タイトル:週刊記者と七夕マスター:水貴透子

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/14 03:46

●オープニング本文


今日は年に一度の七夕! 楽しく過ごすわよっ!

※※※

――能力者の皆様――

こんにちは! クイーンズ記者の土浦 真里(つちうら まり)で〜す。

7月7日は七夕という事で、簡単なパーティーですがクイーンズ編集室で行う事になりました!

料理やジュース、アルコール類も用意してありますので都合が合う人は遊びに来て欲しいで〜す♪

同封した短冊に願い事を書いてもらえると、笹を編集室で用意してますので飾ってくださいな♪

皆で楽しく出来ればいいな〜、と考えていますのでお気軽に来てくださいませ♪


―PS
浴衣とか用意してありますので、着替える方は遠慮なく申し出てくださいな♪

―――マリちゃんでした♪

※※※

「チホ〜! 能力者の皆に七夕祭の案内を売――ごほん、渡してきたよ〜♪」

売ってきた、という言葉を誤魔化すようにマリは咳払いをしてうそ臭い笑顔を見せて言葉を続けた。

「‥‥あなた、また売ってきたの? 確か去年のパーティーも券を売ってたわよね‥‥」

「えへ☆ だってクイーンズは個人雑誌だからお金がないのよ(はぁと)」

「(はぁと)じゃないわよ。全く‥‥そのうち能力者達に愛想つかされちゃうわよ?」

チホがため息混じりに言葉を返すと「大丈夫! 逃げても追いかける!」とマリはストーカー発言を返してチホは盛大に引いたのだとか‥‥。

「マリに付き合ってくれる優しい能力者、来てくれるといいわね」

チホは七夕の案内を見ながら小さく呟いたのだった。

●参加者一覧

/ ナレイン・フェルド(ga0506) / 小鳥遊神楽(ga3319) / 霧島 亜夜(ga3511) / 威龍(ga3859) / 鳥飼夕貴(ga4123) / キョーコ・クルック(ga4770) / アルヴァイム(ga5051) / 玖堂 鷹秀(ga5346) / 那智・武流(ga5350) / なつき(ga5710) / ルナフィリア・天剣(ga8313) / 乾 幸香(ga8460) / 櫻杜・眞耶(ga8467) / 志羽・翔流(ga8872) / シュブニグラス(ga9903

●リプレイ本文

〜七夕! クイーンズ編集室に集合! 〜

「キョーちゃん、手伝ってくれてありがとね〜、ホント助かる」
 七夕パーティーの準備をしながらクイーンズ記者・土浦 真里(gz0004)がキョーコ・クルック(ga4770)に申し訳なさそうに話しかけた。
「いつもの事だから気にしないでいいよ〜♪ 竹を立てるとか力のいる仕事でも大丈夫だから♪」
 彼女は開催時間より前に来て、いつものようにパーティーの準備を手伝ってくれていた。彼女が手伝ってくれたおかげで時間を遅らせる事なくパーティーを開催出来そうだ。
「そろそろ皆が来る時間だから、キョーちゃんも浴衣に着替えてきたら? あやちーも来るんでしょ、ふふふふ」
 からかうようにキョーコに話しかけると「き、着替えてくる」と顔を赤くしながら浴衣を置いてある部屋へと向かったのだった。

「マリちゃ〜ん♪ 七夕楽しみましょ〜!」
 インターホンが鳴って、マリがドアを開けると同時にナレイン・フェルド(ga0506)が抱きついてきた。
「や、今回は誘ってくれてありがとう」
「私もありがと、来れてよかったわぁ」
 ナレインの後ろから顔を覗かせるのは鳥飼夕貴(ga4123)とシュブニグラス(ga9903)の二人だった。
「ゆうきちゃん、シュブちゃん! 来てくれてありがとう♪」
「あ、差し入れに高原アイスクリームと手作りバターを持ってきたの」
 シュブニグラスが持っていた袋をマリに渡しながら話すと「俺もこれを差し入れ」と鳥飼はスイカを三玉渡そうとしたが「‥‥持ちきれないね、運ぶよ」と差し出したスイカを引っ込めた。
「私も差し入れ持ってきたのよ? ナレイン定番の『柿ピーチョコ』を沢山持ってきちゃった」
 ナレインも笑顔で袋を見せると「みんなありがと! さぁ入って入って」と編集室の中へと案内したのだった。
「マリ〜、変な所とかないよね?」
 三人をリビングに案内し終わると浴衣に着替えたキョーコが階段から降りてくる。夜会巻きにした髪型のせいかうなじがアピールされており「ばっちり! あやちーも惚れなおすね」とマリは言葉を返す。
「そう、かな? そうだといいな♪」
 誉められた事にキョーコは顔を赤くしながら照れたように笑う。その時に「こんちは」とタイミングよく霧島 亜夜(ga3511)が編集室のドアを開けて入ってきた。
「あやちー、いらっしゃい♪ ほら! 奥さんのお出迎え♪」
 キョーコとマリが霧島を出迎えると「キョーコ、すっげー綺麗だぜ」と呟く。
「‥‥あやちー、私は? 私は?」
 拗ねたように霧島に話しかけると「あ、マリ『も』綺麗綺麗」とそっけなく言葉を返される。
「あ、ちゃんと言ってなかったような気がするから報告。俺とキョーコ、この前結婚したんだ。キョーコのウェディングドレス姿、すごい良かったぜ!」
 ノロケたっぷりで話してくる霧島にマリは可笑しそうに笑う。
「万年新婚夫婦め〜! いちゃいちゃはあっちでどーぞなのよ」
「あ、これ俺んとこの『アイス71』から持ってきたアイス♪」
 マリは霧島からアイスを受け取ると、二人の背中を押しながらリビングへと追いやる。
 そしてまたインターホンが鳴り「はぁい」とマリは小走りで玄関まで走る。
「こんにちは」
 ドアを開けると同時にひょっとこが視界に入ってきて「ぎょ」とマリは驚いたように呟く。
「黒子、驚かせているぞ」
 ルナフィリア・天剣(ga8313)が呟くと『黒子』と呼ばれたアルヴァイム(ga5051)は「今回は七夕という事で黒頭巾を控えてひょっとこにしてみたのですが‥‥逆に驚かせてしまいましたね。私はアルヴァイム、今回はお誘いありがとうございます」
「ルナフィリアだ」
「なつき(ga5710)です、マリさんとは一度お会いしていますよね、あの時はロクにご挨拶も出来ず、申し訳ありませんでした」
 ぺこりと丁寧に頭を下げながらなつきが言うと「私もまともに挨拶できてなかったし、お互い様だよ」と中に入るように促しながら言葉を返した。
「これは差し入れだ、金欠中だから安物しか用意できなかった」
 ルナフィリアが缶珈琲などが入った袋を差し出すと「私もかさばらないように金平糖を持ってきました」となつきが沢山金平糖の入った袋を渡してきた。
「ありがとう、リビングに食事&飲み物が用意されてるから好きに飲み食いしちゃっていいよ♪」
 マリが三人に言うと「分かりました」とアルヴァイムが言葉を返し、三人はリビングの方へと歩いていった。
「マリさん、こんにちは」
 聞こえてきたのは見知った声で、何度も助けてもらっている小鳥遊神楽(ga3319)と彼女の親友である乾 幸香(ga8460)だった。
「小鳥ちゃん、お久しぶり♪」
「そうね。このところ暫く他の仕事にかまけてマリさんの顔を見る機会がなかったから、結構寂しかったわ」
「私とはこの前会いましたよね、この間のお仕事お疲れ様でした。今日は仕事や嫌な事は忘れてしっかり楽しみたいですね」
「うん、そうだね♪ あれ、そういえば浴衣は?」
「あたしは借りるんだけど、幸香は持参してるみたいよ、あと着付けを手伝って欲しいんだけど‥‥いいかしら?」
 小鳥遊の言葉に「着付けは出来ますのでお手伝い、させていただきます」となつきが姿を見せた。
「じゃあ宜しくお願いするわ」
 なつきは手伝うため、小鳥遊と乾は浴衣に着替える為に二階へと向かいだした。
「よう、久しぶりだな」
 言葉と共に現れたのはマリも何度も世話になっている威龍(ga3859)だった。
「暫くお前の仕事を受ける事もなかったが、クイーンズ編集部の面々は息災だったか?」
 威龍の言葉に「もちろん♪ 元気じゃなきゃ記者は勤まらないよ」と笑顔で言葉を返した。
「そういえば、それは何?」
 威龍の持っているものが気になったマリは問いかけると「差し入れだ」と短い言葉が返ってきた。
「小腹が空いてきた時の為に冷やし中華と杏仁豆腐、マンゴープリンを持ってきた。デザートは女性陣向けになるかな」
「わぁ、ありがとう。早速入って♪ 冷やすものは冷蔵庫に直してね♪」
 マリが話しかけると「あぁ、分かった」と言葉を返し、彼も冷蔵庫とリビングに向かって歩き出した。
「土浦さん、こんにちは」
 青い浴衣で登場したのは玖堂 鷹秀(ga5346)だった。
「鷹やん♪ いらっしゃ――って何か白衣じゃない鷹やんって新鮮かも」
 けたけたとマリが笑って話しかけると「日本人であることを再認識する為に白衣は自粛しました」と穏やかな笑みを浮かべて言葉を返した。
「これは差し入れの葛饅頭です」
「ありがと〜! そういえば短冊は持ってきた?」
「えぇ、持ってきました。そういえば短冊などを笹に飾る風習というのは日本でしか見られず、これは江戸時代から始まったそうです」
 歩く豆知識辞典の通り名は伊達ではないらしく、玖堂はちょっとだけ七夕について語った。
「真里ちゃん、ふんどしーちょ!」
 祭気分が抜けていないのか、祭で叫んでいた為にくせになってしまったのか、どちらなのかは分からないが志羽・翔流(ga8872)が『ふんどしーちょ』と挨拶をしながら話しかけてきた。ちなみに彼は簀巻きにした那智・武流(ga5350)を抱えながらの登場だった。
「え、ええええぇ? なっちゃん簀巻きにされてるじゃん! どうしたの!?」
 マリが驚いたように叫ぶと「‥‥俺は嫌だったんだけど、こうしたらウケるって‥‥志羽が」とため息混じりに呟いた。
「那智‥‥ベソかくなよ‥‥楽しもうぜ? な?」
「‥‥うん、こんな俺だけど宜しく、トホホ」
「此方こそ! 楽しいパーティーにしようね。なっちゃんは既に楽しいことになってるけどさ」
 マリは笑うと那智からの差し入れ練羊羹、栗羊羹、芋羊羹のほかに緑茶と麦茶のペットボトルを渡して那智と志羽はリビングへと向かっていった。
「それじゃ、私も。手伝いが欲しい時は行ってくださいね」
 玖堂も言葉を残し、二人を追うようにリビングへと向かった。
「真里姐はん、遅くなりました」
 桜柄の淡い水色の浴衣を着てやってきたのは櫻杜・眞耶(ga8467)だった。
「まやちゃん、いらっしゃい♪」
「これお土産です、一応人数より多めに持ってきているんですけど」
 櫻杜が差し出したのはミルクティープリンで、とても美味しそうなものだった。
「ありがと♪ もう皆揃っているから入って入って♪」
 マリは櫻杜を中に入れると、一緒にリビングへと向かった。
「マリちゃん♪ お先に頂いているわよ〜」
 リビングに入ると既にどんちゃん騒ぎが始まっていて、リビング内は結構な騒がしさになっていた。
「私も何か食べようかな♪ まやちゃんも好きに飲み食いしちゃっていいからね」
「分かりました」
 マリは櫻杜に言葉を残し、自分も食べる為にテーブルについたのだった。


〜それぞれの七夕:ジェンガで楽しみましょ〜

「さぁ〜てジェンガ始めるわよ〜。参加する人は集まって〜」
 ナレインが手を挙げて『ジェンガ』に参加する能力者達を集める。ジェンガとは長方形のパーツで作ったタワーを崩さないように片手で一片を抜き取り、それを最上段に積み上げるのを交代で行うゲームだ。
 参加するのは提案者のナレイン、小鳥遊、櫻杜、鳥飼、玖堂、那智、乾、志羽、威龍、シュブニグラス、そしてマリの合計十一人。
「ふふ、まずは私から行かせてもらうわね」
 最初という事でナレインは余裕の表情で一片を抜き取る。続いて小鳥遊が慎重に回りの一片を抜き取り、崩れなかったのを見て安堵のため息を漏らす。
 そして櫻杜も端から際どそうな所を抜き取り、鳥飼もぐらついてきているジェンガを見て緊張気味に一片を抜く。
「‥‥はぁ、意外とどきどきするね、これ」
 崩れなかったことに安堵して鳥飼が呟くと「それが楽しいのよ♪」とナレインが言葉を返した。
「次は私ですか、この辺を抜いて見ましょうか」
 玖堂は大胆にも崩れそうな場所を抜き取る――がジェンガはぐらつきはしたものの、ぎりぎりで崩れ落ちる事はなかった。
「おし、次は俺だな」
 那智が呟き、崩れないように慎重に一片を抜く、そろそろヤバそうだがまだ何とか崩れずにいる。
「これって後になるほど危険じゃないか? うわぁ、ぐらついてる‥‥」
 志羽が苦笑気味に呟き、一片を抜き取るが結構しぶとく倒れずにジェンガも頑張っている。
 乾は大胆に真ん中辺りを抜き取るが、これもかろうじてセーフ。
「‥‥次は俺か――この辺は安全圏、か?」
 威龍が抜き取った時、ジェンガはバランスを崩して見事に倒れてしまったのだった。
「はい、龍っちの負け! さぁ秘密を言いなさいな♪」
 楽しそうにマリが威龍に詰め寄ると威龍はため息を吐きながら話し始めた。
「俺の秘密か。今でこそ、これだけ筋肉のついてそこそこまともな身体になったが、ガキの頃はがりがりで、肌の白い女の子みたいな子供だったらしい」
 威龍の言葉に「あら、意外ね」とナレインが呟く。
「それを心配した親父が近所に住んでいた常連の中国拳法の師範に頼み込んで内弟子にしてもらったんだが、かなりしごかれたな」
 しかも親父は親父で空いた時間があれば店の手伝いをさせていたしな、と威龍は言葉を付け足す。
「おかげで子供らしい遊びってのをよく知らないで、育ったな。まぁ、後悔しているわけでも、悔しいわけでもないが」
 威龍が『秘密の告白』を言い終えたところでジェンガ二回戦へと進む事になった。先ほどと同じように慎重に慎重にと抜き取っていくが、進んでいくにつれてリスクが大きくなるのは仕方の無いこと、二回目の秘密告白は玖堂という事になった。
 彼は冒険をするかのように一か八かの所を抜き取っていた為にジェンガがバランスを崩して倒れてしまった。
「私の秘密、ですか‥‥‥‥大した事ではありませんが、土浦さんに対して友人以上の好意を抱いている、くらいですかね」
 玖堂がさらりと言った言葉で会場内はザワと騒ぎ、一斉にマリを見た。
「――――――え?」
 きょとんとするマリを玖堂はにっこりと笑顔を見せた。
「あらあら、マリちゃんどうするの〜?」
 ナレインがマリの顔を覗き込みながら話しかけると、マリの顔は茹でたタコのように真っ赤になっていた。
「つ、つ、次のゲームに行こう! うん、次はひ、秘密じゃなくてしばちゃんのロシアンにしよう、うん」
 がらがらとジェンガを組み立てながら明らかに挙動不審なマリを見て能力者達はクスクスと笑う。
 そして、三回目からのジェンガでは志羽が提案してきた『ロシアンルーレットたこ焼き』を罰ゲームにする事にした。
 ロシアン最初の罰ゲーム者はシュブニグラスだった。
「‥‥とりあえずバター塗って願掛け」
 シュブニグラスは目の前のたこ焼きに持参したバターを塗って覚悟を決めたようにたこ焼きを口に入れた。
「‥‥‥‥からくない、それに‥‥中吉?」
 シュブニグラスはたこ焼きの中に入っていたおみくじを見て呟く。
「おみくじ大量に買い込んだのはこのためか!」
 那智が志羽を責めるように叫ぶが「宣伝効果になるんで、今回だけは許す!」と言葉を付け足した。
 それからも何回かジェンガで盛り上がり、短冊を竹につるす作業に移り始めたのだった。


〜それぞれの七夕:らぶらぶ新婚夫婦〜

「そういえば俺、短冊書いてきちゃったんだけど‥‥キョーコは何書いた?」
 ほとんどの能力者がジェンガに夢中になっている中、霧島は花火の準備をしていて、キョーコは縁側に座って霧島を応援していた。
「あたしはまだ書いてないんだよ。今のうちに書いちゃおうかな」
 キョーコはペンを取り出して、白紙の短冊に願い事を書き込もうとする――が、霧島の視線を感じて「何?」と言葉をかける。
「別に‥‥何書くのか見守っておこうかなって」
 霧島に「バカ、あっちで書いてくる」と笑みを浮かべながら中に入って願い事を書く。
 キョーコが願ったものは『亜夜といつまでも幸せに過ごせますように』というものだった。簡単な願い事かもしれないが、毎日を戦場で過ごす能力者達にとっては決して簡単とは言えない。
 だから、キョーコは自分の気持ちを短冊にこめたのだ。
「そういえば、マリって意中の相手はいないのかな? 何か恋愛からは程遠い感じがするけどさ」
 霧島がジェンガできゃあきゃあと騒いでいるマリを見ながら苦笑しながら呟く。
「確かに‥‥マリと付き合う人ってどんな人なんだろうね、何か想像できない」
 キョーコの言葉に「確かに」と霧島も短く言葉を返す。
「‥‥‥‥短冊、何書いたの?」
「まだ言ってる‥‥、あ〜恥ずかしいから絶対にだめ〜」
 キョーコは短冊を隠しながら言葉を返すと「ちぇ」と霧島の拗ねたような言葉が聞こえた。
 そんな霧島の姿を見て「‥‥後で、飾る時なら見てもいいよ」と顔を赤くしながらポツリと呟いた。


〜それぞれの七夕:星を見ながら〜

「はい、食べ物と飲み物ですよ」
 アルヴァイムは庭のテーブルに座って空を見上げるルナフィリアとなつきにリビングから食事と飲み物を運んできた。
「‥‥そういえば、手料理を食って見たいといっていたので作ってみたぞ。味は保障しないが、まぁ死にはしないだろう」
 ルナフィリアが呟きながらアルヴァイムとなつきに差し出したのは不恰好なサンドイッチだった。作ったことがないので無理もないが、ルナフィリアは味見はちゃんとしていたので致命的な事にはならないだろうと考えていた。
「ありがとうございます、それでは頂くとしましょうか」
 アルヴァイムはサンドイッチを一つ掴み、口へと運ぶ。
「美味しいですよ」
 アルヴァイムが呟くと「嘘を言うな、初めてだから美味いはずがない」とルナフィリアはため息混じりに呟く。
 でも『美味しい』と言ってくれた事が嬉しかったのかルナフィリアは小さく「ありがとう」と言葉を返した。
「そうだ、これを食べましょう。星空の下で金平糖を食べるなんて素敵じゃないですか?」
 なつきは持参してきた金平糖をアルヴァイムとルナフィリアに渡す。
「そうだな、食べるとしよう、それにしても向こうはえらく賑やかだな」
「あぁ、ジェンガで盛り上がっているみたいです、もうすぐ九時ですし花火大会も始まるでしょう」
 アルヴァイムが言葉を返すと同時にマリが「花火始めるから集まって」と叫ぶ声が聞こえ、散り散りになっていた能力者は庭へと集まりだしたのだった。


〜花火大会〜

 どん、と大量に庭に置かれた花火に能力者たちも目を丸くする。人数が15人とクイーンズ記者なのだからそこそこの量は覚悟していたが「これは多すぎだろ」と誰かツッコミを入れたいほどに大量に置かれていた。
「さぁ! 自由に花火しちゃって♪ あとから打ち上げ花火もするからお楽しみに♪」
 マリが話し終えると能力者達は花火を取りに動き始める。
「マリちゃん、夕貴ちゃんに両側から抱きついちゃわない?」
 こっそりとナレインがマリに話しかけてきて「OK」とマリも笑ってそろりと歩き出す。そして花火を選んでいる鳥飼に両側から勢いよく抱きついた。
「うわっ、びっくりしたぁ」
 両側から抱きつかれた事で鳥飼も驚いたように言葉を返してくる。
「えへへ、どっきり成功?」
 マリが問いかけると「うん、本当にびっくりした」と鳥飼も言葉を返した。
「あら、楽しそうなことをしてるわね。私も混ぜてもらいたいわ」
 シュブニグラスは冷えたスイカを食べながらじゃれあう三人に話しかける。
「うん、シュブちゃんもおいでよ♪ 皆で楽しく花火しよ」
 マリが誘う「スイカを食べ終わったら行くわね」とシュブニグラスは言葉を返してきた。
「いつでもマリさんは楽しそうね」
 じゃれあう姿を見て小鳥遊が話しかけてくる。
「元気だからこそマリさんなんじゃない、それにしても浴衣姿の皆を見てると七夕って気がするよね、私もまさかこの島に来てから浴衣を着る機会があるなんて思ってもなかったけど」
 乾が苦笑気味に呟くと「能力者も同じ人間なんだからお祭は好きでしょ? 私も好きだから皆で騒ぎたいの」とマリが言葉を返した。
「皆さん、お茶とお菓子の用意が出来ましたよ」
 櫻杜が花火をしている能力者達に話しかける。彼女は花火大会が始まると同時にお茶とお菓子の用意をする為に給湯室で準備をしていたのだ。
「あ、ごめん! お客さんにそんな事させちゃって‥‥」
 慌ててマリが受け取ると「好きでしているんですからいいんですよ」と櫻杜は言葉を返した。

「花火、沢山ありますね」
 くす、と笑みながらなつきは楽しそうに笑いながら呟く。彼女は子供の頃にろくな遊びをさせてもらえなかったせいなのか、ああいうものを見ると胸が躍るのを抑えきれないようだ。
 なつきは手近にあったススキを手にとって「‥‥きれい」とポツリと呟く。
「三人で線香花火でもしましょうか」
 アルヴァイムが線香花火を持ってきて、ルナフィリアとなつきに渡す。
「正直騒がしいのは苦手だが‥‥隅の方でゆっくりしておくとしようか」
 ルナフィリアが線香花火を受け取り、それに火をつける。
「アルヴァイムさん、あれは何の星でしょうね」
 線香花火をしている途中で、なつきが空を見上げて呟く。
「あれは‥‥どれになりますかね」
 アルヴァイムは持参した星座盤で星を調べてなつきに星の名前を答えたのだった。

「亜夜、こっちこっち」
 キョーコが庭の隅の方で霧島を呼ぶ、その手には線香花火が持たれていた。
「よし、どっちが長く持つか勝負だ!」
 線香花火に火をつけて、二人はどちらが長く持つかを勝負し始める。
「大きいのもいいけどさ、こういう小さいけど暖かいのもいいね〜」
 キョーコが「亜夜と一緒に出来るし」と小さく言葉を付け足しながら話しかける。
「うん、俺もキョーコと一緒だと楽しい」
 霧島の言葉にキョーコは顔を赤くして「‥‥幸せだね」と呟いた。

「貴方ならもっと綺麗になれるわ! 間違いなく!」
 シュブニグラスが何故かチホを気に入ったらしく、チホに美の力説をしていた。
「そ、そう?」
「そうよ、記者は大変かもしれないけどお肌の手入れだけは手を抜いちゃだめよ?」
 シュブニグラスの美説を聞いていると、威龍が「静流は参加してるのか?」とチホに問いかけてきた。
「あ、あの子は騒がしいのは苦手だから二階で仕事をしてるわよ」
 そうか、と言葉を言い残して威龍は記者の静流の所へと向かった。

 そして、花火も少なくなってきた頃、メインの打ち上げ花火を行うとマリから案内があった。打ち上げる役目は記者の中で唯一の男である翔太で「何で俺が」とボヤいている姿を何人か見たのだとか。
 夏を知らせるような打ち上げ花火が一つ、また一つと打ちあがり能力者達はそれを見るために空を見上げる。
「やっぱり打ち上げタイプは一味違うな〜」
 霧島が「此処に座れば」と縁側の隣を軽く叩きながらキョーコに話しかける。
「うん‥‥ふわっ‥‥ごご、ごめん‥‥」
 霧島の隣に座ろうとしたキョーコだったが、ふらついて霧島に抱きつく形で躓いてしまう。
「大丈夫か?」
 霧島が問いかけると「‥‥うん」とキョーコが言葉を返し、二人は暫く見詰め合った後に軽いキスをする。
 そして人目があることに気づき、慌てて離れた後に「マリには‥‥見られてなさそう?」とキョーコが呟いた瞬間――‥‥。
「見てるわよ」
 呟きながらマリが二人の背後から現れた。
「何か飲み物差し入れようかなぁって思ってたんだけど、あま〜い雰囲気になっちゃってぇ、私が入れる隙間がなかった? みたいな感じかな?」
 マリの説明に二人とも顔を赤くすると「ま、マリにはそういう相手はいないのか?」と霧島が問いかけた。
 そしてマリは少し考えた後、玖堂の言葉を思い出したのか顔を真っ赤にした。
 ジェンガに参加していない二人はマリが顔を赤くする理由が分からず、首をかしげてる。
「俺でよければいつでも相談に乗るぜ!」
「う、うん。ありがと――とりあえずごゆっくりなのよ」
 マリは飲み物を置いて二人のところをあとにする。

 その後、花火大会も終わり、クイーンズ主催の七夕パーティーは終わりを告げた。
 そのとき、片付けを率先してしてくれたのは那智だった。
「ごめんね、片付け手伝わせちゃって‥‥それとこれもありがとう」
 七夕飾りとして那智が作ってくれた『でんぐり』を見ながらマリが礼を言う。
「まぁ、誘ってもらったしな。立つ鳥、跡を濁さずが礼儀だ」
 ゴミ袋にゴミを入れながら那智が呟く。
 他にも片付けを手伝ってくれた能力者がいて、片付けは意外と早く終わった。
「土浦さん」
 帰っていく能力者達を見送るマリに玖堂が話しかけてきた。
「先ほどの話は冗談ではないですから。月並みですが、まずは改めて『お友達から』というわけにはいきませんか?」
 玖堂の言葉を黙って聞いているマリは俯きながら「‥‥えっと」と口ごもったように呟く。
「ただ、ご迷惑をおかけしてまで想いを通すつもりはありません。嫌なら嫌とはっきり言ってください」
 玖堂の言葉に「‥‥‥‥」とか細い声でマリが言葉を返してくるが、聞こえなかったので玖堂は首をかしげる。
「嫌じゃないって言ってるの! こういうの恥ずかしいんだから二度も言わせないで! それと土浦さんは禁止! 分かった!? 鷹秀!」
 名前で呼ばれた意味を理解したのか、玖堂は笑って「それではおやすみなさい」と言葉を残して編集室を後にしたのだった。
 皆を驚かせよう、楽しませようとして七夕パーティーを企画したマリだったが、一番驚かされたのは彼女自身だったのかもしれない。


 後日、発売されたクイーンズには七夕パーティーで撮った写真が沢山掲載されていた。

 名前は明かせないけど、飾られた短冊をご紹介します♪
『亜夜といつまでも幸せに過ごせますように』
『変わらぬ、笑顔を』
『魔創の弓とウーフーが欲しい。むしろくれ』
『Nemico uccidendo』
『商売繁盛・健康第一・彼女欲しい!』

 次の取材も能力者のことを伝えるために土浦 真里! がんばりまっす!


END