●リプレイ本文
―― クイーンズで撮影会 ――
今回はクイーンズ記者・室生 舞(gz0140)が初めて自分で考えた企画が誌面に掲載される事になった。
しかしマリのように無茶ではなく、舞なりに『能力者の事を読者に伝える』為に撮影会を行う事にした。企画に参加してくれた能力者は8名で、ほとんどがクイーンズ編集室に集まっていた。
「お久し振りですね‥‥今年もよろしく‥‥お願いします」
神無月 紫翠(
ga0243)が舞の頭を撫でながら挨拶をすると「こちらこそ宜しくお願いします」と舞は丁寧に頭を下げて挨拶をする。
「舞お姉さん、こんにちは! 大好きな舞お姉さんの為なら一生懸命頑張るぞ! オイラに出来る事は何でもやるつもりだから」
火茄神・渉(
ga8569)が両の拳を「ぐ」と強く握り締めながら舞に話しかける。火茄神の無邪気さに極度に緊張していた舞も何処かホッと出来る感じがしていた。
「時間潰し用にお茶の準備をしてきたよ、後で台所貸してくれな」
朔月(
gb1440)がバッグと袋を見せながら舞に問いかけた。バッグは紅茶の葉、アーモンドパウダー、ティーセットが入っており、袋の中には牛乳と生姜の二つが入っている。編集室に来るまでに牛乳と生姜は購入してきたらしく、近くの店の名前が袋に書いてあった。
「私も水羊羹を持ってきました、お茶の時に皆で食べましょうね」
芝樋ノ爪 水夏(
gb2060)が水羊羹の入った袋を見せながら皆に話しかける。
「とりあえず俺は他の人の撮影を見学しながら功夫させてもらうで」
鳳(
gb3210)が呟き『功夫』の意味が分からなかったのか舞が首を傾げると「あぁ、勉強っちゅう意味や」と苦笑気味に鳳が言葉を付け足した。
「撮影会って良く分からないけど、面白そうだぜ。今回は宜しくだぜ」
エミル・アティット(
gb3948)がにぱっと笑いながら抱きついて話しかけると「此方こそ宜しくお願いします」と舞は慌てたような表情で言葉を返した。
「こんにちは〜、依頼でやってきた、水無月です。室生さん、いらっしゃいますか?」
玄関の方から自分を呼ぶ声に気づき、小走りで舞は玄関へと向かう。するとそこには水無月 春奈(
gb4000)がおずおずとした様子で玄関口に立っていた。
「あ、いらっしゃいませ。こっちに皆さん集まってますから‥‥」
舞が案内をすると、水無月は周りを見渡しながら「編集室って初めてきました‥‥」と呟き、その後に思い出したように「あっ、えっとお菓子を持ってきたので皆さんで食べてくださいね」とクッキーを舞に渡す。
「そうそう‥‥自分も時間潰し用に‥‥持ってきましたよ」
神無月もクッキーの詰め合わせを舞に渡してくる。
「あ、ありがとうございます‥‥本当は此方が用意しなくてはいけないんですけど‥‥気が利かなくてごめんなさい」
しょんぼりとしながら舞が呟くと「気にしなくても大丈夫ですよ、ね?」と水無月も宥めるように舞に話しかけた。
「いつになったら始めるんだ?」
ソファに腰掛けながらハート(
gb4509)が舞に話しかける。
「あ、ごめんなさい。えっと地下に撮影場があるんで撮影する方から移動してください」
「なぁ、見学したいんやけど俺も一緒に行ってえぇ?」
鳳が舞に話しかけると「はい、もちろんです」と答え、撮影者と一緒に撮影場へと向かったのだった。
―― 撮影開始 ――
最初の撮影者は神無月だった。しかし慣れない為か舞はまだもたもたとカメラのセットなどをしている。
「ご、ごめんなさい、直ぐに準備しますから」
「初めて‥‥でしょうから‥‥気楽に‥‥撮って良いと‥‥思います‥‥何枚か撮って‥‥一番ピンと来たものを‥‥選べば‥‥良いと思いますよ‥‥」
神無月の言葉に舞は少しだけ笑んで「ありがとうございます」と言ってカメラのセットを始める。
「じゃあ先ずは正面から撮りますね」
舞は最初に灰色のスーツの上下に紫のシャツを着て、お茶を飲んでいるシーンを写真に納める。
そして続いて戦闘時の写真も撮る事にして、神無月は黒いGジャンとジーンズ、それに手袋を着用していた。
「黒の服装が‥‥多いですね‥‥」
何で? という表情で舞が首を傾げると「手を汚す仕事も‥‥あるので‥‥こちらの姿の方が‥‥目立たないですよ」と笑みを浮かべながら言葉を返した。
その後も何枚か写真を撮り「ありがとうございました」と頭を下げて次の撮影者を呼びにリビングへと向かったのだった。
「次はおいらだね!」
ソファから元気よく降りて撮影場へと向かう、彼の希望で場所は屋上という事になり、二人は屋上へと向かう。
火茄神は待っている間に『どんなポーズがいいのか』や『どうやって写るとカッコいいかなー』と色々撮影に関して考えていた。彼が選んだ格好は『ヒーローマントを使ってカッコいい感じ』にするというものだった。
「‥‥わ、意外と風が強いや‥‥」
ぶる、と体を震わせながら火茄神は呟きバッグの中からマフラーと手袋を舞に渡す。
「ここ寒いし、手袋は出来ないかもしれないけどマフラーだけでもすると全然違うよ。風邪に気をつけてお仕事頑張ってください」
火茄神が『防寒マフラー』と『防寒手袋』を渡しながら話しかけると「ありがとうございます」と舞は頭を下げて礼を言う。
そして舞はマフラーをして撮影に取り掛かった。火茄神は『ヒーローマント』を翻しながらテレビに出てくるようなヒーローばりのアクションを起こし、それを舞が撮影していく。結局数枚の写真を撮り、一番元気良さそうに写っている写真を掲載用の候補に挙げて火茄神の撮影を終えた。
続いての撮影は朔月で『【OR】着ぐるみ』を着用して撮影を行う事にしていた。
「舞も撮影が終わったらリビングに杏仁豆腐風味のミルクティーを用意してるから、それでも飲んで暖まりなよ?」
他の能力者が撮影を行っている間にお茶の準備をして能力者達にお茶を振舞っていた。
「はい、ありがとうございます」
舞はお礼を言うと、カメラを構えて撮影を開始する。彼女の着ぐるみは動物を模したもので、遊園地のアトラクションに居るマスコット人形のように振舞って撮影を続けていた。
この後も朔月は模擬戦の写真を撮る予定であり、とりあえず最初の撮影は数枚をとる程度に抑えたのだった。
「写真を撮られるのは、やっぱり緊張しますね」
芝樋ノ爪は撮影場へとやってきて、苦笑しながら舞に話しかける。最初、彼女は何か衣装を持参しなくてはいけないのかとバニーガールの衣装を持ってきていた。
「そっちの撮影でも構いませんよ?」
バニーの衣装を鞄に戻す芝樋ノ爪に舞が問いかけると「普段通りで良いのでしたら、制服でお願いします」と何処か必死さが見えて舞は「わ、わかりました」と首を縦に振りながら言葉を返した。
「私らしいアイテムと言えば‥‥これですね」
芝樋ノ爪は『巨大ぴこぴこハンマー』を取り出して構えてみせる。何故かハリセンに続き巨大シリーズが好きな舞はうずうずとする何かを感じていた。
「こういう感じで如何でしょう?」
彼女が構えながら問いかけると「もっとぶんぶんしてくださいっ!」とやや興奮気味の舞が言葉を返してきて「わ、分かりました」と芝樋ノ爪は躊躇いがちに『巨大ぴこぴこハンマー』を振り回す。
しかしこのままいくと自分=ぴこハンというイメージが定着してしまいそうなので、通常の武器である『薙刀』の写真も撮って貰えるように提案する。
「そうだ、ポーズは舞さんが指定して下さい」
その言葉に驚く舞だったが「雑誌記者なら、こういう経験も積んでおいて損はないと思いますよ」とにっこりと言葉を付け足されて構える姿と振り下ろす姿の写真を撮らせてもらったのだった。
「っしゃ、俺の番やな」
見学していた鳳は芝樋ノ爪と交代で撮影場に入ってくる。彼の格好は半袖で黒地に銀梅のチャイナドレスを着用しており、同色無柄のカンフーズボンとシューズも履いている。
「普段着やさかい、特に気取らんで散歩の途中っちゅうイメージで」
薄紅色の金華の刺繍の入ったチャイナバッグを持ちながら歩く姿を舞は撮影する。衣装の柄が目立つように正面から撮ったり、ゆっくり歩いて貰ったりなどして最後に椅子に座ってバッグを膝に乗せてもらう。
(「ファッション雑誌はよく見とるから、どんな写真を撮られるかは判ってるつもりや」)
だけど実際に自分が雑誌に載っている姿を想像すると少し恥ずかしいという気持ちが鳳の中にあった。出来上がった本は母親に送るつもりでおり、母親に見られて恥ずかしくない写真を撮ってもらえるように彼も最大限に努力を行う。
「時間があったら別バージョンの方も撮らせて貰いますね」
舞は鳳に向けて言葉を投げかけ、次の撮影へと向かったのだった。
「ん〜、難しい事考えるより、いつも通りのあたしを撮ればいいぜ」
エミルの格好は普段通り、ジャケットにタンクトップ、そして半ズボンで撮影に望んでいた。ポーズは特に指定もなく彼女が普段取っている行動をそのまま写真に納める。歩いている姿、走っている姿、何かを食べている姿、どれもが気取りを感じさせず彼女らしい写真を収める事が出来た。
「模擬戦の写真もエミルさんは参加するんですよね、その時になったらお呼びしますから待っててください」
舞がエミルに向けて言葉を投げかけ「わかったぜ」とエミルは言葉を返してリビングへと向かっていった。
「写真撮影は、依頼でカレンダーのモデルになって以来です。 ‥‥なかなか慣れるものじゃないですね」
水無月は苦笑しながら呟き、椅子に腰掛けてお茶を飲む。長い髪が靡き、どこか神秘ささえも感じられる。
「私の写真で大丈夫なのかしら‥‥」
小さな声で呟くが、真剣に写真を撮る舞には聞こえていない。普段着の撮影が終えた後は持参してきた『オペレーター服』を着て撮影を行う。
「普段着るものではないので、新鮮です」
オペレーター服を着用して写真を撮ってもらいながら照れたような表情で呟く。
彼女も模擬戦の写真を撮る為の一人で、朔月、エミルと共に写真を撮る事になっている。
「また後で呼びますから、ゆっくりしてください」
にこ、と笑みながら舞は水無月へ言葉を投げかけ、次の撮影へと取り掛かった。
「なぜ私が、わざわざ公に姿を晒すような事をしなければならないのですか‥‥」
ため息を吐き、物凄く嫌そうに呟きながらハートが撮影場へと移動する。彼は『撮影の為に衣装を選ぶのが面倒』という理由から普段通りの衣装で撮影を始めたのだった。軍服のような上着を着ており、ロングコートのような長さで、華奢な体を更にすらりとしたものに見せていた。
「こうでいいんですか?」
レイピアを携えて何処かの王子様のような雰囲気を醸し出している。最初はノリ気ではなかった彼も撮影が進むに連れて「其方の角度の方が写りがいいですよ」と指示まで出す程に撮影に入り込んでいた。
そして最初の純粋な王子様風とは打って変わり、覚醒を行い『悪魔』をイメージして『真デヴァステイター』を構えてダークな雰囲気を醸し出す。覚醒によって背を覆う翼が余計に『悪魔』を感じさせて舞は今にも泣きそうである。
「ぐす、これでいいですか?」
最終的に色々と指示を出され、何故か立場が逆転して撮影を終えたのだった。
そして朔月、エミル、水無月は模擬戦の写真を撮る為に屋上へと移動する。
「何なら、なまはげみたいに包丁でも手に持って構えようか?」
着ぐるみ姿のまま朔月が呟くと、エミルも「模擬戦ならあたしもやるぜ、ふっふっふっ、手加減するから大丈夫だぜ」と嬉々として答え「いきます」と水無月が短く呟いて模擬戦を始める。
朔月は念の為に『獣の皮膚』を使用して模擬戦を始める。舞もカメラを構え、写真を撮るタイミングを計る。
「‥‥此方は足を狙います、飛び上がった所を狙ってください」
水無月が呟き、彼女が足を狙って攻撃を仕掛け、思惑通りに朔月はジャンプしてそれを避ける。そこを狙ってエミルは飛び上がって攻撃を仕掛ける。元々の身軽さゆえか何処かイキイキとしているようにも見えた。
それから数十分間の間、模擬戦は続きあまりの真剣さに舞も怖くなったのか「やめてくださいっ」と大きな声で叫ぶ。その声にぴたりと三人の動きが止まる。
「あっ、撮影は‥‥すみません、すっかり忘れていました」
水無月が今にも泣きそうな舞を見ておろおろとして謝ると「ボクもごめんなさい、叫んじゃって‥‥」とポツリと呟く。
「あー、せや。ほら俺の写真撮って? な?」
ぐす、と泣く舞に鳳が話しかけるおと「オイラも手伝う」と火茄神が手を挙げて話しかけ鳳の撮影に取り掛かる。
彼の二着目の撮影は孔雀の刺繍の入った外服で『戦闘用旗袍』をチャイナドレスの上から羽織り『三節棍』を構えて戦闘中という雰囲気を出す。先ほどの衣装は優しい雰囲気があったが、戦闘服では凛々しい表情をしており、緊張感を感じさせるものだった。
その写真を撮り終え、舞はリビングへと能力者達を集めたのだった。
―― お疲れ様でした ――
「えと‥‥今回はご協力ありがとうございました」
リビングで能力者達が持参してきたお菓子やお茶を愉しみながら舞が改めてお礼を言う。お菓子の中で神無月が持ってきた高級店のクッキー詰め合わせだけが姿を消しており、マリが奪って逃走したと同じ記者のチホがため息混じりに呟いていた。
「ほら、寒かったろ。これでも飲みなって」
朔月は甘めのチャイを舞、そして能力者達に渡しながら話しかける。
「そうだ、最後にはやっぱり皆で集合した写真が必要じゃないですか?」
水無月が呟くと「それいいですね、賛成です」と芝樋ノ爪も賛成の意を示した。
「それはいいんじゃない? ほら撮ってあげるから舞も入りなさい」
チホが舞の持つカメラを取り上げて、能力者たちの所へと背中を押す。そして最後に集合写真を撮って今回の撮影会を終えたのだった。
―― クイーンズ新刊・発売 ――
こんにちは、室生 舞です。
今回は能力者の事を知ってもらう為に撮影会を行わせていただきました。
戦闘時、普段時、色々な能力者の姿が垣間見れる事だと思います。
ボクはボクなりのやり方で能力者の皆様を一般人の皆様に知らせていきたいと思います。
クイーンズ記者・室生 舞
END