タイトル:独眼の惨殺者マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/24 01:57

●オープニング本文


黒い眼帯で覆われた片目‥‥。

持った小刀から滴り落ちる鮮血‥‥。

※※※

そのキメラは小さな町の建築現場に現れた。

黒く長い髪を後ろで一つに括り、チャイナ服のようなモノに身を包み、小刀を持っている美麗の女性だった。

「見ただけじゃ、そんなに苦労しそうな感じには見えねぇけどなぁ」

男性能力者が今回の事件の資料を見ながら呟く。資料の中には問題のキメラと思われるキメラが写真に納められていた。

「そうね、見た分には普通の人間型キメラにしか見えないわね――でも、死人が十名を超えているわよ、結構苦労するんじゃないかしら」

女性能力者が男性能力者から資料を取りながら小さく呟く。

「死人が十人を超えてるって‥‥」

「現場にいて、生き残った人の話では素早くてあっという間に詰め寄られて持っていた小刀で切られて仲間は殺された――ですって」

仲間? と男性能力者が聞き返すように呟くと「建築関係の仕事仲間を殺されたらしいわ」と現場の写真を見せて「ここが現場よ」と言葉を付け足した。

十数名が殺害された場所は、現在建築中のビルにキメラが現れて惨事となったらしい。

「でも能力者が向かうみたいだから、大丈夫だとは思うんだけどね‥‥」

女性能力者は呟いた後、資料を纏めてキメラ退治に向かう能力者へと渡しに向かったのだった。

●参加者一覧

ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
高村・綺羅(ga2052
18歳・♀・GP
ウォンサマー淳平(ga4736
23歳・♂・BM
風閂(ga8357
30歳・♂・AA
火茄神・渉(ga8569
10歳・♂・HD
アセット・アナスタシア(gb0694
15歳・♀・AA
ファイナ(gb1342
15歳・♂・EL
烏丸 八咫(gb2661
23歳・♀・EL

●リプレイ本文

〜任務に赴く能力者達〜

「今回のキメラ‥‥チャイナの意味は在るのかしら‥‥」
 キメラの資料を見ながら、ケイ・リヒャルト(ga0598)が苦笑混じりに呟いた。
 今回、死者が十人を越えるほどの被害を出したキメラは女性型キメラらしく、黒く長い髪を後ろで一つに括り、チャイナ服を着て、小刀を携えているのだと言う。
「しかも場所が建築現場という事は町の中になるね。だとすればこのキメラは絶対に放置出来ない存在」
 此処で確実に仕留めないと‥‥高村・綺羅(ga2052)が言葉を付け足しながら呟く。
「それにしてもチャイナ美人は嬉しいけど、建築中のビルってのがどーにも」
 ウォンサマー淳平(ga4736)がため息混じりに呟く。建築中のビルという事は倒壊の可能性も出てくるから戦闘の際には気をつけて戦わないといけない。キメラを倒したのはいいが、建築中のビルと一緒に自分たちも‥‥という事になったら洒落にもならないのだから。
「姿格好を見ると剣豪、柳生十兵衛を思わせるな。相手として不足はないが、女とは戦わん主義だ‥‥と言えぬな」
 女であろうと、キメラなのだから――と言葉を付け足して呟くのは風閂(ga8357)だった。確かに彼の言う通り『女だから』という理由で見逃すには犠牲者が多すぎる。
 それにキメラである以上、見逃して人を襲わないという事も考えられないのだから。
「でっかいビルとか作るの大変だよね‥‥」
 火茄神・渉(ga8569)は女性型キメラが一般人を殺害した場所の資料を見ながら小さく呟く。写真の隅に映っている建築中のビルの周りには色々な機材が置いてあり、被害にあった人たちが一生懸命ビルを作っていた事が伺える。
「一生懸命頑張っている人の邪魔をするヤツはオイラ許さないぞ! 解決して立派なビルを建ててもらうんだ」
 火茄神は拳を強く握り締めながら呟く。その隣ではアセット・アナスタシア(gb0694)が少し憂いた表情をして俯いている。
「‥‥人型のキメラにも、もう慣れてきたけど‥‥人を殺める行為を認める事は出来ないね」
「アセット、無理しないように頑張ろうねっ」
 アセットの恋人であるファイナ(gb1342)がアセットの肩に手を置きながら呟くと、アセットは首を縦に振って無言で返事をした。
「全く、惨い事をする‥‥戦闘をする気の無い彼らを手に掛けるとは」
 資料を見ながら烏丸 八咫(gb2661)が怒りに拳を震わせながら小さく呟いた。能力者と戦い、能力者が敗れたのならばまだ話は分かる。戦う気のない一般人を十数名も殺めた事が彼女にとっては許せないのだろう。
「‥‥所詮はキメラ、か」
 烏丸は呟き、能力者達は現場となった建築中のビルへと向かい始めたのだった‥‥。


〜独眼の女性型キメラを誘き寄せろ〜

「この辺が一番戦いやすそうね」
 目的の場所に到着するまでの間、能力者達は現場周辺の地図を見ながら戦いやすそうな場所に印をつけていく。
 今回のキメラと戦う場所、それはただ広いだけでは駄目なのだ。囮班が女性型キメラを誘導してやって来るので、待ち伏せ班、つまり仕留め班は女性型キメラの眼帯側からの奇襲を行う作戦になっている。
 つまり、誘導されてきた女性型キメラに見つからずに隠れられる場所も必要となってくるのだ。
「そういえば、皆と合流する前に生き残った人に話を聞いてきたよ」
 ウォンサマーが思い出したように呟く。彼は戦闘に有利になる情報があれば、と思って生き残った者に話を聞いてきたのだ。
 その生き残った者が言うには『いきなり斬られて覚えていない』という事だった。生き残った男性も傷が深く、下手すれば他の仲間同様に死んでいたという可能性もあったわけだから覚えていないのは無理も無いのかもしれない。
「俺は、先日だが工事現場を下見に行っていた。やはり悲惨な事件があったせいで現在工事再開の目処は立っていないそうだ」
 風閂の言葉に「現場の人達、可哀想ですね‥‥」とアセットが小さく呟く。
「建築現場の図面とかありますか?」
 中々、誘導場所が決まらない中、ファイナが問いかけると「これが図面よ」とケイが借りてきた工事現場の図面をファイナに渡した。
「このあたりとかどうでしょうか」
 ファイナが指した場所は現場の人達が寝泊りする為の簡易プレハブ小屋。その周りは機材を置いたりするためか、広く場所が取ってあり、戦闘に適している。
 それにプレハブ小屋の所に仕留め班が隠れておけば、十分に女性型キメラを奇襲する事が可能になる。
「そうですね、此処で良いんじゃないでしょうか。これ以上考えていると日も落ちてくるかもしれませんし‥‥」
 烏丸が言葉を返す。流石に夜になってしまえば能力者達が極端に不利になってしまう為、夜間での戦闘は控えておきたいところだ。
「それじゃ、行こうか‥‥」
 高村が呟く。
 囮班は高村、火茄神、ファイナ、ウォンサマーの四人で行う事になっている。
 そして先に誘導場所へと向かい、仕留め班として行動をするのはアセット、烏丸、ケイ、風閂の四人。
「皆‥‥上手く誘き寄せると信頼しておるぞ」
 風閂が囮班の能力者達に話しかけると「大丈夫、綺羅達うまくやるから」と高村が言葉を返した。
「そうですね、心配する必要はないでしょうが、囮の皆さんは十分に気をつけてくださいね」
 烏丸が微笑みながら囮班に話しかけ、囮班の能力者達は首を立てに振り、女性型キメラを誘導するために動き出したのだった‥‥。

※囮班※
 囮班の能力者達は、班行動で女性型キメラを誘導するのではなく、それぞれで分かれて女性型キメラを見つけ次第、誘導を開始するという作戦内容だった。
 確かに一纏めで行動していると、すぐに見つかれば良いのだが、見つからなかった場合に時間が掛かりすぎる。

「‥‥いない、か‥‥」
 高村は落ちていた空き缶を少し遠くに投げて、その空き缶の音に反応して女性型キメラがやってこないかと思っていたが、どうやら高村がいる地点から女性型キメラがいる場所は遠いらしく、女性型キメラが現れる事はなかった。

「それにしても何で今回のキメラは眼帯なんて不利になるようなものをしているんだろ? 何か理由でもあるのか? それともただのファッション?」
 ウォンサマーは呟きながら、建築中のビル内を捜索していく。もちろん女性型キメラが素直に見つかってくれるとは彼も思っていなく、不意打ちなどを受けないように周囲の警戒を怠る事はなかった。

「んー、来ないなぁ」
 火茄神は、ビルの中のとある部屋の中で女性型キメラを待ち伏せていた。下手に動き回るよりは一箇所に留まって、女性型キメラが現れるのを待った方がいいと思ったからだろう。
 火茄神は部屋の中央で仁王立ちで待っているのだが、肝心の女性型キメラは現れない。もちろん火茄神は女性型キメラが不意打ちをしてきても対処出来るように『露汰』を確りと握り締めながら待ち伏せている。
 そのときだった。少し離れた場所から『呼笛』の音が響いてきたのは‥‥。

「‥‥攻撃対象発見‥‥攻撃にて誘きだします‥‥」
 ファイナは呟きながら『エネルギーガン』で現れた女性型キメラに攻撃を行う。もちろんビルを破壊するような真似はせず、あくまでも誘導のための攻撃だ。
 女性型キメラの小刀がファイナを襲うが『プロテクトシールド』によって、ファイナがダメージを受けることはなかった。
 そうやって、攻撃を行い、シールドでダメージを防ぎつつ、ファイナは誘導場所に近い場所までたどり着いた。
「‥‥対象、作戦エリアに到達」
 ファイナは『呼笛』を鳴らしながら呟き、その音を聞いた高村、火茄神、ウォンサマーの三人がやってきて、誘導地点へと女性型キメラを追い詰めていく。
 そして、仕留め班が潜んでいる地点まで女性型キメラを追い詰め、能力者達は本格的に女性型キメラとの戦闘を開始したのだった。


〜女性型キメラと能力者との戦闘〜

 囮班からの連絡を受けて、仕留め班はそれぞれ準備を行う。少しでも奇襲が成功するようにとケイは『隠密潜行』を使用して、囮班が誘導してきた女性型キメラを待つ。
 もちろん、ケイは女性型キメラが使用している『眼帯』が罠だという事も頭に置いて、慎重に行動を行う事にしている。
「来たか、女とは言え、殺戮は許せぬ行為! 我らが成敗致す!」
 風閂が叫び、囮班が女性型キメラから退いたのを確認してから『ソニックブーム』で迎撃する。
 そして女性型キメラがよろめいた所をケイが眼帯側から『影撃ち』を使用しながら『スコーピオン』で攻撃を行う。ケイの攻撃が終わった所を俊敏さが一番高い高村が『アーミーナイフ』を構えて、眼帯をしていない方からの攻撃を行う。
「ようこそ、パーティー会場へ。存分に楽しんでいってね」
 ウォンサマーが冗談めかしながら女性型キメラに向けて呟き、小銃『S−01』で接近攻撃を行う能力者達の為に支援攻撃を行う。
「相手が小太刀で来るなら‥‥こっちだって! これでも毎日稽古をしているんだ! オイラの剣術を見せてやる!」
 火茄神が叫び『露汰』を構えながら攻撃を行う。その際に『両断剣』を使用しながら攻撃を行った。
 そして火茄神の攻撃が終わった後、アセットが『コンユンクシオ』を構えながら女性型キメラを確りと見据える。
「その瞳の奥にどんな思いがあろうと‥‥私が出来るのは斬ることだけ」
 アセットは牽制の為に『ソニックブーム』を使用しながら短く呟く。そしてアセットの攻撃によって僅かに女性型キメラに隙が生じて烏丸が『バスタードソード』で攻撃を仕掛ける。
「あなたを見ていると何か、鏡を見ているようですよ――‥‥」
 烏丸も女性型キメラと同じく眼帯をしている者、だから何処となくい自分の姿と重ねてしまう部分があるのだろう。
「私はカラス、あなたの魂を地獄に運ぶもの」
 呟いた後、烏丸は『急所突き』と『ファングバックル』を使用しながら攻撃を行った。そして烏丸の攻撃によって、女性型キメラの動きが一時的に止まり、その隙を突いてケイが『急所突き』を女性型キメラの足目掛けて使用する。足を撃たれた女性型キメラは自慢にしているであろう素早さが削がれて、女性型キメラは苦しげにうめき声を上げる。
「おイタが過ぎるわ‥‥さぁ、お仕置きよ」
 ケイは加虐的な笑みを浮かべながら『フォルトゥナ・マヨールー』で攻撃を行う――のだが、女性型キメラは高村の背面から攻撃を仕掛けるように小刀を振り上げる。
 しかし‥‥これは高村が狙っていたことなのだ。わざと背面から攻撃をさせるようにしていた。女性型キメラが攻撃を仕掛けてきたのを確認すると、高村は『瞬即撃』と『疾風脚』を使用して、後ろ手に持っていた『アーミーナイフ』を女性型キメラの腹部に突き刺す。そして彼女は女性型キメラを蹴り、足に装着していたナイフを通しての回し蹴りで攻撃を行い、所持していた『ハンドガン』で追い討ちの攻撃を行う。
 流石に一気に攻撃を受けて、女性型キメラもがくがくと足が震え始める。それは恐怖からではなく、蓄積されたダメージのせいなのだろう。
 そしてウォンサマーが『瞬速縮地』を使用して女性型キメラとの距離を縮め「紅蓮衝撃」を使用して『イアリス』で攻撃を行う。
「貴様に斬られた者の痛み、無念、その身体で知るがいい!」
 ウォンサマーの攻撃が終わると同時に風閂が走り出し『流し斬り』を使用して女性型キメラに攻撃を行った。既に女性型キメラの機動力は削がれて、能力者達の攻撃を避ける事も出来ない状態にあった。
「渉‥‥修行の成果を試す時だよ、アレをやろう」
 アセットが火茄神に話しかけると「よし、分かった!」と火茄神は言葉を返す。
「流し斬りは渾身の一撃を加える極意‥‥‥いくよ‥‥「必殺! 流し斬り・極!」」
 技名だけ二人で叫び、アセットと火茄神は同時に『流し斬り』を使用して女性型キメラに攻撃を行ったのだった。
 流石に二人の技を同時に受けて、女性型キメラは瀕死状態だったが、まだ命を奪うまでには至らなかった。
「‥‥エネルギーソード、一閃‥‥」
 ファイナが『機械剣α』で攻撃を行い、烏丸が続くように『バスタードソード』で攻撃をして、能力者達は無事に女性型キメラの退治を終える事が出来たのだった。


〜任務を終えた能力者達〜

「右目の傷がこんなに疼くとは‥‥やはりそう簡単に忘れる物ではないのですね」
 眼帯を押さえながら烏丸がポツリと呟く。彼女も何かの事情があって傭兵という仕事をしているのだろう。
「お遊戯の時間はオ・シ・マ・イ‥‥これで任務完了ね」
 ケイは覚醒を解きながら呟く。
「男であれば真剣勝負が出来たのだが‥‥倒した後にこう言うのもなんだが、貴様も良き剣士であった‥‥」
 空を見上げながら風閂は小さく呟く。キメラという立場に生まれなければ、女性型キメラとも分かり合えたかもしれない――だけどそうならなかったのだから考えても仕方の無い事、頭の中では分かっていても、心で簡単に理解出来るものでもない。
「私たちがした事は、ただキメラを葬っただけ‥‥失われた者は帰って来ることは無い。それでも被害を押さえられた事は喜ぶべきなのでしょうね」
 烏丸が小さく呟く。これ以上の被害は押さえる事が出来たのだが、もっと早く何とかできなかったのだろうかという感情は隠せなかった。
「何はともあれ、今回の任務を遂行できたのは皆と協力し合えたこそだ」
 ありがとう、風閂は今回の任務で一緒になった能力者達に心からの礼を言う。
 そして、その後能力者達は報告の為に本部へと帰還していったのだった‥‥。


END