タイトル:見習い記者を助けて!マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/24 02:03

●オープニング本文


‥‥ここは何処でしょうか?

何でボクはこんな所にいるのでしょう‥‥。

そして、ボクを餌のように見ている目の前のキメラ‥‥。

もしかしてボク、ピンチですか?

※※※

今回は『バグアやキメラがいる中でもこんなに綺麗な場所が残っている』という特集をクイーンズで組むらしく、風景写真を撮る為に室生 舞は山の中に来ていた。

「ふぅ‥‥やっぱり自然っていいなぁ」

空を仰ぎ、木々がざわめく音を聞きながら舞は少し笑んだ。

「あ――あれ綺麗‥‥」

空を仰いだ時に木々の間から木漏れ日のように差し込む太陽の光を見て小さく呟き、舞はカメラを構えて写真に納める。

「もっと昔は綺麗な場所が多かったんだろうなぁ‥‥」

バグアやキメラが闊歩する世の中になって、様々な場所が攻撃され、自然が失われてきた。

その中には今、舞が見ている景色より綺麗な場所も沢山あった事だろう。

それらが失われたことが舞は悲しく、少しだけ俯いた。

「‥‥はっ、チホさんに五時には帰るようにって言われてたんだ‥‥」

時間を見ると、約束の時間まであと少し、帰る時間も考えればあと少ししか取材をしていられないだろう。

「もう少し写真を撮ってから帰ろ――――う?」

ふわり、と浮遊感が突然舞を襲い、舞は下を見る。

すると、そこは崖になっていて真っ逆さまに落ち――る前に舞は崖の出っ張りを掴んで難を逃れた。

「あ、危ない‥‥気をつけなくちゃ」

ふぅ、と安心からかため息を漏らすと同時に舞の掴んでいた出っ張りが『ぼこ』と音をたてて崩れる。

まさに絵に書いたような不幸の連続に「きゃああああっ!」と舞は叫びながら落ちて行く。

そして、もう駄目だ――と覚悟した時に『ぼすん』と何かの上に落ちる。

「え、え、え?」

舞が落下したものを見ると、それはそれはもう大きな‥‥鳥型キメラだった。

「もう‥‥駄目‥‥」

ぐら、と気の遠くなるような感覚が舞を襲い、鳥型キメラの上で気を失った。


※※

「お・そ・いっ!」

クイーンズ編集室では、青筋を立てたチホが玄関先で仁王立ちをしながら呟いている。

「‥‥子供じゃないんだし、門限五時にしてやるなよ‥‥「子供でしょ!」‥‥ぐふっ」

翔太の言葉にチホはアッパーをして、翔太を倒す。

「携帯に連絡しても電源切られてるのか繋がらないし! 門限破るような子じゃないはずなのに」

「たぶん、アレだ。彼氏が出来たんだよ、かーれーしー」

翔太が床に突っ伏したまま呟き、チホの蹴りが炸裂する。

「もう心配の限界! 能力者に連絡して捜索してもらうわ」

チホは携帯電話を取り出して、能力者達に連絡を入れたのだった‥‥。

●参加者一覧

神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
的場・彩音(ga1084
23歳・♀・SN
香倶夜(ga5126
18歳・♀・EL
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
緋月(ga8755
17歳・♀・ST
朔月(gb1440
13歳・♀・BM
芝樋ノ爪 水夏(gb2060
21歳・♀・HD
神崎 信司(gb2273
16歳・♂・DG

●リプレイ本文

〜行方不明になった新人記者〜

 今回は室生 舞(gz0140)が行方不明になったという事が始まりだった。
「舞さんが‥‥行方不明ですか? これは‥‥早く見つけないと‥‥大変ですね‥‥山の中‥‥この時期‥‥すぐ暗くなるし‥‥寒いし‥‥」
 良い事ないですから、と神無月 紫翠(ga0243)と呟いた。
「そうね、早く舞さんを助けて他の記者さん達も安心させてあげましょう」
 的場・彩音(ga1084)が神無月に言葉を返すように呟く。
「う〜ん、こんな時間まで連絡もなく帰って来ないなんて、きっとどこかでトラブルに巻き込まれているんだよ。早く探しに行かないとね」
 香倶夜(ga5126)が呟くと「まさか‥‥真里さんに愛想尽かして出て行ったとか!?」と櫻杜・眞耶(ga8467)が口元に手を置きながらハッとしたように呟く。ありえそうな話なので、マリを知る能力者達は否定する事は出来なかった。
「ま、まぁ‥‥でも取材で出かけたらしいですしそれはないんじゃ‥‥それより、室生様は無事でいらっしゃるでしょうか」
 緋月(ga8755)は心配そうに呟くと「普段面倒をかけなさそうな奴だから余計に心配だな」と朔月(gb1440)も言葉を返した。
「トラブルに巻き込まれるのは、真里さんだけだと思っていたのですが」
 真剣な顔で芝樋ノ爪 水夏(gb2060)が呟くと「依頼者のチホさん、なんだかちょっと過保護な気もするけど‥‥」と神崎 信司(gb2273)が考え込むように呟いた。
「ま、それだけ室生さんを大切に思ってるんだね。出来るだけ保護してあげられるように、微力を尽くす事にしようか」
 神崎は言葉を付け足して、能力者達は舞を探すために、舞が取材に向かったと思われる山へと出発していったのだった。


〜山の中、行方不明の舞を探せ〜

 今回、能力者達は舞を捜索する為に班を二つに分けて行動する事にしていた。
 A班・的場、香倶夜、緋月、櫻杜の四人。
 B班・神無月、朔月、芝樋ノ爪、神崎の四人。
 捜索場所が山の中という事もあり、能力者達は班を分けて行動しようと話し合いで決めていた。
「何があるか分からないし、お互いに連絡を取りながら捜索して行こうね」
 香倶夜が呟き、能力者達はそれぞれ分かれて行動を起こしたのだった。

※A班※
「舞さん! 何処にいるの? 返事をしてちょうだい!」
 的場が大きな声を出しながら山の中を進んでいく。日も落ちてきた事で山の中は暗くなり、何があるかも分からない為に警戒を強めなければならない。
 だけど、視界が悪くなってきた中で警戒だけを強めていても舞を発見する事は出来ないだろう。
 それに舞自身に何かトラブルがあったのならば、助けを求める事が出来ない状況に陥っているかもしれないと能力者達は考えている。
「この辺には、何も痕跡はないようですね」
 櫻杜が山の中に何か舞が残した痕跡、そしてトラブルがあったのならば何か異常が残されていないかを調べていたのだが、残念ながらまだ何も痕跡は見つけていないようだ。
「うぅ、寒い‥‥こんなところにずっといたら、何もなくても風邪引いちゃうよ、急いで舞さん見つけて帰ろう」
 香倶夜が身体を震わせながら三人の能力者たちに話しかけると「そうですね、急ぎましょう」と緋月が言葉を返し、冷たい風が吹く山の中を捜索続行したのだった。

※B班※
「撮影場所が‥‥分かれば‥‥楽なのですが‥‥」
 神無月は山の地図を見ながらため息混じりに呟く。チホは舞の目で感じた写真を撮って来るようにと言い渡したらしく、はっきりと何処で写真を撮っているか分からないらしい。
「舞さん、居たら返事をしてください」
 芝樋ノ爪は歩きながら舞を呼ぶ、ドラグーンである彼女はAU−KVを使用する事も出来るのだが、例えAU−KVをバイク形態にしていても山道をバイクで走るのは困難な事もあり、捜索に時間が掛かることも考えると、煉力消費の激しいAU−KVを装着し続けるのは出来ないと判断したのだ。
「結構木が多いし‥‥迷子になるのも無理ないかもしれないね」
 神崎が周りを見渡しながら呟く。確かに木が生い茂っていて大人や能力者ならともかく、舞のような一般人の子供が入ったら迷子になるのも仕方がないのかもしれない。
「室生さ〜ん、いたら返事をして〜!」
 神崎も芝樋ノ爪と同じように大きな声を出して舞を呼ぶが、言葉が返ってくる事はない。
 そしてA班からも『まだ見つかっていない』という連絡が入り、能力者達に少しだけ焦りが出てくる。
「こりゃ、ちと厄介そうだな‥‥」
 ポツリと朔月が呟いた言葉に、他の三人の能力者たちは「どうしたんですか?」と彼女に問いかける。
「これが落ちてた」
 朔月が拾ったのは、舞が愛用しているキャスケットで泥によって少し汚れていた。
「‥‥この先は――‥‥」
 芝樋ノ爪が呟きながら視線で先を促す。するとそこには落ちたら助からないであろう高さの崖があった。
「まさか、ここから‥‥?」
 神崎が呟いた時に、鳥のけたたましい声が響き、能力者達はハッと後ろを勢いよく見る。そこにいたのは大きな鳥型キメラで、能力者達は驚きに目を見開く。
 もちろん驚いたのは『キメラが現れた事』に対してもそうなのだが、キメラの爪に引っかかっている舞の姿を見たからだった。
 神崎は『照明銃』を使用して自分達の居場所をA班に知らせ、通信機で『舞を見つけた』という連絡を行い、戦闘準備を行い始めたのだった。


〜戦闘開始・最初に舞を助けろ〜

 キメラに捕まった――というよりは舞の現在の状況を見ると、キメラの爪にウエストポーチが引っかかっているというものだった。
 何故そんな状況になったのか能力者達は全く検討もつかないのだが、いつ落ちてきてもおかしくない状況に、能力者達はかなり焦りを感じている。
「‥‥下手に攻撃を仕掛けても‥‥衝撃で舞さんが‥‥落ちてきそう‥‥ですね‥‥」
 神無月は『魔創の弓』を構えながら呟く。相手がキメラだけならば彼も攻撃を仕掛ける事は十分に可能なのだが、舞の事を考えると簡単に攻撃を仕掛ける事が出来ないのだ。
「どうやったらあんな状況になれるの? せめて舞さんの意識があれば何とか出来るかもしれないんだけど‥‥」
 的場が呟きながらどうにかこの状況を打破出来ないか考えるが、舞の意識がない以上、作戦を思いつかない。
「‥‥舞はんの保護を依頼されている以上、キメラよりも舞さんを優先ですしね――そうでなくても優先度に変わりはありませんけど」
 櫻杜が小さく呟くと「とりあえず、室生様を助けない事には‥‥」と緋月も言葉を返す。
「この状況は、流石に予想外ですね」
 芝樋ノ爪が呟いた時、舞を支えるウエストポーチが鳥型キメラの爪からズレる。
「あ!」
 舞が落ちかけた事に神崎も驚いて大きな声で叫ぶが、何とか舞は落ちずに済んだ。
「こうなったら‥‥誰かが攻撃を仕掛けて、舞さんが落ちてきた所を抱きとめる――しか方法がないんじゃ‥‥」
 神崎の言葉に、他の能力者達もそれを考えていた――むしろ、他の方法は残されていない。時間が経てば経つほどに舞を支えるウエストポーチがズレていき、最後にどちらにしても舞は落ちてくる。
「僕たちドラグーンには『竜の翼』というスキルもあるし、素早く室生さんを救助できると思うな」
 神崎の言葉に、
「俺も『瞬速縮地』があるけど、支援に廻らせてもらうな」
 朔月が呟き、能力者たちは舞を救助するために攻撃を仕掛ける事にした。ただし、少しだけ場所を誘導する必要がある。少し先は崖なので、折角キメラが舞を落としても崖の方に落とされたら能力者たちは救助する事が出来ないからだ。
「さてと、まずは‥‥その子を解放、してもらおうか」
 神無月は『魔創の弓』を構えて、後方から攻撃を仕掛ける。攻撃――とは言ってもそんなに激しいものでもなく、ただの牽制攻撃だ。
「さっさと舞を解放してからくたばれ!」
 的場も『ライフル』で攻撃を仕掛けながら大きな声で叫ぶ。その時に櫻杜は大鎌『ノトス』を振り回しながら鳥型キメラを引き付ける。
 そして芝樋ノ爪が低空からキメラが攻撃を仕掛けてきた所を狙って『刀』でキメラの爪を攻撃して、ウエストポーチのベルトを斬る。そのおかげで舞は爪から落ちてきて、地面に直撃する寸前に神崎は『竜の翼』を使用して、舞を抱きとめたのだった。
「もう大丈夫だから‥‥安心してね」
 神崎は意識のない舞に話しかけながら安全な場所まで運ぶ。
「さて――舞も返してもらったし、さっさとご退場願おうかな」
 朔月は呟きながら『【OR】天狼』を構えて、鳥型キメラに攻撃を仕掛ける。彼女のノ攻撃を受けた後で鳥型キメラは再び上空へと逃げて、朔月は忌々しげに舌打ちをする。
 舞という枷が居なくなった事で能力者達も思う存分に攻撃を行う事が出来て、神無月は『魔創の弓』で攻撃を行う。先ほどのように牽制ではなく、今度は本気で狙い撃つ。
「邪魔! あたし達の邪魔をしないでよね!」
 香倶夜も『アサルトライフル』で上空を飛ぶ鳥型キメラに攻撃を仕掛ける。逃げられぬように的場も逆方向からキメラへと『ライフル』で攻撃を仕掛け、鳥型キメラの翼が徐々に血に染まっていく。
「私も支援します!」
 緋月が『練成強化』を使用して能力者達の武器を強化しながら叫ぶ。
「とっとと山奥に帰っていきな!」
 鳥型キメラが低空にきた所を狙って櫻杜が大鎌『ノトス』を勢いよく振りながら攻撃を行う。
「まぁ、運がなかったと思って諦めな」
 朔月も『【OR】天狼』を構えて、鳥型キメラの目を狙いながら攻撃を行う。
「舞さんの取材を邪魔するなんて――許せません」
 芝樋ノ爪が『刀』で鳥型キメラに攻撃を仕掛けながら叫ぶ。
「そう、もうキミの出番は終わっているんだよ。早くお帰り」
 神崎が『ヴァジュラ』を振り上げて攻撃を行い、鳥型キメラを退治したのだった。


〜舞の保護。何であんなところに? 〜

 キメラを退治してから暫く時間が経った頃に舞の意識が戻り、能力者達は安堵のため息を漏らす。
 最初はキメラに襲われて意識をなくしたのだろうと思ったが、擦り傷程度の傷しかなく、とてもキメラに襲われたとは思えないほどに軽傷だった。
「大丈夫ですか‥‥? もう少し休んでいた方が‥‥良いでしょう‥‥かなりの精神力と体力‥‥使って疲れているでしょうから‥‥」
 神無月の言葉に「えっと‥‥何でボクはここに? それに皆さんも」と周りを見渡しながら呟く。
「あなたを助けに来たのよ、チホさんに頼まれてね」
 的場の言葉に「チホさん?」と首を傾げながら舞は呟き、慌てて時計を見る。そしてサーッと一気に顔色を青ざめさせた。
「えっと、ボクは帰ろうとして崖から落ちて、鳥の上に乗って、意識なくして、気がついて降りようとしたらポーチのベルトが引っかかってぶらぶらになって、高い所で怖くなって‥‥えっと、えっと」
 よほど慌てているのか、舞はわたわたしながら呟く。
「舞さん、怖かったでしょう? もう大丈夫よ」
 的場が安心させるように舞の頭を撫でながら話しかけると「ありがとうございます、帰ったら記事書かなくちゃ」と言葉を返す。
「このこと‥‥記事にするの?」
 的場の問いかけに「はい、あった事を書くのが記者ですから」と舞は言葉を返した。
「そう、掲載された雑誌を買うわね――それにこの間はキツイ事を言ってごめんなさい。あの記事を読んだわ。あなたも立派なクイーンズの記者よ」
 的場の言葉に「いいえ、ボクこそキメラなのに邪魔しちゃって‥‥ごめんなさい」と舞もぺこりと頭を下げながら言葉を返した。
「も〜、どんな事があるかもしれないんだから、連絡手段は幾つも持っていかないといけないよ。そして気持ちはしっかり持ってね。連絡さえ付いたらなら、あたし達は必ず駆けつけるから」
 香倶夜の言葉に「はい、今後は気をつけます‥‥助けてくれてありがとうなのです」と舞も笑って言葉を返す。
「寒かったでしょう、これでも飲んで温まってください。それに変な所まで真里さんの真似は辞めてくださいね?」
 櫻杜が持参してきたスープを舞に渡しながら話しかける。
「でも取材には多少の無茶は必要だといわれましたし‥‥でも今度からは気をつけます」
「皆様、心配していらしたのですよ。取材も大事ですが、あまり無鉄砲な事はなさらないで下さい」
 緋月が話しかけると「はい‥‥気をつけます」と舞はしょんぼりしながら言葉を返した。
「ふふ、それでは良い記事を期待していますね」
 緋月の言葉に「頑張って書きますっ」と舞は笑いながら答えた。
「ほらよ、もう落とすなよ。取材道具なんだろ?」
 朔月が拾ったキャスケットや斬らざるを得なかったウエストポーチを渡しながら舞に話しかける。
「あ、ベルトを切ってしまいました‥‥ごめんなさい」
 切れたベルトを見ている舞に芝樋ノ爪が話しかけると「いいえ、気にしてないです。ポーチはまだ編集室に帰れば沢山ありますから」と舞は言葉を返してくる。
「でも、舞さんがご無事で何よりです」
 芝樋ノ爪が安心したように呟くと「ホントだね、僕も安心したよ」と神崎も話に入ってきた。
 その後、少しの休息を行った後に能力者達は舞をクイーンズ編集室へと送っていき、自分達も任務報告を行うために本部へと向かったのだった。

 余談だが、能力者達が舞を送っていった後、玄関先に仁王立ちで待ち構えていたチホによって舞は二時間以上も説教を受けることとなったのだった。


END