タイトル:ある・まげ・ちょんマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/05 00:51

●オープニング本文


そのキメラは時代劇に出てくるお侍さんのような格好をしていて‥‥

髪型がちょんまげだった。

これはバグアがウケを狙っているのか、本気でやってきているのか、それは誰にも分からない‥‥。


※※※

「マゲ男、現る――ねぇ」

女性能力者がキメラの資料を見て、笑いを堪えながら小さく呟く。

今回、古城跡地に現れたのはちょんまげが特徴的なキメラ――『マゲ男』だった。

もちろん『マゲ男』が正式名称ではない、先ほど資料を見た女性能力者が勝手につけた名前だ。

「そんな害のないキメラなんじゃねぇの?」

男性能力者がため息混じりに呟くと「残念ながら怪我人が多数出ているのよ」と女性能力者が言葉を返して来る。

その『マゲ男』は刀を使用して通りがかった一般人に斬りかかって、重傷者はまだいないものの軽症者が続出しているのだという。

「とりあえず苦労する事はないでしょうけど、能力者が退治に向かったみたいね」

女性能力者が資料を見ながら呟く。

「場所も古城跡地でそれなりに広いし、戦闘には十分適した場所ね」

「資料を見る限りだけど、キメラ自体もそんなに強そう‥‥とは思えないからなぁ」

男性能力者が呟き、二人は無事に『マゲ男』が退治されるのを祈るのだった。

●参加者一覧

鳥飼夕貴(ga4123
20歳・♂・FT
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
鏡夜 深雪(ga7707
10歳・♀・GP
風閂(ga8357
30歳・♂・AA
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
世界のK.Y.(gb2529
26歳・♂・DF
常 雲雁(gb3000
23歳・♂・GP

●リプレイ本文

〜マゲ男を退治する為に集まった能力者達〜

「ちょんまげのキメラ‥‥今はこんな格好しているから、凄く興味あるな」
 鳥飼夕貴(ga4123)が資料を見ながら小さく呟く。
「さて‥‥お化け退治しますか、何だか侍を馬鹿にしているのかどうだか分かりませんが、この刃物男をきっちりと成敗したいと思います」
 辰巳 空(ga4698)がちょんまげキメラを見ながら苦笑混じりに呟いた。
「ふふふ‥‥侍相手で楽しみです‥‥」
 鏡夜 深雪(ga7707)がどこか楽しげに呟く。彼女は自分でも日本刀を使って戦うので、侍と戦ってみたいという気持ちから今回の任務に参加したのだ。
 そして、鏡夜と同様に侍キメラと戦うのを楽しみにしている男性能力者がここにいる。
「髷を結った侍がキメラか‥‥是非、手合わせ願いたいものだな――討伐であるのは分かっているぞ?」
 風閂(ga8357)が他の能力者達に呟く。彼は時代劇が好きなのか口調も時代劇っぽく古風なものだ。戦いになるのを待ちきれないのか、何処となく嬉しそうな表情を風閂は見せていた。
「さぁて‥‥ハルマゲドンの始まりだ‥‥」
 やる気を見せる台詞なのだが、紅月・焔(gb1386)は覇気がなく目が死んでいる。その理由は女性がほとんどいない為、彼の生きがいとも呼べる煩悩を発散する場がないからだ。
 そして覇気のない紅月とは真逆で世界のK.Y.(gb2529)は覇気が有り余っている状態だ。
「ワァーオ! おサムライサーン! ジャパンにもやっぱりまだおサムライがいるんデスネー! ミーはムービーショーでしか見た事がなかったから感激デース!」
 もう今から興奮してきまシター! と世界のK.Y.は叫びながら「頑張りマショー!」と一緒に任務を行う能力者達に挨拶を行っていた。
「マゲ男、か‥‥場所が場所だけに似合いすぎているような‥‥それにしても何で侍なんだか‥‥」
 首を傾げながら常 雲雁(gb3000)がため息混じりに呟く。
 今回、侍キメラが現れた場所は『古城跡』という事で、現れたキメラと場所が異常なほどにぴったりなのだ。
 まさかバグアにも時代劇が好きな奴がいるとは考えにくいが『何故?』と考えずにはいられなかったのだ。
「それでは行きまショー! おサムライサーンを見る為に行きマショー! ジャパニーズはいつもおサムライが生で見られてうらやましいデース‥‥」
 世界のK.Y.はしょんぼりとしながら呟く。ちなみに日本にいれば侍が必ず見られるという事はない。むしろ今回のようなキメラや時代劇、本などくらいしか見る機会はないだろう。
「出発の前に確認をしましょうか」
 常が地図を広げながら呟く。現れる場所が分かっているとはいえ、古城跡地はそれなりに広い為、場所を絞っておくに越した事はないと常は考えた。
「古城跡もそこそこ広いようだし、念の為に、ね‥‥」
 常は呟きながら戦いやすい場所と侍キメラが現れる場所に印をつけていく。襲われた一般人の証言を纏めたものがあり、それらを照らし合わせてみると、ある場所に集まっている事が分かった。
 恐らく、その場所こそ侍キメラが潜んでいる場所なのだろう。
「さぁ、行こうか」
 風閂が呟き、能力者達は侍キメラが待ち構える『古城跡地』へと出発し始めたのだった‥‥。


〜古城跡地、潜む侍キメラ、ちょんまげ長すぎです〜

 今回の能力者達は、迅速に侍キメラを退治する為に班を二つに分けて行動する事にしていた。
 囮班として鳥飼、鏡夜、世界のK.Y.の三人。
 討伐役として辰巳、常、風閂の三人。
 そして紅月は第三の隠し役――遠くからの応援役と本人は冗談めかしているが、銃での援護射撃を役割として受けている。
「ふふ‥‥俺の射撃に侍が勝てるかな」
 台詞はカッコイイのだが、やはり目が死んでいる為、逆に不気味さを感じる。
「さて、それじゃ囮、行ってくるね」
 鳥飼が呟き、鏡夜、世界のK.Y.と共に侍キメラが現れる地点へと向かい始めた。

※囮班※
 囮となる三人は、武器は侍キメラから見えないように隠し持つ事にして、目立つように歩く。
 人もいない古城跡地なので、普通に歩いているだけでも十分目立つ。
「ワーォ! ココがジャパニーズキャッスルデスカー! 何もなくて綺麗デース!」
 世界のK.Y.は古城跡地を見渡しながら大きく叫ぶ。きっと彼は『囮役』にこれ以上ないほど適している。
「きっと、きみの声を聞きつけて侍キメラがやってくる‥‥予想を裏切ってくれないから嬉しいね」
 鳥飼は言葉の途中で、少し先を見ながら苦笑する。鏡夜が「何がです?」と聞きながら鳥飼の視線の先を見る。
 すると「おお、マゲ男ですね」と鏡夜が感心したように呟く。
「おサムライサーーーーンっ!」
 世界のK.Y.は本物の侍ではないが、限りなく侍に近い格好をしたキメラを見てテンションを急上昇させる。囮班の三人の前には新撰組を思わせるような格好をして、ちょんまげが異常に長い侍姿のキメラが日本刀を構えながら此方を威嚇するように睨み付けてくる。
「あら、立派なマゲ、本格的だね、凄く似合っているわよ‥‥うん」
 普通の長さならば、と鳥飼は言葉を続けたかったが、キメラに言葉が通じるはずもなく鳥飼は言葉を止めた。
「それじゃあ‥‥討伐班がいる場所まで誘導しましょう」
 鏡夜が呟きながら『朱鳳』と『氷雨』を構える。それに合わせるように侍キメラも日本刀を構える。
「オーゥ! チャンバラデスネー! 受けてたとうじゃないデスカー!」
 囮班はそれぞれ武器を構えて、討伐班が待ち伏せている場所まで侍キメラを誘導し始めた。

※討伐班※
「‥‥どう見ても‥‥お化け屋敷状態ですな‥‥ここって」
 中はどうなっているのやら、辰巳は言葉を付け足しながら呟く。
「‥‥? どうしたの?」
 常が拳を強く握り締める風閂を見ながら問いかけると「キメラとは言え、侍と戦えるのが楽しみで」と風閂は即答で言葉を返した。
「2008年のこの時代に侍と一戦交える事が出来て、俺は嬉しいぞ」
 だから早く来い、キメラ――と言葉を付け足して風閂ははやる気持ちを抑えていた。
 そして、彼の言葉とほぼ同時に世界のK.Y.の大きな声が聞こえ、能力者達は本格的に戦闘開始の準備を行い始めた‥‥。


〜侍キメラとの戦闘開始、ちょんまげがびよんびよんしてます〜

「‥‥珍しい敵だ‥‥が、やらせてもらうぜ、全力でな!」
 くわっと目を見開きながら紅月が隠れている場所から小銃『シエルクライン』を構える。しかし『くわっ』と目を見開いても煩悩パワーが足りないのか、目は死んだままだ。
 だけどいくら『目が死んでいる』とは言っても彼はガスマスクフェイスを着用している為に他の能力者には『死んだ目』は知られる事がない。
「ほら、その日本刀は飾りじゃないんでしょう? 攻撃してみなよ」
 鳥飼が侍キメラを挑発するように呟き、侍キメラが攻撃してくるのを待つ。鳥飼が誘導を行いながら、囮班と討伐班で侍キメラを囲み、包囲から逃げられないようにそれぞれが攻撃を繰り出す。
「そんなものですか‥‥所詮は紛い物ですね」
 辰巳が呟きながら『真音獣斬』と『流し斬り』を使用しながら攻撃を繰り出す。そして辰巳に気を取られている間に『二段撃』で鏡夜が攻撃を仕掛ける。
「子供だからって甘く見ると痛いですよ‥‥」
 鏡夜が呟き、次の攻撃に移ろうとした時、侍キメラの攻撃が鏡夜を襲う――が、援護射撃の役割を受けていた紅月が小銃『シエルクライン』で攻撃を行い、鏡夜はダメージを受ける事はなかった。
「貴殿とは一対一で勝負したいのだが、そうもいかぬのでな。多数で勝負致す」
 覚悟せい! と言葉を付け足しながら風閂が叫び『ソニックブーム』を二連発で使用して、侍キメラが怯んでいる隙に『イアリス』と『ヴァジュラ』を構えて、侍キメラに攻撃を行う。
「貴殿と戦えて、俺は嬉しいぞ! 胸が高鳴るわ!」
 紛い物でも『侍』と戦える喜びを隠し切れない風閂は楽しそうに攻撃を繰り出す。
「おサムライサーン! 勝負デース!」
 世界のK.Y.が叫びながら『イアリス』を構えて『流し斬り』を使用して攻撃を行う。六名の能力者に囲まれ、そして援護として一人が侍キメラが攻撃を行おうとするたびに邪魔するように射撃を行ってくる。
 だから侍キメラは思うように攻撃を行うチャンスがない。
「ああああああっ!」
 侍キメラは自棄になったように大振りで攻撃を行うが、常はそれを容易く避ける。
「そんな大振りの攻撃は、当たらないよ」
 大振りのせいで侍キメラには隙が出来て、常はその隙を見逃さず『急所突き』を使用しながら『エクリュの爪』を装着した靴で回し蹴りを行う。
 その頃の紅月は六人の能力者から少し離れた地点でぽつんと宙を見ていた。しかし援護態勢はバッチリなので、そこが何となく紅月の凄いところなのかもしれない。
 ‥‥目は死んでいるけれど。
 その後、七人の能力者の総攻撃を受けて、侍キメラは散っていき「ウィーアーナンバーワン! イェエエエエアア!!」と世界のK.Y.の叫び声が古城跡地に響き渡ったのだった‥‥。


〜侍が去りし、古城跡地〜

「敵ながら、見事な腕前だった‥‥キメラでなければ、良き好敵手であったのだがな‥‥」
 侍キメラを退治した後、風閂が複雑そうな表情で呟く。
「ふふ、敵じゃなかったらいいお友達になれたのに、残念だな」
 鳥飼も風閂と同じ考えだったのか、小さく呟く。
「まさか二体目がいるとは思いにくいのですが‥‥まだいるかどうかを調べてから帰還しましょうか」
 辰巳が古城跡地を見渡しながら呟く。二体目がいるならば、先ほどの戦闘で姿を現している筈だから、考えにくいが念には念を――で古城跡地を調べてから帰還することにした。
「それにしてもキメラって色々いるんだね、芸者とかそのうちに出てきそう」
 鏡夜が苦笑しながら呟く。
「芸者、女型キメラか――今回もそれが良かったな」
 ふ、と憂いた表情で紅月が呟いた。
「それにシテモ、フジヤマ、ゲイシャ、スモウ、ハラキリ‥‥ガッデム! ジャパンには見たいものがありすぎデース!」
 世界のK.Y.は頭を抱えて叫ぶ。
「はは‥‥そうだ、怪我人とかはいない? 救急セットがあるから治療するけど」
 常が能力者達に問いかけると、能力者達は首を横に振る。幸いにも今回の任務で怪我人はいなく、無事に侍キメラを退治する事が出来た。
「怪我がないのは何よりだね、それじゃあ報告に戻ろう」
 常が呟き、侍キメラに遺体は能力者で古城跡地に埋葬したあと報告のために本部へ帰還したのだった‥‥。


END