●リプレイ本文
―― 朝からカマを見るのはちょっとキツいよね ――
「きゃあ♪ 今日も今日とてイケメンばかりだわぁ♪ アタシってば何て幸せ者なのかしら!」
きゃあきゃあと騒ぎながら一緒に行く能力者(主に男性能力者)をガン見しながら鵺(gz0250)が嬉しそうにはしゃいでいる。
「鵺さーん、今日も可愛いですねー!」
平野 等(
gb4090)が鵺を見ていきなりハグをする。その途端に鵺から漏れる黄色い声。
「きゃああ! な、なんて事かしら‥‥もうお嫁にいけないわ!」
傍から聞いていれば『マジで嫁に行くつもりだったのか』と全力でツッコミをいれたい所なのだが、今回の能力者達は優しさ全開の為、ツッコミを入れる事はしない。
「よぅ、鵺。今日も無駄に元気だな」
フローネ・バルクホルン(
gb4744)が苦笑しながら鵺に話し掛けると「あら、元気に無駄なんてないのよぅ」と言葉を返してくる。
(「その元気を戦闘に生かしてくれればいいのだが、という事は黙っていた方がいいな」)
フローネは心の中で呟き「‥‥そうだな」と短い言葉を返したのだった。
「フム‥‥貴方が噂の鵺さんか‥‥‥‥噂はかねがね聞いて「ええ! アタシの事を知ってるなんて実はあなた――アタシに惚れてるのね! そうなんでしょう!?」‥‥いや、人の話は最後まで聞く事をオススメするよ」
赤い霧(
gb5521)は途中で言葉を遮られ、挙句に勝手な妄想で鵺に惚れていると決めつけられ、呆れたように言葉を付け足した。
(「聞いていた通りの人ですね‥‥」)
九龍 リョウマ(
gb7106)は苦笑しながら心の中で呟き「初めまして、宜しくお願いしますね」とにっこりと笑顔で鵺に挨拶する。
(「凄いなぁ‥‥身も心も女になりきってる所が凄い‥‥」)
紫陽花(
gb7372)は鵺を見ながら心の中で呟く。彼はコスプレイヤーという事で『なりきっている』と言う所だけは凄いと素直に思っていた。
「あらあらあら、可愛い猫ちゃんがいるわっ! アタシは鵺よっ、宜しくね!」
イケメンセンサーが発動したのか鵺は紫陽花に近寄りニコニコと話し掛ける。
(「女装してる男でも恋愛対象になるんだ‥‥」)
新たな発見に紫陽花は「あ、あはは‥‥宜しくお願いします」と言葉を返したのだった。
「やぁ、鵺君。これを鵺君にあげるよ、もっと魅力的になるよ――――気に入ってもらえると嬉しいんだけどな」
夢守 ルキア(
gb9436)は『レッドローズ』を差し出しながら鵺に話し掛ける。
「あらぁ、アタシにくれるの? 嬉しいわ、ありがとう! ふふ、薔薇の香りっていいわよね」
鵺は香水を受け取りながら嬉しそうにお礼の言葉を夢守に返した。
「それにしても、折角今回は親友と会えると思ったのにぃっ!」
鵺が「きぃっ」と地団駄を踏みながら呟くと「ふむ‥‥折角の再会をキメラに水を差されるとは不運なことよ」と片倉 繁蔵(
gb9665)が鵺に話し掛ける。
「そうよねっ、大丈夫かしらぁ‥‥」
「心配せずとも、これだけの者が集まっていればすぐに排除できよう」
片倉の言葉に「そうよね、うふ、頑張りましょ」と言葉を返した。
「今回の敵は狼男‥‥相手が狼男なら、銀の弾丸を用意しておくべきでしたかね」
苦笑しながらソウマ(
gc0505)が呟くと「貴方の恋の弾丸にアタシは撃ちぬかれちゃってるわ☆」と意味不明の言葉が鵺から返ってくる。
(「敵は内にもあり、ですね」)
ソウマは鵺の言葉を軽く受け流しながら心の中で呟いた。
「それじゃ、鵺さんの友達と再会出来るようにキメラ退治を頑張りましょう」
平野が呟き、能力者達はキメラが潜む街へと出発していったのだった。
―― キメラよりもカマの方が脅威かもしれません ――
「そういえば、鵺よ。そろそろ運命の相手とやらは見つかったか?」
高速艇を降りてキメラがいる所まで向かう途中、フローネが鵺に問いかける。
「‥‥ま、まだよ! アタシの運命の相手って結構いるのよね‥‥その中から1人に決めるのって難しくて、でもアタシもまだ若いし、そんなに焦らなくてもいいっていうか!」
鵺の焦り具合を見て『いないんだな』とフローネは心の中で呟く。
「そ、そんな事より今日はアタシの衣装はないのかしら!」
「今回は‥‥ルキアの方がネタが良かったからな、私のは暖めておくよ‥‥」
そうなの、と鵺が夢守を見ると「キメラ退治したら渡すから楽しみにしててね」と夢守は言葉を返した。
「ねーねー、鵺さん。俺のお願い聞いてくれる?」
平野が鵺に接近して上目遣いで小首を傾げながら問いかけてくる。
「あら、なぁに?」
「俺ら頑張って『鵺さんの為に』狼男を倒しちゃいますから、その間は危なくない所にいてくださいね?」
良い声で平野が話し掛けると「わ、わかったわ! アタシ危なくない所にいるわ!」と鵺は言葉を返す――のだが、ここで忘れてはいけない。鵺は能力者なのだと言う事を。何故か一般人以上に護られている気がするが彼は能力者なのだ。
「それじゃ『探査の眼』を使いますね」
ソウマが呟き、スキルを発動する。街までもうすぐ、街に入れば何処でキメラに襲われるか分からない為、ソウマは少しだけ早めにスキルを使う事にしたのだ。
「あら、荷物がいっぱいなのね」
鵺がソウマに話し掛けると「勝負とは戦闘前の準備によって、9割方決まるんですよ」と得意気に言葉を返した。しかし、実際これは本の受け売りだったりするのだけれど。
今回の能力者達はキメラを退治するため、そして鵺を護るために以下のような編成を行っていた。
前衛・フローネ、ソウマ、平野、赤い霧。
後衛・片倉、紫陽花、夢守。
護衛・九龍。
何故能力者である鵺に護衛がつくのかというのは、能力者達の優しさという事でOKだろう。
「うふ、アタシも頑張っちゃおうかしら」
鵺は呟きながらソウマと同じくスキルを発動させる。何があるか分からないので探査の眼を使えるカマの手も借りたいという所なのだろうか。
「そういえば、鵺さんのお友達ってどんな人なんですか?」
平野が問いかけると「うふふ、アタシより綺麗な子よぉ」とにっこりと笑って言葉を返した。
「もしかして鵺さんと同じタイプの人ですか?」
紫陽花が問いかけると「そうね、アタシと同じで乙女な子よぉ☆」と鵺は言葉を返した。
「友人は無事なんだな?」
片倉が問いかけると「えぇ、出発する前に電話したら街の人と一緒に避難所に行ってるって言ってたわ」と鵺が言葉を返す。
「ならば早くキメラを退治して、友人と迎えに行かなくてはな」
片倉の呟きに「そうだな、急ごうか」とフローネも言葉を返したのだった。
「あ――気をつけて下さい、そこのカドを曲がった所にキメラが待ち構えています」
ソウマが呟き「確かにいるわ、気をつけましょ」と鵺も言葉を付け足す。そしてキメラを見つけた事で能力者達はあらかじめ決めていた役割で動けるように静かに移動する。
そして。
「グゥオオオオオオォォォォォ!!!」
赤い霧の覚醒する咆哮と共に戦闘が開始されたのだった。
―― 戦闘開始・僅か数秒で落ちるカマ ――
「くっ‥‥」
戦闘開始直後、キメラからの不意打ちは免れたけれど平野は最初の攻撃で腕に傷を負った。傷とは言っても掠り傷で戦闘に支障は全くなかった。
むしろ支障があったのは‥‥。
「きゃああっ! 血、血が出てるわ! う〜‥‥ん」
くらりと倒れたのは鵺、このカマは能力者でありながら血を見るのが大の苦手で血を見ればその場に倒れてしまうという一緒に任務を行った者に対してははた迷惑な存在だった。
「やれやれ、くっつかれずに済むけど‥‥これはこれでちょっと大変かも?」
苦笑しながら九龍は呟き、キメラが此方へ来た時の為に『超機械 ザフィケル』を手にした。
「狼男‥‥お前が今回のターゲットか‥‥クライアントの意向だ‥‥お前を狩る‥‥」
赤い霧は『ガノ』を大きく振り上げ、スキルを使用しながら攻撃を行う。キメラは避けようと後ろに飛ぼうとしたがフローネの『大鎌 紫苑』にて背中を斬りつけられて動きを止めてしまい、赤い霧の攻撃も避ける事が出来なかった。
「‥‥私の鎌の錆になりたい奴は首を出せ‥‥即刻斬り落としてくれよう」
フローネは鎌を振るいながら呟き、冷たい視線でキメラを射抜く。
「お祈りは済んだかい? リベリオンは容赦しないよ?」
夢守は呟きながらスキルを使用してキメラの防御力を低下させる。そして次に知覚を上昇させて『エナジーガン』で攻撃を仕掛けた。
「援護は任されよ‥‥」
片倉はスキルを使用して『貫通弾』を装填しながら攻撃を行う。
「老いぼれだと油断しておると痛い目を見るぞ」
前衛が攻撃できるようにと片倉は援護射撃を行いながら小さく呟く。
「足がなくなれば、その機動力なんてゼロに等しいよね」
ソウマは呟きながら『イアリス』でキメラの足を狙って攻撃を行う。斬り落とすまでには至らなかったものの、ざっくりと斬りつけてキメラの機動力を半分以下にする事には成功した。
「はいはい、そっちに行っても何もないよっ‥‥と!」
平野は逃げようとするキメラを追いかけて攻撃を行い、元の場所へと叩き戻す。
「人を苦しめる事は率先してするが、自分が傷つけられるのは嫌なようだな――身勝手にも程があるぞ」
フローネはやや怒りを感じさせる口調で呟き、鎌を振り下ろす。
「たかが獣風情が――ッ!」
赤い霧は斧を振り下ろしながら叫ぶ。そしてキメラが弱ってきたと感じた頃、九龍がスキルを使用して能力者達の武器を強化し、キメラの防御力を低下させた。
「弱っているとはいえ、気をつけて下さいね」
九龍は言葉を能力者達に投げかけ、気を失っている鵺に危害が加わらないように万が一に備えて自分も攻撃態勢を取る。
「甘い、よ」
少し離れている所にいる九龍と鵺を狙ってキメラが動こうとしたとき、気配を隠して身を潜めていた紫陽花がスキルを使用してキメラの眼を狙い撃つ。撃たれたキメラは大きく叫びながら地面へと転がる。
そしてその隙を逃す能力者達ではなく、ほぼ同時に全ての能力者達が攻撃を仕掛けて、無事にキメラを退治する事が出来たのだった。
―― カマS ――
「大丈夫?」
戦闘が終了した後、夢守が鵺に話し掛けると「だ、大丈夫よ‥‥」と顔色を真っ青にしながら言葉を返した。
今の能力者達は戦闘によって多少なりとも怪我をしており、怪我をしているという事は出血しているという事。血が苦手な鵺はそれすらも今は気持ちが悪くなるのだろう。
「それじゃ、鵺さんのお友達を迎えに行かなくちゃね」
平野が呟くと「それじゃ、連絡しておくわね」と鵺が携帯電話で友人に電話をかけたのだった。
避難所は街から少し離れた場所にあり、能力者達が行くと住人達から「ありがとう」と何度も礼を言われた。
「鵺ちゃんっ! お久しぶりじゃないの!」
その中でも一際目立った茶色の長い髪を靡かせた女性‥‥? がきんきんとした声で話しかけてくる。
「随分と久しぶりよねぇ! あなたってばお店を持ってるんですって? 聞いたわよぉ!」
鵺と友人の再会に「‥‥はぁ」とフローネが大きなため息を吐く。
「おい、赤い霧。鬱陶しくて適わんので鵺と友人とやらを追い出してくれないか?」
フローネに呼ばれ「‥‥はい‥‥分かりました」と赤い霧は言葉を返し「外でお話したらどうでしょう?」と提案する。
「そうそう、鵺君。お決まりのファッションショーでっす! お友達の分もあるから先に高速艇に向かって着替えててはどうかな?」
夢守の提案に「あら、いいわね! そうしましょ!」と鵺は友人と共に高速艇の方へと向かっていった。
「鵺さん、良くも悪くも今までタイプなので、面白いです――自分に被害がなければ、ですけど」
ソウマは駆けていく鵺を見ながら苦笑して呟いた。
それから能力者達は住人達に怪我がないかを確認した後で高速艇へと戻るのだが‥‥。
某雷娘を連想させるトラジマビキニを着た二人のオカマが高速艇の中で待ち受けていた事に今回の戦闘で受けたダメージ以上に精神的に追い詰められる何かを味わった。
「女性がさようにはしたない格好をするのはいかがなものか‥‥もう少し慎みを持った方が良いと思うのだが‥‥」
片倉は2人を見て呟くと「あら? さっきまでいたイケメン30代は何処にいったのよぅ」と鵺がきょろきょろと見渡す。ちなみにイケメン30代というのは目の前にいる片倉の事だったりする。
「この前も忽然と姿を消して‥‥アタシの事を見守ってくれている人に違いないわ!」
鵺は拳を強く握り締めて「いつかきっと貴方に出会うわ!」と叫ぶのだが――次の瞬間には「アタシとデートでもどうかしら!」と赤い霧に言い寄っている姿が見受けられたところからして、きっと鵺はイケメンなら誰でもいいのだろうと能力者達は再認識したのだった。
END