タイトル:週刊記者と肝試しマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/14 00:12

●オープニング本文


今回は能力者の皆様方の言うことをきちんと聞くという事を此処に誓います。

――クイーンズ代表・土浦 真里

※※※

「いぃやぁだぁぁぁぁぁっ!」

クイーンズ編集室の柱に捕まりながら騒いでいるのは、毎度お騒がせのクイーンズ記者・土浦 真里だった。

何故このような状況になっているのかというと、話は数十分ほど前に遡ることになる。

〜回想〜

「チホ、私いつも無茶していたなあって思うんだよね。だから暫くは大人しくしていようと思うんだ、うん、それがいいよね」

いつものマリならば絶対に言わないであろう『大人しくする』という言葉に、マリと同じクイーンズ記者のチホは持っていたカップを床へと落とす。

落とされたカップはガシャンと音をたてて、ばらばらに割れてしまった。

「あ! 何してるの〜‥‥」

マリが呆れたように呟くと、チホはマリの額に手を置いた。

「ど、どどどどうしたのよ! 大人しくするって‥‥やっぱりこの前の買い物で受けた傷が頭にきてたのね!
 何ですぐに言わないのよ!」

なにやら失礼な事を次々に口走りながらチホが慌てたように叫ぶ。

「‥‥違うし。最近無茶ばかりしてて能力者のみんなにも迷惑かけたじゃない? だから大人しくしようかなぁって――今回だけ」

最後の『今回だけ』という言葉を聞いて、チホはなにやら思い当たることがあるらしく、次の取材地を書いたメモを見る。

「‥‥ふぅん? 大人しくねぇ――マ〜リちゃん? これは何かな?」

チホが見せた『取材地メモ』を見て、マリは笑顔を引きつらせる。

そして、話は冒頭へと戻る。

「だだだだだだって! 次の取材地は墓地なんだよ!? 卒塔婆があるんだよ? 火の玉が絶対浮かんでるんだよ? こんにゃくも振って来るんだよ!?」

よっぽど動揺しているのか、最後の言葉は墓地と何ら関係ないような気がするのだが、チホはあえてツッコミをいれずに「今回だけ無茶は許すから、いってきなさい♪」と取材道具を渡して笑顔でマリを送り出したのだった。

●参加者一覧

神無月 翡翠(ga0238
25歳・♂・ST
クレイフェル(ga0435
29歳・♂・PN
ナレイン・フェルド(ga0506
26歳・♂・GP
霞倉 那美(ga5121
16歳・♀・DF
ザン・エフティング(ga5141
24歳・♂・EL
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
高遠・聖(ga6319
28歳・♂・BM
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA

●リプレイ本文

「あぁぁぁぁ‥‥こんにゃくが襲ってくる‥‥」
 土浦 真里(gz0004)は盛大なため息を吐きながら呟いた。
「こんにゃく‥‥? や、確かにお化け屋敷ではあるかもやけど、墓場には基本的にそないなもんはあらへんで?」
 クレイフェル(ga0435)が苦笑気味にマリに向けて呟く。一体どんな目にあえば『墓場=こんにゃく』という方程式が出来上がるのかと、やや呆れ気味だった。
「『あの』土浦さんでもやはり苦手なものがありましたか‥‥ふふ、ちゃんと人の子だったみたいですね」
 玖堂 鷹秀(ga5346)が楽しそうに呟くと「む、失礼な。私だって怖いものくらいあるもんね」とマリが拗ねたように言葉を返した。
「なるほどな、噂と違うのはお化けが怖いからか。大丈夫だ、もしもの事があっても皆が守ってくれるからよ」
 ザン・エフティング(ga5141)がマリに話しかけると「うん、頼りにしてるよ」と笑ってマリは言葉を返した。
「でも何か怖がるマリってのも新鮮だな? てっきり怖いもの知らずだと思ってたから」
 神無月 翡翠(ga0238)が苦笑しながら呟く。
「でも偉いわ〜、苦手な場所に向かうなんて」
 ナレイン・フェルド(ga0506)が話しかけると「仕事だから‥‥」とマリは言葉を返した。
「他の記者に頼んだんだけど、誰も行ってくれなくて‥‥うぅ」
「そんなに気にする必要はないさ、墓はただの石だし、卒塔婆だって字が書かれた木の板に過ぎないさ」
 話しかけてくるのは高遠・聖(ga6319)だった。彼は元ジャーナリストで、彼にとって怖いものは『締切りと白紙』が怖いのだそうだ。週刊記者をしているマリもその気持ちは分かるらしく「確かに、前日とかに白紙だと‥‥考えたくもないね」と苦笑気味に言葉を返したのだった。
「こんばんは、マリさん。今回は仕事でこれなかった親友に代わって、あたしがきちんとマリさんを守りますからね」
 乾 幸香(ga8460)が笑顔で挨拶をしてくる。
「あ、私も挨拶を‥‥マリさん、今日は宜しくお願いします」
 ぺこりと丁寧に頭を下げて挨拶をしてくるのは霞倉 那美(ga5121)だった。
「此方こそ宜しくね、二人とも♪ というわけで気合入れて取材にれっつごー‥‥はぁ」
「マリこそ気合いれていかんかいっ」
 すぱん、と巨大ハリセン(強化なし)でクレイフェルが軽くマリを叩き、能力者達とマリは取材地である墓地に向かい始めたのだった‥‥。

〜雰囲気溢れる素敵な墓地でマリは‥‥〜

「これはまた‥‥‥‥絶妙のロケーションですねぇ。いかにも何か出てきますよ、と言わんばかりじゃありませんか」
 玖堂が墓地の入り口で周りを見渡しながら呟く。
「確かに、日本の墓場ってーのは風情があるなぁ。いかにも何か出そうだぜ」
「たっ、鷹やんっ! ザンちー! そういうのは言っちゃ駄目!」
 マリがナレインにしがみつきながら顔だけを覗かせて叫ぶ。
「あぁ、そういう意味で言ったんじゃないんですよ。私は神など信じませんが幽霊などは信じるタチでしてね。でも恐れはしませんよ」
 玖堂の言葉にマリが首を傾げると「物理的接触が不可能な相手に何が出来ます?」と言葉を返してきた。
「そう考えるとゴキブリの方がまだ恐ろしい相手ですよ」
「確かにそうかもしれないわ。私も幽霊よりゴキブリの方が怖いもの」
 ナレインも納得したように呟く。
「大丈夫ですよ、いざという時には盾になってでもマリさんを護りますから。あたしを信じてくださいね」
 乾がマリの空いている手を握り締めながら話しかけると「う、うん」とマリも言葉を返した。
「そういえば記者さんって、色々な所に行けたり食べたり出来ていいなぁ‥‥って思うんですけど、実際はどうなんですか?」
 霞倉がマリの怖さを少しでも和らげるように話しかけると「う〜ん」と考え込む。
「私の取材ってほとんど能力者やキメラについてだから美味しいものを食べたりとかはないかな〜‥‥でも色々なところに行けるのは事実だけどね♪」
「そして俺らが心配する羽目になるんだよな?」
 神無月がマリに話しかけると「ぐ」と言葉に詰まったのかマリは返す言葉が見つからなかった。
「でも取材のため――(ガサ)――うきゃあっ!」
 風で木々が靡いた音にマリは大げさなほどに肩を震わせて高遠に咄嗟とは言え抱きついてしまう。
「ご、ごめんねー‥‥くそぅ、木のあんにゃろうめ」
 ギロ、と木を睨みつけているとクレイフェルからの視線に気がついて「どしたの?」とマリが問いかける。
「や、めっちゃ意外やなって。久々にマリがおにゃのこやねんなって思った」
 クレイフェルが笑って言葉を返すと「し、失礼な! 私だって花も恥らう乙女なんだからね!」と大きな声で叫び返した。
「‥‥‥‥まぁまぁ、そういえばもう夏本番だけど海とかプールとかに取材は行かないのか?」
 高遠が話を逸らすように問いかけると「うふふ、予定あるわよ」と何かを企んでいるような笑顔で言葉を返した。
「来月辺りに宿泊旅行を企画してるんだ♪ またヤバ――くなくてイイ感じのホテルを探さなくちゃ」
「‥‥今の言葉、何か無理矢理感が否めないんだが‥‥ヤバくなくてって」
 ザンが苦笑気味に呟くと「やだなぁ、そんな事はなくてよ?」とおどけたように言葉を返す。
「騒いでるせいか? どうやらお出ましのようだな?」
 神無月が『エネルギーガン』を構えながら呟く。
 今回、能力者達は班を二つに分けた。
 一つはクレイフェル、ザン、高遠、神無月のキメラ攻撃班。
 もう一つはナレイン、霞倉、玖堂、乾のマリ護衛班の合計二つ。
「うわぁ、本当に死神みたーい。鎌なんて持って結構自分じゃ『俺カッコイイ』とか思ってたりするのかな?」
 マリは写真を撮りながらきゃっきゃと騒ぐ。

(「何でキメラは平気なのにお化けは苦手なんだろう‥‥」)

 能力者は騒ぐマリを見ながら心の中で呟くが、口にする事はなかった。


〜能力者 VS 死神キメラ〜

 死神と言われるだけあって、今回のキメラは黒い衣を身に纏い鋭い刃の鎌を持っていた。
「ミョーな気の利かせ方しやがってよぉ‥‥ついでに気ぃ利かせてとっとと土に還っちまえってんだ!!」
 玖堂は叫ぶと同時に『練成強化』を使用して能力者達の武器を強化して『練成弱体』を使用して死神キメラの防御力を低下させる。
「さてと、マリさんの取材を無事に終える為にもさっさと消えていただきたいものですね」
 神無月は覚醒をしながら呟き小銃『S−01』で死神キメラに攻撃を仕掛ける。神無月が攻撃を仕掛けると同時にクレイフェルが『瞬天速』を使用して死神キメラに接近して『ルベウス』で攻撃を仕掛けた。
 しかし攻撃は死神キメラには当たらず、反撃で鎌を振るってきたので『瞬天速』を再び使用して後退する。
「少し――離れるか」
 高遠は呟きながら『イアリス』を構えて、死神キメラの持つ鎌を狙って攻撃を仕掛ける。彼の攻撃が鎌に当たる瞬間、死神キメラは大きく振りかぶって遠くへ投げ飛ばした。
「な――っ」
 高遠は目を丸くして投げられた鎌を目で追う。鎌の先――そこにいるのは。
「マリ!!」
 クレイフェルが叫ぶ。
 そう、死神キメラの投げた鎌は取材のために写真を撮っているマリの方だった。
「‥‥まさか、本当に飛んでくるとは思ってなかったわ!」
 ナレインが『刹那の爪』で飛んでくる鎌を蹴り落とし、死神キメラがいる方向へと戻す。
 しかし、マリを弱点をみなしたのか死神キメラは鎌を手に持ち、再びマリのところへと目掛けてくる。
「本当に鬱陶しい! もう少し離れて!」
 霞倉は『ファング・バックル』と『布斬逆刃』を使用して死神キメラに攻撃を繰り出した。
「お前の相手は俺らだろうが!」
 ザンは『蛍火』を振り上げて攻撃を仕掛ける。だが墓石を壊しそうになり、ザンは攻撃を逸らす。そのおかげで墓石を壊すことはなかったが、ザンは死神キメラから攻撃を受けてしまう。
「こんな場所に現れて、戦えない一般人を的にして――いい加減温厚な私でも許せそうにないですね」
 クレイフェルは『ルベウス』で攻撃を仕掛けながら呟く。彼の攻撃の後に死神キメラが攻撃を繰り出そうとしたが、ナレインと神無月の攻撃で遮られ、掠る程度のダメージで済んだ。
 そして死神キメラが見せた僅かな隙を見逃すことなく高遠が鎌を攻撃して弾き飛ばす。死神キメラは鎌での攻撃方法しかないのか、慌てたように鎌を拾いに向かうが、みすみす拾わせる能力者達ではない。
「死神の出番はねーぜ、さっさとあの世に帰りな!」
 ザンが叫び『ファング・バックル』と『布斬逆刃』を発動して死神キメラに攻撃を仕掛けた。
 それがきっかけとなって、能力者達は総攻撃を仕掛けて死神キメラにトドメを刺したのだった‥‥。
「‥‥死神が殺されるなんて‥‥滑稽」
 倒されていく死神キメラを見ながら霞倉が「ふ」と笑みを浮かべながら呟いたのだった。


〜取材完了!〜

「皆、ありがとねー♪」
 乾の手を強く握り締めながらマリは能力者達に礼を言う。
「おしまい、ですね。しっかりと取材できましたか? マリさん」
 いつものマリになるよう(そしてちょっぴりの嫌がらせ含)にクレイフェルが覚醒状態でマリに話しかける。
「そ、それは嫌だってばっ!」
 覚醒状態のクレイフェルが苦手なマリは「うわわ」と叫んで懐中電灯を落とす。
 そして落とした位置が悪かった。マリの懐中電灯はクレイフェルの足元まで転がっていき、ちょうど下からクレイフェルを照らすような形となった。
 夜、しかも墓地で下からライトを照らされた顔は非常に怖いらしく、マリは声にならない悲鳴を上げた。
「‥‥全く、一体このキメラは何してたんだろうな?」
 地面に転がる死神キメラを見ながら神無月がため息混じりに呟く。
「さぁ〜‥‥意味ない所に現れるのがキメラじゃないの? それより戦闘中のなみちゃんは性格変わるんだね〜」
 マリが思い出したように問いかけると「ご、ごめんなさい」と霞倉が頭を下げながら謝ってきた。
「や、悪いとかじゃないんだよ? ちょっとびっくりしただけ」
「‥‥覚醒するとどうしても抑えが効かなくて‥‥ふ、普段はあんなんじゃないんですっ、ほ、本当です‥‥」
 霞倉の必死な言葉に「あ、別に私はそういうの気にしてないから大丈夫♪」と笑顔で言葉を返す。
「幽霊の正体見たり、だな――そうだ、キメラも無事に倒した事だし、肝試しの続きをするってのもいいかもしれないな。夏の風物詩を満喫する意味で」
 ザンの提案に「断固拒否!」とマリが手をクロスさせて断る。
「そうだ、肝試しもいいけど取材が終わったという事で打ち上げとして何か食いに行かないか?」
「わ、いいですね。そうしましょうよ」
「私も大賛成!」
 マリと乾が言葉を返し、能力者達はそのまま打ち上げに行くことになった。

 そして墓地を出る間際に玖堂が手を合わせて「お騒がせして申し訳ありませんでした」と予め持ってきていた花とお酒を置いて墓地を後にする。
 同じく高遠も車に用意していた清めの塩でお持ち帰り防止を行っていた。


〜クイーンズ新刊〜

 ども! 毎回ご愛読ありがとうございます。
 今回は墓地に現れる死神キメラの取材を行ってきました。
 墓地といえばお化け、お化けといえばこんにゃく! という事で私の苦手な場所だったのですが仕事なので仕方なく取材に‥‥。
 取材自体は嫌じゃなかったんですけど、場所が、こんにゃくが‥‥。
 でも能力者の皆がいてくれたから怖かったけど無事に取材が終わりました。
 実は――お化けが墓地に出ました。
 今回の付録写真はその時のものです。
 かなり怖い写真なので一人では絶対に見ないように!
 それじゃ、次の取材も頑張ります!

 ――クイーンズ記者・土浦 真里

 そうして心霊写真と書かれた付録写真は――下からライトで照らされた怖い顔のクレイフェルなのだった‥‥。


END