●リプレイ本文
〜夢を壊された少年〜
「サンタのおじさんってのは子供に夢を運んで来るもんだよなぁ‥‥」
頭を掻きながらヒューイ・焔(
ga8434)が苦笑交じりに呟く。
今回の能力者達は、前回サンタキメラ退治に赴いて失敗した能力者達の代わりにサンタキメラを退治に向かうと言うものだった。
その際に子供を発見して、避難所まで連れて行くという事まで任されていた。実際、その子供が現れたせいで任務に失敗したのだが、彼らは特に子供を責める事などはしなかったのだとか‥‥。
「サンタが殺しにくる、か。映画の中だけの事かと思うたが、バグアもたちの悪い冗談が好きじゃな」
やれやれ、と言いたそうに首を横に振りながらオブライエン(
ga9542)が小さく呟く。そんなオブライエンの服の袖を掴みながら銀龍(
ga9950)が「銀龍、サンタクロースの事よく知らない。教えて」と問いかけてきた。
「赤い服に白い髭の老人で、世界中の子供達に夢とプレゼントを送り届けてくれるものじゃ」
オブライエンの言葉を聞いて、銀龍は少し考えながら。
「ん、一人で世界中の子供にプレゼント配る。サンタクロースは凄い人?」
「子供達へ夢を届けたい、子供達の夢を守りたい。その思いがあれば誰だってサンタクロースになれるんじゃよ」
オブライエンの言葉を聞いて「ん、ありがと」と銀龍は礼の言葉を呟いた。
「今回は‥‥サンタキメラ‥‥? んー‥‥子供の夢、壊しちゃ‥‥駄目だよ‥‥って。僕も、子供‥‥だったね」
霧島 和哉(
gb1893)が呟く。戦いの場に身を置いている彼にとって自分が子供と言う認識は薄いのだろうか?
「それにしてもまったく物騒なサンタだぜ」
嵐 一人(
gb1968)は不敵に笑みながら「年も明けた今、サンタの出番はもう終わってるんだ、さっさと退散してもらうぜ」と言葉を付け足した。
「そういえばサンタは良い子には大きな袋から取り出した玩具をプレゼントして、悪い子は大きな袋に詰め込んで玩具にする。そんな素敵な生命体だってとーさんに聞かされた覚えがあったっけ」
九条・護(
gb2093)はクスと可笑しそうに笑み「色々な夢を守る為にも確りヤりますか」と言葉を付けたし、大きな伸びをした。
「大きな袋から様々な武器か‥‥使えそうな強い武器とか売ったら高いレアなモンがあるかもな」
アレックス(
gb3735)は生活費などを稼ぐ為にカンパネラ掲示板の依頼を見て今回の任務に参加したのだとか。
「子供の夢を壊すキメラは遠慮してもらえると助かるんですけどね‥‥」
はぁ、とため息をはきながら柊 沙雪(
gb4452)が呟いて「そういえば子供は‥‥?」と他の能力者に問いかけた。
「作戦立てている間はオペレーターに見てもらってる。出発するならそろそろ呼んで来ようか」
ヒューイが言葉を返すと「それじゃ、わしも着替えて来ようかの」とオブライエンも『サンタ服』を着る為に更衣室へと向かい始めた。
今回の能力者達はサンタキメラを退治するという目的はもちろん、子供の夢も守りたいという目的もあった。
「あ、あの‥‥こんにちは、宜しくお願いします」
出発する前に能力者達の所へやってきたのは、今回の能力者の中で最年少の九条、柊よりも幼い少年だった。年の頃は10歳前後だろう。まだまだサンタと言う存在を信じている年頃だ。
「それじゃ出発するか」
アレックスが呟き、能力者達はサンタキメラを退治する為、そして子供を無事に避難所まで送り届けるために本部を出発したのだった。
〜サンタキメラによって崩された子供の心〜
「うむ、変ではないかのぅ」
オブライエンは自分のサンタルックを見ながら呟くと「ああ、大丈夫だ」とヒューイが言葉を返した。
今回の能力者は任務遂行の為に班を二つに分けて行動する事にしていた。
子供護衛班・オブライエン、ヒューイ、銀龍の三人と前衛班の柊は移動手段がない為、護衛対象の子供と一緒にヒューイの所持する車両『ジーザリオ』に乗って行動を起こす事にしていた――幾分定員オーバー気味ではあるのだが。
そして護衛班の後ろから追走する形で動くのが前衛班だった。前衛班には霧島、嵐、九条、アレックス、柊の五人が入っており、子供の夢を守るという事の為に『サンタキメラが悪者』だと言う事を子供に理解させる作戦を開始していたのだ。
※護衛班※
「何でおじさんはサンタの格好をしてるの?」
目的地に向かう途中の『ジーザリオ』の中で子供がオブライエンに問いかけてくる。
「ええか、お前さんの見たサンタクロースは偽者じゃ」
オブライエンの言葉に「えぇ!」と子供は目を丸くしながら驚いている。
「じゃ、じゃあおじさんは?」
子供がやや期待に満ちた目で問いかけると「わしか? わしはサンタクロースじゃよ」と言葉を返す。
「でも‥‥トナカイは? サンタクロースはトナカイと一緒にいるんじゃないの?」
トナカイ、そこまで考えていなかったのかオブライエンが言葉に詰まっていると「偽者にやられちゃったんだよ」と運転席からヒューイがフォローの言葉を入れる。
「だからお兄さん達がサンタを次の場所まで運んでいるんだ、な。銀龍」
相槌を求めるようにヒューイが銀龍に話を振ると「ん、そう」と短く言葉を返した。
「そっか‥‥僕が見たサンタは偽者だったんだ‥‥だからあのお兄さん達はサンタを攻撃してたんだ」
オブライエン達に聞いた言葉と子供が自分の目で見た現実を比べ、納得したように呟いた。
「そう、だから偽者はやっつけなくちゃね、だからジャマしちゃ駄目ですよ?」
柊が子供に言い聞かせるように話しかけると「うん、本物のサンタさんからプレゼント貰えなくなっちゃうから良い子にしてる!」と子供は言葉を返したのだった。
※前衛班※
車両に乗っている五人がそんな話をしていた頃、ドラグーンの四人はAU−KVをバイク形態にして『ジーザリオ』を追走していた。
「まさかこんな所で『ストームシルバー』とか言う羽目になるとはなぁ‥‥」
バイクを運転しながら嵐が苦笑気味に呟く。
「‥‥僕は声援とか‥‥送る方が、似合ってるかも‥‥まぁ、お仕事‥‥だからね‥‥」
同じく苦笑しながら呟くのは霧島だった。
「俺もヒーローショーは、趣味じゃないんだが」
ま、単位と報酬分は働かないとな! 言葉を付け足してアレックスも言葉を返した。
「そ〜ぉ? ボクは結構こういうの好きだけど?」
九条が呟くと「好きそうだもんな」と嵐が言葉を返す。
それからすぐの事だった、少し離れているけれど四人の前を走る『ジーザリオ』が急ブレーキで止まったのは‥‥。
〜サンタキメラ強襲・子供の夢と心を守る為に戦え〜
「まさか待ち伏せとはな‥‥」
ヒューイは急ブレーキをかける前に後部座席に乗っている銀龍、柊に子供を保護させるように言葉をかけた後に急ブレーキを踏んで『ジーザリオ』の上に張り付いているサンタキメラを振り落とそうとするが、確りと捕まっているために振り落とす事が出来ない。
ヒューイは小さな舌打ちをした後、片手運転に切り替え、窓を開けて見えているサンタキメラの足を狙って発砲する。
その事がキッカケとなってサンタキメラは『ジーザリオ』から地面へと転がっていき、ヒューイも車を止める。
「子供を頼む」
オブライエンと銀龍に言葉を残し、ヒューイは武器を『イアリス』に持ち替えて攻撃を仕掛ける。
その際に柊も『ゲイルナイフ』を構えてサンタキメラへと攻撃を仕掛けるために走り出した。
「お前なんかお呼びじゃ‥‥ないんだよっ!」
ヒューイは呟きながら『両断剣』と『流し斬り』でサンタキメラを攻撃する。その際に子供に視線を移すと恐怖の為かがたがたと震えながら銀龍にしがみついている。
そしてサンタキメラが子供がいるオブライエンと銀龍の方へ銃を向けた事に気づき、柊が『ゲイルナイフ』で攻撃して、サンタキメラの攻撃を阻止しようとしたのだが‥‥。
ガゥン、と銃の発砲音が街中に響き渡る。
「‥‥危ない、よ‥‥」
間一髪で霧島が『プロテクトシールド』でサンタキメラの銃弾を防ぐ。
「サンタってのは子供に夢を運ぶモンだろ! 子供を怖がらせるサンタなんか用はないんだよ! このストームシルバーが絶対に許さねぇ!」
傭兵戦隊ばりのノリで嵐が『試作型超機械剣』をサンタキメラに向けながら大きな声で叫ぶ。
「ふふ、爆殺開始!!」
九条も『AU−KV』の新型である『ミカエル』を装着しながら叫び手に持った『シルフィード』で攻撃を仕掛けた。
その隙に『竜の翼』を使用しながら『レッグプレート』で蹴りでサンタキメラに攻撃を仕掛ける。
「子供の夢を壊す外道にゃ、容赦しねぇぜ!」
すたっと着地を行いながらサンタキメラを睨みつけるように呟き「インテーク解放」と言葉を付け足して武器を『レッグプレート』からランス『エクスプロード』へと持ちかえる。
「ランス『エクスプロード』イグニッション!」
アレックスが攻撃を仕掛けながら叫び、サンタキメラに近寄るがサンタキメラは袋から剣を取り出してアレックスの攻撃を受け止める。
「レーザーブレード!」
サンタキメラがアレックスの攻撃を受け止めている間に嵐は『試作型超機械剣』でサンタキメラの横腹を攻撃する。防御する事無く受けた傷はサンタキメラに深い傷を負わせたようで、受け止める剣の力に緩みが出てくる。
「おっとっ! もう武器は取り出させないよ」
サンタキメラが袋に手を伸ばした所を九条が『シルフィード』を構えながらサンタキメラと袋の間に立ちはだかりながら不敵に笑ってみせる。
「そして‥‥隙だらけですね」
どす、とサンタキメラの背後から『ゲイルナイフ』を突き立てながら柊が小さく呟く。
そんな能力者達の戦いを見ながら子供は「あのサンタは悪者なの?」とオブライエンと銀龍に問いかける。
「先ほど銀龍にも言うたが、子供達へ夢を届けたい。子供の夢を守りたい。その思いがあれば、誰だってサンタクロースになれる」
オブライエンは子供の頭を撫でながら答え「じゃが」と言葉を続ける。
「例え姿かたちが似ていても、夢を奪うサンタクロースなんておりはせん、それは偽者じゃ。分かるのう?」
オブライエンの言葉に子供は困ったような表情を見せる。
「ん、サンタクロースは人を傷つけない、違う? あそこにいるサンタクロースは人を傷つける。サンタクロースの偽者、違う?」
銀龍の言葉に子供は首を縦に振って「あれは、サンタじゃない」と小さな声で呟いた。その時、サンタキメラが此方へ向かってきていて「そっちにいった!」と嵐が大きな声で叫ぶ。
そして銀龍は『蛍火』を構えて『両断剣』と『流し斬り』を使用してサンタキメラに攻撃を行う、そして前衛班の方へと押し返した。
「サンタクロース、もっと暖かくて優し‥‥ん、優しいと銀龍は思う。このサンタクロース、冷たくて変」
前衛班に押し返したサンタキメラを見ながら銀龍が小さく呟く。
「ドラグーン・ブルーフラッシュ!」
嵐は自分達の方へ投げ返されるサンタキメラを見て『竜の角』を使用しながら『試作型超機械剣』で横なぎに一閃する。
「今だ! 霧島、アレックス!」
嵐の言葉を聞いて霧島が『竜の咆哮』を使用して『ハリケーン』でアレックスの方へと飛んでいくように攻撃を仕掛けた。
「飛んで行け‥‥極炎の、元へ‥‥っ」
霧島の攻撃を受け、九条も『シルフィード』で攻撃を仕掛け「飛んでけ!」と大きな声で叫ぶ。
「ナイスパスだ! カズヤ! 九条! これでトドメだ、極炎の一撃(フレイム・ストライク)!」
連携攻撃でサンタキメラへと攻撃を仕掛け、能力者達は見事サンタキメラを撃破する事に成功した。
「爆殺! 完了!!」
九条の〆の言葉を叫び、能力者達は一つ目の任務を終わらせのだった。
〜夢よ、届け〜
サンタキメラを退治した後、九条は少し離れてオブライエンと同じくサンタの格好をして「おじいちゃ〜ん」と遠くから走ってくる素振を見せた。
「忘れ物だよ」
オブライエンに『クマのぬいぐるみ』を渡して、子供にプレゼントするように促す。本物のサンタと謳っている以上、プレゼントをあげないと不振に思われると九条は考えたのだろう。
「サンタさん、ありがとう」
子供はクマのぬいぐるみを大事そうに抱きしめながら満面の笑顔でお礼を言う。
「彼らも子供達の夢を守るサンタクロースじゃからこそ、偽者のサンタと戦う事が出来たのじゃよ」
オブライエンが子供に言い聞かせるように呟くと「ボク、サンタさんってどんなものか分かったような気がする」と言葉を返してきた。
そんなやり取りがされている頃、アレックスと霧島はサンタキメラの抱えていた袋の中身を漁っていた。
「くそ、こんなんじゃ売れないし使えない」
がっくりとアレックスはうな垂れながら手にしたナイフなどを袋にガシャンと投げ込む。確かにサンタキメラの袋の中には武器などが入っていたが『能力者用』の武器ではなかった。恐らく大量に生産されたもので値打ちも無いものだろう。
(「‥‥本当に、持って帰る、つもりだったんだ‥‥ツッコんだ方がいいのかな‥‥」)
そんな事を考えながらも霧島もしっかりと袋の中身を漁っていたのだとか。
「せっかくだし‥‥何か、買って帰る‥‥? 家で待っててくれる人が‥‥いることだし、ね」
霧島の言葉に「そうだな、何か買って帰るか」とアレックスは言葉を返した。
その後、能力者達は子供を避難所まで連れて行き、母親が泣きながら子供を抱きしめる姿が見受けられた。
「銀龍もサンタクロースに会ってみたい。でもサンタクロースは子供にプレゼント配りにくる。銀龍は子供じゃないからあえない?」
オブライエンに銀龍が問いかけると「信じる心があれば年齢なんぞ関係ないんじゃよ」と優しく言葉を返したのだった。
END