●リプレイ本文
〜炎纏いし朱雀を倒す為に集められた能力者達〜
「炎を纏っている、か‥‥厄介だな」
資料を見ながらヴェイン(
ga4470)がため息混じりに呟く。彼が普段から使用している武器は銃であり、銃を武器として使う自分に初めて感謝をしたのだった。
「朱雀‥‥要はフェニックスよね‥‥その尾を使えば‥‥」
林・蘭華(
ga4703)が持っている扇子を口元に当てながら微笑みながら呟く。ちなみに朱雀の尾を使ったとしても重体や重傷が治る訳ではない。
「焼き鳥‥‥持って帰りたいなぁ‥‥」
淡雪(
ga9694)はポツリと小さく呟いた。彼女自身、火が怖いという訳ではないのだが好んでもいない。しかし『仕事』だと割り切って今回の作戦に参加していた。
「焼き鳥も良いですが、アンティークには持って来いですね」
風間 静磨(
gb0740)が腕組みをしながら呟く。彼は『龍』を目指しており、朱雀に勝つ事が青龍の如し力を得るという目標の一歩のように思えて、今回の作戦に参加していた。
そして朱雀は四聖獣の中で一番と言って良いほどに美しいものだと様々な資料や文献で伝えられている。そんな朱雀が模倣されているので部屋に頭や羽、足を飾る為にもぜひとも朱雀には勝たねばならないのだ。
「朱雀か。出るなら京都の方が風情があると思うのは俺だけかね」
風見トウマ(
gb0908)が呟くと「所詮はキメラですもん、風情を求めちゃったら駄目ですよ」と九条・護(
gb2093)が苦笑しながら言葉を返した。
「鳳君、今日は宜しくね。期待してるから」
白雪(
gb2228)は挨拶をする為に覚醒を行い、微笑みながら鳳覚羅(
gb3095)に話しかけた。挨拶が終わると白雪は覚醒を解除
「えぇ、宜しくお願いします。朱雀‥‥厄介な事にならなければいいけどね」
鳳は資料を見ながら呟く。今回のキメラ、朱雀は体中が火に包まれているというもので、攻撃する側も気をつけなければならないし、下手に動き回れば人家に被害が増える――能力者達にとっては『戦いにくい』という部類の相手になるだろう。
「それでは出発――の前にちょっと待ってください」
淡雪が呟き、風間、風見、九条の三人に『練成治療』を施した。恐らくは大規模作戦でのダメージなのだろう、三人は結構負傷しており、このまま朱雀との戦闘になったら確実に重体になってしまうかもしれないと判断した淡雪は出発の前に少しだけスキルで回復をしておく事にしたのだ。
三人は淡雪に礼を言い、朱雀が待ち受ける場所へと出発したのだった‥‥。
〜炎が飛び交う町の中で〜
「避難がほとんど終わってるって書いてあったケド、本当に人の気配は感じられないな」
町に到着した後、風見が見渡しながら呟く。
「避難が終わっている方が、こっちとしては大助かりだけどな」
ヴェインがため息混じりに呟いた、資料を見る限り今回のキメラは一箇所に留まる事をしていないようだから、キメラ捜索から能力者達は始めなければならない。
その時に一般人が避難しているのと避難していないとでは大きな差が出てくるのだから。
「週刊少年漫画とかで四天王と四聖獣とかを出すのは打ち切りフラグ同然なんだけど、キメラが打ち止めになってくれるって訳じゃないんだろうな〜」
九条は盛大なため息を漏らしながら、町の地図を広げる。町の規模としては大きなものではなく、覚えられない程度ではなかった。
「赤で印が付けられている所が既に朱雀に燃やされた場所みたいだね、あと青で印が付けられている所は消火栓とか消火設備がある所」
九条は指で地図上でなぞりながら「戦うならこういう場所がいいよね」と言葉を付け足した。
「こっちも意外と戦いにはうってつけじゃないかな」
鳳は河川を指しながら話しかける。近場に水がある方がもしも火達磨になった時に水場に飛び込んで消化出来ると考えていたからだ。
「そうね、だったらこの辺はどうかしら」
林が指した箇所、それは朱雀に燃やされた最初の場所であり、唯一水場に近い場所でもあった。
「そうですね、此処なら水場も近いし‥‥燃やされた場所が大きな屋敷だったみたいなので敷地はそれなりに広いから、この場所に誘導――という形でいいんじゃないかと思います」
淡雪は地図を覗き込みながら呟き「そうだな、それでは分かれて行動しましょうか」と風間が言葉を返す。
能力者達は町に到着する前からそれぞれの役割を決めていた。
囮班・林、風間、白雪、鳳の四人。
待機班・ヴェイン、淡雪、風見、九条の四人。
それぞれに四人ずつが配備され、バランスとしては良いものとなっている。それに待機班とは言っても、囮班が朱雀と接触するまでは後ろから付いていき、接触したら誘導場所へと先に向かうという作戦内容になっていた。
「それじゃ――朱雀退治を始めますか」
風間は呟き、能力者達は作戦を開始し始めたのだった。
〜火の鳥・朱雀を誘導せよ〜
「まずは朱雀を見つけないとね。派手な外見をしていて、こんなに被害状況があるんだから大人しい‥‥という訳はないわよね」
林が資料にあった『被害状況』を思い出しながら呟いた。町の中を捜索している途中でも見受けられたが、結構燃やされている場所が目立っていた。それは家屋だったり、木だったりと様々だったが、この調子で朱雀が燃やし続ければいずれ住人にも被害が出るだろう。
「‥‥もしかして、あそこから見えているアレが朱雀――なんでしょうかね」
鳳が指差した方向を囮班の能力者達が見ると‥‥少し遠くに揺らめく炎が視界に入ってきた。それは動き回っているようであれこそが能力者達が探している朱雀で間違いはないだろう。
しかし、少しだけ問題が発生した。朱雀がいる場所から誘導地点まではそれなりに距離があるのだ。
「距離はあるけれど、誘導をしなくては‥‥こんな場所で戦ったら町壊滅ですしね」
白雪が町を見渡しながら呟く。能力者達が歩いている場所は町の中心部であり、こんな場所で戦えば町そのものも軽い被害では済まされないだろう。
そして朱雀に近づいていくにつれて、熱気が能力者達に襲いかかる。まだ少し離れている状況なのに、至近距離まで近寄ればどの程度の熱量を持っている相手なのだろうか。
能力者達が心の中で呟いた瞬間、耳を劈く声が響き渡り、朱雀が能力者達に気づいた。
「朱雀が気づいたわ。囮役、お願い」
白雪は呟きながら瞳を伏せると覚醒を行い、双子の姉・真白に人格交代をする。
「‥‥あれが朱雀。綺麗ね、夕焼けが鳥の形をしているよう」
(「でも、街の人を困らせているんでしょう?」)
白雪の声が頭の中に響き「そうね」と真白は短く言葉を返した。
「敵意はないかもしれないけれど、共存出来ない以上滅んでもらうしかないわね」
真白は呟き『月詠』と『血桜』を構えた。
「出たな、焼き鳥」
風間は覚醒を行いながら朱雀を見据え、小さく低い声で呟いた。
「とりあえず気休めにしかならないかもしれないけれど、水を被っておきましょう」
林は近くにあった公園の水道の水を出して置いてあったバケツに水を汲み、全身に被る。他の囮役の能力者も同じように水を被り、朱雀の誘導を開始し始めた。
そして囮班が朱雀と接触したのを離れた場所から確認した待機班は、最初に決めていた誘導地点へと向かいだしていた。
「鳥さん、此方‥‥」
林は朱雀が気づくように視界に入る場所から武器の切っ先を向ける。
それを見ると同時に朱雀はけたたましい叫び声を挙げて能力者達に襲いかかってくる。
「なるほど‥‥今まで住人が無傷だったのは奇跡に近いみたいだ」
風間が『フォルトゥナ・マヨールー』で攻撃を仕掛けながら苦笑して呟く。
「どんなミラクルですか」
鳳も苦笑しながら呟き『瑠璃瓶』を構えて牽制攻撃を行った。正直、誘導する事は少しだけ辛いものがあった。
水を蒸発させる程だから羽ばたくだけでも町に少しずつ被害が出て行く。誘導地点に到着する頃には能力者達にも疲れと多少の負傷が見られていた。
〜戦闘開始 VS 朱雀〜
「I dont stop to act――‥‥」
我が為せしに迷いはなく――ヴェインは呟きながら覚醒を行い、小銃『S−01』と『スコーピオン』を構えて『先手必勝』を使用しながら朱雀に攻撃を仕掛ける。
その際には林から受け取った『貫通弾』も使用して攻撃を行う。流石に銃専用の特殊弾丸という事もあり、ヴェインの放った弾丸は朱雀に命中する。
不意の攻撃を受けて朱雀は地面すれすれまで降下してきて、その隙を突いて林が『ロエティシア』で攻撃を行う。
そして淡雪が『練成弱体』を使用して『貫通弾』を使用した『フォルトゥナ・マヨールー』で攻撃を行う。
「堕とさせていただきます‥‥」
淡雪は狙撃の腕にはそれなりに自信があり、その自信通りに朱雀の翼へと弾丸を命中させた。
「僕のインテリアの為にも退治させてもらうよ」
風間は『フォルトゥナ・マヨールー』で攻撃を仕掛け、風間の攻撃を受けて怯んだ隙に風見が『ソニックブーム』を使用して攻撃を行う。
「今日のおかずは鳥刺しってとこかね? もう焼けてるけどな!」
クッと風見は薄く笑み「小手調べだ!」と叫んで近くに落ちていた石を掴み、投石攻撃を行った。
しかし朱雀は翼で投石攻撃を弾き、同時に能力者達は炎の攻撃を受けてしまう。
「ボクの武器は散弾銃だから誤射に注意っ! ‥‥そんなミスはしないけどね!」
九条は小銃『ブラッディローズ』で朱雀に攻撃を行いながら叫ぶ。彼女の攻撃、そして『貫通弾』を使用した能力者達のおかげで朱雀の翼は片方が死に、朱雀は飛ぶ事を維持できずに地面へと落ちる。
「見れば見るほど美しいわね。貴方を退治するのは気が引けるけど‥‥大人しく消えて」
白雪――真白は『月詠』と『血桜』を構えて朱雀に攻撃を仕掛けた。多少の熱さが真白を襲うが、真白は止まる事なく攻撃を仕掛ける。
そして朱雀の動きを止める為に鳳は『貫通弾』を使用して『瑠璃瓶』で攻撃を行う。朱雀が動きを止めた瞬間に鳳は武器を『蛍火』へと持ち替えて『両断剣』と『二段撃』を使用して攻撃を行った。
「我流『黒翼』――感想は――もういえないか」
鳳は呟き、ズズンと地面に倒れていく朱雀を見やったのだった‥‥。
〜朱雀倒し、いざ料理の時間? 〜
「‥‥思ったよりは、軽く済んだか?」
朱雀を退治した後、ヴェインは疲れを見せた表情で呟く。
「そうね、でもやっぱり無傷というわけには行かなかったわね‥‥出来ればもう少し被害は抑えたかったけれど‥‥」
林が苦笑気味に呟く。
「でも‥‥大丈夫ですか?」
淡雪が風間、風見、九条に問いかける。元々本調子ではない状況での戦闘だったため、彼ら三人は重傷を負ってしまった。
「いや、重体までは行かないから何とか大丈夫だ、それより――焼き鳥を僕は希望する」
風間は朱雀を指差しながら料理の提案を行う。
「私も焼き鳥がいいなぁ」
淡雪も遠慮がちに手を挙げて焼き鳥案に賛同する。
「‥‥‥‥俺は食べない」
ヴェインは前回の能力者達の末路を知っているのか、一歩引いて言葉を投げかける。
「これ‥‥食堂のおばちゃん達に持って帰ったら喜ぶかしら‥‥」
朱雀を見ながら林が小さく呟く。彼女は前回『玄武』を食べた事によって身に染みているのだろう。
「そういえばダチョウでもない鳥が飛べなくなったらどうなるかを見るの忘れた‥‥」
風見が呟いた瞬間に朱雀が纏う炎がしゅうううと音を立てて消えていく。
「止まない雨もないように消えない火もない。そして永遠に飛び続ける鳥もいない‥‥か」
やれやれだ、風見は言葉を付け足してため息を吐く。
「あー、熱かった‥‥」
九条は『AL−011『ミカエル』』を脱ぎ、近くの川にて自身の熱を冷ませていた。
「さっき消防の人たちに連絡をしたから、火がついている所には心配はないね」
予め九条を含める能力者達は朱雀との戦闘中に火が燃え移る可能性も考えて、近くに消防隊を待機させていた。
それを退治が終了した後に九条が連絡を入れ、消火活動に当たるように頼んでいた。
「燃え尽きて色あせてしまったけれど‥‥一枚貰うわね」
真白は呟き、朱雀の羽根を一枚手にとった。
「さて、ここで料理人としての腕を見せようか」
鳳が『鬼包丁』を構えて「焼き鳥といきたいところだが鍋にしよう」と呟き、朱雀を使っての鍋を作り始める。
それから一時間ほどが経過した頃、鳳が朱雀鍋を作り終え、食べる人に渡していく。
「うっ、こ、これは‥‥」
淡雪は食べた後に眼を丸く見開いて「お、美味しい」と呟く。
「確かに‥‥美味い」
風間も呟き、食べた後に自室に飾る為に朱雀の首と羽根、足を切り取る。
その後、能力者達は本部に報告を行う為に帰還したのだが――‥‥報告を終えた後、朱雀を食べた能力者達がお腹を抑えて呻く姿が本部の至る所で見受けられたらしい。
「‥‥食べないでよかった」
他の能力者達の姿を見て、ほっとしたようにヴェインが呟いたのだった。
END