●リプレイ本文
〜かぼちゃキメラを料理‥‥じゃなくて退治する能力者達〜
「折角の楽しいお祭に包丁なんて無粋だよ。そんなのはトリックでもトリートでもない。包丁はあくまで料理する為の物なんだから」
篠森 あすか(
ga0126)は「偽者ジャックには、お菓子の代わりに弾丸をプレゼントするよ!」と言葉を付け足しながら少し大きめの声で叫ぶように話した。
今回のキメラは『ジャック・オ・ランターン』を模した物のようで、不気味に笑う写真が資料の中には挟まれていた。
「カボチャですか‥‥もうそんな季節なのですね」
鳴神 伊織(
ga0421)は形見である懐中時計にそっと触れながら「能力者になって一年以上経ちましたが、あの時から少しは強くなれたのでしょうか‥‥」と小さな声で呟く。
そしてハッとしたように「今は感傷に耽る時でもありませんね‥‥」と苦笑混じりに言葉を付け足した。
「ハロウィンにちなんだ敵‥‥確かに商店街などにもカボチャの飾りが出ていたりするけれど‥‥これはちょっと頂けないね」
とっとと片付けてしまわないと、高村・綺羅(
ga2052)が言葉を付けたしながら呟く。
「毎回思うんだけど、バグアも季節ネタを持ち出してくるって、何気にミーハーなのかもしれないね。お菓子あげて帰ってくれるなら可愛いとは思うけど、今年もご退場だね」
遊馬 琉生(
ga8257)が手を頭の後ろに置きながら、笑みを交えて呟く。
「ふむ。これを見ていれば何かカボチャの料理を思いつくかもしれんな」
ヴィンセント・ライザス(
gb2625)が資料の写真にあるジャックを見ながら呟く。しかし、彼の隣で資料を見ながら納得いかないといった表情で鈴葉・シロウ(
ga4772)が「とりっくおあとりーと?」と呟いている。
「だが断る。このシロウのわりと好きな事は、世間の波に乗れば何でもいいと思っているヤツに対してNOと言ってやる事だ」
拳をグッと握り締めながら全身全霊でジャックを否定している鈴葉、その姿にはどこか清々しささえ感じるものがあった。
「とりあえず、ジャックと実際に戦った事がある能力者に話を聞いてきたよ。なかなか手強いみたいだから、少し慎重に行きたいわね」
アズメリア・カンス(
ga8233)がメモを取り出しながら、能力者達に向けて話しかける。彼女が調べて来て分かった事は以下の三つだった。
・先日の能力者達が戦った時に見かけたジャックは一体であるという事。
・ジャックは獲物を見つけたら、空高くまで上がり、勢いをつけて攻撃を仕掛けてくるという事。
・商店街はジャックが現れた事によって、住人が避難済みという事だった。
「でも確実にジャックが一匹だけ、という事にはならないね。たまたまその能力者達が見ていなかっただけかもしれないし‥‥」
高村が呟き「確かにそうだね、警戒を緩める事は出来ないね」とアズメリアも言葉を返した。
「それと、商店街を戦闘で壊すわけにもいかないから‥‥地図を借りてきた」
アズメリアが商店街の周辺地図を取り出しながら能力者達に見せる。
「確かに広い場所へ誘導しないと、キメラから商店街守りましたがお店壊しちゃいました、はイヤンですからね」
鈴葉が呟き、戦闘に適した場所がないか地図を見ながら探る。すると空き地を見つけ、全員一致で、ジャックをそこに誘導する事になり、能力者達はジャックを退治する為に『商店街』へと向かい始めたのだった‥‥。
〜静かな商店街、迫るかぼちゃ・ジャック〜
商店街に到着すると、能力者達は全員でジャックを探すことにしていた。分かれて行動した方が早いのかもしれないが、上空からの攻撃を行ってくる敵なので危険という事で、全員行動になった。
「住人の方達が避難しているだけあって、静かですね‥‥この明るい雰囲気と静けさがギャップがあって不気味です」
鳴神が呟きながら商店街を見渡す。確かに彼女の言う通りで、商店街自体にはハロウィンの飾りつけがしてあって、明るい雰囲気を出しているのに人がいないという事が余計に不気味さを醸し出していた。
「季節限定グッズってつい欲しくなったりしますけど、バグアもつい作りたくなるんでしょうか‥‥あのデザインは雰囲気出していい感じですけど」
苦笑しながらリリィ・スノー(
gb2996)が店先に飾られているカボチャのキーホルダーなどを見ながら苦笑混じりに呟く。
「‥‥もしかして、あれかな?」
高村が上空を指差しながら呟く。高村が指した方向、そこには大きな包丁を持ち、黒いマントを靡かせるかぼちゃがぷかぷかと浮いていた。
「もっと探すのに苦労するかと思いましたが‥‥あれだけ堂々としていられたら腹立たしさを感じますね」
鈴葉がポカンとジャックを見上げながら呟く。
「それじゃ綺羅は別行動を取らせてもらうね、他にもジャックがいるかもしれないし、一匹だと分かったらすぐに戻ってくるよ」
高村が呟き、商店街の中を走り出す。
「一人では危ないですよー! お嬢さん、捜索に白クマ一匹連れて行きませんかーってもういなーいっ!」
鈴葉は既に商店街捜索に向かった高村を追いかけて走り出す。
そして残された能力者達は、予め決めておいた場所へ誘導するために行動を開始する。誘導役として動くのはアズメリア、ヴィンセントの二人で、他の能力者達は誘導の二人と離れすぎず、そしてジャックに見つからないように誘導場所へと移動を開始し始める。
※誘導班※
「全くもって‥‥伝承そのままのキメラである、な」
ヴィンセントは空に浮かぶジャックを見ながら、呆れたように、そして残念そうに呟く。
「所詮は模倣されたもの、さて――招待を受けてもらうとしましょうか」
アズメリアが呟き『クルメタルP−38』をジャックに向けて発砲する。もちろん当てるつもりではなく、ジャックの気を誘導班である自分達に向けるためだった。
アズメリアの目的通り、ジャックはゆっくりとした動作でアズメリアとヴィンセントに視線を向けた。
「今から、誘導開始するわ」
電源を入れっぱなしにしている無線機に向けて言うように呟き、ヴィンセントと共にジャックの誘導を開始する。
「SkySoul‥‥出力100%‥‥」
ヴィンセントは呟きながら覚醒を行い、小銃『S−01』でジャックに攻撃を行う。常に気を引いておかないと、誘導場所へ向かう攻撃班に気がつくかもしれないと考えたからだ。
「ふむ、中々料理に使えそうな素材ではあるな‥‥!」
ヴィンセントが呟きながら発砲を行い、それに腹を立てたのかジャックが勢いよく降下して包丁を突き刺してくる。
しかし大振りな動作のおかげでヴィンセントはジャックの攻撃を受ける事は無かった。
そしてジャックは突き刺した包丁を抜き、再び二人を追いかける。その動作の中で二人が気づいた事が在った。
それは『包丁を刺してから抜くまでに多少の時間が掛かるという事。長い時間ではなく、ほんの二・三秒ほどだが、その二・三秒が戦いを有利にしてくれるのだ。
もう攻撃班は誘導地点で待ち構えていることだろう、後は高村と鈴葉が商店街を見回って、ジャックが他にいないかを確認して合流すればジャックと本格的に戦闘を開始できるのだった‥‥。
※捜索班※
「もうすぐで誘導地点まで到着するみたいだね」
高村が商店街の中を走り回りながら、同じく捜索する鈴葉に話しかけると「そのようですね」と鈴葉は言葉を返した。
二人は他にもジャックがいないかを確認するために商店街を走り回っていたが、どうやら現在誘導しているジャックのほかには存在しないようだ。
「急いで綺羅たちも誘導地点に向かおう」
高村が鈴葉に話しかけ、二人も急いで誘導地点へと向かい始めたのだった。
〜戦闘開始、かぼちゃお化けを料理しろ〜
誘導班の二人がジャックを空き地まで誘導してくると、既に高村と鈴葉も合流していて戦闘準備は完了していた。
しかし、誘導班がジャックを誘導してきても能力者達は自ら攻撃を仕掛ける者はいなかった。相手は宙に浮いていて、攻撃を仕掛けたら隙を突いてジャックが攻撃してくるだろう。
だから迎撃しながら少しずつチャンスを見つけていく――という作戦方法だった。
いつまで待っても攻撃を仕掛けてこない能力者に業を煮やしたのだろう、ジャックは包丁を振りかざしながら勢いよく能力者達に向かって降下を始める。
そこへ鳴神が持ってきていた『コート』をジャックに投げつけて視界を防ぐ――が、ジャックは『コート』を切り裂いて攻撃に移ろうとする。
しかし『コート』を切り裂くという動作で攻撃に移るのが一瞬遅れた為、鳴神の『紅蓮衝撃』と『流し斬り』の攻撃を防ぐ事が出来ずに、ジャックは地面へと叩きつけられる。
「懐かしい敵ですね‥‥一年ぶりでしょうか」
鳴神はジャックの前に立ちはだかりながら小さく呟く。彼女が以前会った『かぼちゃ』とは別モノだろうが、バグアが作り出したキメラという事は同じだ。
「フフーフ。普段はランサーな私ですが。いやはや爪のテクも中々ですよ? 鮭だって見事に獲れる位に――――いやクマだけに」
鈴葉は鮭を獲るジェスチャーをしながらジャックに話しかけるが、もちろん話の通じる相手ではない。ジャックは包丁を振り上げながら鈴葉に攻撃を仕掛けるが『ロエティシア』で受け流し、カウンターとして『獣突』を使用しながら弾くように攻撃を行う。
弾かれてジャックが転がる所を篠森が『強弾撃』と『影撃ち』を使用しながら小銃『S−01』で攻撃を行う。
ジャックは攻撃を受けながらも自分でも攻撃態勢を忘れることはなく、高村に包丁を振り上げて攻撃を仕掛けようとする。
しかし高村はジャックの攻撃を回避し、横を抜き去ったタイミングを見計らって『アーミーナイフ』で思い切り突き刺す。そのまま勢いよく地面へと突き刺し、ジャックが動けなくなった所を『エネルギーガン』で立て続けに攻撃を行う。
そして高村の攻撃が終わった所でアズメリアが『月詠』で攻撃を行った。しかしジャックは素早く後ろへと下がり、アズメリアの攻撃を避ける。
しかしアズメリアはジャックの行動を読んでいたのか『ソニックブーム』で追撃を行う。ジャックが『ソニックブーム』の攻撃で怯んだ隙に遊馬が『流し斬り』で攻撃を行う。
ジャックが遊馬に反撃を行おうとしたのだが、遊馬は調達してきた『かぼちゃ』を前に出し、ジャックの攻撃は『かぼちゃ』にヒットする。
「同族を攻撃したら動揺するか――うわぁっ」
かぼちゃを刺したままジャックは包丁を振り上げ、遊馬に攻撃を仕掛ける。しかし間一髪で遊馬は攻撃を避ける。
「トリックオアトリート、まぁ、お菓子じゃなくて銃弾ですが‥‥」
リリィは呟くと同時に『鋭覚狙撃』と『急所突き』を使用しながら攻撃を行う。かぼちゃを刺したままのジャックの包丁は既に刃物ではなく鈍器となりつつある。逆を言えば、こちらの方が安全なのかもしれないが‥‥。
そして『隠密潜行』を使用して、ジャックの死角に赴き『影撃ち』で攻撃を行った。
「さぁてっ! 悪戯小僧にはオカシをあげなくちゃな! 遠慮なく持っていけ! 必殺!! 両断剣≪ギガブレイク≫」
遊馬はジャンプを行い、上から叩き落すように『両断剣』を使用しながら攻撃を行った。
「容赦はしません、これで終わりにさせていただきます」
鳴神が呟きながら攻撃を行い、鈴葉も『瞬速縮地』で逃げようとするジャックを追いかけながら『ロエティシア』で攻撃を行う。
「眠れ‥‥『You are not Guilty』――」
汝に罪なし、という意味の言葉をヴィンセントは呟きながら『クルメタルP−38』で攻撃を行った。
流石に全員の総攻撃を受けては、さすがの悪戯小僧・ジャックも立てるだけの生命力を残すことが出来ず、そのまま地面へと沈んでいったのだった‥‥。
〜ジャック倒し、活気の戻った商店街〜
「そういえば、最近食べられるキメラが多いみたいですけど、このキメラはどうなのでしょうね。折角包丁を手に入れたので‥‥これで頭を割ってみましょうか」
鳴神が『鬼包丁』をすちゃっと構えながら呟く。
「かぼちゃかぁ‥‥かぼちゃプリンとか、パンプキンパイとか‥‥仕事から戻ったら誰かに作ってもらおうかなぁ」
篠森がジャックのかぼちゃ頭を見ながらポツリと呟く。どうやら彼女は甘いものは好きなようだが、自分では作れないらしい。
「‥‥食べるんだ」
アズメリアがジャックの頭を見ながら呟く。外見がコレなだけで、普通のかぼちゃと思えば確かに食べられないとは限らない。
「それでは‥‥いざ」
鳴神がさっくりとジャックの頭を割った――――‥‥。
≪ し ば ら く お 待 ち 下 さ い ≫
ジャックの頭の中身、それはかぼちゃではなく‥‥ここまで言えば分かるだろう。普通の生物の中身だった。
「う‥‥かぼちゃ嫌いになりそう、それ早く何処かにやって」
篠森は口元を押さえながら視線をジャックから外す。
「やはりこういう場合もあるのですね」
鳴神は『鬼包丁』の汚れを落としながらしみじみと呟く。
結局、かぼちゃデザートはヴィンセントが作ってくれることになった。もちろん材料は普通のかぼちゃ、遊馬が盾として使用したかぼちゃを使って。
「この南瓜提灯って、魔よけになるらしいよ。一応、あのキメラの攻撃から守ってくれたし、何かご利益があるかもね」
遊馬は呟きながら、商店街にご利益のありそうな南瓜提灯を寄贈した。
「ふむ、ケーキや冷やしスープなどを作ってみたが‥‥」
ヴィンセントがかぼちゃデザートを能力者達に差し出す。彼が作ったデザートを食べ終わり、ジャックの片付けをした後、能力者達は報告のために本部へと帰還していったのだった‥‥。
END