●リプレイ本文
〜見習い記者との対面〜
「えっと‥‥室生 舞(gz0140)です。今回は宜しくお願いします」
ぺこりと丁寧に頭を下げて挨拶をするのはクイーンズ見習い記者の舞だった。
今回は舞の初取材の護衛をする為に能力者達が雇われたのだ。
「‥‥神無月 紫翠(
ga0243)と申します‥‥今回は‥‥宜しくお願いしますね?」
神無月が穏やかな笑みを浮かべて舞に挨拶をすると「此方こそ宜しくお願いします」と言葉が返ってきた。
「初めまして、舞さん。あたしは小鳥遊神楽(
ga3319)よ。神楽と呼んで頂戴。親友のマリさんにとって妹分ならあたしにとっても妹同然よ」
今回の取材は頑張りましょうね、神楽は舞に手を差し出して握手をしながら話しかける。
「は、はい‥‥ボクも頑張って取材しますので宜しくお願いします」
舞が言葉を返すと「頑張るのは良いですが、無茶はしないで下さいね」と芝樋ノ爪 水夏(
gb2060)が話しかけてきた。彼女も他の能力者同様に舞の初取材を是非とも成功させてやりたいと考えていた。
「あ、でも誰かみたいにキメラに突撃とかはダメですよ?」
芝樋ノ爪が冗談っぽく呟くと「はい、了解しました」と舞も少し笑みを浮かべて言葉を返してくる。
「ん〜‥‥いいなぁ。初々しいっての? 俺もこんな時期あったねェ」
少し戸惑いがちに能力者と話す舞を見て小鳥遊・夢生(
gb3083)が可笑しそうに呟く。
「君はこれが初めてなんだから無理をしないようにな」
黒月 白夜(
gb3118)が舞に話しかける。自分からキメラの取材をしたいという舞を『変わった女の子だな』と心の中で思いながら黒月は今回の任務に参加していた。
(「噂に名高い暴走記者殿の弟子(?)なわけだし‥‥いや楽しみだよ」)
黒月は苦笑しながら心の中で呟く。
「そういえば‥‥取材するという事はキメラに対して変なトラウマとかはないんだろうな?」
黒月の問いに舞は「はい、大丈夫です」と短く言葉を返してきた。
「今の時代、ボクみたいな人は珍しくないですから。確かに悲しいとは思いますけど、そこで立ち止まるような人にはなりたくないんです‥‥あ、え、偉そうにごめんなさい」
舞がうな垂れながら呟くと「いや、偉いよ」とレヴァン・ギア(
gb2553)が舞の頭を撫でながら言葉を返した。
「‥‥‥‥?」
舞の視線がレヴァンの『ある一点』を凝視しており、レヴァンは不思議そうに視線を辿る。すると彼が持ってきた『巨大ハリセン』へと続いていた。
「一応‥‥これ、持っててみるか?」
持っていた『巨大ハリセン』を舞に渡すと、舞は嬉しそうな表情を見せて「いいんですか?」と『巨大ハリセン』とレヴァンとを交互に見る。
レヴァンが首を縦に振ると「わぁい」と嬉しそうに『巨大ハリセン』を持つ舞。ちなみに彼女の姿が『巨大ハリセン』に隠れて、ハリセンが歩いているように見えるというのはこの際置いておこう。
「それじゃ取材に出発しようか、室生さんみたいに辛い目にあっても頑張っている人がいるんだ。俺もそれを応援しないと!」
山崎・恵太郎(
gb1902)が呟くと「ボクは辛くないですよ」と舞が言葉を返してくる。
「だって生きてるから。生きてるのに辛いなんて言ったら死んでしまった人に失礼です」
舞の言葉に「そっか」と山崎は言葉を返し、今回の取材地である場所へと向かい始めたのだった。
〜見習い記者の初取材〜
今回の取材地は『川』でそれなりに広い場所だった。能力者達は神楽と夢生の二人が舞の護衛につくという事になった。
「‥‥ボクにちゃんと取材できるかな‥‥」
目的の場所が近づくにつれて舞の表情に戸惑いが見え始める。それを見て夢生が舞の頭をぽんと軽く撫でて「そんな気負いすんな」と話しかける。
「なるようになるって‥‥何だ、緊張してやがんのか〜?」
夢生は不敵に笑むと後ろから舞に抱きつく。そしてセクハラ紛いの事をして、舞の緊張を解す。
「あの――あっ!」
夢生を振りほどこうとした時、舞は躓いて持っていた(引きずっていた)『巨大ハリセン』をバチコーンと黒月に当ててしまう。
「‥‥‥‥ご、ごめんなさい――決してわざとではなくて、でも半分は当ったら面白いなぁと思っていたから‥‥わざとになるんですか?」
最初は言い訳をしていた舞だったが、後からは何故か疑問系で終わり「いや、俺に聞かれても‥‥」と黒月はハリセンで叩かれるわ、疑問系で聞かれるわで踏んだり蹴ったりである。
「あの‥‥皆さん‥‥あれ――‥‥」
神無月が前方を指差し、他の能力者達も其方を見ると、川の中に体を沈める女性の姿が見えた。夏が終わったばかりとはいえ、肌寒さを感じる今の時期に川の中で泳いでいる善良な一般人――という事もあるはずがなく、能力者達は武器を構えて今回の取材対象との戦闘を開始したのだった。
〜蛇女との戦闘、初めての戦闘取材〜
蛇女キメラは能力者達が近寄ると、川から出る事もなく気味の悪い笑みを浮かべているだけだった。
「あ‥‥あ‥‥」
舞は屈みながら小さく呟く。それを見た神楽は怯えているのだろうと思い、舞と視線を合わせるように屈んだ。
「キメラと戦うのがあたし達能力者の仕事。舞さんはそれを記事にするのが仕事。どちらも大切な事よ」
神楽は呟くと一旦間を置いて、また話し始める。
「これから先、記者としてやっていこうと言うのならば、しっかり目を開け、耳をそばだてて、戦いの一部始終をしっかりその頭に焼き付けて良い記事を書く事だけを考えて」
神楽の言葉を聞いて「あの‥‥違うんです‥‥」と舞が言葉を返してくる。
「あの‥‥この石、ハート型みたいで可愛いなぁって感激していたんです」
舞は呟くといびつなハート型の石を見せる。どうやらキメラに怯えている様子は見られない。
「キメラを前にして石探し‥‥凄いな‥‥」
山崎は苦笑しつつ、蛇女キメラを川から出す為に『ハンドガン』を構える。
「これで出てきてくれるといいが」
レヴァンは『ワイズマンクロック』を飛ばし、蛇女キメラを狙い撃つ。強い攻撃を与えると蛇女キメラが逃げる可能性も考え、誘き出すことを優先にした牽制攻撃だ。レヴァンは攻撃を行った後、後ろへと下がり、すぐにリロードを行う。
蛇女キメラは能力者達の思惑通り、川から長い体を気持ち悪くうねらせながら出てきて威嚇のように奇声を上げる。
「巻きつかれると、厄介だな? 破壊力がありそうだ‥‥援護してやる。トドメは、任せるから、思い切りやれ」
神無月は長弓『黒蝶』を構えて、蛇女キメラの腕を狙い撃つが矢を叩き落される。前衛や中衛で戦う仲間を支援する為に神楽も『スナイパーライフル』で援護射撃を行う。
もちろん、舞に被害が及ばぬように護衛任務を疎かにする事はしない。
「もう逃がしませんよ」
芝樋ノ爪は蛇女キメラが川から出ると、背後に回って蛇女キメラが再び川へと逃げ込まないように退路を断つ。そして構えた『刀』で蛇女キメラの背中を斬りつける。
芝樋ノ爪が退路を断っているにも関わらず、川へと逃げ込もうとする蛇女キメラを夢生が『スコーピオン』で射撃を行い、逃げられぬように次に攻撃を行う能力者へと攻撃を繋げる。
「深い傷は後から効いてくるんだよ。ちょうど蛇の毒の如く、な」
冷笑して皮肉を呟きながら黒月が『スパイラルレイピア』を蛇女キメラの体に突き刺し、傷口を抉るように刀身を回転させた。
それが痛かったのだろう、蛇女キメラはけたたましい叫び声で苦しげに呻く。
「室生さんが自分の道を見つけたように、俺だって自分の道を譲れない! これぞ山崎流・二段逆手斬り!」
意味はないけどね、と山崎は言葉を付け足しながら蛇女キメラの側面から『蛇剋』で攻撃を行う。
「逃がさないと言っているでしょう」
深手を負い、逃げようとする蛇女キメラの前に立ち、芝樋ノ爪が冷たく呟く。そして『刀』でなぎ払うように攻撃を仕掛けて、蛇女キメラを川から引き離した。
そしてレヴァンが『ワイズマンクロック』で再び蛇女キメラを狙い撃ち、ヒットした次の瞬間に黒月が『流し斬り』と『両断剣』を使用して蛇女キメラを攻撃する。
「そろそろご退場、願おうかなっ!」
山崎が『蛇剋』で攻撃を行いながら呟く。
「しかし、見た感じはラミアか? 連中もまめだな」
面白いからいいんだが、黒月は言葉を付け足して『スパイラルレイピア』で再び蛇女キメラを突き刺す。
蛇女キメラは能力者達の攻撃を受けて、まともに動ける状況じゃなくなったのか砂利が敷き詰められた川辺へと倒れ、その隙を突いた能力者達の総攻撃により、無事に退治されたのだった。
〜初取材を終えて〜
「‥‥うっ‥‥」
能力者達が蛇女キメラを退治した後、舞が少し涙混じりの声を漏らす。怪我でもしたのかと心配した神楽が「何処か怪我でもしたの?」と問いかけると、舞は首を振って手に持っていた石を神楽に見せる。
「‥‥ハート型の石が‥‥握り締めすぎて割れちゃったんです‥‥こんなのお土産に持って帰ったら怒られちゃいますよね‥‥」
がっくりと肩を落として舞が呟く。そしてレヴァンから借りていた『巨大ハリセン』を下向きに持ち、ゴルフでもするかのように割れた石を遠くに叩き投げる。
「はは‥‥皆さん‥‥お疲れ様でした‥‥室生さん、初めての取材はどうでしたか?」
神無月が問いかけると「何とかやっていけそうです」と笑って言葉を返した。
「‥‥さて、どうだ? 最初の取材の感想は」
レヴァンは舞の頭を撫でながら問いかけると「はい、楽勝ですよ」と言葉を返すが、舞の手が微かに震えているのを見て、レヴァンは苦笑する。
怖くないと言う素振や、石を見つけると言う妙な事も舞なりの強がりだったのだろう。自分が怖がっては能力者に迷惑をかけてしまうとでも考えたのだ。
「はー、終わった終わった。無事に成功して良かったじゃねぇか」
夢生が煙草を吸いながら舞に話しかける。
「あー‥‥悪いが、煙草は精神安定剤でね。未成年だろうが我慢してくれ」
夢生が苦笑混じりに話すと「大丈夫です」と舞は言葉を返した。
「最後に一つだけいいか? 師匠は選ぶんだぞ?」
黒月が物凄く真面目な顔で、舞の肩をポンと叩きながら呟き、舞は意味が分からないのか首を傾げて「は、はい」と言葉を返した。
その後、能力者達は本部に報告をする為に帰還して、クイーンズ編集室まで舞を送り届けた後に別れたのだった。
「あ、そうだ。きみがきみだけの生き方を見つけたように、俺も自分だけの生き方を目指してる。だから、お互い頑張ろう」
別れる間際に山崎が舞に向けて言葉を投げかけた。
「はい、お互い頑張りましょう。今日は本当にありがとうございました」
舞もぺこりと頭を下げて、クイーンズ編集室へと入っていった。
〜クイーンズ新刊発売〜
こんにちは、今回の『クイーンズ』は新人であるボクが書かせて頂きました。
でもマリさんに結構ダメだしされて、何度も書き直しました。
今回は蛇女のキメラがいて、能力者の皆が戦うところを見ていました。
皆が一生懸命戦っていて、見ているだけのボクは少しだけ自分の無力さが情けなく感じました。
バグアやキメラは人々から幸せを奪っていくものです。ボクも両親を奪われたし、施設での友達や先生も奪われました。
だけど、ボクみたいな人は沢山います。
誰かが泣く事のない世界のために、能力者は頑張って戦ってくれているんだと間近で見て実感しました。
今回、ボクを守ってくれた能力者の中に『戦うのが能力者の仕事、ボクの仕事はそれを良い記事にする事』と教えてくれたお姉さんがいました。
ボクはまだ子供だし、出来る事が限られてくるけれど、こんなボクでも出来る事があるんだと分かって少しだけ嬉しかったです。
でも、能力者の人も戦っているだけじゃなくてファッションに拘る人もいるんだなと思いました。緊張するボクを和ませてくれようと話していたのかもしれないけど、洋服の話とかが出来てボクは楽しかったです。
それと、最後のページに乗せたハリセンは能力者の一人が貸してくれたものです。ボクはハリセンが大好きなので、嬉しかったです。
でもハリセンの方が大きくて、引きずって持ち歩いたせいで少し汚れたのが申し訳なかったり‥‥。
次も頑張って、取材をするので、どうぞ宜しくお願いします。
※舞の一言メモ※
そういえば、今回の能力者の人の背後に火の玉と白装束の女の人を連れている人がいました。能力者って幽霊も操れるんですか?
‥‥後日、発売された『クイーンズ』を見て、芝樋ノ爪が慌てて説明に行く姿がクイーンズ編集室の近くで見受けられたらしい。
END