タイトル:Saga―ymirマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/02/16 23:07

●オープニング本文


それは、原初の巨人と言われていた。

ユミルの身体の各所から何人もの巨人が生み出された。

始まりの巨人――ユミル。

※※※

ユミルから生まれた最初の神・ブーリの息子・ボルが霜の巨人・ボルソルンの娘・ベストラと結婚を行い、彼らから生まれたのがオーディン、ヴィリ、ヴェーの三神であった。

巨人族は自らを現す言葉のように乱暴であり、神話上では神々と常に対立をしていた。

しかし、皮肉にも自分の血を僅かばかり引く三神によってユミルは打ち倒された――‥‥。


「始まりの巨人、か」

女性能力者はため息混じりに事件の内容を見ながら呟く。

「今度は巨人のおっさんかよ。うーわ、むっさくるしい」

男性能力者が資料に挟まっている写真を見ながら呟き、嫌悪をあらわにした表情で写真を女性能力者に返した。

「巨人とは言っても神話上とは違って精々4メートル弱みたいね。それでも結構な大きさなんだけど」

「KVでドカンとやっつけられないわけ?」

「無理でしょ、避難はしてるけど近くに町もあるんだから‥‥やっつけるだけだったら問題ないでしょうけど、町に被害があったら意味がないわ」

女性能力者が呆れたような視線を向けながら呟くと「そっか、確かにそうだな」と男性能力者は申し訳なさそうに言葉を返した。

「動きはのろいみたいね、細かい動きに対処できなかったって書いてあるわ」

「前にも誰かが退治に向かったのか?」

「えぇ、だけど攻撃を受けて撤退したみたいね」

女性能力者の言葉に「情けないヤツラだな」と男性能力者が呟くと「‥‥たった一撃よ」と女性能力者は言葉を返してきた。

「たったの一撃でそれまで優勢に動いていたはずの能力者達が一気に劣勢に持ち込まれてしまった――それだけの威力があるという事なんでしょう」

女性能力者の言葉に少し身震いをしながら「‥‥へぇ」と男性能力者は言葉を返したのだった。


●参加者一覧

ベル(ga0924
18歳・♂・JG
九条・縁(ga8248
22歳・♂・AA
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
加賀 弓(ga8749
31歳・♀・AA
鬼非鬼 つー(gb0847
24歳・♂・PN
遠見 一夏(gb1872
20歳・♀・DG
鳳覚羅(gb3095
20歳・♂・AA
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG

●リプレイ本文

 ―― 巨人を退治する為に集まった能力者達 ――

「優勢に事が進んでいたから、俺達にも油断があったんだと思う‥‥まさか一撃で劣勢に持ち込まれるなんて思わなかったからさ」
「敵の情報、何かあったら教えてもらえませんか?」
 ベル(ga0924)が問いかける。彼は前回『ユミル』を退治に向かった能力者達に話を聞きに来ていた。
「俺達の時には、処構わず殴り始めて岩や木が飛んできてさ、それで一気に負傷したんだ。攻撃方法はシンプルなモンで殴るくらいしかなかったと思う」
 能力者達の言葉を聞き「分かりました‥‥ありがとうございます」とベルは頭を軽く下げて、今回一緒にユミルを退治する能力者達と待ち合わせをしている場所へと向かった。
 ベルが待ち合わせの場所に行くと、他の能力者達は全員揃っていた。
「今回は頑張ろうぜ、これは現地の地図やら地質・地盤の事を纏めた資料。皆にはもう渡したから覚えてくれよな」
 九条・縁(ga8248)が纏めた資料をベルへと渡し「これは俺が能力者に聞いてきた情報です」と九条に能力者達の話を纏めたメモを渡す。
「‥‥図体が大きければ大きいほど、懐に潜り込まれたら対処し難いものね‥‥」
 紅 アリカ(ga8708)はメモを見ながら呟く。前回の能力者達も今回ユミル退治に向かう能力者達が立てたような作戦の上で任務に当たっていた事が分かり、懐への防御の薄さが窺える。
「4mの巨人ですか、生身で相手するには少々キツイ相手かもしれませんね」
 苦笑しながら加賀 弓(ga8749)が呟く。
「生身でワームやゴーレムを相手するような無茶に比べればマシなんでしょうけど‥‥KVを使う訳にも行かないと分かっていても生身で戦うには強靭すぎる気もしますね」
 それでも私達がやるしかないんですけど、加賀は言葉を付け足しながら呟く。
「4mの巨人‥‥それだけでかいと酒を飲む量も半端じゃないんだろうな」
 鬼非鬼 つー(gb0847)が頭に被せた『鬼のお面』の位置を直しながら呟く。
「キメラだから‥‥お酒は飲まないと思いますよ? それにどんな大きさでも‥‥それがキメラなら、倒すまでです」
 落ち着いた口調で遠見 一夏(gb1872)が呟くと「確かに」と鬼非鬼は言葉を返した。
「ユミルって事は原初の巨人‥‥ね。伝承と比べれば少々、名前負けしている気がしないでもないけど‥‥それだけ危険って事なのかもね」
 鳳覚羅(gb3095)が呟くと「そうだね、そろそろ行こう。遅くなるといけないし‥‥」とアンジェラ・ディック(gb3967)が呟き、能力者達は巨人『ユミル』を退治する為に、目的地である山に向かって出発したのだった。


―― 巨人の潜む山へ‥‥ ――

 今回の能力者達はユミルの捜索・退治を迅速に行う為に4つの班に分かれて山の中を捜索しようという作戦を立てていた。
 1班・ベル、アンジェラの二人。
 2班・鬼非鬼、遠見の二人。
 3班・加賀、紅の二人。
 4班・鳳、九条の二人。
「何かあったら『トランシーバー』で連絡を取り合いましょう」
 ベルが呟くと「それと戦闘に適した場所も探さなくちゃいけないね」と鳳が言葉を返してくる。現在ユミルが居る場所、それが必ずしも能力者達が戦いやすい場所とは限らない為、可能な限り有利な戦闘ポイントを探すようにしようと鳳は提案した。
「ま、ユミルって言うよりトロルの親玉っぽいサイズだしなぁ。しかもパワー馬鹿ですってよ。一撃でも貰ったらアウトなだけに気を引き締めてかにゃ〜」
 九条は大きく伸びをしながら呟く。
「‥‥加賀さん、行きましょう‥‥遅くなると、こちらが不利になるだけですし‥‥」
 紅が一緒に行動する加賀に話しかけ「そうですね、なるべく早期決着をつけたいですしね」と言葉を返し、一足先に山の中へと入っていったのだった。
「それじゃ、いきますかね」
 鬼非鬼も遠見に話しかけ、他の班と山の中へと入っていったのだった‥‥。

※1班※
「コールサイン『Dame Angel』――ミッション開始」
 アンジェラは捜索を始めると小さく呟き、ユミルを探し始める。
「町はあっちの方向ですね‥‥キメラがあっちに行く事だけは絶対に阻止しなくては‥‥」
 ベルが地図を見ながら町の方向を確認しながら呟くと「この辺の地盤は大丈夫かな? それなりに広いし皆で攻撃とか出来そうだけど‥‥」とアンジェラは自分達が捜索する範囲の中にある一角を指差しながら呟く。
「この辺で大きな地震、土砂崩れとかあったという報告は無いみたいですから――大丈夫じゃないでしょうか?」
 ベルが言葉を返すと「じゃあ、この辺で現れたらこの場所に誘導すればいいかな」とアンジェラは言葉を返し『トランシーバー』で戦いやすい場所を見つけたと他の班に連絡を入れたのだった。

※2班※
「4mの巨人ですから、足跡とか何かしらの痕跡は残っていそうですよね」
 山の中に残された痕跡を探すように遠見が鬼非鬼に話しかけると「‥‥うん、残ってるね」と地面を見ながら言葉を返した。
「え?」
 遠見が首を傾げながら鬼非鬼に聞き返すと、彼は地面を指差して「足跡」と短く告げてきた。彼の指先を追うように遠見が下を見ると、確かに普通の人間の足にしては大きすぎる足跡がくっきりと残されていた。
 また、転んだのだろうか、足跡とは別に手の形に地面がへこんでいる箇所があった。
「此方2班、ユミルのものらしき足跡と手跡を発見、けど‥‥」
 鬼非鬼が周りを見渡しながら「近くにユミル自身はいないみたいだ」と連絡を入れて遠見とユミル捜索を再開したのだった。

※3班※
「一応『救急セット』を持ってきたのですが‥‥使わずに済めばいいですね」
 加賀は荷物の中から『救急セット』を取り出しながら呟くと「‥‥相手が相手ですし‥‥難しいかもしれませんね‥‥」と紅は言葉を返した。
「戦闘場所、それにキメラの足跡などは他の班の皆様が見つけたみたいですけど‥‥」
 口ごもる加賀に「‥‥まだキメラは見つかってないですね」と紅が加賀の言葉の続きを呟く。
 しかし、キメラが周辺にいるのは間違いが無いと二人は感じていた。普通に歩いている時は分からないけれど、その場に立っていると微妙に地面が揺れているのが分かる。地震と呼ぶにはあまりにも規則的なもので、どちらかというと『何かが歩いている震動』という表現の方が正しく感じた。
「‥‥あれ」
 紅が小さく呟き、崖から少し見えるソレを指差す。それは手であり、常人の大きさではない事からユミルの手だろうと二人は解釈した。
「此方3班‥‥ユミルらしき存在を発見、1班のお二人が見つけた場所に誘導したいのですが――‥‥」
 加賀が『トランシーバー』で他の班に連絡を入れていた時だった――後ろから「うぅ」と唸り声のようなものが聞こえ、それと同時に拳が落ちてくる。
 どぉん、という地響きのような音と共に通信が途絶え、他の能力者達は3班の二人が居る場所へと向かい始めていたのだった。

※4班※
「二人とも‥‥大丈夫かな?」
 鳳は『トランシーバー』を見ながら心配そうな表情で呟く。
「最初の一撃が響いた後、小刻みに地面が揺れてるから逃げる二人を追いかけている、もしくは交戦中――どっちかだと思うんだけどな」
 九条が少し足早に移動をしながら呟くと「どっちにしても急いだ方がいいね」と鳳が言葉を返し、そのまま3班が居る場所へと向かう。
 途中で木がなぎ倒されていたり、地面にひびが入っている場所などを見つけ、ユミルと呼ばれるキメラの破壊力を目の当たりにしていた。
「たいした馬鹿力だ‥‥ゾッとするね」
 鳳がひび割れした地面を見て、苦笑しながら呟くと「頭の方は弱そうだけどな」と九条が言葉を返す。
「何で?」
「何度も転んだ後がある」
 九条が指差した先には転んで出来たであろう地面のへこみに「‥‥潰されたらひとたまりもなさそうだね」と鳳が引きつった笑みを見せたのだった。


―― 戦闘開始・原初の巨人 VS 能力者達 ――

「動きは遅いけれど‥‥あんなのに攻撃されたらと考えると‥‥」
 加賀は後ろからついてくるユミルを見ながら苦笑する、先ほどの一撃は何とか避けて怪我はなかったのだが二人に気がついたユミルがずしんと足音を響かせながらついてくるのだ。
「‥‥巨体であるから、動きそのものは鈍いみたいね‥‥」
 紅はちらりとユミルを見ながら呟く。二人は1班が見つけた場所へ誘導していき、広い場所に出ると向けていた背中をくるりと変えてユミルを見る。
 二人目掛けてユミルが攻撃を仕掛けるが、動きが鈍い分避けやすくユミルは地面に倒れこんでしまう。
 そして――倒れこんだ所を潜んでいたベルが『フォルトゥナ・マヨールー』で攻撃を仕掛ける。顔や急所などを狙い、ユミルの行動に制限をかけようとしていた。彼の攻撃はユミルの顔面を捉え、ユミルは苦しそうに呻きながらごろごろと転がる。
「立ち上がらせない」
 アンジェラは『隠密潜行』を使用しながら気配を消して『影撃ち』を使用して『アサルトライフル』でベルの攻撃に合わせる。
 二人が誘導をしている途中で『トランシーバー』にて再び連絡を入れて『誘導地点』で待ち伏せをしていて欲しいと頼んでいたのだ。
 おかげで能力者達はユミルに知られる事なく、それぞれ身を隠して攻撃のタイミングを図っていた。
「ホント、酒を飲んでりゃ酒代が馬鹿にならなかっただろうなぁ」
 鬼非鬼は『ゲイルナイフ』を構えながら、のろのろと立ち上がったユミルの脛や腱、つま先などを狙って攻撃を行い、再び転倒させようと試みる。
「踊れ踊れ!」
 鬼非鬼の攻撃によってよろよろとして見せるユミルに向かって叫ぶ。
「続いて行きますっ!」
 遠見は叫び『竜の爪』を使用しながら『真デヴァステイター』で援護射撃を行う。他のキメラよりも頑丈とは言え、一点を集中して攻撃されたら弱ってくるのは当たり前で、ガクンと膝が折れてユミルは倒れこんだ。
「危ないっ!」
 鬼非鬼はユミルが倒れる先に遠見がいる事に気づき『瞬天速』を使用して遠見を抱えて、影響の無い場所へと移動する。
「ありがとうございます」
 遠見は頭を下げて鬼非鬼に礼を言うと、再び武器を構えて戦闘に入る。
「加減はしない! 容赦もしない! そろそろ神話キメラも打ち止めだろ?」
 九条は叫びながら『クロムブレイド』を振り上げ『流し斬り』と『両断剣』を併用しながら攻撃を仕掛ける。
「一気に絶滅させてやるからさっさとヴァルハラに旅立て!」
 世界を作る暇など与えん、九条は言葉を付け足して再び攻撃を行う。
「――――穿ち、断つ。脚一本、貰うわ」
 紅は『ガラティーン』と名刀『羅刹』の二刀を構え『流し斬り』を使用して攻撃を行い、追撃として『二段撃』を使用する。元々狙われていた足であり『ずしん』という音と共にユミルの足が片方、落ちたのだった。
「貴方を天に誘います――貴方が天国にいけるのならば、ね」
 加賀は呟きながら『鬼蛍』を構えて『両断剣』『流し斬り』『二段撃』を使用して攻撃を行う。
「キミは危険すぎる‥‥この一撃で一気に勝負をかけさせてもらうね」
 鳳は呟き機械剣『莫邪宝剣』をで攻撃を行い、傷口から『蛍火』で攻撃を行い『両断剣』『流し斬り』『二段撃』を使用してもう片方の足も落とす。
「巨人殺し‥‥なんて呼ばれるのも悪くないかもね」
 薄く微笑みながら鳳は呟き、倒れながら苦しむユミルを見る。
 しかし――ユミルは両手を振り上げて地面を強く殴る。近くには岩などがあり、ユミルが手を振り下ろした事によってそれらは砕け、勢いよく能力者達に向かって襲い掛かる。
 もちろんユミルが狙って行動したとは考え難い。咄嗟の反応で行った行動なのだろう。
「びっくりするから、そういうのは止めてくれよな」
 鬼非鬼は呟き『【OR】鬼金棒』へと武器を持ち替えて殴りつけ、他の能力者達もそれぞれの死角から攻撃を行う。
「このまま押し切るっ」
 遠見が呟き『真デヴァステイター』で攻撃を行う。彼女は先ほどのユミルの攻撃の際に『竜の鱗』を使用しており、他の能力者達よりかはダメージを軽減できていた。
「まともに喰らったら助からないかもだけど‥‥当たらなくちゃ意味がないよっ」
 遠見は呟きながら射撃を行い、次の能力者へと攻撃を繋ぐ。
 続いて九条が攻撃を行い、彼が離れると同時にアンジェラが『アサルトライフル』で攻撃を仕掛ける。
「‥‥原初の巨人が死んだら、神話の続きはどうなるのかしらね」
 紅は蒼い陽炎を纏いながら『ガラティーン』と振り上げて攻撃を行う。ユミルの腕が僅かに動き、反撃を仕掛けようとしたがベルの小銃『シエラクライン』がユミルの腕を狙い、ユミルの攻撃を防ぐ。
「ユミル‥‥キミを破壊する」
 鳳が冷たく呟き『蛍火』を振り上げると、急所であろう心臓部分を狙って突き刺したのだった。


―― 巨人打ち倒して‥‥ ――

「何とか‥‥大したダメージはなくて済みましたね」
 ユミルを退治した後、ベルが一緒に戦った能力者達を見渡しながら呟く。皆、無傷というわけには行かなかったけれど、全員軽傷であり、少し休めば次の任務にも影響は無いほどだった。
「次の神様は何が出てくるのかね? そろそろバグアもネタが尽きてきたと思うんだけど」
 九条が頭の後ろで手を組みながら呟くと「‥‥マイナーな神様だったらまだいるんじゃないでしょうか?」と紅が言葉を返してくる。
「まぁ‥‥現れない事が一番なんですけどね‥‥」
 加賀も苦笑気味に呟くと「次はでいだらぼっちと戦いたいな」と鬼非鬼がポツリと呟く。
「現れたら戦います、たとえどんな大きさのキメラであっても」
 遠見は服についた泥を払いながら言葉を返すと「皆、怪我の手当てはいい?」とアンジェラが『エマージェンシーキット』と『救急セット』を見せながら能力者達に問いかける。
「俺は大丈夫だよ、アンジェラ君こそ治療した方がいいんじゃないかな?」
 鳳が言葉を返すと「ワタシは大丈夫」とアンジェラは言葉を返した。

 その後、能力者達はユミルを退治したという報告の為に本部へと帰還していったのだった。


END