タイトル:桃色事態緊急発令!マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/04 02:52

●オープニング本文


現れたるは桃色キメラ。

それに打ち勝つ為に更なる桃色パワーを‥‥!

‥‥だけど、相手は曲がりなりにもキメラ、桃色だけでは勝てません。

※※※

「やーんv」

「こいつぅv」

会話だけを聞いていれば、ただの馬鹿ップルなのだけれど‥‥。

実に珍妙なキメラなのである。

※※※

「だぁーーーーーっ!! 何なの! 何なのよ、コレはッ!!」

討伐対象のキメラの資料を見て、女性能力者が発狂したように「うりゃあああっ」と叫びながら資料を投げ捨てる。

「‥‥荒れてんなぁ‥‥」

支給品で貰ったジュースを飲みながら男性能力者が荒れる女性能力者を冷ややかな目で見る。

「うっさいわねっ!! こんなキメラを退治しなくちゃならない能力者の身にもなりなさいよ!」

女性能力者(恋人いない暦3年)は「ごぉるぁっ」と叫びながら資料の挟まれた写真に向かって攻撃している。

「‥‥とりあえず冷静さを欠いたこいつにキメラ退治は無理だな」

「ちくしょう、私だってね! 少し前まではモテたんだからっ! ちょっと年くっただけで今でもモテる筈なんだから!!!」

「‥‥主旨変わってるじゃん」

呆れたように男性能力者は呟き、資料の中で見事な馬鹿ップルぷりを見せるキメラ二体に視線を落としたのだった。

●参加者一覧

神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
白虎(ga9191
10歳・♂・BM
蓮角(ga9810
21歳・♂・AA
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
水無月 蒼依(gb4278
13歳・♀・PN
キヨシ(gb5991
26歳・♂・JG
緋阪 奏(gb6253
22歳・♂・DF
氷室 昴(gb6282
19歳・♂・SN

●リプレイ本文

―― 嫉妬の炎に包まれながら、しっ闘士降り立つ ――

「桃色キメラ‥‥ですか‥‥また、変わったキメラですね‥‥?」
 資料を見ながら神無月 紫翠(ga0243)が苦笑して呟いた。
「カップル撲滅の為にしっと団参上! 邪悪なカップルを成敗にゃー☆」
 白虎(ga9191)はメイド服に身を包みながら邪悪な笑みを浮かべて呟く。恐らく彼にとっては『カップル全て』が殲滅対象になるのだろう。それがキメラであっても、そうでなくても。
「とりあえず、俺の弾ける程に切ない心を分からせる為に自腹で、自腹でねずみ花火とロケット花火を持って来ましたよ」
 自腹、という部分が大事な事なのだろう蓮角(ga9810)は二度言いながら購入してきた花火類を一緒に任務に向かう能力者達に見せる。
「ふふ、馬鹿ップル退治、張り切っていくわよ!」
 白雪(gb2228)‥‥というか姉人格である真白が拳をぐっと握り締めながら呟く。
(「お姉ちゃんってそういう性格だったっけ?」)
 白雪が問いかけると「別に? ただ意地悪するのが楽しそうだっただけ」と言葉を返し、昔からそういう性格だったと納得する白雪なのだった。
「いちゃつくだけのキメラ‥‥放って置いても問題がなさそうですが‥‥通報が来てしまった以上退治しなければなりませんね」
 水無月 蒼依(gb4278)が呟きながら一緒に任務を行う能力者達を見渡す、すると嫉妬に塗れた者達が資料にある写真・馬鹿ップルキメラを鬼のような形相で見ている。
「それにしても‥‥皆さん張り切っていますね‥‥」
「初任務がこんなんか‥‥緊張しなくていいのかもしれへんけど」
 キヨシ(gb5991)が苦笑しながら資料に目を通す。
(「同じく初任務だから軽めの任務で行こうと思ったのだが‥‥」)
 緋阪 奏(gb6253)は心の中で呟き『‥‥任務そのものは軽めだけど‥‥色々とありそうなのは気のせいだろうか』と言葉を付け足したのだった。
「同じく今回が初任務になる氷室 昴(gb6282)だ、宜しく頼む」
 氷室が能力者達に挨拶を行い、能力者達は非常に迷惑極まりない馬鹿ップルキメラを退治する為に本部を出発していったのだった。


―― 精神的ダメージが極まりない馬鹿ップルキメラを退治せよ ――

 能力者達が問題の馬鹿ップルキメラがいる町に到着すると、既に住人は避難しており町の中はシンと静まり返っていた。
「静かですねぇ‥‥さて、問題はキメラが‥‥何処にいるか、ですね‥‥」
 神無月が町の中を見渡しながら呟くと「ふふん、撲滅対象は何処にゃー☆」と白虎が退治と言う名のテロ行為に燃えている。
 ちなみに彼がテロ行為を行う理由は『誰も自分に萌えてくれないから』らしい。恐らく、普通に自業自得なのだと思う気がするのはおいておこう。
「とりあえず各々で嫌がらせ&挑発にゃー」
 そう言いながら白虎はキメラ捜索をするついでに公園に罠を仕掛けに行くのだった。
「ふはははは、しっと団の恐ろしさを教えてやるぜ」
 蓮角は既にしっ闘士と化しており「‥‥荒れてんなぁ‥‥」と緋阪が苦笑気味に呟いた。
「さて、行くか。例の馬鹿ップルは何処だ?」
 氷室も大きく伸びをしながら呟き、馬鹿ップルキメラを探すために動き出したのだった。
「何処にいるか分からないので、見つけるのが大変でしょうか‥‥」
 白雪が困ったような表情で呟くと「‥‥通報があるほどですから、相当目立つのでしょう」と水無月が言葉を返し、そのまま捜索に向かう。
「さて、俺も行くかな」
 キヨシも呟きながら無人となった町の中を駆け始めた。
「とりあえず、公園に誘導――でいいのか? 公園に罠を仕掛けるとか聞いたが‥‥」
 氷室の言葉に「公園の方が‥‥広いし戦いやすいですし‥‥」と神無月が言葉を返し、彼らも捜索を開始した。

「‥‥これは、相当な桃色なんでしょうねぇ‥‥」
 捜索している最中に神無月が壁にダイイングメッセージのように残された『もう嫌だあああっ』という殴り書きを発見して、苦笑気味に呟いた。

「くくくく‥‥馬鹿ップルなんてけしからんのですよ」
 白虎はザクザクと公園に穴を掘りながら呟く。彼は公園に誘導されてきた馬鹿ップルキメラを落とし穴の中にご招待しようと言うのだ。
 そしてそこからしっと団によるしっと団の為のフルボッコがきっと始まるのだろう。

「俺は‥‥キメラを見つけたら、俺でなくなるような気がする‥‥」
 持参してきた般若面を見ながら何処か切なそうに呟く。
「まだ見つからないのかな‥‥?」
 蓮角は『トランシーバー』を見ながらため息混じりに呟く。まだ誰からも連絡が入って来ないところを見ると、まだキメラそのものは発見されていないらしい。
「嫉妬に燃える人間を甘く見ると、火傷じゃ済まない事を教えてあげますよ」
 ふふふふ、としっと魔人に化しかけている蓮角は黒い笑顔と共に捜索を続けた。

「キメラは何処かしらー? 楽しい事になればいいけど」
 真白が楽しげに馬鹿ップルキメラを捜索しながら呟く。
(「あんまり調子に乗ると怪我をしちゃうわよ?」)
 白雪が話しかけるが「勿論、油断なんてしないわよ」と言葉を返した。
(「それならいいけど‥‥」)
「そんな馬鹿なキメラ相手に傷を負ったとなれば恥だもの、傷なんて受けてなるものですか」
 真白の言葉に白雪はため息しか出なかった。
「‥‥っと、そっちはいなかったのですか?」
 真白は捜索している最中で水無月と合流して、お互いにまだキメラを発見できていない事を知る。
「動き回っているのでしょうか、もう町全域を探したと思うのですけど‥‥」
 水無月の言葉に「見つかるまで探すしかないわね」と言葉を返し、二人は捜索を再開したのだった。

 その頃、キヨシ、緋阪、氷室も合流して捜索をしていたのだが‥‥まるでデートのようにきゃあきゃあと恋人繋ぎでしっかりと手を繋ぎながら歩く馬鹿ップルキメラの姿を発見した。
「キメラ発見。ハァ、生で見ると更にキツいなぁ」
 キヨシが苦笑しながら呟くと緋阪も盛大なため息を吐く。
「‥‥バグアの連中、なに考えてこんなヤツらを‥‥」
 緋阪が呟くとその隣では氷室も拳をふるふると震わせている。
(「あんなのに緊張していたのか、俺は‥‥」)
 初任務でキメラ退治、例えどんなふざけたキメラが相手だろうと緊張するのは当たり前のこと、氷室は表情にこそ出さなかったが、あんなキメラに緊張していたのかと思うと自分に少しだけ腹立たしくなった。
 その頃、白虎から落とし穴の設置を終了したと連絡が入り、三人は白虎がいる公園へとキメラを誘導する為に行動を開始したのだった。


―― 馬鹿ップルを嫉妬の炎で燃やせ ――

「来いよ、ついてこれるか?」
 氷室がキメラに向けて話しかけるが、いちゃいちゃする事に忙しいキメラは氷室の言葉など気にする事もなく歩き続ける。
『やぁだぁ、何か変な人が絡んでくるぅ』
『ははは、お前の可愛さに見とれているんだよ』
 言葉こそ話さないが、まるでそんな雰囲気を出しているキメラに氷室は余計に苛立ちを感じて「プレゼントをどうぞ」と『ペイント弾』でキメラ(男)を狙って攻撃する。
 その攻撃にあわせるようにキヨシもキメラ(女)に『ペイント弾』を撃つ。
『貴様等あああああっ』
 まるでそんな言葉でも言いたいかのようにキメラ両名は鬼のような形相で三人を追いかけていく。
「あそこが公園だ、他の能力者も集まってる」
 緋阪が公園を指差しながら呟くと、ブルーシートが僅かに見えている土を見つける。
「プスっと刺すのにゃー☆」
 公園の入り口付近に隠れていた白虎が『巨大注射器』でキメラ(男)の尻をプスっと刺す。もしかしたら魅惑の禁断愛の道が開けるほどに勢いよく。キメラは涙目になりながら反撃を行うが『瞬速縮地』を使用してその場から去る。
「また、これは‥‥物凄い、桃色ですねぇ‥‥慣れてないと‥‥砂を吐きそうですが‥‥ふふふ‥‥やりがいがあります」
 神無月は黒い笑顔で『魔創の弓』を構えて戦闘態勢を取る。
「ふははははははっ、しっと団の恐ろしさを思い知るがいい!」
 蓮角は般若面を装着して『しっと魔人オニタロス』と化して自腹で購入してきたネズミ花火とロケット花火をキメラに向けて投げつける。
「ちょっとお待ちなさい、貴女には地球の温暖化について教えて差し上げます。分かってますか? 温暖化が進んでしまうといけないんです。ですから、温暖化は食い止めないといけないんです」
 白雪がキメラ(女)に向けて話しかけると、キメラはワケが分からないような表情で白雪を見つめる。
「‥‥何故この話を今するのかって? ‥‥さぁ」
 白雪は横を向きながら「あなた達が熱すぎるからですよ」と小さな声で言葉を付け足した。
「うーん‥‥どのタイミングで戦闘にはいればいいのか躊躇われますね」
 水無月は苦笑しながら『蛍火』を持ったままなかなか戦闘に入れずにいた。
 その時、落とし穴に気づいたのかキメラ(女)がキメラ(男)を庇うように突き飛ばす――のだけど‥‥ここが白虎の意地の悪いところだった。
 実はブルーシートが見えていた部分は『偽の落とし穴』であり、本当の落とし穴はそれより一歩先、つまりキメラ(女)が突き飛ばした場所、見事にそこに存在しており、キメラ(男)は目が点になりながら奈落の底へと落ちていった。
 まさにそれはドツキ漫才のようなノリで。慌ててキメラ(女)が穴の中を覗こうとすると‥‥神無月が接着剤入りの弾丸を発砲して、キメラ(女)の動きを止める。
「うざいな、桃色空間は。うちらの暗黒オーラに勝てるかな? ふふふ、覚悟しておけよ」
 神無月はまるで大魔王のような笑顔でキメラ(女)に話しかける。むしろこの状況ではどっちがキメラでどっちが善人なのか分からない。
 そして落とし穴に落ちたキメラ(男)に向かって白虎がタライを投げつけている。ちなみにタライを落とす事に意味はないらしい。
「はははははははっ、しっと団の恐ろしさ、身をもって味わえ!」
 蓮角はまるで人格が変わったかのように落とし穴の中にいるキメラ(男)に対して網を投げつけたり、泥団子を投げつけたりとしている。
「うふふふ、赤い糸は弱いわね‥‥ぶつぶつと、人の気持ちみたい」
 真白はキメラ(女)の前で赤い糸をちぎりながらニッコリと笑顔で呟く。
「あんま、気乗りはせえへんけど‥‥いくでぇ」
 悪そうな笑顔でキヨシが『アサルトライフル』でキメラ(男)に攻撃を仕掛ける。穴の中で身動きの取れないキメラ(男)はそれを全て体で受けてしまい、血がぼたぼたと流れる。
「遠慮はいらん、好きなだけもっていけ」
 氷室も『アサルトライフル』でキメラ(男)に攻撃を行い『スブロフ』を穴の中へと流し込む。
「寒いだろう、なら暖めてやる」
 氷室はそう言いながら着火を行い、穴の中には炎が走る。その姿を見てキメラ(女)が足をちぎりながら能力者達に向かっていく。
「どおおおおりゃああああっ」
 オニタロス‥‥もとい蓮角がスキルを使用しながらキメラ(女)に攻撃を仕掛ける。それと同時に真白も動き始める。
「こうなったら実力行使! 私的な恨みはないけどね!」
 真白は叫びながら『月詠』と『血桜』でキメラ(女)に攻撃を仕掛けた。
「‥‥飛燕の太刀‥‥居合いの次に得意な技です。見切る事が出来ますか?」
 水無月は構えながら呟き、素早い動きで攻撃を行い、キメラ(女)にダメージを与える。
「‥‥抜刀『裁』」
 緋阪が短く呟きながら攻撃を仕掛けた。
「悪いが『悲劇の恋人』は向こうに逝ってやってくれ」
 緋阪が『【OR】試作型「紅緋」』で攻撃を行い、キメラ(女)は涙を流しながら地面へと倒れる。
「抵抗しなければ、どこかに隔離ということもあったのににゃ」
 白虎はテロ行為こそ行うつもりでいたのだけれど、命まで奪う事は考えてなかった。しかしこのまま放っておくと自分たち、そして戦えない一般人に被害が出る事を考えて退治する他なかったのだ。


―― 桃色オーラ消えて ――

「いやー‥‥スッキリしました」
 額の汗を拭いながら蓮角が凄く爽やかな笑顔で『何かをやり遂げた』という表情で呟く。これで彼も立派なしっ闘士になったことだろう。
「しかし、疲れました‥‥当分甘いものは‥‥無しの気分です」
 うぷ、と口を押さえながら神無月が呟く。
「とりあえず、無事‥‥に終わったわね」
 真白が呟くと『もう人にちょっかい出すのは止めようね』と白雪が真白に釘を刺す。
「帰還する前にコレを何とかしないと‥‥この惨状では町の皆さんから怒られそうですし」
 苦笑しながら水無月が罠の仕掛けられた公園を見渡す。流石に落とし穴や接着剤、銃弾の埋まった地面などをそのままにして帰還するわけには行かない。
「せやな、俺はさっさと終わらせて、戻って一眠りしたいわ」
 キヨシが欠伸を噛み殺しながら呟き、片付けへと取り掛かる。
「ま、行き過ぎた幸せは摘まれる運命という事だ‥‥俺達のようにな‥‥」
 絶命している馬鹿ップルキメラを見ながら緋阪が目を伏せて呟く。
「俺は皆とこの任務をやれて良かったと思っている。また会う時も宜しく頼む」
 氷室が一緒に任務を遂行した能力者達に軽く頭を下げながら言う。それは彼の本心であり、嘘偽りは一切ない言葉だった。

 その後、能力者達は落とし穴を含めて片付けを終えた後にラストホープへと帰還し、本部へと報告を行ったのだった。


END