性あり、だね」と葵 宙華(
ga4067)がポツリと呟く。
「その二人が出立してからどのくらいの時間が経過しているんだ?」
南雲 莞爾(
ga4272)が問いかけると「一週間らしい」と御影が言葉を返す。
「でもまぁ、帰りが遅い能力者の捜索だろ? 簡単じゃねぇか!」
那智・武流(
ga5350)が大きな声で話しかける。
「でも能力者2人が戻っていないんだ、洋館で何が起きているのか、何で能力者が戻ってこないのか、状況が分からない以上、油断は出来ないね」
夜木・幸(
ga6426)が那智に向けて話しかけると「分かってるって、依頼を受けたからにゃ、何とかしねぇとな」と言葉を返してきた。
「場所が洋館ってのが妖しい‥‥最近、人の気配がすると噂されて気味悪がられていた古い洋館への調査任務から帰らない二人組――コレは王道的ホラー展開のパターン!」
九条・縁(
ga8248)はやや興奮気味に大きな声で叫ぶ。
「実は吸血鬼やモンスターが巣を作っていたり、誰かがゾンビの研究してたりしても驚かないからな!」
何故か楽しげに叫んでいるように見えるのは気のせいだろうか――能力者が心の中で呟いた瞬間「あ〜、よかった! 遅刻やないな!」と大きな声で叫びながら少女が此方へと向かって走ってくる。
彼女の名は戎橋 茜(
ga5476)と言い、今回一緒に任務へ赴く能力者の一人だ。
「アタシは戎橋 茜! アタシってば不器用やけど‥‥一生懸命頑張るんでヨロシク!」
元気よく挨拶する彼女に能力者達も「ヨロシク」と言葉を返し、能力者2人が行方不明となった洋館へと向かい始めたのだった。
〜古びた洋館、その中で見たものは〜
「こりゃあ、いかにも何かいます――って感じだな」
目的の場所へ到着した時、九条が洋館を見上げながら呟く。洋館の中に灯りは見えず、庭も手入れがされていないため雑草が蔓延っている。
「元は綺麗な庭だっただろうにね」
葵が庭に足を踏み入れながらため息混じりに呟く。
「さて、此処からは班行動にしようか」
御影が呟く。
今回は洋館という広い場所での捜索の為に能力者達は班を二つに分けて行動をする事にしていた。
A班・御影、那智、夜木、斑鳩の4人。
B班・葵、南雲、戎橋、九条の4人。
「何かあったら無線で連絡をする」
南雲がA班のメンバーに話しかけると「OK」と夜木が言葉を返した。
・・・A班・・・
玄関から向かって左側半分をA班、右側半分をB班が捜索する事になり、A班は左側へと足を進めていく。
「さて‥‥今回は刺青のモチーフになりそうなものはあるかな」
夜木は洋館に飾られている鎧や剣などを見ながら歩いていく。
「でも――確かに広いけど迷子になるような広さでもないだろうにな」
那智も洋館内を見渡しながらため息混じりに呟く。確かに洋館内は普通の家と比べたら断然広いのだが、大の大人2人が迷子になるような場所とは考えにくい。
「やっぱり何かあったって考える方が自然かもね」
斑鳩が那智に言葉を返すと、先の部屋から小さな音だったが、確かにガタンと音がした。シンと静まり返った洋館内なので小さいといえど物音を聞き逃すはずもなく4人の能力者は音がした部屋の前まで急ぎ足で歩く。
中にいるのが確実に行方不明の能力者とは限らないので4人は警戒をしながら扉を開いていく。
すると、中にいたのは――‥‥血に塗れた男性能力者の姿だった。
「お、おい! 大丈夫かよ!」
那智が駆け寄ると、男性能力者がぐったりしながらも「‥‥大丈夫」と言葉を返してきた。
「とりあえず傷を見せて、治療するから」
夜木は『練成治療』で男性能力者の傷を治療する。
「ありがと――あんたらは?」
「お前達を捜索する任務を受けた、西沢 弘?」
男性能力者の名前を御影が呟くと「‥‥捜索って、そんな大事になってるのか」と俯きながら呟いた。
「とりあえず、何があったか教えてもらえない?」
斑鳩が西沢に問いかけると「言えない」と短く言葉を返す。そんな彼の言葉に御影も少しだけ訝しげに西沢を見る。
「言えない何かがあるって事? そういえばもう1人の能力者は? 見あたらないみたいだけど‥‥」
夜木が周りを見渡しながら西沢に問いかける。2人は同じ任務でこの洋館に来ているのだから一緒にいると思っていたのだろう。もう1人の『白垣 大地』の姿だけが見えないのだ。
「‥‥あいつはいない、お前達も帰れ。死にたくなければな」
そう言葉を残して西沢は部屋から出て行くために足を動かす。
「おい――」
那智が言葉をかけるが「‥‥頼むから、早く此処から出て行ってくれ」と西沢は言葉を残して部屋から出て行った。
「‥‥何だって言うんだよ、ったくよぅ」
那智が拗ねたように呟き、西沢の言葉をそのまま聞くはずもなく4人の能力者は西沢の後を追いかけるべく部屋を出て行ったのだった。
・・・B班・・・
「能力者の1人、西沢という男とA班は接触したみたいだな、どうやら様子がおかしかったらしいが‥‥」
通信機を切り、南雲がB班の能力者に話しかける。
「おかしい?」
葵が聞き返すように言葉を返すと「早く此処から出て行けと言ってるようだ」と南雲は呟く。
「早く出て行け? その2人の為に来てるのに‥‥何や失礼やな」
戎橋が首を傾げながらため息混じりに呟く。
「確かに。でも歩き回って見た感じ、特に危なそうな感じはなかったけどなぁ。何で帰って来ないんだ?」
九条が呟くと「帰って来れない何かがあるのかもね」と葵が言葉を返す。
「まぁ、調べれば分かる事だね」
呟きながら葵は洋館の中で一番奥にある部屋の扉を開けた。
そこで4人の能力者は驚くものを見る事になる。
「‥‥こ、子供‥‥の、死体?」
部屋の中央辺りに倒れているのは、放置されて腐乱しかけてはいるが、体の大きさから子供の死体だという事が分かる。
「まさか行方不明の能力者達がこの子を‥‥?」
南雲が呟く。状況が何も分からない以上、憶測で話を考えるのはいけないと分かっているのだが、帰らない能力者、目の前の死体、この二つを結びつけると『能力者が子供を殺したから帰って来れない』――こう考えればつじつまが合うのだ。
「あんまり考えたくないんやけど‥‥能力者2人と戦う‥‥なんてことにはならへんよね」
戎橋の言葉に他の3人はピクリと肩を震わせる。
もし、本当に予想している事が事実だとしたら能力者2人は抵抗するだろう、そうなれば必然的に戦いになる――‥‥それは4人全員が思っている事だった。
「あれ、子供に見えるけど‥‥これってキメラじゃ?」
南雲の言葉に能力者達が死体に近寄ると、確かに歯の部分が尖っていたり、人間にはないであろう鱗のようなものが腕にびっしりとあった。
「つまり、このキメラと戦って今は休息中――ってことかな?」
葵が呟くと「そうかも」と戎橋も言葉を返し、休息しているであろう能力者2人を探すために動き始めた――その時にガタンと音が聞こえた。
「‥‥音?」
部屋の奥にある小部屋から音が聞こえ、南雲は音の方へと向かう。するとそこは小さな物置のような小部屋があり、扉には鎖が巻かれて鍵が何重にもされていた。
「もしかしたら此処に閉じ込められているのか?」
南雲は呟いた後、扉を封じている鍵を外していった。
〜面の戦士〜
「確かこの辺だったよな?」
那智が廊下を歩きながら呟く。A班のメンバーは西沢を追ってB班が担当する区域まで足を運んでいた。
「向こうからの連絡はないな、何事もなければいいが‥‥」
御影が呟いた時、奥の部屋から大きな物音がして、A班の能力者達を驚かせた。
「あれ、さっきの‥‥」
扉から吹き飛ばされるようにして倒れてきたのはA班が先ほど出会った男性能力者・西沢だった。
「何が――あっ‥‥た――」
夜木が呟きながら部屋の中に入ると、般若の面を被った怪しげな人間が立っていた。
「あの格好――もう1人の行方不明者、白垣 大地と一致するな」
御影が小銃『シエルクライン』を手にしながら呟くと「やめろ!」と西沢の大きな声が能力者達の耳に届く。
「あんな風になってるけど、あれは大地なんだよ! 攻撃したら大地が――!」
西沢の必死な姿にA班が何故、彼が『言えない』と言ったのかを理解した。大事な友人が暴れている。
もしそれが能力者達の目に触れれば、戦わざるを得ない状況になる、そうなれば無事でいられなくなる可能性もあると西沢は考えたのだろう。
「混乱して‥‥というワケでもなさそうか」
的確に攻撃を仕掛けてくる白垣に御影はため息混じりに呟く。
「仮面の所為で、動きが見えないんじゃないのか?」
目のところに穴があるわけでもない面をつけているにも関わらず、白垣は確実に致命傷になる場所を狙ってくる。南雲は『瞬天速』を使用して攻撃を避ける。
「こいつ自体がキメラ、ってこたぁねぇよなぁ?」
那智が何気なく呟いた言葉、その言葉に能力者達はハッとした表情を見せた。
もし『面』そのものがキメラなのだとしたら、面をつけているにも関わらず的確に攻撃を仕掛けてくる理由も分かるのだ。
「難しい事はアタシには分からんけど、アタシの第六感がさっきから、めっちゃヤバいって叫んでるんよ」
戎橋も『イアリス』を構えながら呟く。
「‥‥でも、確かに面をつけてから大地はおかしくなった‥‥」
西沢も思い出したように呟く。はっきり言って『西沢、気づけよ』とツッコミを入れるような感じなのだが、そういう暇もないので、能力者はツッコミをスルーする。
「つまり、面だけを攻撃して剥がすしか――方法はないって事か」
夜木は呟く。確かに言うのは簡単だが、実行するには難しい。力を入れすぎれば面を割って白垣本人に怪我を負わせる事になる。だけど威力を弱めると効果が無く逆に此方が危険な状況になるからだ。
「仕方ない、正面から攻撃しかけて武器を取り上げるしかないなっと!」
九条が『クロムブレイド』を振りながら叫び、白垣に向けて攻撃を仕掛ける。仕掛けるとは言っても彼自身に攻撃を仕掛けるのではなく、剣を落とさせるために剣を目掛けて攻撃をしているのだ。
だが、白垣は九条の僅かな隙を縫って攻撃を仕掛ける――が葵の『スコーピオン』が白垣の剣を弾で弾き、攻撃をそらせる。
「意外なキメラちゃん、めんどい仕事をありがとうって感じですねぇ」
斑鳩が葵の弾によって弾かれた白垣の剣を『メタルナックル』で殴り、手から離す。
しかし、ここで新たな問題が出てくる。
どうやって面を剥がすか、それが問題なのだ。西沢は『面をつけたらおかしくなった』と言っていたが『触れたことでおかしくなる』という可能性もゼロではない。
‥‥ということは触れた瞬間、第二の白垣になる恐れもあるのだ。
「って考えてる間に新しい武器持ってますが!」
九条が白垣を見て叫ぶ。白垣は洋館内に飾られていた剣を取り、此方に攻撃を仕掛けようとしている。
面倒だ、御影は呟いて銃口を白垣に向ける。
「やめろ!!!」
西沢が止めるように大きな声で叫ぶ。
「要は殺さなければいいんだろう!?」
御影は呟くと同時に『先手必勝』を使用して『影撃ち』と『二連射』で白垣の足元を攻撃する。御影の行動は白垣を殺すためではなく、動きを封じるための牽制攻撃。
「――俺がおかしくなる前に何とかしてくれよ!」
白垣の動きが止まったのを見て、西沢が白垣の面を無理矢理に剥がす。
そして、面を取った手が西沢の顔へと向かい始める。面が顔につく寸前で葵が発砲して面を地面へと撃ち落とす。
「‥‥ぅ、あ‥‥」
面が取れた後も微弱ながら依存性があるのか、白垣が面ヘ向かってふらふらと歩き出す。
「後にも先にも、猟犬の爪牙は存在する―――絶刀」
白垣の意識を奪うだけの力で南雲が攻撃を仕掛ける。
それと同時に御影が面に向かって発砲する。その攻撃は面が粉々になるまで続き、面が壊れたのを確認して、ようやく任務が終了したのだった。
〜任務終わり、報告の為に帰還〜
「あー‥‥まだ体の節々が痛い‥‥」
あの後、意識を取り戻した白垣は全身の強烈な筋肉痛に苛まれていた。ずっと面に操られた状態で西沢と戦い続けていたのだから無理もないだろう。
「あの物置に閉じ込めるのも結構死に物狂いだったんだぜ」
西沢がため息混じりに呟くと「よっしゃ!」と戎橋が大きな声で叫ぶ。
「祝勝会しよ! うちの店でお好み焼きパーティーや!」
その後、祝勝会の場で白垣は那智から「好奇心は身を滅ぼす」と説教をくらっていたとか。
それから一週間後に白垣も完全に回復して、また2人で任務に向かう姿が見受けられたらしい。
END