タイトル:かぎろひマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/06 23:23

●オープニング本文


それは揺らめく炎のように‥‥。

※※※

「最悪だわ‥‥」

女性能力者は任務を終えて開口一番にそう呟いた。

「‥‥どうしたんだ、その姿も――」

男性能力者は女性能力者の言葉と姿を見て、驚いたように呟いた。

女性能力者の姿は包帯が至るところに巻かれており、その所々からは血が滲み出ている。

「キメラよ、何であんなキメラが‥‥」

女性能力者は爪を噛みながら忌々しそうに呟く。

「何があったんだよ‥‥」

「攻撃が当たらないのよ――確かにそこにキメラはいるのに」

女性能力者の言葉に「当たらない?」と男性能力者は聞き返すと「違うわね、当たらないんじゃないわ」と女性能力者は言葉を訂正する。

「当たるわ、確かに当たるけれど――炎が揺らめくような感じがして急所を狙ってもズレちゃうのよ。軽い怪我しか当てられないから、こっちの状況は段々と不利になって――」

結局は退却を余儀なくされたわ、女性能力者は表情を悔しさに歪めながら呟く。

その表情を見るだけで、どれだけ悔しい思いをしたのかが男性能力者に伝わり、男性能力者は返す言葉が見つからなかった。

「そのキメラは?」

「他の能力者達に任せる事になったわ――悔しいけれど私達じゃ倒せなかったもの」

女性能力者は拳を強く握り締めながら呟くと「‥‥とりあえずは傷を治すことを最優先に考えろよ」

男性能力者は女性能力者を宥めるように呟き、病院まで付き添ったのだった‥‥。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
リュス・リクス・リニク(ga6209
14歳・♀・SN
絶斗(ga9337
25歳・♂・GP
シュブニグラス(ga9903
28歳・♀・ER
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
翡焔・東雲(gb2615
19歳・♀・AA
美環 響(gb2863
16歳・♂・ST

●リプレイ本文

〜任務に向かう能力者達〜

「攻撃が当たらない‥‥か、まるで陽炎を纏ったかのようだな」
 資料を見て呟くのは白鐘剣一郎(ga0184)だった。
 今回の能力者達が倒すべきキメラ、それは『幻覚』を用いて攻撃を行ってくるキメラで彼らの前に任務に赴いた能力者達は撤退して帰ってきたのだ。
「幻覚‥‥て、厄介だよね‥‥鍛えてもそう防げるわけじゃないし‥‥」
 イスル・イェーガー(gb0925)が小さく呟くと「ややこしい戦いになりそうだな‥‥」と翡焔・東雲(gb2615)がため息混じりに言葉を返す。
「炎が揺らめくような感じがして攻撃がズレてしまう‥‥厄介なキメラが相手ですね‥‥」
 不敵に笑みながら呟くのは美環 響(gb2863)だった。
「ズレてしまうとしても、当たるのだろう? それならば問題はない。倒すまで攻撃を行えばいいのだから」
 御影・朔夜(ga0240)が『真デヴァステイター』を見つめながら呟く。
「‥‥とにかく‥‥皆で頑張りましょう‥‥」
 リュス・リクス・リニク(ga6209)が呟くと「そうだな」と絶斗(ga9337)が言葉を返す。
「私の『虚実空間』で幻覚が打ち消せればいいのだけど‥‥」
 シュブニグラス(ga9903)が呟く。今回のキメラの持つ『幻覚』を彼女が持つスキル『虚実空間』で幻覚を打ち消そうという作戦を立てていた。
「えっと、出発前にもう一度確認しておきますね」
 美環がメモを見ながら能力者達に話しかける。
 今回のキメラが使用する『幻覚』に対して効果があるか分からないけれど、念のために対策を考えていたのだ。
「照明銃を使用して、相手が幻覚キメラならば影は出来ないはずです。照明銃は僕が使用しますので、タイミングは『トランシーバー』で打ち合わせをしましょう」
 美環が呟き「あぁ、ペイント弾も僕ですね」と言葉を付け足す。ペイント弾は視覚に訴える幻覚、簡単に言うならばカメレオンの迷彩効果などがあった時に、それらを困難にさせる為に使用するのだと彼は言う。
「そして聴覚に訴える幻覚ならば『呼笛』で対処――だったな」
 白鐘が呟き「はい、そうです」と美環は言葉を返す。
「それでは、そろそろ向かいましょうか」
 シュブニグラスが話しかけ、能力者達は今回のキメラが潜む場所――『廃墟』へと出発したのだった。


〜荒れ果てた場所で佇むキメラは〜

 キメラが出現する場所は『廃墟』だった。今の時代、廃墟と化してしまう場所は珍しくはない。戦いが当たり前のように存在するのだから、犠牲となる人々、犠牲となる場所があるのは『普通』なのだから。
「それじゃ、班で行動するか」
 絶斗が呟き、能力者たちは予め決めていた班で行動を開始する。
 今回の能力者達は任務を迅速に遂行すべく、二つの班に分かれる事になっていた。
 A班・翡焔、リニク、御影、美環の四人。
 B班・絶斗、イスル、白鐘、シュブニグラス。
 ただ、いつもと違うのは同じ班でも二人組みのペアになって行動をするという事。A班でも翡焔とリニク、御影と美環のペア。B班なら絶斗とイスル、白鐘とシュブニグラスというペアに分かれて行動を行う事になっていた。
 何故こんな班やペアに分かれて行動をするのかというと、これも幻覚対策の一つだった。相手が幻覚を使う以上、纏まって行動するのは危険だと判断したからだろう。
「‥‥どこに‥‥居るの‥‥かな‥‥?」
 リニクが廃墟内を見渡しながら呟く。廃墟とは言っても特別広い場所ではなく、キメラを探す事に苦労はしなさそうだった。
「そういえば、俺はイスルとペアだな。よろしく頼む‥‥」
 絶斗がイスルに向けて話しかけると「‥‥宜しく‥‥」と言葉を返し、周りを見渡した後に「廃墟は障害物が多い‥‥やりにくいかな‥‥」と言葉を付け足した。
 確かに廃墟内を見渡せば、瓦礫などが散乱しており、お世辞にも『動きやすい』とは言えなかった。
「今のところは罠などはなさそうですね、廃墟の奥地に何かの気配を感じます――恐らくキメラでしょうけど」
 美環が『探査の眼』と『Good Luck』を使用しながら呟き、別行動でキメラを探しているB班にも『トランシーバー』で連絡を入れる。

 連絡を受けたB班は「上手くいってくれるといいのだけど!」とシュブニグラスが『超機械α』を構えながら呟き、ペアの白鐘と共に廃墟の奥地へと歩いていく。
「‥‥夜が深くなってきたわね‥‥季節を感じるわ」
 シュブニグラスが『ランタン』で明かりを灯しながら空を見上げて、小さく呟く。
 その後、能力者達はキメラが潜むであろう奥地へと向かい、目的の少し手前の場所で合流を果たした。
「‥‥もしかして、あれが例のキメラ――?」
 翡焔が指差した少し向こうには女性がにたりと不気味な笑みを浮かべて此方を見ている。着ている白い服には所々が赤黒いシミがあり、能力者や一般人を襲った時についた返り血だろう。
 最初に攻撃を行ったのは御影で『真デヴァステイター』で女性型キメラを攻撃する――が、銃弾は女性型キメラを通り抜けて、後ろの木へと当たる。
「幻覚か――毎度の如く、変わらんな」
 御影が呟き、後ろへと下がる。それと同時に美環が「照明銃を使います!」と叫び、能力者達は自分が巻き込まれないように目を閉じる。
 そして『照明銃』の影響を受けない後ろにいた翡焔が「後ろの二番目の女だ!」と大きな声で叫ぶ。
 女性型キメラは自分を分身でもしているかのように幻覚を能力者達に仕掛けたのだが、その直後に『照明銃』が使用され、アッサリと本体を見分けられてしまう。
「‥‥なるほど、確かに『当たりにくい』」
 白鐘は『月詠』で女性型キメラに攻撃を仕掛けるが、攻撃がヒットする瞬間に女性型キメラがぼやけるように見え、ヒットポイントを無理矢理ズラされてしまう。
「それじゃ、私の『虚実空間』を試してみるわ」
 シュブニグラスが呟き、イスルは『スコーピオン』で援護射撃を行い、シュブニグラスがスキルを使用する間に女性型キメラが動かないように牽制攻撃を仕掛けた。
 行くわよ、シュブニグラスは呟きながら『虚実空間』を女性型キメラに向けて使用する。彼女が『虚実空間』を使用した瞬間に女性型キメラを取り巻く『靄』のようなものが消え、はっきりと姿が見える。
「‥‥今のうちに‥‥攻撃、ですね」
 リニクが呟き『弾頭矢』を使用して攻撃を行う。もちろん仲間である能力者達が巻き込まれないように計算した上で。そして『即射』を使用して洋弓『アルファル』で女性型キメラを攻撃する。
 爆風が治まり、女性型キメラの姿が見え始めると矢が刺さっていたが急所は避けられていた。幻覚でリニクの視界を狂わせて、当たっても大丈夫な場所へ矢を誘導したのだろう。
「‥‥報告にあった幻覚‥‥厄介ですね‥‥」
 リニクは再び弓を構えるが、矢を放つタイミングを掴めない。その時にイスルが『スコーピオン』で女性型キメラに攻撃を仕掛ける。
 そして続くように翡焔が攻撃を仕掛ける。だが女性型キメラも反撃に出て、ナイフで斬りかかってくるが翡焔は右手に持った『刀』でナイフを防ぎ、左手に持った『蛇剋』で女性型キメラの腹を攻撃する。その隙に美環が『ペイント弾』を女性型キメラに使用して、姿を隠せないようにする。
「いつまでも惑わされると思うな‥‥実体がそこにある以上、見切らせてもらう!」
 白鐘が『月詠』を構え「天都神影流『奥義』‥‥龍昇嵐!」と叫び、女性型キメラに攻撃を仕掛ける。彼の攻撃は『急所突き』で最初に攻撃を行い『紅蓮衝撃』と『流し斬り』で再び攻撃を仕掛けるというものだった。最初に女性型キメラが攻撃を仕掛けてきたのだが、円のような動きで女性型キメラの攻撃を避けつつ、敵の懐へ潜りこむという攻防一体の動きである。
 白鐘の攻撃の後、女性型キメラは弱りながらも威嚇するような視線を能力者達に向け、手に持ったナイフを構える。
 それを見た絶斗が名刀『国士無双』を女性型キメラへと投げつける。
「‥‥当たっても、当たらなくてもいい‥‥ただ此方に向かってきてくれ‥‥」
 名刀『国士無双』は女性型キメラの頬を掠めるように後ろの木へと突き刺さる。そして絶斗が求めるように女性型キメラがナイフを構えながら、彼の方向へと向かい走り出す。女性型キメラが自分の方へ走り出したのを確認すると、絶斗は木の上に昇って、女性型キメラへと向かって落ちていく。
「ただただ馬鹿でかい力の塊で相手を押しつぶす‥‥これが俺の新たな一撃‥‥ドラゴンクラッシャーだ!」
 絶斗が覚醒を行って、巨大化した右腕で女性型キメラを狙い攻撃する。しかし、女性型キメラは直撃する前に避けて、左腕だけが押しつぶされた形となった。
「お前もなぁ‥‥女々しい戦法使ってくんな! 女だったら堂々と戦いやがれ!」
 翡焔が女性型キメラに向かって叫ぶ。ちなみに今回の相手はキメラだけど『女性型』なのだから女々しい戦法を使ってもOKなのだ。男性型がこのような戦法を使ってくるのならば翡焔の言うとおりなのだけれど。
「まだ息があるか、哀れだな」
 瀕死に近い状態ながらも立ち上がる女性型キメラに御影が呟く。女性型キメラは幻覚を使用して、再び攻撃がズレるようにしていた。
「急所を狙ってズレるとしても、当たるのならば――その全身に銃弾を撃ち込めばどうなるか‥‥」
 少し遊んでみるか、御影は呟きながら『即射』を併用して『二連射』を連続で使用して『真デヴァステイター』と小銃『シエルクライン』で攻撃を行う。合計で138発にもなる攻撃を女性型キメラが避けきれるはずもない。たとえ急所をズラしたとしても、塵も積もれば山となる――でダメージは蓄積されていくのだから。
「‥‥なんだ、遊ぶ程度だったのに」
 御影が面白くなさそうに呟き、絶命している女性型キメラに向けて冷たく呟いたのだった。
「確かに少人数で相手をするには厄介な相手だった‥‥今回はチームワークの勝利だな」
 白鐘が御影の隣に立ちながら呟く。
「出直してきなさい――もう聞こえていないでしょうけどね」
 シュブニグラスが扇子を口元に当てながら呟いた。
「‥‥ごめんとは、言わないよ‥‥」
 イスルは絶命している女性型キメラを見ながら小さく呟いた。その表情は複雑そうなものだった。
「汝の魂に幸あれ」
 祈るように美環が呟き、目を伏せる。
「そういえば、援護とかありがとうね」
 シュブニグラスがイスルに向けて呟くと「ぁ‥‥ぅん。別にいい、けど‥‥」と顔を少し赤らめながら言葉を返した。
 今回の任務、全員が無傷というわけには行かなかったけれど重傷者もいなく、大成功と言えるだろう。
 その後、能力者達は本部に報告を行うために本部へと帰還していったのだった。


END