●リプレイ本文
〜傭兵戦隊出動〜
今回の『傭兵戦隊 戦うんジャー』の相手は『桃の中に潜む奇妙なキメラ』だった。
「さぁ〜て、今回も頑張るわよ〜。マリちゃん、宜しくね」
ナレイン・フェルド(
ga0506)が土浦 真里(gz0004)に話しかける。ナレインは子供達に傭兵の事を理解してもらいたいという気持ちが胸を占めていた。
「そうですね、今回も張り切って行きましょうか!」
玖堂 鷹秀(
ga5346)が呟くと「お互い怪我のないようにがんばろ〜」と桜塚杜 菊花(
ga8970)が言葉を返した。
「また変なものを見つけたのね、真里ちゃん‥‥」
シュブニグラス(
ga9903)が苦笑しながら呟く。彼女はチホの所に新人記者のことを聞きに来ていた所を泣きつかれてしまったのだ。
「今度、一緒に新人デザイナーさんの所に行かない? って誘いに来ただけなのになぁ‥‥」
苦笑しながらシュブニグラスが呟く。
彼女の隣では嵐 一人(
gb1968)が肩を落としながら「なんだって俺は『また』こんな仕事受けちまったんだ‥‥!?」と独り言を呟いている。
「やほーい、あらしん♪」
マリが嵐の背中をバシンと強く叩きながら挨拶をすると「だから『あらしん』て何だよ‥‥」と力なく言葉を返す。
「こんにちは、今回初めて『傭兵戦隊』に参加させていただきます白雪です。宜しくお願いしますね」
白雪(
gb2228)がマリ、そして今回『傭兵戦隊』に参加する能力者達に挨拶をする。
「俺も初めて! 立浪 光佑(
gb2422)です。宜しくな!」
立浪が元気よく挨拶をすると「さて、そろそろ撮影&キメラ退治をしちゃいましょうか」と藤田あやこ(
ga0204)が呟き、今回の『傭兵戦隊 戦うんジャー』の撮影と桃型キメラの退治を開始したのだった。
〜傭兵戦隊の休日? ピクニックにお出かけ〜
今日は傭兵戦隊で集まって小高い丘へピクニックに出かけてきていた。正義のヒーローと言えども休息は必要なのだから。
「今日はお出かけ日和じゃない?」
青薔薇ブルーことナレインが日傘を差しながら、気持ち良さそうに太陽の光を浴びる。
「そうね、絶好のピクニック日和だわ」
ブラックとして参加しているシュブニグラスがナレインに言葉を返す。普通にしているように見えて、しっかりと彼女は桃型キメラが近くにいないかを確認している。
「お茶とコーヒー、どちらがいいですか?」
ホワイトこと白雪がポットセットを見せながら、他の能力者――もとい傭兵戦隊メンバーに問いかけた。
「あ、そういえば皆さんは生の桃と桃缶、どっちが好きですか?」
立浪が問いかけるが、問いかけた本人は他の能力者の言葉を聞く事なく自分で用意してきた弁当を一心不乱に食べている。
そんな和やかな様子の所へ偶然バイクで通りかかったのはストームレッドの嵐だった。仲間の姿を見かけた嵐はメタリックレッドに塗装されたバイクを止めて、それに寄りかかってのんびりと見ていた。
しかし――傭兵戦隊の彼らにはちょっとした安息も許されないらしい。
「ふふふふ‥‥『正義の味方』が罪のない者を襲う、コレ程の悪夢はあるまい?」
ばさり、とマントを靡かせながら不敵に笑むのは『あくのそしき』に在籍する幹部、コマンダー・ホークこと玖堂だった。
「所詮『ヒーロー』などと言うモノが幻想だとガキ共に思い知らせてやろうではないか! くっははははは!」
小高い丘の上に生える木の下で、けたたましく笑い、傭兵戦隊達に「今日こそ我らの勝利が見えてきたぞ!」と言葉を付け足したのだった。
「あなたは‥‥コマンダー・ホーク!」
ナレインが玖堂を見ながら呟き、和んでいた雰囲気が一気に重々しいものへと一変した。そして玖堂の背後には川があり、そこを流れる怪しげな――桃、大きな桃、ありえない大きさの桃。
「こ、こら! 桃だろう! そのまま流れていくな! やる気があるのか、お前は!」
ゆっくりとどんぶらどんぶらと流れていく『桃』に玖堂がやや怒り気味に叫ぶ。
だが『桃』は流れる事を止めはしない。傭兵戦隊としての話的に『桃』は玖堂の言う事を聞いてもらわないと困るのだが、実際にそれはありえない。
だってどんなに桃っぽい姿だろうが、どこまでも流れていきそうな勢いだが『桃』はキメラなのだから。
「とりあえず‥‥引き上げないと危ないわ‥‥」
シュブニグラスが警戒しながら『桃』を陸地へと引き上げる。引き上げられた『桃』は匂いを充満させながら地面をずるずると歩いている。
‥‥はっきり言ってとても気持ちの悪い光景である。
「‥‥嫌いじゃないけど‥‥桃臭い」
シュブニグラスが鼻を押さえながら小さく呟く。
「まさか桃がね‥‥青薔薇ブルー、どんなものが相手でも、負けはしないわ!」
ナレインが呟くと「こんな所まで現れるとはな‥‥! 行くぜ、皆!」
嵐が叫びながらバイクで『桃』の前を横切って『桃』が妙な動きをしないように牽制を行った。
そして「龍装!」と嵐が叫び、アーマーを装着して「野望を蹴散らす真紅の嵐! ストームレッド」と叫び、ポーズを決める。
「私ハ自称MSIの鬼才デース。芝ヲ洗濯シニ来マシタ」
カレンジャーの藤田が『金』という文字の書かれたランニングを着て、ブルマ姿でマサカリを担いでいる。
「しかし! 鬼才とは仮の姿! カレンジャー見参!」
藤田もポーズを決めながら叫ぶのだが、格好が面白いために笑いが出るのは気のせいだろう。
「よし、俺も!」
立浪が「変身!」と叫ぶと全身がメタリック仕様になり、先に『桃』を斬る為に走っていった白雪の後を追う。
「この隙貰ったわ!」
白雪が『桃』の中に潜むキメラを引きずり出す為に『刀』で攻撃を行い、中のキメラを守っている『桃』部分を斬る。
(「‥‥よし、中は傷つけてない」)
白雪はホッとしたように呟き、後ろへと下がる。彼女が下がると同時に立浪が『壱式』で攻撃を行う。
中から現れたキメラは物語を真似ているのか少年型キメラだった。もちろん中身が出てきた事で周囲一帯は余計に桃臭さが増す。
「くっ‥‥桃キメラめ、何をしている! こうなったら加勢するしかないか‥‥」
玖堂が『桃』から少し離れた所で忌々しげに呟く。そして玖堂が『桃』に加勢する(フリの)仕草を見せると「貴方にあちらの加勢をしてもらうわけにはいかないのよ」とシュブニグラスが玖堂の前に立ちはだかる。(もちろん雑誌の為の演技である)
「大人な関係は早いわ! 私の髪が黒いうちは許さないわよ!」
シュブニグラスが叫びながら小銃『S−01』で玖堂の足元に乱射を行う。(敵同士という演出を行う為の演技‥‥のはずです)
シュブニグラスの攻撃に「くっ‥‥」と玖堂が一歩退くと「コマンダー・ホーク! 何をしている!」と玖堂と同じ『あくのそしき幹部』のマスターリー役の桜塚杜が鞭をパシンと地面に当てながら叫んできた。
「情けない! それでも悪の一員か!」
桜塚杜が玖堂を叱咤した後、加勢に入ろうとした時にナレインが「それは困るわ」と呟きながら割って入ってきた。
「あなたに加勢をされると面倒なのよ‥‥行かせないわ」
ナレインが桜塚杜の前に立ち、不敵に笑みながら言葉を投げかけた。
そして、シュブニグラスVS玖堂、ナレインVS桜塚杜との戦いが始まる頃、他の傭兵戦隊も『桃』との戦闘を本格的に開始していた。
「超電波カレー! 桃臭いにおい飛んでけ〜!」
じゃぶじゃぶとカレーを『桃』にかけるポーズをしながら藤田が『練成弱体』で『桃』の防御力を低下させる。
藤田の『練成弱体』が使用された後に白雪が「私の正義の剣を受けてみなさい!」と『蛍火』を振り上げて『桃』――もとい中から現れたキメラに攻撃を仕掛ける。
だが次の瞬間にキメラから攻撃が来て、白雪は『蛍火』でキメラの攻撃を受け止め、キメラの剣と白雪の『蛍火』がカチカチと震える音を奏でる。
そして攻撃を受ける前に、白雪は勢いよく後ろへ飛び、吹き飛ばされたように見せかける。
「はっ!」
立浪が『両断剣』を使用してキメラに攻撃を仕掛ける。ふざけた外見だけあって、持っている能力自体に特化したものは特に見られる事はなかった。
立浪が攻撃を仕掛けた後に、白雪が「八葉流参の型――乱夏草!」と呟き『流し斬り』を使用して攻撃を仕掛ける。
「嵐、後は任せたわよ!」
「よし、立浪、白雪! いくぜ!!」
スタンバイをしていた嵐が「レーザーブレイド!」と叫んで『試作型超機械剣』を抜刀する。
そして――。
「ドラグーン・クラぁッシュ!」
嵐が叫ぶと同時に、離れた所でシュブニグラスと戦闘(フリ)していた玖堂が『練成超強化』を嵐に使用する。
補助を受けた後、嵐はキメラに攻撃を仕掛けて斬り捨て、武器の血払いをすると同時にキメラは地面へと突っ伏して倒れたのだった。
キメラとの決着がついた頃、ナレイン達も演技を終わらせる為に終盤へと進んでいく。
「なかなかやるわね‥‥くそっ」
桜塚杜が怒ったように鞭を撓らせ、忌々しげに呟く。
「正義は勝つものだもの」
ナレインが勝ち誇った笑みを浮かべると「次は勝ってみせる! 覚えてろ!」と捨て台詞を残して桜塚杜は消えていったのだった‥‥。
それを見ていた玖堂も「ここまでか‥‥」と舌打ち混じりに呟く。
「おのれ‥‥よもやここまで敗北を重ねる事になろうとは‥‥退くしかないか」
玖堂が呟き、傭兵戦隊VS桃だろうの話は傭兵戦隊の勝利として終わったのだった‥‥。
「お疲れ様ぁーっ!」
全ての撮影が終わり、キメラ退治も終えた時にマリがカメラを持って能力者達の前に現れる。
「最後に決めポーズと台詞をお願いね〜♪」
マリが能力者達に向けて話しかけると「あのさ」と立浪が手を挙げて「質問」と呟く。
「別に決め台詞とかは実際に言わなくてもよかったような気が‥‥」
確かに立浪の疑問は最もだろう。実際に言わなくても編集作業の時に台詞を付け足せば良いだけの話なのだから。
「たっちゃん。それは言ってはいけないこと! それを気にしちゃだめ!」
マリが慌てて言葉を返すと「ま、どうでもいいか」と桃の果汁が付着した武器などのメンテナンスを行い始めたのだった。
「そういえば、あやこちゃんは何でインド設定?」
マリが思い出したように藤田に問いかける。彼女の役割は『インドから来たキメラ予知の専門家』という役を演じていた。それが不思議だったのだろう。
「実は桃太郎伝説の起源はインド。悪鬼から妃を奪還すべく、王子が部下の猿神とセイロン島に赴いたという」
藤田の言葉に「そうなんだ! 知らなかったよ」とマリは言葉を返し、今回の撮影を終了したのだった。
「そういえばさ、あらしん――最初は嫌がってたけどやっぱりノリノリじゃん」
マリが嵐に話しかけると「し、仕事だからな。受けた以上はきっちりやるさ」と言葉を返してきた。
「へぇ、そうかぁ。その割には‥‥何か、ねぇ?」
マリが意味ありげに呟くと「仕事だからだ!」と無理矢理納得させるように大きく答えたのだった。
〜編集作業〜
キメラ退治が終わった後、能力者達は軽くピクニックをした後に本部へ報告へと向かった。そしてマリは雑誌にすべく編集作業をクイーンズ編集室で行っていた。
「あ、この写真凄く綺麗に撮れてる〜」
マリが見つけたのはナレインの決めポーズの写真。青い薔薇を斜めに構え、ナレインの背後には青い花びらが舞い散るという写真だった。
そして、白雪の『この街は私たちが守ったわ!』とポーズを決めながら呟いている写真も出てくる。
「お疲れ様です、少し休憩をしませんか?」
手伝いとして来てくれていた玖堂がマリの肩を揉みながら「真里さんはまだ『自分が能力者だったら』と考える事はありますか?」と問いかけてきた。
玖堂の言葉に「う〜ん、やっぱりあるかなぁ」とマリは苦笑しながら言葉を返す。
「能力者『しか』出来ない事、は確かにありますが‥‥能力者『では』出来ない事もあると思うんです。このクイーンズも一般人である真里さんが現場に出て取材し、伝えるからこそ意味があるのではないでしょうか?」
玖堂はマリを後ろから抱きしめ「ですから、あまり悔やまないで下さい」と小さく呟く。
「真里さんの分までがんばりますか――「「あああっ」」」――ら?」
玖堂が話している間にシュブニグラスとナレインが差し入れを持ってきてくれて、シュブニグラスが慌てて二人を引き離す。
「ダメよ、私の髪が黒いうちは許さないって言ったでしょう」
マリを避けながらシュブニグラスが言う。それを見てナレインも苦笑している。
「あらあら、何か結構忙しい時に来ちゃったみたいね」
桜塚杜も差し入れを持ってきたのだが、マリを奪い合いしている二人を見て苦笑したのだった。
今回もクイーンズ増刊号『傭兵戦隊』を無事に出す事が出来ました。
もう増刊と言えるような感覚ではなくなったので、別冊と言った方がいいかもしれませんね。
今回は『桃』キメラが相手で、中には男の子のキメラがいました。
色々なキメラがいる中、能力者の皆は戦えない私たちやちびっ子の為に戦ってくれています。
今度、ちびっ子諸君が能力者に会ったらお礼を言うのもいいかもしれませんね。
きっと、喜んでくれると思います。
では、次回の『傭兵戦隊』もお楽しみに!
ちなみに『桃』は撮影の後に立浪君が美味しく頂いていました。キメラであろうと食べられるものなんですね。
撮影・監修 土浦 真里
協力者
※藤田あやこ
※ナレイン・フェルド
※玖堂 鷹秀
※桜塚杜 菊花
※シュブニグラス
※嵐 一人
※白雪
※立浪 光佑
END