●リプレイ本文
〜任務前の顔合わせ〜
「今回は水際の戦いか‥‥キメラが実在するならば水中戦は不利になるな。気をつけていかんと‥‥」
資料を見ながら呟くのは漸 王零(
ga2930)だった。
「実際にキメラが存在するならば――の話だけどな」
南雲 莞爾(
ga4272)が漸に言葉を返すように呟く。
「でも少年の話を聞く限り、湖に何かが現れてから鳥なども姿を消したみたいですし‥‥何かいる確率は高そうですね」
神無月 るな(
ga9580)が漸の持つ資料を覗き込みながら呟く。確かに以前は鳥などが湖付近には生息していたらしい。だけど住人などの証言によると、少年の言うとおりで鳥も姿を見せなくなったとの事。
「確かにキメラがいるならば倒さなければいけませんが‥‥どうなんでしょう‥‥」
リリィ・スノー(
gb2996)は呟くが、どうやら彼女は本当にキメラが存在するのか半信半疑のようだ。
「まずは調査ですね。確りと調査を行わないと近隣の人が被害にあってからでは遅いですし‥‥」
周防 誠(
ga7131)が呟き「そうですね、全力を尽くしましょう」と桔梗 澪(
gb2737)が言葉を返した。
「それじゃ、安心させるためにも頑張って調査しようか」
立浪 光佑(
gb2422)が呟き、能力者達はキメラが潜んでいるかもしれない湖へと向かい始めたのだった‥‥。
〜湖に潜むは怪しき妖女〜
目的の湖まで行く為には、まず森を抜ける必要があった。森とは言っても広い範囲ではなく、子供達が遊び場に出来るような狭い範囲だった。
「‥‥へぇ、結構静かでいい場所ですね」
神無月が森の中を見渡しながら呟く。
「そうですね、でも湖までもう少しなのに気配が感じられないですね‥‥隠れているのでしょうか、それともいないのでしょうか‥‥」
神無月と同じく、リリィも周りを見渡しながら呟く。確かに太陽の光が木々の間から差し込み、神聖な雰囲気はあるものの、何かがいるようには思えない。
「でも――このような森に鳥の一羽も見つけられないというのも気になりますね、鳥どころか虫もいません」
桔梗が手で木に触れながら呟く。確かに彼の言う通り、鳥も虫も一匹も見つけることは出来ない。9月も後半と言えどまだ少しは暑さが残っているのだから、揃いも揃って冬眠という事はまず確実にありえない。
「‥‥という事はやっぱり『誰か』が鳥や虫に何かをした――と考えるのが妥当ですね」
立浪が考え込むようにして小さく呟く。能力者達は考えられる予想を互いに話し合いながら歩き、そして問題の湖へと到着した。
「へぇ‥‥」
湖に到着して、南雲が小さく呟く。湖は空気が澄んでいて心が癒されるような――そんな感覚が能力者達を襲う。
「〜♪ 湖のほとりは何だか癒されますね」
湖の雰囲気を気に入ったのだろうか、神無月が鼻歌交じりで他の能力者達に話しかけた。
今回は『確実にキメラがいる』という情報が無いため、能力者達はわざと音をたてたり、話し声が聞こえるように少し大きめに喋ったりなど、キメラが潜んでいるのならば自分達に気がつくような行動を行っていた。
「それでは決めた班で行動するとしようか」
漸が呟き、予め決めておいた班で行動するようにと促す。少年の目撃情報などは湖に固定されているので、湖周辺を手分けして探そうとなったのだ。
A班は漸、立浪、神無月の三人で行動を行い、B班として南雲、桔梗、周防、リリィの四人で行動を行うことに決めていた。
「それじゃ、連絡は『トランシーバー』でこまめに行うようにしましょう」
神無月が『トランシーバー』を見せながら別班の能力者に話しかけ、A班は湖の周りを右回りで調査して行く事になり、B班は左回りに動き出したのだった‥‥。
〜調査開始・揺らめく影に潜むのは〜
A班
「本当にいるのかな〜‥‥何だか全然反応がないんだけど‥‥」
立浪が湖に向かって石を投げながら呟いた。
「確かに‥‥シンとしていますね、此方側にはいないのでしょうか」
神無月も湖の中を覗き込みながら呟く。湖はゆらゆらと水面が揺れているだけで、何かが潜んでいるような気配はまだ感じる事は出来なかった。
「そちらはどうだ? 何かを見つけたか?」
漸が『トランシーバー』を使用してB班へと連絡を入れる。
「‥‥そうか、分かった。いや、此方も同じくだ」
話している内容を聞けば、向こうの班もキメラを見つけていないという事が分かり、神無月と立浪は再び石を湖へと投げ入れたのだった。
B班
「向こうもまだ見つかっていないみたいだな」
南雲が『トランシーバー』を片手にため息混じりに呟く。
「こんなに探しているんだから、そろそろ見つかっても良さそうなのに」
周防が湖の中を覗き込みながらため息を交えて呟く――そこで異変が起きた。
「うわああああっ!」
キメラが見つかって良かったのか、それとも湖の中に引きずり込まれて災難なのか、周防は湖の中から現れた手によって、強い力で引っ張られて湖へと落ちてしまう。
周防の叫ぶ声が聞こえたのか、南雲の持つ『トランシーバー』から「何かあったのか!」と漸の叫ぶ声が響き渡る。
しかし、今はA班の問いに答えている場合ではなかった。引きずり込まれた周防が未だに湖から上がってこないのだ。
「ちっ」
南雲が小さく舌打ちをしながら湖の中へ飛び込もうとした時‥‥湖にじわりと血が滲み始める。さすがの能力者たちもそれを見て青ざめたのだが、次の瞬間に引きずり込まれた周防が腕から血を流しながらあがってきた。
「まいったね、まさかいきなり引きずり込まれるなんて」
周防はびしょ濡れになって、腕の傷を見てため息を吐きながら呟く。
「大丈夫ですか?」
リリィが問いかけると「大丈夫、見た目ほど深くないから」と周防は言葉を返した。
「大丈夫か?」
状況が危険だと思ったのか、A班がB班のところへとやってきた。それは良い判断だったのかもしれない。キメラはA班側ではなく、B班側にいたのだから。
「‥‥来ますっ」
殺気を感じたのか、神無月が湖を鋭い視線で見ながら呟き、キメラとの戦闘は本格的に開始を告げたのだった‥‥。
〜戦闘開始、水中を泳ぐ怪しき艶女〜
「闇よ。我が意に従い我の求める形を成せ」
漸が呟くと同時に覚醒を行い、南雲は小銃『ブラッディローズ』で攻撃を行う。現れたキメラはごく普通の女性の姿をしており、ただ違う部分は――口裂け女のように顔の端まで広がった口、それと口から覗き見える鋭い牙。周防はあれに噛まれたのだろう。
「なっ‥‥」
小銃『ブラッディローズ』で攻撃を行っていた南雲が驚いた表情を見せた後に『瞬天速』を使用して少し離れた場所へと移動をする。そうしていないと女性型キメラが南雲に襲い掛かってきていただろうから。
移動をした南雲を追いかけようと女性型キメラが動くが、周防が『アサルトライフル』で、神無月が『ロングボウ』で攻撃を仕掛けて女性型キメラの動きを遮る。
「あらあら、邪魔しちゃったわね♪ ごめんなさーい」
神無月は微笑みながら謝罪するが、それは言葉だけで実際は悪いと思っていないのがすぐに分かる言い方だった。
「水中から出ている今のうちに片付けなくっちゃな」
立浪が呟き『壱式』で攻撃を仕掛ける。女性型キメラは自分に有利となる湖の中へ逃げようとするが、立浪が背後から斬りかかって湖の中へ入るのを制止する。
「我々の攻撃を受けて、どのような苦痛の表情を見せてくれるのか、どのように反撃してくれるのか――見せてくださいよ」
桔梗が不敵な笑みを浮かべて女性型キメラに『レイピア』で攻撃を仕掛ける。桔梗の攻撃は女性型キメラの腕を貫き、女性型キメラは痛みの表情を浮かべる。
「貴女のその苦痛に歪むその姿は、俺の快楽以外の何者でもないのです」
桔梗は呟き、再び攻撃を仕掛けようとするが女性型キメラの爪が桔梗の頬を掠めた。
「――ち」
桔梗が呟くと「下がってください」とリリィが叫ぶ。桔梗はすぐさま後ろへと下がる。それと同時にリリィが『アンチシペイターライフル』で女性型キメラを攻撃した。
「モデルはウンディーネといったところでしょうか‥‥それにしては野蛮ですね」
リリィは『アンチシペイターライフル』を下ろして、地面に伏せる女性型キメラに向けて呟く。
「大人しく寝ていろ」
漸が呟き名刀『国士無双』を振り上げて『豪破斬撃』と『急所突き』を使用して女性型キメラに攻撃を仕掛ける。漸の攻撃は女性型キメラの左腹を貫通し、それなりのダメージを与えたのだが女性型キメラが死に至るまではなかった。
「ぐああああああっ!」
女性型キメラは痛みを抑えるようにして叫び、南雲を目掛けて噛み付き攻撃を行おうとしてくる。
「人魚だか神秘だか知らんが、敵という名の標的に慈悲も差別も無い‥‥狩らせてもらうぞ」
南雲が小さく呟き『急所突き』と『瞬即撃』を使用して女性型キメラに攻撃を行った。それに合わせて周防も『強弾撃』を使用して攻撃を行う。
「これで終わりです」
神無月が呟き『影撃ち』を連続で使用して、女性型キメラに攻撃をしかけ、立浪が『壱式』で女性型のキメラの胸を貫き、能力者達は湖に潜むキメラを無事に倒したのだった。
「万魂浄葬‥‥穢れた躯を棄て迷わず聖闇へと帰れ‥‥」
倒れゆく女性型キメラを見て、漸は瞳を伏せながら小さく呟いた。
〜戦闘が終わり、湖が元に戻るためには〜
「女性を撃つのは気が引けましたが‥‥まぁ、キメラでしたしね」
戦闘が終わった後、周防が苦笑を交えて呟く。
「でも、キメラは倒しましたし――これで、この湖一帯も一応は平和が戻ったという事ですね」
周防の言葉に「そうですね」と神無月が言葉を返す。
「早くこの湖が元の美しい生き物が集まる場所になりますように‥‥」
神無月は祈るような口調で目を伏せながら呟く。
そして、任務後――立浪が自分の体と武器を手入れする姿が視界に入る。
「錆びるわけじゃないんですけど、何か心配なんですよね」
苦笑しながら立浪が呟く。他にも気になっている能力者がいるらしく、周防も手入れをする姿が見受けられていた。
その後、能力者達は依頼人である少年のところへ『キメラを倒した』という報告をする為に町へと立ち寄っていた。
「やっぱり本当にいただろ? 俺が言ったとおりだったじゃないか」
少し威張るように少年が大きな声で叫ぶ。でも「あ」と思いついたように少年は言葉を止めて「倒してくれてありがとう」と不器用に頭を下げて少年はお礼を言ってきた。
そして能力者達は町の住人達から感謝の言葉を述べられながら報告を行うために本部へと帰還していったのだった‥‥。
END