タイトル:ファッションショー 秋マスター:水貴透子

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/11 07:03

●オープニング本文


能力者だって人間なんですもの。

お洒落したり、好きな人の前では綺麗でいたいとか考えるはずだわ。

※※※

――能力者の皆様――

初めまして、駆け出しデザイナーの水沢ユリアと申します。

今回は能力者の皆様をご招待して『ファッションショー』を開催したいと思っています。

洋服は此方で用意するのではなく、皆様に持ってきていただく事になるので申し訳ないのですが‥‥。

いずれ、私も自分のブランドを持ちたいと考えていましてどのような服が皆様に好まれるかを今回の『ファッションショー』で学ばせていただきたいと思います。

ファッションショーの簡単な説明が記載されていますので、興味を持たれた方はご参加して下さると嬉しいです。
それでは、突然のお手紙を失礼しました。

――水沢ユリア


※※※

ファッションショーについての説明と注意事項

♪今回のファッションショーのテーマは『秋』です。
(自分で『秋らしい』と思う服装であればOKです)

♪部門は『メンズ』『レディース』『ペア』の三部門があります。

メンズ‥‥男性メインの部門です(男装可)

レディース‥‥女性メインの部門です(女装可)

ペア‥‥恋人、友人同士など複数の人間が参加できる部門です。

♪ファッションショーに参加する際、お一人様『一着』のみでお願いします。

♪部門も複数に参加することは出来ませんので、どの部門かを返信用ハガキにお書き下さい。

♪皆様で楽しいファッションショーに出来たらいいなと考えています。

●参加者一覧

/ 榊 兵衛(ga0388) / クラリッサ・メディスン(ga0853) / 篠原 悠(ga1826) / 漸 王零(ga2930) / UNKNOWN(ga4276) / シーヴ・王(ga5638) / リーゼロッテ・御剣(ga5669) / 櫻杜・眞耶(ga8467) / レティ・クリムゾン(ga8679) / 絶斗(ga9337) / シュブニグラス(ga9903) / 神浦 麗歌(gb0922

●リプレイ本文

 今回は駆け出しデザイナー・水沢ユリアが企画したファッションショーの為に12名の能力者達が集まってくれた。
「初めまして、突然の申し出にも関わらず協力して下さって本当にありがとうございます」
 水沢ユリアは丁寧に頭を下げながら、今回ショーに参加してくれる能力者達に挨拶を行った。
「ユリア、宜しくでありやがるです」
 シーヴ・フェルセン(ga5638)がぺこりと頭を下げながらユリアに挨拶をしてくる、無表情で話す彼女にユリアはにっこりと笑って「能力者だって人間ですもの、他の人に綺麗と思って欲しいわよね、好きな人なら尚更だわ」と話しかける。
 するとシーヴは頬を染めてはにかみながら「‥‥綺麗だと思って欲しい、です」と小さく答えた。
「まさか我がこのような催しに参加する事になろうとは思わなかったな。頼んだやつで大丈夫なのかな?」
 漸 王零(ga2930)が独り言のように小さく呟くと「自分で秋らしいと思う服装なら大丈夫ですよ」とユリアが言葉を返す。
「ファッションは人間にとって必要なもの‥‥心を引き締めてくれるものだと私は思っています、他人に流されるのではなく自分で見つけた自分に似合う服装――これを見つけられる人は少ないんですよ」
 苦笑気味にユリアが呟くと「私もそう教わって生きてきた、な」とUNKNOWN(ga4276)も言葉を返してくる。
「皆でファッションショーを盛り上げましょうね♪」
 ユリアがUNKNOWNに話しかけ「あぁ」と彼は短く言葉を返した。
「リーゼロッテ・御剣(ga5669)です♪ 水沢さんも一緒にファッションショーに出る方も宜しくね♪」
 リーゼロッテが明るい笑顔で挨拶を行う。彼女は絶斗(ga9337)とペアでショーに参加する事になっていた。
「あら、貴方達もペアで参加なのね。私達もペアで参加なのよ」
 リーゼロッテと絶斗に話しかけるのはクラリッサ・メディスン(ga0853)で、彼女は榊兵衛(ga0388)とペアでショーに参加するのだと二人に話しかけていた。
「うちらもペアだよね〜♪」
 篠原 悠(ga1826)がレティ・クリムゾン(ga8679)の腕に抱きつきながら話に入ってくる。
「あぁ‥‥折角のファッションショーなので楽しもうとは思っているんだけど、足を引っ張らないかちょっと不安だな‥‥」
 レティは呟くと「そんな事は絶対にないよ」と篠原が言葉を返す。
「もう〜。レティさん、色んな服似合うのに、あんまりお洒落せえへんの勿体ない!」
 篠原の言葉に「そうですね、もったいないです」とユリアも篠原に賛同するように言葉を返した。
「ボーイッシュな服装も凄くお似合いなんですけど、ガーリィ系とか似合いそうですよ。あと赤系の服も黒い髪に映えて似合いそうです」
 ユリアの言葉に「そ、そうだろうか‥‥」と帽子を深く被りながら言葉を返した。
「‥‥もしかして女装で参加するの僕だけなのかな‥‥?」
 神浦 麗歌(gb0922)がショーに参加す能力者達を見渡しながら呟く。
「そうですね、男性でレディースに参加されるのは神浦さんだけですね、でも何故レディースに参加を? 私としては嬉しいのですけれど‥‥」
 ユリアが問いかけると「‥‥実は」と神浦は話し始める。彼はラストホープに来てから色々な人と出会い、交流をしてきたのだという。そんな中、自分のキャラが地味なんじゃないかと本気で真剣に考え始めたから、今回のショーでは女装を決意したのだという。
「僕は幼少時から姉の影響を受けて育った為か、女性に対する憧れのようなものを持っていましたし‥‥」
 神浦が苦笑気味に呟くと「神浦さんは中性的な感じですからお似合いだと思います」とユリアは言葉を返した。
「あれ‥‥? シュブニグラス(ga9903)さんはスーツでご参加ですか?」
 シュブニグラスの手に持たれている衣装を見てユリアが問いかけると「えぇ、女性用のスーツを広めたくて」と彼女は言葉を返してきた。
「ドレスやワンピースはショップにあるけれど、スーツって男性用しかないのよね‥‥」
 シュブニグラスはため息混じりに呟くと「シュブニグラスさんにスーツ、きっと凄く似合うんでしょうね」とユリアは言葉を返した。
「水沢さん、そろそろショーの時間なので着替えをしたいのですが‥‥何処で着替えをしたらいいでしょうか?」
 櫻杜・眞耶(ga8467)がユリアに問いかけると「あ、ごめんなさい」と言って男性、女性の控え室に案内をしたのだった。
「分からない事があったら聞いてくださいね、ショーは30分後に開始ですから」
 ユリアが呟き、部屋を出ようとすると櫻杜が「リハーサルとかはしないんですか?」と問いかけた。
「ショーとは言っても畏まったものではないから、好きにしていただいて構いません。あ、でも迷惑行為だけは駄目ですけど」
 ユリアは笑いながら呟き、そのまま部屋を後にしたのだった。


〜ファッションショー・レディース・メンズ部門〜

「皆様、今回はファッションショーに来ていただきまして本当にありがとうございます。今回は能力者の皆様にモデルをお願いしました」
 ファッションショー開始時間になると、少し広めの会場のライトが落とされてステージに立つユリアにスポットライトが当てられる。
「今回のテーマは『秋』です。ですが感じるものは一人一人が違うもので、今回ショーをご覧になる皆様はさまざまな『秋』を感じられる事と思います。それでは――まずはレディース部門から始めたいと思います」
 ユリアが頭を下げると、スポットライトが消え、数秒の暗闇が会場内を包む。その間にユリアは舞台袖に歩き、舞台に下から照らすような照明が一気に点けられた。
 そしてノリの良い音楽が会場内に響き渡り、最初のモデルであるシーヴが歩いてきた。
 彼女の服装は膝下丈でボルドータータンチェックの七分袖リッチェレワンピースを着ており、女の子らしいフェミニンなボルドーで、普段から彼女が好んで着用している赤系色で秋らしい雰囲気が出ている。フロントはカシュクールと胸下の切り替えに光沢無地シルクテープでアクセントがつけてある。スカート部分も緩やかなフレアであり、秋らしくなっている。
 そしてワンピースの上から羽織っているモカ茶の長袖トッパーカーディガンは前を開いた状態で袖は手の甲までかかるくらいの長さで可愛さがアピールされている。歩くたびに裾のシルエットがゆらゆらと揺れて綺麗さも表現されていた。靴はダークブラウンのスエードロングブーツでブーツと同色のスエードキューブバッグを前に両手で持っている。
 髪は軽く巻き髪にしてあり、サイドで綺麗に纏められていてコスモスの髪飾りがつけられていた。
 中央までシーヴが歩くとワンピースの裾を摘んでお嬢様がするようにお辞儀をして舞台裏へと歩いていく。
「最初はシーヴ・フェルセンさんでした。続きましては櫻杜・眞耶さんの登場です」
 ユリアの言葉と同時に櫻杜が舞台裏から出てきて、中央を目指しながら歩いてくる。彼女は黒いハイウエストワンピースを着用しており、袖とスカートの裾部分に赤いラインが入った至ってシンプルなデザインのノースリーブワンピースだった。丈はロングでフロントは裾が後ろから前にあがったラインのトレーンスカートだった。スカートの下にはトレーンスカート用の赤いパニエを着用している。
 装飾品として彼女は赤い花の髪飾りをつけており、首にはリボンチョーカーをつけている。リボンチョーカーはワンピースと色を合わせて黒いものがつけられていた。靴は赤茶色のブーツを履いており、全体的に落ち着いた印象を与える服装になっている。
 髪も大人びた印象を与える右耳下で髪留めで纏めていて、右肩に流すようなセットになっていた。メイク自体もブラウン系を使っている為か普段よりキツイ印象を周りに与えていた。
 中央近くまで来ると赤いオーガンジー素材の細長いショールの両端を持って踊るような軽快な足取りで歩き、中央まで到着すると髪留めを外してショールを首に巻き、颯爽と歩きながら舞台裏へと下がっていった。
「続いてはシュブニグラスさんの登場です」
 舞台の照明に照らされてシュブニグラスが中央へと向かって歩き出す。控え室で言っていた通りでシュブニグラスの服装はスーツだった。
 パンツはセンタープレスで黒のブーツカットのものを着用しており、ベルトはチェス盤をイメージされたものなのか白と黒で施されており、バックル部分は山羊をモチーフに大きなシルバーで作られていた。ベルトの両脇にはアクセントとして手錠がつけられている。
 シャツは黒く細い線の入った白いストライプYシャツで襟周りはきっちりとされている。傭兵らしさをアピールするためにつけられたホルスターがかっこよさを出している。両手には黒のレースリングがされており、ジャケット・スーツは着ずに手で右肩にかけている。
 彼女はキャリアウォークで歩き、途中で中央側に目掛けてジャケットを投げて前転して、ホルスターから銃を抜くというアピールを行った。もちろん銃は本物ではなくモデルガンを使用している。ジャケットが落ちてくるタイミングを見計らって回収しながら立ち上がり、中央で『どうだ』と言わんばかりのポーズを決めて、キャリアウォークで舞台裏へと戻っていった。
「続きましては神浦 麗歌さんの登場です」
 ユリアの紹介と共に女装をした神浦が姿を見せる。彼は背中の中央くらいまでの長さがある黒髪のカツラを被っていて、何処から見ても『女性』にしか見えないほどだった。
 服装は滑らかそうな生地でブラウンのカットソーを着ていて、その上に着ている白いキャミソールから少し裾が出ている。さらにその上に黒いジャケットを羽織っていてボタンが一つしかついていないというシンプルさからキャミソールの模様となっている数本の縦線が引き立てられるように感じられた。ボトムスはグレーのデニムを着ていて、革製でブラウンのロングブーツが膝下まであり、可愛らしい服装になっていた。
 そして服装に合わせるようにデニムのハンチング帽を被っていて、胸元にはアクセントとしてリングのネックレス。
 歩いている時はやはり慣れないのか、少し恥ずかしがっている様子が窺えたが、それが逆に可愛さを煽っているという部分もあった。
「以上4名がレディース部門でのモデルでした、続きましてはメンズ部門のモデルをご紹介させていただきたいと思います。メンズ部門からが2人が参加されていて、まずはUNKNOWNさんです」
 レディース部門からメンズ部門に変わった事で照明も薄いピンクから淡いグリーンへと変更される。
 紹介されたUNKNOWNの服装は彼が普段から好んで着用している正装だった。
 フロックコートはロイヤルブラック、裾が長く脛を隠すほどの長さで、内ポケットが幾つも左右にあるタイプだった。そしてベストも同色で艶を抑え目の色で背中は濃い灰色が使用されており、ポケットは左胸と両脇にあり、V字も深めのベストだった。スラックスは股下が長く、すらりとしたものだが足長スーツのようなものではなくオーソドックスなタイプを彼は着用している。ベルトはコードバンで艶のある黒いものを使用していて、彼のイメージにぴったりなものだった。
 シャツは立襟のカフスシャツを着ていて、カフスはシルバーにピジョンブラッドを少し散りばめた年代物のカフスだった。皮手袋と革靴は艶のないコードバンで帽子は鍔の広いボルサリーノを目深に被っていて、時折鋭い視線を覗かせている。タイはスカーレットで銀飾りタイピンで押さえられている。
 そしてチーフはタイより濃い目の赤いもので胸が飾られており、黒いスーツに赤は一層映えて見えた。
 咥え煙草をしながら歩いていき、ダンディズムは忘れないように、鋭い視線を覗かせながらも口元は優しげに微笑んでいる。
 誰もが憧れる大人の男を魅せながらUNKNOWNは誇り高く歩いていき、静かに舞台から下がっていったのだった。
 UNKNOWNが下がると同時に現れたのは漸で、彼は唯一和装での参加だった。茜色の生地で前面に落ち葉の刺繍を散りばめ、背中には満月とそれを眺める秋刀魚を加えた猫の刺繍が入れられた着物、帯は黒い生地に白い水玉模様のものが使われている。和装に合わせて、普段は一纏めにしてある髪の毛も解いてショーに出ている。歩くたびに『からん』と下駄の音が何処か心地よくも感じられた。
 中央近くまで歩くと帯にさしてあった扇子を広げ、二回転して髪を靡かせる。靡かせた髪によって隠れていた背中の刺繍が観客達に披露される。そして二回転目が終わるまでに扇子を素早く帯にさし、入れ替わりで結紐を取り、ポニーテールを作る。
 その後はゆらゆらと靡く髪によって見え隠れする刺繍に艶やかさが感じられたのだった。


〜ファッションショー ペア部門〜

「レディース、メンズ部門を終えて残り一つの部門――ペア部門となりました。それではペア部門のファッションショーをお楽しみくださいませ」
 ユリアが呟くと、会場内の照明が薄い青へと変更され、ペア部門最初の二人は榊とクラリッサだった。
 まず榊の服装は黒革の靴にダークグレーのスーツ、こげ茶色のハーフコートという服装だった。
 そしてクラリッサの服装は胸元と背中の開いたノースリーブのドレスを着ていて、桜色のレース柄のケープを上から羽織っている。手には黒絹の長手袋をして、アクセントとして胸元に造花の白薔薇をつけている。イヤリングやネックレスは銀で統一されていて、全体的にシックな雰囲気になっている。ヒールのある黒革の靴を履き、手にはめられた時計はバンド部分が鎖状になっている女性用の時計だった。
 彼女達のアピールは先にクラリッサが中央部分まで歩いていき、しきりに左腕にはめた時計を気にする部分から始まる。何度も時計を見てはため息を繰り返し、やがて不安気な表情に変わっていく。
 そのときに榊が舞台にあがり、中央に向かって、やや早歩きでクラリッサの元へと向かい始める。榊の姿が見えたことでクラリッサの表情も一転して明るいものに変わり、自分のところへやってきた『恋人』の腕に抱きついて舞台を歩くものだった。べたべたしているわけでもないが、何処となく甘い雰囲気を出す2人に会場中からため息が漏れた。もちろん悪い意味ではなく、良い意味で――なのだけれど。
 その後、2人仲良く舞台裏に下がり、続いての2人――篠原とレティが姿を見せたのだった。
 篠原の服装は薄い茶色のボヘミアン刺繍ロングスカートにベージュのキャミソールを着ていて、上着にデニムジャケットを羽織っていて、ワンポイントとして白いブローチがつけられている。靴は茶色と白のウエスタンブーツで帽子は服装に合わせて鍵編みニットのキャスケットを被っていた。
 そしてレティの服装はデニムのロングスカートを着用していて、ブラウンのチュニックの上には薄いベージュ色のポンチョを着ている。靴はロングブーツを履いており、篠原と同じようにワンポイントで赤いブローチをつけていた。いつもはアメリカンキャップを被っている頭にはフェザーハットが被られている。
 お互いのイメージを崩さぬようにコーディネートしたのだと後に彼女達は言う。テーマは食欲の秋をモチーフにしているらしく、買い物帰りというアピールを2人は見せ始めた。
 買い物帰り、二人は仲良く帰る途中でレティはこれから作る2人分の食事のことを考えては楽しくなり、自然と笑みが浮かぶ。笑みが零れた時に篠原と目が合い、余計に笑みがこぼれる。
 今回のショーのために2人はフランスパンなど、買い物帰りに見えるようなものを用意してあり、本当に『買い物帰り』なのだという雰囲気が感じられる。途中で篠原がレティの腕を組んで楽しそうに笑い、レティは困り顔をした後、やっぱり楽しそうに笑う。
 楽しい買い物帰りを表現しながら、二人は舞台中央まで歩き、楽しそうな表情のまま舞台裏へと下がっていった――‥‥。
「続いてのお2人が今回のファッションショー最後の2人です、それではどうぞ!」
 ユリアの言葉と共に現れたのは絶斗とリーゼロッテの2人だった。
 絶斗の服装は全てが黒尽くめにされていて、マフラー、皮手袋、ライダースーツを着用していた。対するリーゼロッテは白いニット帽を被り、白いチュニックにチープな感じの黒いベスト、下は女性用のジーンズを履いており、白い花の形があしらわれたベルト、黒い洒落たサンダルを履いている。装飾品には十字架ロザリオにピンクのサイドバック。現代の若者の衣装に習ったものに涼やかさと清楚さをアピールするコーディネートを行っていた。
 歩く時も変わった事は行わず、着こなしをアピールするように歩いていて、中央でターンを行うと同時に2人は腕を組んだりなどして、それぞれの着こなしを観客席の人間に比較してもらいやすいように歩いていた。
 先に舞台から下がったのはリーゼロッテの方で、絶斗が舞台から下がろうとした時――足を止めて息を大きく吸い込む。
 そして――‥‥。
「リーゼロッテ先輩!! 大好きだ!! 付き合ってくれ!!」
 ――‥‥と大きな声で絶斗は叫んで舞台から下がったのだった。
 これには進行役のユリアも、ショーを見に来ていた観客達も驚き、一時会場内は時間が止まったかのようになっていたが「あ、い、以上をもちまして」とユリアがショーの締めに入る言葉をマイク越しに呟き始める。
「今回のファッションショーは終了させていただきます。色々な『秋』を感じられたでしょうか? またショーを行う機会がありましたら宜しくお願いします」
 ユリアは観客達に丁寧に頭を下げて、そのままファッションショーは終わりを告げたのだった。


〜ショーは終わり、打ち上げ会〜

「今回はありがとうございました! 皆様のおかげで良いファッションショーが行えたと思います」
 ファッションショーが終わり、会場の片付けを終えた後、能力者達とユリアは打ち上げを行っていた。
 打ち上げとは言っても、豪勢に――とはいかず飲み物や食べ物を買ってきて行う簡単なものなのだが‥‥。
「まったくもって、俺に合う仕事じゃなかったが、舞台の上でクラリッサに恥をかかせる事がなかったのなら良かったな」
 榊が酒を一口飲みながら呟く。
「よく似合っていましたわよ。ヒョウエ。わたくしの見立てもちょっとしたモノですわね」
 クラリッサが言葉を返すと「しかし」と榊が気恥ずかしそうに呟く。
「舞台の上では真剣勝負だったから気にしていなかったが、今になってみると物凄く気恥ずかしいものだな」
「でもたまにはそういう格好も良いんじゃありません? というわけで折角ですから、ヒョウエ。今度その格好でデートしてくださいね」
 クラリッサの言葉に榊は多少驚きを隠せなかったが「‥‥まぁ、そのうち」と曖昧な言葉を返して、再び酒を飲んだ。
「さて、私はそろそろお暇させてもらおうか」
 UNKNOWNが立ち上がると、ユリアが「もう帰ってしまうんですか?」と目を瞬かせながら話しかける。
「残念だが、仕事が入っていてね。ゆっくりもしていられないんだ」
 UNKNOWNの言葉に「そうなんですか‥‥残念ですけどお仕事を頑張ってくださいね」とユリアは言葉を返して、UNKNOWNを見送ったのだった。
「そういえばシーヴさんには恋人はいらっしゃるんですか? そんなに可愛いんだからきっといらっしゃるんでしょうけど‥‥」
 ユリアがシーヴに話しかけると、シーヴは顔を真っ赤にして俯いたままジュースを飲んでいる。きっと恥ずかしいのだろうと悟ったユリアは「今日の格好を彼氏さんに見せてあげるといいかもです。きっと彼氏さんは喜ぶんじゃないかと」と悪戯っぽく笑って話した。
「水沢さんもお疲れ様です、どうぞ」
 櫻杜はエプロン姿に着替えて給仕を行っていた。それに気づいたユリアは「櫻杜さんもゆっくり休んでください」と慌てて彼女に駆け寄った。
「楽しいショーだったな、悠と一緒に出れてよかった」
 隅の方でレティが篠原に向けて言うと「うちも♪」と明るい笑顔で篠原は言葉を返す。
 そして何かを考えたように俯き「レティさん、大好きっ」と小さく呟いてレティの頬にキスをした。一瞬驚いた表情を見せたレティだったが、少し照れたような笑みを篠原に見せた。
「それにしても絶斗さんが告白なんて驚きましたね」
 神浦が呟き、その場にいた全員がリーゼロッテと絶斗に視線を向けた。
 きっと、こんな所ではどちらにしても返事が言いにくいだろうという事で、能力者達もユリアもそれ以上を追及することはなかった。
「水沢さんにはぜひ自分のブランドを立ち上げて欲しいわ。頑張ってね。協力は惜しまないからっ」
 シュブニグラスがユリアに向けて激励をすると「はい、まだまだでしょうがいつか夢が叶うようにがんばります」とユリアも笑顔で言葉を返した。
 こうして、初めてのファッションショーは成功に終わり、ユリアは次の企画を考え始めたのだった‥‥。


END