タイトル:廃館に住まう闇マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/04 23:41

●オープニング本文


そこには一人の少女が救出されずに残されているのだと噂されていた――‥‥。

※※※

「救出しそこなった少女?」

依頼内容を見て、一人の能力者が呟く。

「何でも一週間前に救出に向かった際、その館の持ち主は殺されていて、一人娘が何処を探しても見つからなかったらしいのよ」

「一週間前って‥‥普通の人間だったら死んでいるんじゃないのか? 食べ物もないし、キメラもいるんだろ?」

女性能力者に対して、男性能力者が問いかけると「食べ物だったらあるみたいなのよ」と答える。

「その館の持ち主‥‥つまり娘の両親は、いざという時の為に食料・飲み水の確保だけは怠らなかったらしいわ。だから‥‥餓死とかしている可能性は低いのよ」

「でもキメラがいるんだろ?」

そう、食べ物面では心配なくともキメラが闊歩している館の中、少女―‥‥資料を見れば13歳とあるが、そんな少女が生き残っているか分からない‥‥むしろ確率としては低い方だろう。

「だから今回は娘が生きているようなら救出‥‥って事ね。あとキメラ退治も仕事の中に入ってるわ」

一週間前に向かった能力者が助けそこなった少女――果たして生きているのだろうか?

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
ジーラ(ga0077
16歳・♀・JG
吾妻 大和(ga0175
16歳・♂・FT
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
江崎里香(ga0315
16歳・♀・SN
時任 結香(ga0831
17歳・♀・FT
西島 百白(ga2123
18歳・♂・PN
ヴァイオン(ga4174
13歳・♂・PN

●リプレイ本文

「一人で過ごす闇は‥‥きっと怖いだろうね。その子の気持ちがよく分かるよ‥‥早く助けてあげよう。放っては置けないよ‥‥」
 ジーラ(ga0077)が自分の事と重なったのか、俯きながら呟く。
「その子‥‥生きてるといいな‥‥両親もその子も死んでるなんて‥‥悲しすぎる‥‥」
 時任 結香(ga0831)も拳を握り締めながら、小さく呟いた。
 集まった能力者が少女について考えている時、ヴァイオン(ga4174)は最悪の事態も含め、少女の状況を四つほど考えていた。
「‥‥何事もなければ万事OKですが‥‥」
 ヴァイオンの呟きに言葉を返したのは西島 百白(ga2123)だった。
「1%でも‥‥可能性が‥‥ある‥‥のならば‥‥」
「そうですね、きっとキメラのいる場所に取り残されて心細いことでしょう‥‥」
 水上・未早(ga0049)も呟き、能力者達は今回の作戦について話し合いだした。
「電気が生きているとも限らんから、懐中電灯なんかは持っていくようにしましょ」
 吾妻 大和(ga0175)が呟くと「そうだね、あと通信機も借りとこうか」と江崎里香(ga0315)も貸出リストに加えた。
「一応、蛍光マーカーと、暗視スコープも借りたい所だね」
「そうだな‥‥後は現場に行って見ないことにはどうしようもないな」
 御影・朔夜(ga0240)が呟き、能力者達は少女がいるであろうとされている館へと向かったのだった‥‥。


●現場到着:潜む少女、潜むキメラ

「屋敷捜索――‥‥幽霊とか出たら面白そうですね」
 館に到着して、最初に呟いたのはヴァイオンだった。
「こんな場所に一週間も―――‥‥餓死の可能性は低くとも精神として耐えられているか如何‥‥」
 呟いたのは御影、真暗な館の中、周りには民家など存在しない、つまりこの辺にいるのは少女とキメラだけなのだ。
 捕食者が近くにいるという驚異的ストレスを受けながら、少女はどうしているのだろう‥‥御影はそんな事を考えながら「館の中に入ろう」と呟いたのだった。
 外見的にも広そうな館を皆で少女捜索するのは得策ではないと考えた能力者達は、1班四人の構成で2つの班を作る事にしたのだった。
 A班:時任・ヴァイオン・御影・江崎。
 B班:吾妻・ジーラ・水上・西島。
「A班は右から、B班は左からの捜索でいいですね。キメラ退治、そして何より少女の救助を最優先にしましょう」
 水上の言葉に能力者達は首を縦に振り、それぞれの方向へと歩き始めたのだった。


●A班

「暗視スコープ借りられたら良かったんだけど‥‥」
 江崎が懐中電灯で廊下を照らしながらため息混じりに呟く。吾妻の言った通り、電気は生きておらず、懐中電灯の光だけが頼りとなっていた。
「これじゃキメラに此方の居場所を知らせるようなものだな‥‥」
 御影も持っていた懐中電灯で天井などを照らしながら呟いた。
「食料とかはきちんと保存しているらしいから‥‥食料が置いてある場所とかを優先に捜索した方がいいのかな?」
 時任の言葉に「そうでもないんじゃないでしょうか」とヴァイオンが答える。
「此処の館の持ち主は万が一の時の為に食料などを保存していたらしいですから‥‥隠し部屋のようなものがあるんじゃないでしょうか?」
 ヴァイオンの言葉に「確かに一理あるな‥‥」と御影が呟く。
「食料が置いてあるというとキッチンとかそう言う場所になると思うけど‥‥そんな所にいたらキメラにすぐに見つかると思う」
「あ、そっか。でも隠し部屋となると探すのに苦労しそうだね‥‥館全体が暗いし‥‥」
 時任が懐中電灯で前を照らした瞬間――‥‥何かが此方へ走ってくるような激しい音が館内に響いた。
「キメラ――っ!」
 猪のように此方目掛けて走ってくるキメラを見て「玄関に戻ろう」と御影が提案する。
「そうですね。こんな狭い場所で戦うとなると‥‥明らかに此方が不利になりますし‥‥」
 ヴァイオンも呟き、A班のメンバーは玄関ホールに戻ってキメラと戦う為に来た道を戻り始めた。

「‥‥随分と好き勝手に殺したんだ、もう良いだろう? いい加減‥‥此処で果てろ―――アクセス」
 御影は呟き、覚醒してハンドガンを構えた。
「そうね――ここらでいい加減に死んでもらいましょ」
 江崎も小銃・スコーピオンを構えながら後ろへ下がる。館内、しかもまだ少女を見つけていない状況の中で銃の乱射を控える為に、江崎は援護へと回った。
「やれやれ、まさに猪突猛進だな――こいつは」
 キメラが自分に向かって突進してくるのを避け、ヴァイオンがため息混じりに呟いた。
「やっぱり馬力と突進力は強いわね、こんなのマトモにくらっちゃったら無事ではすまないでしょうね」
 江崎がキメラの動きを止めようと、足を狙うが動き回っている為に狙いづらい状況にあった。
「でも倒さなくちゃ‥‥この館の持ち主を‥‥娘さんの両親を失わせた罪を償わせてやるっ!」
 時任が叫び、ツーハンドソードを振りかぶってキメラに斬りかかる。
「ふぅ‥‥暗闇の中、こちらも相手も上手く見えていないのでしょうが‥‥このままではキリがないですね」
 ヴァイオンが呟き「こっちですよ!」とキメラに向けて叫ぶ。そしてキメラはヴァイオンの方に向かって走り、頭に生えたツノのようなもので突き刺そうとしている。
「―――はっ!」
 ヴァイオンは呟き、上に飛び、キメラの背に乗るような形を取った。そして肝心のキメラは壁にツノが突き刺さり、動けない状況になっていた。
「つまらないな、もう少しありえない展開を見せてほしいものだが‥‥」
 御影がため息を吐き、彼と江崎は援護射撃でキメラの足を撃ちぬき、接近戦を行えるヴァイオンと時任はキメラに向かって走り、勢いよく攻撃を仕掛けたのだった‥‥。
「ふぅ、これでキメラは倒したし、残るは館に残る少女を探すだけだね」
 時任は呟き、能力者達は武器を直し、少女捜索を始めたのだった。


●B班

「A班がキメラを倒したらしいな、一応これでキメラは残っていない事になるけど――ま、油断はできないね」
 吾妻がA班から受けた連絡を、同じ班の能力者に伝えた。
「そうですね、情報ミスの可能性もありますし‥‥油断はせずに少女を探しましょう」
 水上が呟き、少女捜索を再開した。
「屋根裏とかも調べたけど‥‥人がいるような気配はなかったし‥‥何処にいるんだろ」
 ジーラは館の見取り図を懐中電灯で照らしながら呟く。見取り図に隠し部屋の事が書いてあるかと思ったが、そのようなことは一切触れられていなかった。
「‥‥隠し部屋と‥‥言うからには‥‥絶対に見つからないような‥‥場所にあるんでしょうね‥‥」
 西島の言葉に「そうだね‥‥見つけられるかな」とジーラが不安そうに呟く。
「とりあえず逆の発想をしてみますか、自分が館を作るとしたら何処に隠し部屋を作るか考えてみようぜ」
 吾妻の言葉に「闇雲に探すよりいい考えですね」と水上が答え、考え始めた。
「しっかし‥‥A班がキメラを倒しちまうとは‥‥牡丹鍋したかったんだけどな、と」
 考えながら吾妻が苦笑混じりに呟く。
「‥‥あそこも‥‥見つかりにくい‥‥場所の一つですね」
 西島が指差した方向を見ると、火のついていない暖炉があった。見取り図を見ると、暖炉があるのはこの部屋のみ。他にも同じ作りの部屋があるにも関わらず、暖炉はこの部屋にしかないのだ。
「‥‥そういえば‥‥この部屋と全く同じ作りの部屋には暖炉なかったよね――」
 ジーラが呟き「中を見てくるよ」と少し大きめの暖炉の中に入った――すると。
「あったっ! 扉がある!」
 ジーラの言葉に驚いた残りの三人も暖炉の中に入ると、確かに金庫のような鉄の扉が存在した。
「鍵となる番号も分からない‥‥どうやってこの扉を開けますか‥‥?」
 水上が問いかけると「最終手段しかないっしょ」と吾妻が小銃・スコーピオンを構えた。
「え――まさか」
「そ。そのまさか」
「‥‥確かに‥‥この方法しか‥‥なさそうですね」
 西島も武器を構え、鍵の部分だけに攻撃を集中した。
 そして、鍵が壊れ、ドアが開き――能力者達が見たものは――‥‥。


●悲しき結末――‥‥

「見つかったって?」
 玄関ホールでA・B班が合流し、時任がB班の能力者に問いかける。
「‥‥えぇ、見つかりました‥‥」
 水上は呟き、吾妻が抱える毛布に視線を移す。
「死んでた‥‥」
「え――」
 時任は答え、吾妻に視線を移す。するとそこには大事に抱えられた毛布、そしてその中には亡くなった少女が包まれているのだと言う。
「おそらくはショック死、両親も殺され、いつ自分が死ぬかも分からない状況の中‥‥しかも元々が心臓を患っていたみたいで、心臓の薬も見つかりました」
 水上の言葉に、時任は涙を流し、江崎も悲しさのためか顔を背け、俯いたのだった。
「その子――‥‥これをずっと握り締めていたみたい」
 ジーラが差し出したそれは家族全員で写った写真を入れたロケットだった。
「きっと今頃は幸せさ――天国って所で両親と一緒にいるだろうし‥‥な」
 吾妻は少女を強く抱きしめ、能力者達と共に本部へと帰還したのだった‥‥。


END