タイトル:カマキリーマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/13 23:49

●オープニング本文


きぃぃっ!

あの子憎たらしいガキンチョめっ!

いつか目にもの言わせてくれるわよぅ!

※※※

「ねぇねぇ、そこの綺麗な『お姉さん』、本部の前でイケメン? があんたに告白したいって言ってたよ」

にっこりと天使の微笑みでキルメリア・シュプール(gz0278)が鵺(gz0250)に呟く。

「ええええええっ! アタシに!? イケメンが! 告白ですってぇぇぇ!!」

単純馬鹿な鵺はもちろん彼女の言葉を信じきって、本部の前へと勇み足で駆けていく。

「‥‥‥‥おお! きみが俺の彼女になりたいという人か!」

本部の前で待ち構えたるは褌のみを着用した異質な能力者。一応言葉を濁して『異質』と言ってはいるが、はっきり言って変態として名を馳せているであろう大石・圭吾(gz0158)だった。

「いやよぅ!!」

両手で顔を覆いながら鵺は泣き出してキリーのところへと「どうなってるのよぅ!」ときぃきぃと喚きたてる。

「だから私は『イケメン?』って『?』をつけたじゃないの。むしろあんたみたいなカマ男がイケメンなんてゲットできると思うの? 世の中の美女が泣くわよ。むしろあんたみたいなカマを選ぶイケメンなんて『イケメン』を返上してから選ぶべきだと思うのよね」

べらべらとまくし立てながらキリーは魔王らしい邪悪な微笑みを残して鵺の元から去っていった。

しかし鵺と大石、彼らは夢にも思っていないだろう。別の能力者へ同じように利用されていたということに。

※※※

「こうなったらアタシは‥‥美を磨くわよ! へへぇ、お代官様参りました! とひれ伏すほどに綺麗になってみせるんだから!」

どこの時代劇だ、とか、誰がお代官様なんだよ、とかのツッコミはとりあえず置いておくとしよう。

「美を磨く為にもお金がいるわよね‥‥しっかり仕事して稼がなくちゃ!」

鵺は『ぐっ』と握りこぶしを作りながら呟いたのだった。

しかし鵺もある程度の任務は受けているはずなのに、何故そんなにお金がないのか‥‥それは新しい服を次から次に買うから、と本人は語っている。

●参加者一覧

暁 古鉄(gb0355
22歳・♂・DF
皓祇(gb4143
24歳・♂・DG
ルカ・ブルーリバー(gb4180
11歳・♀・ST
シルヴァ・E・ルイス(gb4503
22歳・♀・PN
フローネ・バルクホルン(gb4744
18歳・♀・ER
ブロント・アルフォード(gb5351
20歳・♂・PN
障子にメアリー(gb5879
10歳・♀・SN
相賀翡翠(gb6789
21歳・♂・JG

●リプレイ本文

―― 恋するオカマの美特訓? ――

「今回はどうぞ宜しくねぇ♪ きゃ☆ イケメンが沢山いて悶絶しちゃいそうだわ!」
 恋するオカマ・鵺(gz0250)が頬に手を当てながら照れたような表情で呟く。まずこの時点で『このカマ、殴りてぇ』と思った能力者もいるだろうが、今回の任務はカマ退治ではないので我慢して欲しい。
「俺は暁 古鉄(gb0355)だ。こてっちゃんとでも呼んでくれ!」
 暁が元気よく挨拶をするのだが、鵺と視線が合いバチコンとウィンクをされて「宜しくね! こてっちゃん」と言葉を返された。きっと語尾には『はぁと』がついていたに違いない。
(「キメラ討伐なんだか鵺嬢討伐になるんだか、よく分からない任務になりそうですね‥‥」)
 皓祇(gb4143)がきゃあきゃあと騒ぐ鵺を見て苦笑しながら心の中で呟く。
「鵺ちゃん‥‥新しい洋服‥‥可愛いね‥‥」
 ルカ・ブルーリバー(gb4180)が鵺を見ながら呟く。今回の鵺の服装は『どこのフランス貴族だよ!』と突っ込みを入れたくなるようなものだった。ドレスの裾なんか引きずりまくって戦闘任務だと言う事を明らかに無視している服装に能力者達は頭を抱えた。
(「また、何か起こるのだろうか‥‥」)
 シルヴァ・E・ルイス(gb4503)が少し離れた所からため息と共に心の中で呟く。
「鵺よ、そんな格好では仕事に支障が出るだろう‥‥今回は海という事で、コレだ」
 フローネ・バルクホルン(gb4744)が取り出したのは‥‥白ビキニ(パレオ付)だった。
「きゃあ♪ 可愛いビキニじゃないのっ。あたし、今年の夏は海に行く暇なかったのよねぇ‥‥だから折角買ってた水着も着れなかったのよぅ」
 その場合の水着は男性用だったのだろうか、女性用だったのだろうか、聞いてみたいような聞いたくないような、そんな葛藤に能力者達は駆り立てられていた。
「まぁ、腰の布をつけるつけないは、キミの判断に任せよう。無論、つけない方が魅力的に映る事うけあいだ」
 フローネの言葉を聞いて能力者達に衝撃が走る。鵺は心は乙女でも生物的には男なのだから、パレオをつけなければ‥‥その、分かるだろう? まる分かりになってしまうのだ。
「えぇ、でも寒そうだからパレオはつけちゃうわよぅ。ちょっと着替えてくるから待っててね〜ん♪」
 白ビキニを持って嬉々として着替えにいく鵺を見て、まだ任務が始まったばかりの能力者達は何度目になるか分からないため息を吐いた。
(「何で、何で俺はこんな所にいるんだろう‥‥あんな奴がいるなんて、引き受けなければ良かったな‥‥」)
 ブロント・アルフォード(gb5351)は盛大なため息を吐きながら心の中で呟く。
「今回はスイート☆ダーリンはいないけど‥‥未来のスイート☆ホーム資金の為に頑張って稼がなくちゃ♪ ぐふふふ‥‥竜三と違って、メアリーってば良い奥さんになれちゃうわ」
 障子にメアリー(gb5879)が「ぐふふふ」と不気味な笑い声をあげながら柱の影から今回の能力者達を見る。
「えれぇ依頼を選んじまったぜ‥‥さっさと終わらせねぇとな‥‥」
 げんなりとした表情で呟くのは相賀翡翠(gb6789)だった。今回は男が多いし自分は大丈夫だろう‥‥と考えている彼なのだが実際どうなるかは任務が終わるまでは何とも言えない、鵺にとってイケメンゲットは長年(かもしれない)の夢なのだから。
「お待たせ〜♪ ど〜ぉ? 似合う〜?」
 うふふ、捕まえてごらんなさ〜い、的な内股走りでやってきたのは白ビキニ(パレオ付)を着用した鵺だった。外見はそれなりに見れる顔なので、違和感はないが‥‥所詮は鵺である。
「ふむ、似合うではないか」
 そして何故かフローネも着替えており『ふろ〜ね』と書かれたスク水に白衣を羽織り、ビーチサンダルに大鎌を持って参上していた。
(「この依頼、どうなるんだろう。俺にも予測不可能だぜ‥‥」)
 暁は心の中で呟き、鵺も着替えたことだし、と能力者達は波乱待ち受ける(かもしれない)任務へと出発していったのだった。


―― キメラを退治する為に ――

 今回のキメラは人型、しかも翼を持つという情報があり、現地に到着する前から能力者達は高速艇の中でそれぞれ準備をしていた‥‥のだが、鵺によって邪魔される者が多数存在する。
「ねぇねぇ〜、折角一緒の任務になったんだから携帯の番号とメルアド交換しましょうよぉ」
 鵺が擦り寄りながら相賀に話しかけるのだが「寄るな」という冷たい言葉と共にグーで殴る。勿論非覚醒状態の為、威力は軽減されるが鵺がこのような事で諦めるような性格ではないのを彼はまだ知らない。
「あ、アタシは諦めないわよぅ‥‥イケメンとハッピー結婚ライフを‥‥あきらめないわよぅ!」
 その執念めいたものにぞっとするものがあり「お、俺には近寄るな、お前と付き合う趣味はねぇよ」と鵺から離れていった。
(「関わりたくねぇー‥‥でもあんまり邪険にするのも可哀想か‥‥」)
 暁は哀れな姿の鵺を見ながら苦笑して「もうすぐ着くから準備してた方がいいぜ」と話しかけてやる――が。
「まぁ、もしかしてあなた‥‥アタシの事が好きなのかしらっ!」
「はぁ?」
 鵺の果てしない勘違いに暁は間の抜けた声で言葉を返す。
「え、別に俺は「やっぱり! 何か視線を感じると思っていたのよね!」‥‥人の話を聞こうぜ‥‥」
 暁の言葉を遮り、自己主張ばかりをする鵺を見てまだ戦闘もしていないのに疲れが彼を襲う。
「鵺さん、現場まで私の後ろはどうですか?」
 皓祇が鵺に話しかける。高速艇の着陸地点から現地までは大した距離はないのだけれど、男性陣から鵺を離す意味で皓祇は鵺を誘った。
「あらあらあら、嬉しいわあぁ♪」
 鵺は「きゃあ♪」と嬉しそうに呟き「早く着かないかしらねぇ」と言葉を付け足したのだった。
「鵺ちゃん‥‥あんまり無茶しちゃ、駄目だよ‥‥?」
 首をかくりと傾げながらルカが鵺に話しかけると「あらぁ、いつもアタシは無茶なんてしないわよぅ」と言葉を返した。戦闘面ではいつも無茶をしない、むしろもう少し無茶をしろというくらいなのだが、男性陣たちにはいつも無茶をしている。
「そういえば、それは何に使うのだ?」
 シルヴァが相賀の持つスコップを指差しながら問いかけると「ちょっと、な」と意味ありげに彼は言葉を返してきた。
「ちょっとぉ、そこの無口な彼ぇ♪ 一緒にお話しましょうよぉ」
 鵺がブロントに話しかけると「半径1メートル以内に近寄るな」と彼は冷たい言葉を返す。
「いやよぅ!」
 しかし鵺はズカズカと近寄るのだが、ブロントは『蛍火』の切っ先を鵺に向ける。
「これ以上俺に付き纏うのなら‥‥躊躇いなく斬るぞ」
 低い声で言われ少しだけひるんだが「多少の事でビビってたらオカマなんてやってられないわよぅ!」と開き直り、ブロントの所まで駆け寄ろうとした――のだが高速艇がガクンと揺れ、現地へ到着した事を知らせてきた。
「どうやら到着したみたいね、ぐふふふ‥‥メアリーはいつもみたいに皆のカッコイイ所を見守っているわ」
「まぁ、とりあえずさっさと倒して帰ろうぜ‥‥俺達に災難が降りかかってくる前にな」
 背後から熱い視線を送ってくる鵺に気づかない振りをして、能力者たちはキメラが徘徊しているとされる海岸へと向かう。
 キメラが居る砂浜まで向かうのに苦労する事はなかった。特に道が複雑だという事もなく、能力者達は何事もなく現地へと到着する。
「きゃあ♪ 素敵な砂浜〜♪ こんな所でデートなんか出来たら最高でしょうねぇ〜」
 相手がお前じゃなければな、恐らく狙われている男性陣は心の中で呟くことだろう。
 その時、鵺の騒がしい声に気づいたせいか、キメラが空から降下してくる。
「うぉっし! やらいでかぁ!」
 暁は『フランベルジュ』を構えてキメラを見据えながら大きく叫ぶ。
「アタシも頑張るわぁ」
「いいえ、後ろに下がっていてください。あぁ、そうだ。こんなもの持ってきていたんですよ」
 皓祇が取り出したのは『イルカのフロートヘルム』と『サンダル』。この二つを鵺に渡して皓祇はAU−KVを装着してキメラへと向かう。
「やっぱり、あなた‥‥アタシの事がすきなのね‥‥っ!」
 イルカを装着して、鵺が勘違いフルモードで発動している事など気づかずに彼はキメラとの戦闘に参加していった。
「鵺ちゃん‥‥危ないから後ろに行こう?」
 ぐいぐいとルカが鵺の服の裾を引っ張るのだが、やはり少女なので鵺の力には適わず、ずるずると引きずられて行くのみだった。
「妙な、組み合わせだな」
 シルヴァがキメラとキメラの持つ武器を見ながら呟く。蝙蝠の翼を持つキメラなのだから大鎌か槍、というイメージを彼女は持っていたらしいが現れたキメラは見事にイメージとはかけ離れた三叉の矛を持っていた。
「悪いが、さっさと片付けさせてもらう」
 シルヴァは『月詠』を振るい、キメラへと攻撃を仕掛けるが空中に逃げられてしまい、攻撃は避けられてしまう。
「さて、今回は私も前に出させてもらおうか。一応ビーチ用の格好はしているが砂まみれにはなりたくないのでな」
 フローネは大鎌を振りながらキメラへと攻撃を仕掛ける。彼女が武器を振るう度に胸が大きく揺れるが、当の本人はあまり気にしていない様子だ。この場所に煩悩に塗れた男性がいれば「らっきー!」と喜ぶかもしれないが、とりあえず今回の任務には居ない‥‥と思う。
「‥‥武器を振るうには邪魔だな‥‥まったく、人に譲ることが出来れば苦労しないんだがな」
 フローネは胸を持ち上げて大きくため息を吐いてみせる、彼女のこの言動は胸の小さい女性を全て敵に回したと考えて間違いないだろう。
「二刀流! 十字閃!」
 ブロントがスキルを使用しながらキメラへと攻撃を仕掛ける。カウンターのようにキメラが攻撃を仕掛けてきたがブロントはそれを器用に弾いて見せた。
「そんな攻撃で、俺を仕留めるのは無理だな」
 ブロントが攻撃を弾くと同時に暁が「行くぜぇ!」と攻撃を仕掛け、キメラが避けようとしたのだが‥‥。
「悪ィが飛ばれたら厄介だからなっ!」
 正面から攻撃しかける、と見せかけて側面へと回り込みスキルを使用しながらキメラの翼を叩き折る。
「仮にも人の姿してるんだったら、地べたで戦おうぜ、地べたで!」
 暁の言葉の次に「避けてください!」と皓祇が叫び、暁は言葉に従うように避けると『瑠璃瓶』がキメラの身体に命中して、苦しそうに砂浜へと倒れこんだ。
「頑張ってください‥‥」
 ルカはスキルを使用して能力者達の武器を強化、キメラの防御力を低下させ、能力者達にトドメのチャンスを渡す。
「砂浜なんて場所はお前には似合わぬ、早々に立ち去るがいい」
 シルヴァは呟きながら剣を振るい、キメラへと攻撃を仕掛ける。
「危険な相手が居るんだから、さっさと倒れてくれよな」
 相賀はスキルを使用しながら攻撃を繰り出し、ちらりと鵺を見る。此方に向かって投げキッスしている気がするが、あえてその投げキッスも回避する。
(「仕事するかと思って受けてみりゃ、なんだアイツ」)
 全く戦闘に加わらない鵺を見て苛立ちが募るが、相手にしてしまえば身を滅ぼすと思い相手にする事はしなかった。
「これで終わらせる!」
 ブロントが攻撃をすると、キメラは悲鳴のようなものをあげて地面へと倒れこみ、能力者達はキメラ退治を無事に終わらせたのだった。


―― キメラよりも厄介な恐怖がやってくる ――

「みんな〜! お疲れ様ぁ♪」
 キメラ退治を終えた後に鵺が抱きつこうとするのだが、悉く拒否されている。
「寄るな! 来るな! 近寄るな!」
 相賀の言葉に「やぁん、何かつれないわねぇ」といじけた声を出すがそれが更に気色悪さを倍増している。
「しかし大したキメラじゃなくて何よりだな。所詮はただのキメラ、恐れる相手ではないということだ」
 ブロントが珈琲を飲みながら呟くと「あらあら、あたしにも頂戴」と鵺が話しかけてくる。
「寄るな」
 短くばっさりと斬ると「みんなつれないのねぇ」と鵺がため息を吐きながら呟く。
「ね〜ぇ」
 くるりと顔を向けた先にいるのは暁。彼は身の危険を察したのか周りをきょろきょろと見渡す。
「お、俺よりもアイツの方がイケメンなんじゃないか?」
 彼が指差したのは先ほど息絶えたキメラ。
「竜‥‥鵺にはお似合いだぜ? きっと‥‥」
「やぁよぅ、いくらかっこよくても死んでるじゃないの!」
 キメラじゃないの、ではなく鵺にとって重要なのは『生きている』事らしい。生きてさえいればきっとキメラでもOKなのだろう。
「さて、久しぶりに日光浴をしていくのも悪くなかろう、なかなか外に出ない事だしな」
 フローネはすっかり海を満喫しているようだ。
「折角だから鵺もどうだ‥‥」
 フローネが鵺も誘おうとした時、既に鵺は白い砂浜に首だけをだして埋められている姿だった。
「全世界の男の平和の為に埋まってろ!」
 スコップ片手に息を荒くする相賀を見て「なるほどな、こういうことか」とシルヴァはスコップの使い道について納得したように呟いた。
「鵺ちゃん‥‥は、綺麗になりたいんですよね‥‥? ルカも‥‥綺麗になってみたいです」
「ルカちゃん‥‥教えてあげたいけど、アタシ今埋まってるの‥‥まずはアタシを助けてくれないかしら‥‥」
 あ、そうだった、ルカは言葉を付け足したけれど「絶対出すな!」と男性陣の言葉にかくりと首を傾げながら「駄目みたいです」と鵺に言葉を返した。

 それから日が暮れる頃まで能力者達は砂浜でゆっくりまったりとして、そのまま帰路へと着こうとする。
「ちょっとぉぉぉぉぉぅ! アタシが干からびちゃうじゃないのよおおおおう!」
 鵺の叫ぶ声などほとんどの能力者は耳を貸さずに高速艇へと向かう。
 しかしシルヴァだけはため息を吐きながら鵺を出してやろうとしていた。
「あ、ありがとう」
「干からびられては、夢見が悪い。それだけだ」
 クールに振舞う彼女を見て「あたしが男だったら惚れてるわぁ」と言葉を返す。ここで『男だろ』とツッコミを返さないのは鵺への優しさか、それとも妙なことに巻き込まれたくないからなのか、それはシルヴァ本人にしか分からない。

 こうして鵺という恐怖から逃れられた男性陣だが、メアリーというストーカーに付き纏われるのは、これより一時間後の事‥‥。


END