タイトル:【HD】週刊記者を救助!マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/14 01:42

●オープニング本文


何でこんな事になってるのかな‥‥。

私はただ単に、友達の仕事を手伝いに来ただけなのに‥‥。

※※※

クイーンズ記者・土浦 真里は友人から「仕事を手伝って」と泣きつかれて、北海道・札幌に来ていた。

まだ冬本番ではないにしても、最低気温が3℃という場所にいるのはマリもつらいものがあった。

「う〜‥‥寒さが骨身に染みるわ〜‥‥年かね」

マリは取材道具を持ってテレビ局の中まで小走りで入りながら小さく呟く。

今回、マリが「手伝って」と言われた仕事はテレビ局内の取材だった。マリの友人も北海道メインでタウン誌のようなものを作っており『クイーンズ』と違って、マリの友人一人で作成している為、取材に赴く暇がなかったのだとか‥‥。

「すみません、取材に来ることになってた土浦ですけど‥‥」

テレビ局内を勝手にうろつくワケにも行かず、マリは近くにいた男性に話しかけた。

「取材? 許可は取ってあるの?」

男性が訝しげな表情でマリを見ながら言葉を返し、マリは『許可証』と『スタッフ』と書かれた腕章を見せた。

「あぁ、あのタウン誌の‥‥代わりの人を行かせるって連絡が来てたけど、あんただったのか」

どうやらマリの事を友人はテレビ局に知らせてくれていたらしく、男性が態度を変えて目的の場所まで案内をしてくれる事になった。

※※

「はぁ、人の雑誌だと取材も緊張するなぁ‥‥っつーかお腹空いた、疲れた」

目的のスタジオまで案内された後、マリは取材を始め、予定の半分ほどが終わった頃だった――‥‥。

テレビ局内に物凄い音が響き渡り、それと同時に地震のように建物が揺れる。

「え―――っ?」

マリが近くの壁に手を置いて「何があったの?」と男性に話しかける。

「分からな「キメラだぁっ!」――え?」

慌てたようにスタジオに入ってくる男性が「キメラが局を襲ってる」と叫んでいる。

「何でもう私が来ればこんな事になっちゃうわけ?」

今回はホントに真面目な取材だったのに、とマリは言葉を付け足しながら呟く。

「とりあえず逃げよう。巻き込まれるのもゴメンだしな」

男性がマリに向けて話しかけ、マリも首を縦に振って局内から逃げるために走り出す。

しかし‥‥局内には数匹のキメラが闊歩していて、マリと男性はキメラに気づかれないように静かに息を殺して逃げる。

だけど闊歩しているキメラの一匹に気づかれ、大きな手を振り上げてキメラが攻撃を行ってくる。

「きゃあっ!」

「うわぁっ!」

幸いにもキメラの攻撃が二人に当たる事はなかったが、マリと男性の間には廊下に積み重ねられていた荷物や機械類が倒れて通れそうにもない。

「私のことはいいから逃げて! 私はあっちで逃げ道を見つけるから!」

テレビ局の入り口に近い場所にいるのは男性の方で、マリの事を思ってか中々逃げようとしない。

そんな男性にマリが叫び、来た道を戻っていく。

「上に行けば非常口があるから!」

男性はマリに向かって叫び、申し訳なさそうに入り口から外へと出て行った。

※※

「二階の非常口‥‥これじゃあ‥‥」

マリは非常口を目指して走ったのだが、非常口の扉は何かがぶつかったのか拉げており、とても開きそうにない。

「他にも非常口は‥‥」

そんな時に携帯電話が鳴り、画面を見ると仕事を頼んできた友人からだった。

「あんた、今どこ!? テレビ局がキメラに襲撃されてるって‥‥」

その中よ、とマリは言いたかったが気にさせまいと「今、脱出したところ」と嘘を吐いた。

「良かった‥‥テレビ局内の人も十数人残されてるみたいだけど‥‥大丈夫かな」

電話の向こうで友人は心配そうな口調で呟く。

心配そうな口調を聞いて、その『十数人』に自分が入っているという事は余計に言い出す事が出来なかった。

「え‥‥? ごめん、後からまた電話する」

マリは何かを見つけたようで、急いで電話を切り、見つけた『何か』の方へと慌てて駆け寄る。

「‥‥女の子?」

マリが小さく呟くと、ふわふわとした金色の髪に大きな赤いリボン、そしてリボンとお揃いの赤いドレスに実を包んだ少女がゆっくりとした動作で振り返る。

「何だろ、女の子‥‥? 子役の子供かな‥‥」

「あんた、誰?」

マリがぶつぶつと文句を言っていると少女が突然話しかけてくる。

「あ、私は土浦 真里。貴方と一緒でここに取り残されちゃった一人ね」

あはは、と苦笑しながら呟くと少女は口元に手を置きながら「ふぅん」と素っ気無い返事を返してくる。

「とりあえず、ここから逃げよう? キメラが沢山いて危ないし」

ね? とマリは話しかけながら脱出のために局内の見取り図を見始める。

少女は何処か面白そうに、わたわたと忙しなく動き回るマリを見て微笑む。

うかつにもマリはまだ知らない。

目の前の少女が『ただの人間』ではないという事に‥‥。

『紅い魔女』と謳われるリリアン・ドースンという『バグア』側の一員だと言うことに‥‥。

※※

「お願い、さっきマリから電話があって北海道のテレビ局内に取り残されているみたいなの」

UPC本部へ依頼をしに来たクイーンズ記者のチホが慌てたように話し出す。

「お願い、キメラがいるという事も分かっているんだけど、マリの保護を最優先にして欲しいの。無謀な事は控えて、マリを助けて‥‥お願い」

チホの願いを聞き、能力者が北海道に出発したのは、それからすぐの事だった‥‥。

●参加者一覧

神無月 翡翠(ga0238
25歳・♂・ST
神楽克己(ga2113
15歳・♂・FT
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
キャル・キャニオン(ga4952
23歳・♀・BM
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
風花 澪(gb1573
15歳・♀・FC

●リプレイ本文

 今回は、土浦 真里(gz0004)が北海道出張にてトラブルに巻き込まれた事から始まった。
「マジか‥‥トラブルに巻き込まれた? 一体何をやっているんだよ‥‥」
 神無月 翡翠(ga0238)が北海道に向かう途中、ため息混じりに呟く。
「マリさんってつくづくキメラに好かれる星の元に生まれているのかしら? まさか出張先でもキメラ襲撃に巻き込まれるなんてね」
 小鳥遊神楽(ga3319)が騒動場所になっているテレビ局の見取図を見て、頭に地図を叩き込みながら小さく呟く。
「絶対に助けるから‥‥安全な場所で待っていてね」
 キョーコ・クルック(ga4770)はどこか祈るような表情で、テレビ局内に取り残されているマリを思いながら呟いた。
「欧米では天賊の才で幸福をもたらす者をギフト、不幸や災いをもたらす者をカースと言うそうですが‥‥真里さんはどちらと言うべきなんでしょうねぇ‥‥」
 玖堂 鷹秀(ga5346)は果てしなく遠い目をしながら呟くと「また無茶をして‥‥今回こそはセロリフルコースです♪」と櫻杜・眞耶(ga8467)が楽しげに話す。
「ま〜ったく、よく事件に巻き込まれるハプニング女王真里りん! 無事に帰ったらジュースくらい買ってもらうんだから!」
 風花 澪(gb1573)が拳を強く握り締めながら呟いた。
「私も転職先死守の為に戦いますわ」
 キャル・キャニオン(ga4952)が呟くと「そうだな」と神楽克己(ga2113)が言葉を返す。
「俺も近頃やられてばっかりだったし、ここらで汚名返上名誉挽回拍手喝采と行くか」
 神楽が呟き、能力者達は北海道を目指し行く。
 しかし‥‥彼らはまだ知らない。マリの近くにリリアン・ドースンというバグア側の一員がいるという事を‥‥。


〜突入、テレビ局〜

 今回、能力者達は迅速に真里を、そして出来るならテレビ局内に残されている局員達を救出すべく班を二つに分けて行動を起こす事にしていた。
 A班・神無月、神楽、キャル、櫻杜。
 B班・風花、キョーコ、小鳥遊、玖堂。
 それぞれ突入場所を違えて、少しでも早く真里を見つける事に専念する事にしていた。A班は正面玄関から、B班は非常口から突入する。局内にはキメラが闊歩しているという情報があったが、マリを見つけるまでは無駄な戦闘は控え、あくまでも『救出』のみに専念すると能力者達で決めていた。
「くれぐれも無茶だけはしないように気をつけましょう」
 櫻杜が呟くと「分かってる、お互い頑張ろう」とキョーコが言葉を返し、二つの班はそれぞれ別の入り口からテレビ局内へと侵入したのだった‥‥。

※A班※
「俺達が行くまで、大人しくしていれば、良いんだが‥‥無理だろうな〜」
 神無月は盛大なため息を吐きながら小さく呟く。相手は『あの』破天荒なマリなのだ、大人しくしていろという事に無理がある。
「建物や中身の方は大して被害はないですけど‥‥キメラが闊歩しているテレビ局というのは落ち着かないものですね」
 櫻杜が呟き、他の能力者達もテレビ局内を見渡す。するとテレビ局という場所に不釣合いなキメラが数匹闊歩している。
 その中の一匹は明らかに進路を妨害しており、戦闘は避けられない状況だった。
「道をあけてもらうぜっ!」
 神楽が呟くと同時に『先手必勝』を使用しながらキメラへと近寄り『流し斬り』を使用しながら攻撃を行う。彼の攻撃が終わると神無月が小銃『S−01』で射撃攻撃を行い、迅速にキメラ退治を行う。
 もし下手に戦いが長引けば他のキメラ達も集まってくるかもしれないと考えたからだ。
「この後、人命救助が待っているんですの。ご退場、願いますわ」
 キャルも小銃『S−01』で攻撃を行い、櫻杜が『ショットガン20』でトドメを刺して、能力者達は局内の奥へと進んでいった。

※B班※
「マリ‥‥無事でいてよ、お願いだから」
 キョーコは非常口から局内に入りながら小さく呟く。非常口は一人分くらいの隙間しか開かず、風花が先に入って障害物となっていた荷物などを『豪力発現』を使用して退かして、他の能力者達も通れるように非常口の扉を開いたのだった。
「局内から脱出した人に話を聞いてみたけど、あんまり役に立ちそうな話はなかったな〜」
 風花はため息混じりに呟く。能力者達はテレビ局に到着した後に逃げ出してきた一般人達に話を聞かせてもらおうと試みたのだが「いきなりの事でよく覚えていない」と答える人間がほとんどだった。
「まぁ‥‥いきなりの事でしたでしょうし、無理ないと言えば無理もないのかもしれませんけどね」
 玖堂が苦笑混じりに言葉を返す。
「それにしてもマリさんは何処にいるのかしら‥‥流石に広いテレビ局の中を隅々まで捜索というのは少しだけ無理があるわ」
 小鳥遊が呟くと、不自然に扉の開いたスタジオが視界に入った。
「おかしいですね‥‥」
 玖堂が扉を見ながら呟き「何が?」と風花が言葉を返す。
「スタジオから逃げてきた人もいるでしょうし、扉が開いてるのは普通なんじゃない?」
 小鳥遊が呟くと「開き方です」と彼は短く言葉を返した。
「扉がスタジオの中にあるという事は、スタジオの中から『引いて』扉を開いたと言う事ですよね、焦っている人間がわざわざ引くでしょうか」
 玖堂の言葉に「確かに‥‥でも、引く事でしか扉が開かないだけじゃないのかい?」とキョーコも言葉を返して扉を試しに引いてみるが、扉はどちらから押しても引いても開くタイプのものだった。
 つまり、スタジオの『外』から押して扉を開けたという事になる。誰かが避難しているのかもしれないと思い、能力者達はスタジオの中へと入る。
 そこで見慣れた姿を見かけ、キョーコがほっとしたように「マリ〜、無事だ‥‥」と話しかけるが言葉は最後まで続かなかった。
「マリちゃん、知り合い?」
 マリにとっては初めて聞く声、見る姿でも、能力者達にとっては『何でここに』という人物だった。
「何でこんな所にいるんだい! リリアン・ドースン!」
 キョーコが大きな声で叫び、通信機でA班に連絡をする。ぴりぴりとした空気の中、状況を分かっていないのはマリ、ただ一人だった。


※少女の中に宿る純粋な闇は※

「え、ちょっと‥‥どうしたの? 何か皆‥‥怖い顔してるけど。もしかして怒ってる? いや、私だってこんな事に巻き込まれるとは思わなかったし、そんなに怒んないでよ」
 自分がまたまた騒動に巻き込まれた事に対して能力者達が険しい顔をしているのかと勘違いしたマリは慌てて言い訳を並べ立てる。
 その隣でリリアンは慌てるマリを楽しそうに見ていた。
「これはこれは‥‥ミス・ドースン。お会い出来るとは光栄です。私は玖堂と申します、宜しければお見知りおきを」
 玖堂が丁寧に呟く姿を見ながら『そんなに有名な子役だったんだ‥‥サイン貰おうかな』などと能天気な事をマリは考えていた。
「マリさん!」
 いつもは諭すように話しかけてくれる小鳥遊すらも冷や汗のようなものを浮かべながらマリの名を呼ぶ。
 その時に別行動を行っていたA班が合流して、マリと一緒にいる人物を見て驚愕の表情を浮かべる。
「よぉ、リリアン。人間なんかと遊んでいないで俺とデートしようぜ」
 神楽が『刀』を構えながらリリアンに話しかける。
「人間‥‥なんかって何言って‥‥?」
 そこでマリも『まさか』という疑問が浮かび上がってきたのだろう、リリアンを見る表情を一変させた。
「ごめんねぇ、別に騙すつもりはなかったんだけど、マリちゃんが面白いくらいに勘違いしてくれるから、つい――ね」
 リリアンの言葉に「マリはんを返してもらうよ!」と櫻杜が叫び『照明銃』をマリとリリアンの上空に発砲する。咄嗟の事で気を取られたリリアンの側からキャルが『瞬速縮地』を使用してマリに近づき、リリアンから引き離した。
「さて、人質は返して頂きました。援護しますので、さっさと終わらせましょう」
 神無月が呟きながら『練成強化』で仲間の能力者達の武器を強化する。そして彼の言葉に「人質?」とリリアンが首を傾げながら呟く。
「マリちゃんを人質にした覚えなんて無いのに‥‥」
 リリアンが少し不服そうに呟いている間に、小鳥遊は武器を『フォルトゥナ・マヨールー』に持ち替えて『貫通弾』を使用しながらリリアンに攻撃を仕掛ける――が、彼女が潜ませていたキメラが割って入ってきて、小鳥遊の攻撃はキメラへと直撃した。
「残念〜」
 リリアンが茶化すように呟くと「全く‥‥力でねじ伏せないといけないのかねぇ」と神楽がため息混じりに呟く。
「どいつもこいつも‥‥愛が足りねぇよ。仕方ない、デートコースは地獄の三丁目に変更だ、100年後に俺が行くまで、血の池に浸かって待ってな」
 神楽は抜刀しながら呟き、リリアンに攻撃を仕掛けようと走り出す。しかしキメラが立ちはだかるが、小鳥遊や櫻杜の攻撃によって神楽はキメラの横をすり抜け、リリアンへと攻撃を行う。
「ふふ、キメラが一匹なんて言った覚えは無いけど? 地獄の三丁目‥‥先に行ってみる?」
 リリアンが呟くと風花が『ソニックブーム』と『流し斬り』で攻撃を行う、もちろんリリアンではなくキメラの方に、少し身体の大きなキメラは攻撃されて倒された事により、リリアンの方へグラリと傾きながら倒れていった。
 このままこうしていてもキリが無いと考えたキョーコは小銃『S−01』で上にある照明を狙い撃ち、次々に照明が落ちてくる。
「皆は早くマリを連れて逃げて! あたしも後から追うから!」
「相手が『紅い魔女』なら、こっちは『碧海の女王』だって事を思い知らせてやるよ!」
 櫻杜が叫び、キョーコは『蛍火』を構えて「悪いけど暫くあたしに付き合ってもらうよ!」とリリアンに攻撃を仕掛けるべく走り出す。その時に玖堂は『練成超強化』をキョーコに使用していた。
 そして危険とは思いながらも一般人であるマリの救助を最優先にした能力者達はリリアンとキョーコをスタジオに残して、テレビ局から逃げるように走り出す。
「あ! 逃がさないんだからね!」
 リリアンが『エネルギーガン』で攻撃を行うが、それはキョーコではなく、逃げる為に走り出した‥‥マリに当たった。当たったとは言っても肩を掠める程度で終わり、能力者達はマリを連れてスタジオから出て行ったのだった。


〜キメラが闊歩する局内からの脱出劇〜

「おい、無事か?」
 神無月が逃げる途中で傷を負ったマリに問いかけると「うん‥‥大丈夫‥‥」と俯きながら言葉を返してきた。
 テレビ局内からの脱出の最中、キメラが襲ってきたりしたが小鳥遊が『ドローム製SMG』で攻撃を仕掛けて、実力行使で道を開く。
「もう、しつこいですわね」
 キャルがため息を吐きながら呟き、廊下に陳列されていた棚や備品などを小銃『S−01』で撃ち、キメラの走路を妨害する。
「号外の準備がありますのよ、生き延びましょう」
 キャルの言葉に「‥‥うん」とマリは言葉を返し、テレビ局内を走り回る。
「とりあえず、早くここから出よう、話はそれからだね」
 風花がキメラを斬りつけながらマリに向けて話しかけ、B班が突入してきた非常口からテレビ局内を後にしたのだった。
 そして、時間を見計らった頃にキョーコが『閃光手榴弾』を使用して、リリアンの目を眩ませて櫻杜と共に窓から飛び降りてテレビ局内を後にした。
「あーぁ‥‥つまんないの」
 能力者達がマリを連れて逃げた後、リリアンは面白くなさそうに呟き、自販機の前に立つ。
 しかしジュースを買おうにも、リリアンは自販機の使い方が分からない為、ボタンを何度も押すがお金を入れていないからジュースが落ちてくる事も無い。
 最後にはイラつきが限界に来たのだろうか、リリアンは自販機を殴り壊して中からジュースを取り出したのだった。


〜任務成功、でもマリの心境は‥‥〜

「疲れた。今回は酷い怪我してないから、良いけどさ、親切心も程々にしておけよ? 知らぬが仏ほど怖い事ねぇぞ?」
 神無月がマリの傷を『練成治療』で治療しながら話しかける。
「うん‥‥ごめん」
 いつもと違って大人しいマリに神無月は多少面食らいながらも治療を続ける。
「やれやれ、俺には女の子を口説く才能ってのがないみたいだね」
 神楽がため息混じりに呟くと「地獄でデートしようって言われてついてくる女の子はいないでしょう」と小鳥遊が苦笑しながら言葉を返した。
「そういえば‥‥まやちゃんとキョーちゃんは大丈夫だった‥‥?」
 マリが問いかけると「大丈夫ですよ」と櫻杜が言葉を返す。
「でもさすがはステアーのパイロットという所か‥‥」
 キョーコが少し真剣な表情で呟くとマリは申し訳ない表情を見せた。
「私これ映画にしますわ! 大ヒットよ」
 キャルの言葉に「クイーンズには映画費用出す予算はないよ?」と元気の無い声で言葉を返す。
「真里りん、大丈夫だった〜?」
 風花がマリに『ミネラルウォーター』を渡しながら問いかけると「何とか」とマリは短く言葉を返した。
「も〜、LHに帰ったらジュースくらい奢ってもらうからね〜?」
 風花の言葉に「あは、結構安いお礼だね?」とマリは少し笑みを浮かべて呟く。
「真里さん‥‥本当に一度、厄払いをした方が良いかと思います‥‥」
 壁にもたれかかりながら玖堂が話しかける。
「そう、かな? ‥‥でも」
 今回は参った、とマリが顔を隠すように膝を抱えて小さな声で呟いた。救出してからマリの様子がおかしい事は八人の能力者、誰もが分かっていたことだ。
 そして恐らく原因はリリアン・ドースンというバグア側の一員に出会った事だろう。いくら無茶な事ばかりしている破天荒記者だと言っても『知能を持つ敵』に出会ったのは初めてなのだから。
「まぁ、真里姉ちゃん‥‥とりあえず元気出すといいよ」
 神楽の言葉に「ありがとう」と俯きながらマリは言葉を返す。
 テレビ局からマリを助けだした、確かにこれで任務は達成なのだが残念ながら高速艇でLHへそのまま帰還‥‥は出来なかった。
 高速艇でLHへ向かおうとしたら、恐らく高速艇は敵のヘルメットワームに撃墜されてしまうかもしれないからだ。
「全く‥‥素直に返してくれないね」
 キョーコが空を見上げながらため息混じりに呟く。そして櫻杜は地図を取り出して、現在地点から苫小牧へ向かう為の進路を導き出す。
「最初は453号線を支笏湖方面に南下してから、東岸分岐から276号に出て山道を更に南下すれば苫小牧までいけますわね」
 キャルが地図を覗き込みながら呟く。何故、能力者達が苫小牧へと向かうのかと言うと、苫小牧の沖には小型空母が二隻と護衛艦が数隻動いているという情報を掴んだからだ。
「とりあえず、苫小牧から足の速い船を使わせてもらえればいいんだけどな‥‥」
 神楽が呟き、能力者達はマリを連れて苫小牧へと向かい始め、何とか船を使わせてもらう事が出来て、LHへ向けて帰還し始めたのだった‥‥。


END