●リプレイ本文
〜連絡の取れなくなった少女〜
「連絡の無い友――か。無事だと良いがな」
リュイン・カミーユ(
ga3871)が小さく呟く。依頼人に聞いてみたところ行方不明になった少女は遅刻癖があるけれど、遅れる時は必ず連絡をしてくる。
しかし、今回は連絡もなく、依頼人が電話をかけても出る事もしないのだという。
「普段連絡を欠かさねぇのに連絡がないっつーのは、何かに巻き込まれている可能性、高いです」
出来る限り急ぎやがるです、と言葉を付け足しながら呟くのはシーヴ・フェルセン(
ga5638)だった。
確かに何にも巻き込まれていなければ連絡がある筈だから、連絡がない――何かに巻き込まれていると思って間違いないだろう。
「本部で少女の家から待ち合わせ場所周辺までの地図を借りてきましたし‥‥確か、前にもキメラ襲撃事件があったみたいですね」
優(
ga8480)が地図と一緒に借りてきた資料を見ながら呟く。その言葉に神無月 るな(
ga9580)が「あぁ」と思い出したように呟く。神無月は先ほどまで依頼人と電話をしていて、少女が通りそうな道や行きそうな場所を聞いていたのだ。
「行方不明になった子、遅刻しそうな時に通る道があるみたいなんですが‥‥その場所が前にキメラが出た場所みたいなんです」
神無月の言葉に「え」と皆城 乙姫(
gb0047)が目を瞬かせながら呟く。
「近道になるみたいですけど、薄暗いのとキメラが出た事からあまり人が通る事はなくなったらしいのですけど‥‥」
神無月が呟くと「その場所を通っている確証はないけど――‥‥どうだろうね」と篠ノ頭 すず(
gb0337)が小さく呟く。
「何もなければいいが‥‥楽観は出来ないよね」
篠ノ頭が呟くと「そうだね、女の人、無事だといいね‥‥」と皆城が言葉を返した。
「さて、これだけ解れば十分かな?」
依頼人から聞いた話、そして現場周辺の地図などを見てレイヴァー(
gb0805)が呟き、能力者達は行方不明になった少女を探す為に本格的に動き出したのだった。
〜熊キメラと少女〜
今回の任務は時間が経過している為に迅速に行わなければならない。何かがあった時、素早く少女を保護できるように能力者達は班を二つに分けていた
A班・ベル(
ga0924)、リュイン、シーヴ、優の四人。
B班・神無月、皆城、篠ノ頭、レイヴァーの四人。
「‥‥この先が近道とされている場所ですね‥‥」
ベルが地図を見ながら呟く。その道は大通りからは外れており、進んでいくにつれて生い茂った木々が光を遮断しているのか、まだ明るい時間にも関わらず薄暗く気味が悪かった。
「過去にもキメラの被害が出てやがるですね‥‥」
シーヴが呟くと「‥‥犠牲となったのは父親だそうですよ」とベルが言葉を返す。資料を見ると確かに男性がキメラの犠牲になったと書いてある。
「まさかとは思いますが‥‥急いだ方がいいかもしれませんね」
レイヴァーが呟くと「確かに急いだ方が良さそうだ」とリュインが地面を指差しながら言葉を返す。彼女が指差した場所には真新しい靴跡が残されている。前日に振った雨のせいで地面がぬかるんでいたからだろう。
「この道を通り、行方がわからないとなると‥‥キメラと遭遇した可能性が高い、か」
真っ直ぐに続いている道を見ながらリュインが呟いた。
「それじゃ、行きましょう」
優が呟き、覚醒を行いながら先頭を歩く。道自体は依頼人からも説明があったように狭く、二人並んで歩ければ良い方だろう。
「こんな場所に、以前にもキメラが出現してるんだよね? ‥‥何か原因があるのかな‥‥?」
皆城が辺りを見渡しながら呟いた時に、血に塗れた布切れを皆城が見つけた。よく見なければ見つけられないような脇に無造作に捨ててあり、それが何処か不気味に感じられた。
「‥‥まだ乾いていないみたいですね‥‥」
近いのではないでしょうか、レイヴァーが言葉を付け足して周りを見ると何かを引きずったような跡を見つけ、他の能力者達もそれを覗き込む。
そして、引きずられている方向を視線で辿っていくと、少し先の方に大きな何かと倒れている人が見える。
すぐに『少女』と『襲ったキメラ』だと判断した能力者達は戦闘態勢に入り、少女を無事に保護するべく行動を開始したのだった。
〜戦闘開始、今回の相手は熊キメラ〜
「‥‥ねぇ、あの子‥‥動かないよ――まさか、まさか‥‥」
皆城が熊キメラの後ろで倒れている少女を青ざめた表情で見ながら震える声で呟く。
「大丈夫‥‥よ‥‥きっと、大丈夫‥‥」
篠ノ頭が皆城を宥めるように呟き、熊キメラの後ろにいる少女をどうやって保護しようかをB班で考える。最初に少女を保護しないと、少女に攻撃が当る可能性が出てくるので迂闊に攻撃が出来なくなる。
「あっ――!」
中々、状況が進展しない中、突然熊キメラが少女を掴みあげて能力者目掛けて投げつけてきた。
「危ない!」
レイヴァーが少女をなるべく衝撃がないように受け止め、熊キメラをじろりと睨む。
「割物注意という言葉、ご存知無いようですね‥‥これだから熊は‥‥」
ため息混じりにレイヴァーは呟き、少女の様子を見る。背中を爪で斬りつけられ、頭も殴られているせいだろうか、血で少女は塗れていたが命に別状はなさそうだった。
「乙姫、治して‥‥あげ、て」
篠ノ頭が呟くと、B班は少し戦線から離れ、皆城が少女に『練成治療』を使用して傷を治療していく。完全にとまでは行かないが、ある程度少女の呼吸も落ち着いてきた。
「あ、れ‥‥私は‥‥いたっ」
少女が意識を取り戻し、状況を飲み込めていないのか目を瞬かせている。
「貴方はキメラに襲われたんですよ。大丈夫ですか? あのキメラはお仕置きしちゃいますから安心してくださいね♪」
覚醒により多少性格が変化した神無月が少女に向けて話しかけ『ショットガン20』を構える。
その頃、戦闘班のA班は熊キメラがB班と少女の所へと行かないように牽制攻撃を行ったりしていた。
「‥‥善良な一般人を襲うのは‥‥感心できませんね――尤も人を襲うのは許されていませんけど‥‥」
ベルが呟きながら『フォルトゥナ・マヨールー』を構えて、熊キメラに攻撃を仕掛ける。
「お前など地に伏すがお似合いだ」
リュインが呟き『瞬天速』で一気に間合いを詰めて『鬼蛍』で攻撃を行う。狭い場所での戦闘なので、リュインは『鬼蛍』を普段より短く握り、動きをコンパクトにしていた。
そしてリュインが熊キメラの攻撃を避ける為に体を低くした時、シーヴが『ソニックブーム』を熊キメラの顔面に叩き込んだ。
「どんな動物にも、目や鼻‥‥顔にゃ急所が多いでありやがるです」
シーヴが呟き、熊キメラが苦しげに呻いた隙を狙って優が『月詠』を構えて『流し斬り』で攻撃を行う。
「ふふふ、悪い子にはお仕置きが必要ですわ♪」
熊キメラの背後から神無月が姿を見せて呟く。彼女は『隠密潜行』を使用して熊キメラの背後を取り『ショットガン20』を構えて『強弾撃』で攻撃を行う。
「私だって、やれるんだから!」
皆城が呟くと『練成弱体』を熊キメラに使用して防御力を低下させる。
そして前衛で戦っているリュインに『練成超強化』を使用して攻撃力、命中力、回避力を上昇させる。
「おっと、そう簡単に攻撃は受けませんよ」
レイヴァーは呟き、熊キメラの爪攻撃をバックステップで回避する。
「やれば出来るものですね」
レイヴァーが呟くと後ろで待機していた優が『流し斬り』を使用して攻撃を行い、次の能力者へと攻撃を繋げる。
「‥‥貴方に人を踏み躙る権利はありません‥‥」
ベルは小銃『シエルクライン』で援護射撃を行いながら小さく呟く。ベルの援護射撃が一旦止むと、間髪いれずにリュインが熊キメラの爪攻撃を避けながら、腹部に『急所突き』を使用して攻撃を行う。
「所詮は獣だな、地に伏せろという言葉すらわからなかったか」
リュインが呟き『刹那の爪』を装着させた靴で攻撃を行い、後ろへと下がった。そしてリュインが下がると同時にシーヴが前へと出て『急所突き』と『流し斬り』を使用して攻撃を行う。
「狭ぇ場所にゃ、狭ぇ場所の戦い方がありやがる、です」
シーヴが呟き、去り際にもう一度攻撃を行ってから後ろへと下がる。
「そろそろ反省はしましたか? 反省したなら――お逝きなさい」
神無月は武器を『サーベル』へと持ち替えて突き刺すように攻撃を行う。そしてレイヴァーが熊キメラの背後から攻撃を与え、その後の総攻撃によって熊キメラは見事退治されたのだった。
〜遅刻癖を直して、大通りを歩きましょう〜
「あの‥‥今回は、本当に――ありがとう‥‥もう、駄目かと思いました」
キメラを退治した後、少女を病院に搬送する為に救急車を呼んだ。命には別状が無いとは言え、血を多少多く流しているから能力者達は心配をしたのだ。
「今‥‥依頼人の人にも連絡を入れました‥‥すぐに病院に行くそうです」
ベルが少女、そして他の能力者に知らせる。
「遅刻癖、これで治りそう?」
シーヴが少女に問いかけると「これからは‥‥時間に余裕を持って‥‥出ることにする」と苦笑混じりに言葉を返してきた。
「冗談ではなく、これからは気をつけてくださいね。通ってはいけないという場所をと通って色々な人に心配をかけたのですから」
優が少女に少し説教じみた言葉を投げかけると「身に染みました、お父さんも怒ってるかも」と呟く。
「そうですよ。お父様を悲しませるような事をしてはいけません。それに‥‥友達には謝罪だけではなく感謝もしなくちゃいけませんよ」
優の言葉に「え?」と少女は意味が分からないかのように首を傾げる。
「貴方の友達が依頼を出してきたから、貴方は助かったのですから」
優の言葉に「そっか‥‥大感謝だね」と少女は痛みを堪えながら笑う。
「きっとお母さんも心配していますよ、早く元気になってくださいね」
神無月が言葉をかけると「‥‥もう旅行の許可出してくれないかもなぁ」と少女は苦笑する。
その後、救急車が到着して少女は病院へと搬送されていった。
それを見送りながら「ねぇ」と皆城が篠ノ頭に向かって呟く。
「‥‥はやく皆が安心して暮らせるようになればいいね?」
皆城の言葉に「そうだね、そうなるといいね」と篠ノ頭も言葉を返す。
「その為にも、もっと頑張らなきゃね!」
両方の手で拳を作って話す皆城に篠ノ頭は優しげに笑って、皆城の頭を撫でた。
だが、篠ノ頭の心には何処か引っかかる事があった。
(「‥‥キメラを送り込んでいるのはバグア? だとしたら意図的に‥‥?」)
心の中で篠ノ頭は呟き、それを振り払うように首を振って「ううん、偶然‥‥だよね」と自分に納得させるように呟いた。
「それにしても全員が無傷――という事もなかったけど、あのキメラ相手にこれだけで済んだってのは喜ぶべき、なのかな?」
レイヴァーが苦笑しながら呟き、能力者たちを見る。無傷の能力者ももちろんいるが、軽傷の能力者も数名存在した。
「それでは、報告と体を休めるために帰ろうか」
レイヴァーが能力者達に向けて話しかけ、能力者達は報告の為に本部へと帰還していったのだった‥‥。
END