●リプレイ本文
― ウザカマ、はしゃぐ ―
「はぁい♪ 鵺(gz0250)よぉん☆ 宜しくねェ♪」
きゃ、と照れながら鵺が今回一緒に任務を行う能力者達に自己紹介をする。
(「ゲッ‥‥この依頼に来なけりゃ良かったなぁ」)
大槻 大慈(
gb2013)は腰をくねらせながら自己紹介する鵺を見て心の中で呟く。たまにはキメラと戦わないと勘が鈍るから、という理由で今回の依頼を受けた筈なのだが別の意味でも苦労が生まれる事必須な人物を見てしまったわけで彼は現在物凄く後悔をしていた。
(「でも受けた以上は仕方ない。やる事はやってやるぜ!」)
拳をぐっと握り締めながら大槻は決意をするのだが、その決意をすぐに砕くかのように鵺が抱きついてきて、大槻のバトルハリセンが火を噴く(実際は噴かないけど)。
「‥‥まぁ、やるか‥‥」
煙草を吸いながら椿骸(
gc1136)が大槻と鵺がじゃれあう姿を見ながら小さく呟く。
「ふぅ、久々の依頼だ‥‥実戦の中で調整せねばな」
無論仕事は完璧にこなすさ‥‥と言葉を付け足しながら呟くのはファファル(
ga0729)だった。その視線の先には鵺がいるけれど、さほど驚く事もなかった。
「ファファルだ、宜しく頼む」
握手を求めるように手を差し出し、ファファルが挨拶をすると「あらあら、鵺よぉ♪ アタシを見ても驚かないのねぇ」と握手をしながら言葉を返す。
(「一応驚かれる存在だと認識していたのか‥‥」)
何気に失礼な事を心の中で思っているのはビッグ・ロシウェル(
ga9207)だった。彼も鵺による被害を多々受けており、こう思うのは結構自然な事なのかもしれない。
「長いのでな、慣れているよ」
鵺に言葉を返すファファル。傭兵生活の長い彼女は鵺のような存在を多数見かけている為に驚く事はなかったという意味なのだろう。
「鵺さん、落としましたよ」
セレスタ・レネンティア(
gb1731)は鵺が落とした物を拾いながら渡すと「あらん、ありがとう!」とそれを受け取る。セレスタが拾ったのは薔薇のヘアピン。鵺を知っている人物なら知っているかもしれないが、それは鵺のお気に入りだった。
「これ、アタシの大事な物でねぇ。本当は2つで1つなんだけど、1つは妹にあげちゃったから」
懐かしそうにヘアピンを見る姿はいつもの鵺の印象とは違って「‥‥妹がいたのか‥‥」とビッグがポツリと呟く。今、彼の頭にあるのは鵺がそのまま小さくなったような妹であり(「最凶だよ!」)と心の中で言葉を付け足していた。
「そういえば、今回は街中にキメラか‥‥もっと早期に発見出来れば、無用な犠牲が出なくなると言うのにな‥‥」
フローネ・バルクホルン(
gb4744)が大きなため息を吐きながら資料を見る。
「とは言え、居る物をほっとくわけにもいかないからな」
フローネは言葉を付け足しながらバサリと資料を閉じる。
「キメラで町がブロークン? 皆様無事でしょうか?」
ラサ・ジェネシス(
gc2273)が小さく呟く。
「住人は避難済みだって書いてあるけど、逃げ遅れたヒトもいるかもしれないから注意しておいた方がいいね」
夢守 ルキア(
gb9436)が資料にある『住人は避難済み』という文字を見て小さく呟く。キメラが現れてパニック状態だったならばなおの事『避難済み』という言葉は信用できなかった。
「まぁ、その辺は現場に赴かねば分からないだろうな。もしかしたら残された人がいるかも――というならばなおの事早々に現場に赴かねばなるまいな」
フローネの言葉に能力者達は高速艇に乗り込んで、キメラ退治を行う為に現地へと出発した。
だが、この時点で鵺を含めて誰も予想していなかった。その現地に鵺の妹がいるという事に。
― キメラ探しましょ ―
今回、キメラが現れたのが街の中と言う事で能力者達は班を2つに分けて行動すると言う作戦を立てていた。
A班・ビッグ、ファファル、椿骸、セレスタ、鵺の5人。
B班・大槻、夢守、ラサ、フローネの4人。
「キメラを見つけたらトランシーバーで片方の班に連絡をするという事で」
「りょ〜かい」
ビッグの言葉に大槻が言葉を返し、それぞれの班は分かれて行動を開始したのだった。
※A班※
「ふむ‥‥」
ファファルは久しぶりの実戦という事もあってか、事前に地図を見て地形を頭に叩き込んでいた。敵を発見した時に戦いやすい場所に誘導、避難するルートや合流する為のルートなどを即座に割り出すために。
「後ろお願いしますね‥‥頼むから」
ビッグが鵺に言葉を投げかけると「アタシ、ビッグちゃんの為にがんばるわっ!」と本人はノリノリである。
(「それが戦闘中にも続けばいいんだけど」)
無理だろうなぁ、と何処か冷めた感情で言葉をつけたし、他の能力者達に聞こえないような小さなため息を漏らしたのだった。
「流石に‥‥死角が多いですね」
アンチマテリアルライフルを背負い、携帯していたハンドガンを手に持ちながらセレスタが周囲を警戒し、小さく呟く。街という事もあり、キメラにとっても能力者達にとっても隠れる場所はあちこちに存在する。自分達が利用する分には困らないのだが、キメラが利用していたとなれば話は違ってくる。
「‥‥常に警戒すれば問題はないが、流石に気を張り詰めすぎるのも疲れるものだ」
椿骸が小さく呟き「そういえばキメラはどんな奴なんだろうな。楽しめればいいが」と言葉を付け足してアサルトライフルを構えながらじりじりとゆっくり進む。
既にキメラが暴れた後の街では音がするのも珍しくない。それは石が落ちる音だったり、はたまた飛び立つ鳥の音だったり。
「そういえば、セレスタとは久しいな」
ファファルが呟くと「そういえば、そうですね」とセレスタも言葉を返す。だがファファルの表情がすぐに険しいものへと変化した。
「‥‥誰かを襲っている‥‥?」
視線の先にはキメラと思しき鞭を振るう男性と座り込んで動けずにいる少女。急ぐぞ、とファファルが呟きかけた時、鵺の大きな声が響いた。
「やだ、つばめっ!?」
え、と能力者達がキメラへと駆け出しながら視線を鵺へと送ると「アタシの妹なのよぅ!」と顔面蒼白になりながら言葉を返した。
セレスタがハンドガンで攻撃を仕掛け、その間にビッグがキメラとつばめの間に割り込み、キメラの攻撃からつばめを守る。
「見た目は人のそれだな‥‥撃ちやすくて結構」
小さく椿骸が呟きながら攻撃を仕掛け、ビッグがB班へと連絡を行ったのだった。
※B班※
此処で少し時をキメラがまだ発見されていない時へと遡る。
「はぁ、鵺がいないだけでこんなにも平和な任務になるんだなぁ」
キメラを捜索しながら大槻が空を見て呟く。彼も決して油断しているわけではないのだが、鵺が此処にいればまず静かにキメラ捜索など出来はしないのだから。
「そういえば、住人の報告からキメラは鞭を使って攻撃してくるらしいな。鞭とは、また嫌らしい武器を使ってくるものだ‥‥まぁ、負けはしないだろうが」
フローネは絶対的な自信を持っているかのように不敵に笑みながら呟く。
「逃げ遅れた人が居ないかも調べていきましょーネ」
ラサが呟き「備えあればウレシイナ♪」と自分の持ってきたものを見ながら呟く。彼女は怪我をした人の為に救急セット、お腹の空いた人の為にレーション・ビーフシチューを用意してきていた。ちなみに『備えあれば憂いなし』が正解だと言う事はあえて黙っておこう。
「それにしても、人っ子一人いないな。やっぱり住人は避難済みって見てもいいのかな」
大槻が周囲を見渡しながら小さく呟く。此処までそれなりの範囲を捜索してきたけれど、キメラはおろか住人らしき人物とも遭遇する事もなかった。もしかしたらどこかに隠れているという事も考えられたけれど、B班の能力者達はそれぞれ会話をしながら歩いているため、もし住人が居るならば助けを求めてくるはずだ――と能力者達は考えた。
「そうですね〜、今の状況からは見当たりませんし‥‥逃げ遅れた人はいないと見てもいいのではないでしょうカ」
ラサが言葉を返した時にA班からの通信が入る。キメラを発見して、1人の少女が襲われているという事を。
A班は的確に自分達の位置を伝え、B班も地図で確認をした後、すぐにA班が居る場所へと向かい始めたのだった。
―― 戦闘開始・能力者 VS 鞭使いキメラ ――
「さて、退治させてもらおうか」
ファファルが呟きながらスキルを使用し、サブマシンガンで攻撃を仕掛ける。そしてつばめが攻撃に巻き込まれないように鵺と一緒に下がらせ、最前列でビッグが盾役に徹する。
「盾をオシャレに定評のあるカプロイア商品に変えた甲斐があった! ありがとう伯爵! ありがとうカプロイア社!」
いつもの3倍は入っているであろう気合でビッグがぶつぶつと呟いている。その気合もつばめの姿を見てから入ったものだったりする。鵺と似ていなくもないけれど、くりっとした目に思わず守ってあげたい! と思いたくなるような外見。お年頃のビッグの気合が入らないわけがなかった。
「大丈夫! ボクが指一本触れさせやしない!」
きりっとした表情でビッグが呟くのだが「やぁん、アタシ愛されてるぅ!」と鵺が言葉を返してきて(「おめぇじゃねぇよ」)とビッグは凄く冷たい心の声で呟く。
「‥‥射撃します!」
セレスタの声が聞こえ、ファファル、椿骸と一緒に一斉射撃を開始する。そこへB班が合流して射撃だけではなく、前衛での攻撃も開始されたのだった。
「せぇーのぉっ!」
大槻は愛用のバトルハリセンで攻撃を仕掛ける。しかし大槻の攻撃が終わったあとにキメラも攻撃を仕掛けてきて、盾役も兼ねるバトルハリセンでキメラの攻撃を防ぐ。
「キメラにやられたか‥‥とりあえず応急処置だけでも‥‥? キミの顔は‥‥何か見たような気が‥‥と言う事を話している場合ではないな、傷は痛むだろうが戦闘に巻き込まれないように注意してくれ」
フローネはスキルを使用してつばめの足を応急処置で治療した後に大鎌・紫苑へと武器を持ち替えて前へと出た。
だが、キメラは鞭を使って大鎌を絡めとリ、フローネの攻撃を無力化してくる。
「ふむ‥‥武器を絡めとろうとするのは良いんだが‥‥相手が武器に固執している時か予備の武器を持っていない時にしか役に立たんぞ」
フローネは呟きながら超機械・ザフィケルに武器を持ち替えてキメラへと攻撃を仕掛ける。
「‥‥身をもって知った所で役には立たんだろうがな」
「敵はコッチ、ターゲット確認が甘いよ!」
フローネが攻撃を仕掛けた後、キメラもすぐさま攻撃に移ろうとしたけれど、夢守が攻撃時に動かす腕の逆半身を狙いながら攻撃を行う。
「ターゲット固定、トリガーを引けば一瞬だ」
腕を狙いながら攻撃を続ける。その時、椿骸の腕に鞭が絡まり、動けなくされた――が椿骸はアーミーナイフに武器を変えて、引き下がるどころか前進しながらキメラへと攻撃を仕掛けた。絡め取られた場合、引けば動きに制限がかかるけれど前進すれば鞭も緩み、ある程度の動きは出来る。
「白兵戦は苦手なんだがね‥‥」
そう呟きながらも椿骸は攻撃を仕掛けて、鞭をアーミーナイフで切る。
「このテイド、河童のオナラネ!」
鞭を失い、そのまま直接攻撃を仕掛けてきたキメラだったがラサがプロテクトシールドで防御し、そのまま至近距離から拳銃スピエガンドで攻撃を行う。至近距離からの銃撃は流石に効果があったようでよろめきながらキメラは後ろへ下がる。
その隙を突いて「ハリセンスプラーッシュ!」と叫びながら大槻が攻撃を仕掛け、他の能力者達も追撃するように攻撃を仕掛けてキメラを退治したのだった。
―― 久々の再開 ――
「鵺の係累だったか‥‥通りで」
戦いが終わった後、フローネはつばめが鵺の妹だと聞いて納得するように呟いた。
「安心して。傷もすぐに治るよ、リトル・レディ」
夢守が薔薇のヘアピンを大事そうに持つつばめににっこりと話しかける。戦闘中から彼女が持つヘアピンが気になっていたようで、鵺の妹だと聞いて彼女も納得していた。
「鵺君が情熱的な赤薔薇なら、つばめ君は可憐な白薔薇かな。両者愛でられる為の花だね」
夢守が言葉を付け足すと「私もおねにー様みたいに綺麗になりたいの」とにっこりとつばめは笑って言葉を返した。
「全く、あんたって子は‥‥来るなら来るで言えばちゃんとアタシが迎えに行ってあげたのに! 怪我なんかしちゃって、あぁ、傷が残っちゃったらどうするのよぅ」
おろおろとする鵺に「大丈夫だよ、傷が残るような怪我じゃないから」と夢守が言葉を返した。
「だって、私も竜三おねにー様に会いたかったんだもの‥‥竜二お兄様だけずるいわ」
しゅん、としながらつばめが言葉を返しファファルが「いい兄妹だな‥‥いや、この場合は姉妹か」と苦笑しながら小さく言葉を漏らしていた。
「そ、そうだ。つばめちゃんを心配させないように連絡先くらいは教えたらどうかな!」
ビッグが呟くと「あら、そうね。そうするわ!」とさらさらと連絡先を書いてつばめへと渡す。
「これからはちゃんと言いなさいよぅ? アタシだって能力者なんだからそこらのキメラには負けないんだから!」
鵺の威張りながら呟く言葉に、普段の鵺を知る者達は思う。
(「お前、役に立った事があったか?」)
「うん、これからは連絡してから来るね!」
「何だったら次からボクが迎えに行くよ!」
つばめとフラグを立てようと頑張るビッグだが「きゃあん☆ 嬉しいわ!」と鵺が代わりに言葉を返して、うっかり鵺とのフラグが立ちそうである。
「うおおおお、それはいらん! いらん!」
必死に鵺とのフラグをボキリと折りながらつばめへと言葉を続ける――が。
「そうだわ、じゃあ竜三おねにー様と一緒に来てくださいな」
にっこりさわやかにフラグ再来させるつばめにビッグは少しだけ泣きたくなった。
「ふふ、それにしても鵺さんの妹、可愛いですね」
セレスタの言葉に「自慢の妹だもの! 可愛いのは当たり前よぅ!」と鵺が言葉を返す。
「あれでよかった‥‥んだよな?」
鵺とつばめの再会を遠くから見ながら大槻が呟いた。
「ビュリホーなレディでありますね。ちなみにその人とはドノヨウナ間柄なのですカ? その『おねにー様』というワードは私の辞書にはノットファウンドでありまス」
ラサがかくりと首を傾げながら問いかけると「竜三おねにー様はお兄様であり、お姉様でもあるんです」とつばめが言葉を返す。
「ふむフム‥‥日本はワンダーな国ですネ、つまりはオト――(ポコッ)」
男だと言いかけてラサは鵺から軽く叩かれる。
「失礼ねっ! アタシは乙女よ!」
ぷんぷん、と言葉を付け足しながら呟く鵺ははっきり言って気持ち悪かった。
その後、つばめを病院へと送り、能力者達は本部へと帰還していったのだった。
END