●リプレイ本文
―― これはフィクションです ――
これは現実のお話ではありません。
間違ってこの話の中の行動を現実で起こし、問題があっても当方は責任を負いかねますのであしからず。
※ドッグ・ラブラード(
gb2486)と織部 ジェット(
gb3834)の場合※
「‥‥ど、どちら様?」
いつもと同じ朝だった、しかしドッグは鏡に向かって呟く。何故か身長は縮み、ふっくらとした体型の『少女』が鏡に映っていたからだ。
「なな、な、なしてこんな事になっちまっただ!?」
何故か口調も東北のような方言が混じり、言動が田舎娘のようになっている。
「どうした?」
その時、織部がドッグの家へとやってきた。今日は彼と行動を共にする約束をしていたので、その為だろう。
「おら、もうお婿に行けねぇだぁー‥‥」
自分のこんな姿を織部に見られたくなくて窓からそぉっと見て――更に驚く。
「お、織部さんも女になっただか!?」
扉を勢いよく開けて叫ぶと「‥‥性別だけでこんなに変わってしまう事って、恐ろしい事だな‥‥」と自分とドッグの姿を見ながらため息混じりに呟く。
「まぁ、男だろうが女だろうが、傭兵だしやりたい事に変わりはないさ」
織部はそう笑って答えるが「な、なして落ち着いてるべ?」とドッグは驚き続行中だ。
「とりあえず着替えて来い、そんな姿じゃ何も出来んだろう」
織部が呟くと「‥‥あぁ、この日の為におらにセーラー服をくれてただか‥‥売っちまってすまねぇだ‥‥」と支給品を笑顔で渡された時の事を思い出しながらとりあえず着替える事にした。
ちなみに織部の格好は黒いへそ出しのハイネックに肩だしのシャツ、下はスパッツにミニスカートと全てを黒で統一しており『女性』を満喫しているようだ。
「あ、本当にすべすべ‥‥」
ドッグは自分の肌を触りながら、以前知合いの女性から聞いた『女性の肌はスベスベモチモチ』という事を思い出していたが、ハッと我に返り「おらは何やってんだ!」と壁にゴンゴン頭をぶつける。
そして何とか着替えも終わった所で外へと出る。知り合いに会うから嫌だとドッグは行きたくなさそうだったが、このままこうしているわけにも行かず、ショッピングモールへと移動する。
「あ、こんにちは」
ぺこりと頭を下げてくるのはクイーンズ記者の室生 舞(gz0140)だが――彼女も男性化している。
「か、可愛い‥‥撫でてもいいけ?」
ドッグは舞の抱いている猫を見ると目を輝かせながら問いかけ「どうぞ」と舞は猫を渡す。
その間に織部は女性用品を買う為に化粧品売り場に来ていた。
「このブランドの4番目の香水は、好きな香りだな‥‥あとは豹柄と緑色の下着を買うとしようか‥‥」
買い物を終えてドッグの所に戻ると、他の女性の胸と自分の胸を比べて「だからおらは何をっ!」と壁にごんごんと頭をぶつけるドッグがいた。
「サッカー‥‥誘おうかと思ったが、何か近づくの恥ずかしいからやめようかな‥‥」
織部は呟き、ドッグをそのままにして自分はサッカーをする為に競技場へと向かったのだった。
「なでしこUPCというもの悪くは無さそうだ」
織部は靴を運動靴に履き替えながら呟くと「ジェットさん、ボクも参加していいですか?」と横から舞が顔を覗かせる。
「今の私はジェットじゃないぞ。今は‥‥そうだな、ファンとでも呼んでくれ。ジェットもファンも同じエンジンの意味があるからな」
織部が呟くと「分かりました、ファンさん」と舞は言葉を返した。
「しかしアイツはどうしたんだ? 見当たらないようだが‥‥」
舞の近くを見てもドッグの姿は見えない。不思議に思った織部が問いかけると「何か治す方法を見つめる為に遠い場所に旅立って行きました」とさらりと舞は答える。
(「‥‥何処まで行ったんだろう」)
織部は心の中で呟くが、あまり気にしない事にした。
「でもファンさんは女の人なのにサッカー、大丈夫ですか?」
舞が問いかけると「衣装を身に着けているのが認められるスポーツなら、男女の差別もないだろうからな」
織部は言葉を返し、サッカーをしている男性陣の中へと入っていく。織部の言葉通り、男性に引けを取っていない姿に舞はかっこよさを感じていた。
「ボクも混ざろう」
舞も呟き、サッカーをする為に混ざる。
そしてその頃‥‥ドッグは「牛乳、美味しいだか?」と野良猫に牛乳を買い与えている姿が様々な人から見られていたのだとか‥‥。
※神無月 翡翠(
ga0238)の場合※
「おはようございます」
神無月の自宅へとやってきたのは舞だった。今日は神無月と一緒に買い物に行くという約束をしていたのだ。
「あー‥‥何かいつもに増して女に見えるような‥‥」
神無月は呟きながら体に違和感を感じて胸を見ると――男には無いものがあった。
「おおっ‥‥」
最初こそ驚いていた神無月だが「ま、いっか」と舞を連れて買い物、そして猫喫茶に行く事にした。
やはり普段から女性に見えるせいなのだろうか、実際に女性になってもあまり動じる事がない。
「わ、可愛いな‥‥」
猫喫茶にやってきた二人。店内にいる猫を触りながら舞が呟く。
「癒されるけど、やっぱりうちの猫が、一番可愛いかも」
神無月は見渡しながら呟くと「猫馬鹿だね」と舞が笑いながら言葉を返してきた。
「それにスカート姿って凄く新鮮です」
「う〜ん、動きづらいわ、足元寒いわ、苦手なんだよな〜‥‥」
今回だけだからな、神無月は舞に念を押すように問いかけると「似合ってますよ」と舞が言葉を返す。
「着慣れてないから、恥ずかしいんだよな‥‥「ねぇ、そこの彼女、俺とお茶しない?」」
神無月の言葉を遮って話しかけてきたのは『今時そんなナンパかよ!』と言いたくなるほど古い文句を使ってくる男。
「‥‥失せな、タイプじゃないんだよ」
じろりと睨みながら言葉を返すと「そ、そっちの彼女〜」と別の女性の方へと行ってしまった。
「やっぱり美人さんですもんね、目立つんですよ」
舞が呟くと「あんまりこういうのは歓迎してないんだけどな」
神無月は深くため息を吐き、その後二人は色々な店に入り、試着などをしながらショッピングを楽しんだのだった。
※夜十字・信人(
ga8235)の場合※
何処か遠くを見ているような瞳、女性ならば誰もが憧れるようなナイスバディ。
しかしメイド‥‥何故にメイド。
女性になった事で人生を大きく間違えた彼女――夜十字は遠くを見る。男性時には行っている筈の外人部隊も女の子だからという理由で行かなかった。
そして何より人生で一番大事な時期とされる思春期にオタクカルチャーによって多大な影響を受けて価値観を狂わされた。
「あの‥‥」
その後、何となく能力者となりLHに来た彼女だったが、とある少尉と出会い、その人を守ろうとした彼女が取った行動は‥‥。
「すみません‥‥」
従者が着用する伝統的な衣服として『メイド服』を選んだのだ。
「あの‥‥そろそろボクの存在に気づいてください」
「何ですか? 折角私が何故メイド服を着るに至ったか教えてあげているのに‥‥」
聞いてません、舞はため息混じりに「夜十字さんはこれから何をするんですか?」と問いかける――が、夜十字は静かに首を横に振った。
「本名は、この服を着ている時は捨てておりますので‥‥エリザベスと呼んでください」
丁寧に敬語で説明してくれる夜十字だったが胸元のネームプレートには『夜十字・信子』と確り本名が書かれている。
「そうだ、従者としての能力を上げる秘密特訓をしているので、貴方についていきましょう」
秘密とは言っているが、自分で説明をしている辺りが秘密になっていないのは気のせいだろうか。
特訓と言う名のセクハラにつき合わされ、既に一時間が経過した頃『巨大ピコハン』で夜十字を叩く人物がいた。
「君という人は、そんなにボクにお仕置きされたいんですか?」
白ランに『巨大ピコハン』を持った自称・風紀委員の芝樋ノ爪 水夏(
gb2060)が夜十字を叩きながら呟く。どうでもいいかもしれないが台詞だけを聞くと妖しげな雰囲気が出るのは気のせいだろうか。
「私は女性ですよ、それを遠慮もなく殴る方はいいのですか?」
夜十字が言葉を返すと「ボクはいいんです」と自己中心的な発言が芝樋ノ爪から出る。
「白ランって校則違反なんじゃ‥‥?」
舞が首を傾げながら問いかけると「カンパネラは服装自由ですので、問題無しです」とさらりと言葉を返してくる。
「あ、夕方六時を過ぎましたね‥‥ふむ、素に戻らせてもらおう」
どこぞの公務員かと言いたくなるほどの変わり身の早さに芝樋ノ爪がピコーンと叩く。しかし此処でめげる夜十字ではない。女性という立場を利用して『これでもか』と言うほどにセクハラを始める。
「男よりも女の方がセクハラしやすいとキタもんだ。良い時代になった‥‥」
断言できる、夜十字が実際に女性となったらきっと危ないので、ここらで終わらせるとしよう。
最後の悪あがきに夜十字が芝樋ノ爪で着せ替えを始めようとするが、舞によって止められてしまったのだった。
※イスル・イェーガー(
gb0925)の場合※
「‥‥ぁ‥‥、えと‥‥ぁ、‥‥うぅ‥‥」
此処は街中の少し洒落たカフェ、そこでまったりと過ごしていたのはイスルだった。
美味しい紅茶とスイーツ、至福の時間だったが数名の男性が近寄ってきた事によって、楽しかった時間が終わりを告げた。
「いいじゃん、一緒に遊ぼうよ」
一人の男性がグイッとイスルの腕を掴んだのだが、イスルは真っ赤になって今にも頭から湯気が出そうな程だ。
「‥‥ぁ、‥‥ああ‥‥っ‥‥ぷしゅうぅぅ〜」
「ゴメンナサイ、お待たせしました」
その時にやってきたのは舞だった、勿論約束をしていたわけではない。明らかにナンパ、しかも大人数でイスルを困らせている姿が目に入ったので約束していた振りをして話しかけたのだ。
「ほら、本屋に行くって言ってたじゃん。早く行こう」
ぐいぐいと引っ張ってイスルをレジまで連れて行き、そのままそこから離れた。
「えっと‥‥ゴメンナサイ。いきなり連れてきちゃって‥‥」
人混みから離れた場所で舞が謝ると「‥‥こ、此方こそ‥‥ありがとう」とイスルが言葉を返してくる。
白いセーター、赤と白のキャミソールタイプのワンピースを重ねて着ており、脚は黒のオーバーニーソ、肩に羽織ったストールがイスルを何処か大人びて見せていた。だけど実際に話せば極度の恥ずかしがりや、それが男性の心を擽るのだろう。
「えぇと‥‥勢いで本屋に来ちゃったけど――良かった、ですか?」
舞が問いかけると「‥‥さ、探してる‥‥本が‥‥ありましゅ、っ‥‥うぅ‥‥」
イスルの噛んでしまった瞬間を見て、舞は顔を逸らし「萌」と呟いていた。どうやら舞も性別が変わった事によって多少性格が変わってしまっているようだ。
「じゃあ、一緒に本屋行きましょ。ボクも本を買いたいですし」
舞が話しかけ、二人は一緒に本屋の中へと入って行ったのだった。
※朔月(
gb1440)の場合※
「は〜、食った食った。安くて美味い、最高だな」
朔月は牛丼屋から出ながら満足そうに呟いていると、見知った顔を見かけて「お〜い」と手を振りながら話しかける。
「あ、朔月さん‥‥こんにちは」
ぺこりと頭を下げながら舞が朔月に挨拶をすると「今、暇か?」と朔月が問いかけてくる。
「今、ですか? はい、暇だから散歩していた所なんです」
舞が答えると「暇なら一緒に買い物にいかねぇか?」と提案してきて「いいですよ」と舞も笑って言葉を返す。
「何処に行くんですか?」
舞が問いかけ、最初に立ち寄った場所は音楽ショップだった。
「最近はどんな曲があるかなって思ってさ」
朔月は答えながら新作CDの試聴を始める、ついでに舞も隣のヘッドフォンを取って視聴すると『演歌』だった為に直ぐにヘッドフォンを外した。
結局試聴するだけに終わって、店員さんの冷たい視線を背中に感じながら二人が音楽ショップを出ると「あ、ついでにあそこも見ていいか?」と朔月がカメラ屋を指差した。
「カメラ、好きなんですか?」
舞が問いかけると「ん〜、まあな」と朔月は曖昧に言葉を返す。既にレンズや中古カメラを見るのが一生懸命なようだ。舞もカメラを見てみるが、さっぱり分からないのでぶらぶらと店内を見て終わるだけにした。
「さて、少し茶でも飲みに行くかな」
カメラ屋を出た後、朔月が呟き、舞と二人で喫茶店へと入り、少しゆっくりした所で二人は別れたのだった。
―― お疲れ様でした ――
「そんな所で寝てると風邪引くぜ?」
リビングのソファで寝ている舞を見かけ、朔月が話しかけながら起こすと「‥‥夢、見てました」と舞は目を擦りながら言葉を返してくる。
「皆の性別が逆になって‥‥ボクも男の子なんです――って何で朔月さんが此処に?」
首を傾げながら問いかけると「バレンタインのチョコを渡しに来たんだよ」とチョコレートをテーブルに置きながら言葉を返す。
それから後日、夢に出てきたであろう能力者達を前にして舞が爆笑する姿があり、能力者達は首を傾げるばかりだった。
END