タイトル:(=△=)マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/07 00:14

●オープニング本文


ネコタマ的にピーンチ!

なーぜーなーらーばー‥‥!

※※※

「いぃぃぃやぁぁぁぁぁだぁぁぁぁぁ!」

本部に新人スナイパー・猫井珠子の悲鳴が響き渡る。

今回が3回目の任務となる彼女は前回の失敗を繰り返さぬようにきちんとトランシーバーを購入し、準備万全で任務に赴こうとしていた‥‥。

しかし、新しい能力者達も増えてネコタマが受けられる依頼は1つしか存在しなかったのだ。

「何で蛇ですか! にょろにょろですか! ネコタマ、足がないものと多すぎるものは生き物として認めません! というわけで自然消滅してください! いぇあ!」

よほどの蛇嫌いなのだろう、最後の言葉は既にテンション高すぎて意味が分からない。

他の任務――と視線を移したけれど、新人であるネコタマには到底荷が重過ぎる内容ばかりで、蛇キメラ退治しか受けられない。

「くそぅ、この蛇め‥‥カモンカモンと手を招いていますね‥‥っ! 手はないけど!」

きぃ、と地団駄を踏みながらネコタマは嫌々ながらも任務を受けることになった。

(「本当はこの依頼スルーするのがいいわけですけど、そりゃ生活が出来なくなるんで無理っぽいという話ですよ‥‥ちくしょう、蛇の分際で人の足元見やがってぇぇぇぇぇ!」)

ちらりと資料に目を移すと、そこには大きな蛇が映し出されており「うわわわわわ!」とネコタマは蛇が怖くて写真を全力で放り投げる。

「よし、こうなったら今回はネコタマ何もしません。遠く離れた所からぺいっと攻撃して、戦った満足感を味わおう! 他の皆には悪いけど、恨むなら蛇の形してるキメラを恨んでくれぃ!」

よし、と気合を入れてネコタマは他の能力者達との合流場所へと走っていったのだった。

●参加者一覧

ラウル・カミーユ(ga7242
25歳・♂・JG
キリル・シューキン(gb2765
20歳・♂・JG
キヨシ(gb5991
26歳・♂・JG
御剣雷光(gc0335
22歳・♀・PN
布野 あすみ(gc0588
19歳・♀・DF
御鑑 藍(gc1485
20歳・♀・PN
高梨 未来(gc3837
19歳・♀・GD
幽噛 礼夢(gc3884
16歳・♀・DF

●リプレイ本文

―― 蛇嫌いのネコタマ ――

「猫井珠子でぇす、どうぞ宜しくお願いしまぁす‥‥」
 明らかにテンションが下がり気味のネコタマに能力者達は苦笑する。実は今回の能力者達、先ほど本部の中で暴れていたネコタマの姿を見ていた。
 だから何故ネコタマの様子が可笑しいのかも分かっていた。
「ヨロシクなぁって、何かやる気なさそうやなぁ‥‥」
 キヨシ(gb5991)が苦笑しながらネコタマの方を見ながら呟く。
「何言いますかね。このやる気と根性の化身・ネコタマに向かって!」
 何だよ、その暑苦しい化身は――とキヨシはツッコミを入れたかったけれどとりあえずやめておいた。
「んー、今のとこ被害は出てナイのカナ? ま、キメラがうろついてたんじゃ危なくて森に入れないだろーカラ、ちゃっちゃと退治しちゃお」
 元気いっぱいみたいだし頑張るんだゾ、にゃんたま――と言葉を付け足したのはラウル・カミーユ(ga7242)だった。
「‥‥そーだねっ、ちゃっちゃと退治しちゃおう!」
 ネコタマ戦わないけど! とネコタマは心の中で呟きながらラウルに言葉を返す。
「おい、コーシェチカ」
「こーしぇちか? そんな人いたっけ?」
 ネコタマがきょろきょろと見渡すけれどそんな名前の人物は今回の任務には参加していなかった。
「‥‥‥‥お前だ、お前」
「私、猫井珠子。純粋なジャパン人ですけど!」
 ジャパン人って何だよ、とキリル・シューキン(gb2765)は心の中でツッコミを入れる。ちなみにコーシェチカというのはロシア語で『猫ちゃん』という意味だと教えると「なるほど! ネコタマがロシア人ならそんな名前なんですね!」とお馬鹿な言葉を返している。
 だがここでキリルは教えなかった。コーシェチカというのはややからかいの言葉であるという事を。
「こんにちは、猫又さん」
 丁寧に挨拶をしてくるのは御剣雷光(gc0335)だった。そして御剣は他の能力者達にも「今回は宜しくお願いします」と言葉を投げかける。
「ちょっと待った! ネコタマは猫又じゃありません! 人を勝手に妖怪にしないで頂きたい!」
 手を挙げて抗議するネコタマだが「あら、そうだったんですか」とさらりと言葉を返されて「きぃぃぃ! 何ですか何ですか、この人!」とネコタマは悔しそうに叫んでいる。はっきり言って煩いので少し黙って頂きたい――と能力者達は思う。
「やっほー、タマ。今回は蛇だってさ、蛇。きっとウネウネ〜ってしてるんだろうね」
 布野 あすみ(gc0588)が笑いながらネコタマに話しかける。
「そそそそそそうでございますね。きっとウネウネニョロニョロでフガァ! と叫んでいる事でございましょう」
 よほど蛇が嫌いなのだろう、既に何を言っているのか分からない痛い子とネコタマは化していた。
(「今回のキメラは蛇‥‥えっと、私もあまり好きではありませんが‥‥でも他の依頼でもどのようなキメラに遭遇するか判りませんし‥‥」)
 御鑑 藍(gc1485)は心の中で呟き、ネコタマに言葉を投げかける。
「蛇が嫌いかもしれませんけど‥‥今のうちに、気持ちを切り替えられるように、頑張りましょう?」
 御鑑がネコタマに言葉を投げかけると「イヤダナァ! ネコタマ嫌イナモノナーイ」とカタコトで言葉を返す。明らかに大嫌いだとバレバレである。
「ネコタマさん、新人同士一緒に頑張りましょうね! それと名前が凄く可愛いです!」
 高梨 未来(gc3837)がネコタマと握手をしながら挨拶をする。
「はい、此方こそ宜しくですよ! 名前も可愛いけど実物も可愛いネコタマちゃんですから!」
 名前『だけ』が可愛いと言われたように思ったのだろう、さりげなく自分に対してフォローをしながらネコタマは言葉を返した。
「しかし蛇キメラ‥‥別にネコタマ苦手じゃないけど、やっぱり危険なのかな? 別にネコタマ怖くないけど!」
 明らかに苦手で怖いと言っているネコタマを見ながら幽噛 礼夢(gc3884)は苦笑する。
「大丈夫‥‥危なくなったら守るから‥‥」
 幽噛がネコタマに話しかけると(「ネコタマ、戦わないので守る必要ナッシングです!」)とネコタマは心の中で言葉を返した。さすがに今の状況で戦わない事を伝えると無理矢理にでも戦わされそうになると思い、ネコタマは言わずにおく事にする。
「さて、そろそろ任務にいこーカ。あんまり遅くなっちゃうのもいけないカラね」
 ラウルが能力者達に言葉を投げかけ、能力者達はキメラ退治の為にキメラが存在する森へと出発したのだった。


―― 蛇キメラと騒ぐネコタマ ――

 今回は手分けしてキメラ捜索を行う事にしており、ラウルは予め受け取っていた地図で森の規模を調べる。森の規模は其処まで大きくはなく、能力者達が手分けして捜索すればすぐに見つける事が出来るだろうと考えていた。
「僕は方位磁石で方角を確かめながラ、この周辺を探す事にするヨ。何かあったらトランシーバーで連絡してネ」
 ラウルが捜索に向かう。そしてキリルは「この際だ、射撃に挑戦してみろ」とネコタマの持つ銃を見せてもらう――が、見てからキリルはため息を吐いた。
「‥‥最低でもスキル無しでSES持続距離は50m欲しいな。私の狙撃銃を貸してやる。何事も慣れだ、高いから壊すなよ」
 そういってキリルは持ってきていた武器をネコタマに貸し与える。
(「ええええええ! 何この人余計な事してくれるんですか――ッ!? ネコタマ的にすんごくありがた迷惑なんですけどおおお!」)
 まさか「イラネ」とは言えず「ありがとう」とネコタマは引きつった笑顔で心の中で叫ぶ。恐らくその叫びの背景には大津波がざっぱ〜んとある事だろう。
「さぁ、楽しいキメラ退治の為にまずはキメラを探さんとなぁ?」
 ネコタマの首根っこを掴みながらキヨシがニヤリと笑ってネコタマに言葉を投げかける。
「ちょちょちょ、何してくれるですかね。キヨシ君!?」
「まぁ、いきなり襲われた時は盾くらいにはなるやろ」
「ちょっと待つのだ! ネコタマ的に私は盾ではありません! そういうのはショップで購入してきてください!」
 ばたばたと暴れながら抗議するが「冗談やて」とキヨシが笑って言葉を返す。
「そういえば、人を妖怪にした貴方は何故にモップですかね」
「モップは冥奴として当たり前の道具で武器ですから」
 にっこりと笑みを浮かべて御剣が言葉を返すが「キヨシ君、リアルになんか痛い人がいます。ここは戦場なのに何故にメイドさんが出てくるですかね」と真剣な顔で問いかける。
「‥‥同じ痛いお前に言われたくない台詞やろな‥‥」
 苦笑しながらキヨシが返す言葉に困る。
「ふふふ、森は前回の戦いであたしのプレイグランドになったのさ」
 布野が自信満々で木の上を軽やかに移動してキメラ捜索を行う。
「なるべく広くて見晴らしの良い場所で戦いたいですね‥‥あるかな」
 御鑑は地図を見ながら呟く。今回のキメラは大蛇という事もあり、狭い場所、視界の悪い場所での戦闘は能力者達の不利になる事がわかっていた。
 だからこそ御鑑はある程度開けた場所、そして見晴らしの良い場所での戦闘を望んでいるのだ。恐らく他の能力者達も同じ気持ちだろう。誰でも不利な場所よりは有利に、もしくは互角に戦える場所の方がいいに決まっているのだから。
「キメラは何処にいるのでしょうね〜。夜までこんな所にいたら戦うのも大変なのでそれだけは勘弁してほしいのですけど!」
 高梨もキメラを捜索しながら呟くと「‥‥あれ、じゃないのか‥‥?」と幽噛が指差す。するとそこにいたのはずるずると体を引きずりながら移動するキメラの姿だった。
「ぎゃああああああっ! 蛇がいるぁぁぁぁぁ!!!」
 ネコタマも見てしまったのだろう、キメラを見て森中に響き渡るようなネコタマの叫びが能力者達の耳に届いた。
 そしてそれがキメラを見つけたという合図となり、それぞれトランシーバーで情報を交換し、キメラがいる場所を能力者達は聞き、合流する為に動き始める。
「おい、ネコタマ――‥‥「ぎゃああああ、食べられる、食べられる! うねうね嫌い! ぎゃあああああ!」――やっかましいわ‥‥」
 キヨシが耳を塞ぎながらネコタマを見て呟く。
 そしてキメラがネコタマの叫びで気づき、攻撃を仕掛けてこようとした時に能力者達が集まり、キメラと能力者達の戦闘が開始したのだった。


―― 戦闘開始・蛇キメラVS能力者 ――

「ぎゃあああああああ! 無理無理無理無理ネコタマ的に無理無理!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぎながらネコタマは暴れる。はっきり言って能力者達の邪魔をしているようにしか見えない。
「にゃんたま、何かわざと邪魔してるようにしか見えないヨ」
 苦笑しながら洋弓アルファルで攻撃を仕掛けながら呟くラウル。
「コーシェチカ、本来狙撃兵とは2人1組だ‥‥傭兵は単独で動く事はあるがな」
 キリルがネコタマを落ち着かせながら言葉を投げかける。
「体が石のように硬くなっているぞ? 余裕を持て、コーシェチカ」
「そんな事を言われてもネコタマ、今だけは喋る石像で構いませんっ」
 ネコタマはおかしな言葉を返すが、キヨシは「はぁ」と大きなため息を吐く。
「ホレ、今のうちに攻撃しろ! せんかったらタマゴって呼び続けるぞ!」
 キヨシが渇を入れるように少し大きな声でネコタマに言葉を投げかけるのだが‥‥。
「ネコタマ、今後はタマゴでいいような気がしてきました!」
(「あかん、かなり重症でいらっと来るわ‥‥」)
 いつまでも戦おうとしないネコタマに「誘導したるからさっさと攻撃せぇ!」と少しきつめの口調で言葉を投げかけた。
「害獣駆除して森を綺麗にしなければ――掃除は冥奴の仕事ですから」
 御剣はバトルモップを構え、キメラへと攻撃を仕掛ける。
「やれやれ、やっぱりタマは蛇が嫌いなんだね。でもキメラの好き嫌いはいけないんだぞ。まぁ、好きはないだろーけど」
 布野は呟きながらタタッとキメラの方へと走り「このっ、このっ! 潰れろ、もげろ、爆発しろ!」と何処か嫉妬の混じった言葉がキメラへと投げかけられる。ちなみにこの蛇キメラ、別に伴侶が居るわけでもない。それなのに布野は何故か謎の執着心を見せながら攻撃を続けていた。
 しかし、何事もほどほどに――という言葉がある。
「ぎゃー! 捕まったぁ! 誰か助けてヘルプミー!」
 キメラに強く締め付けられ、布野は「ぐえぇ」と潰れたかえるのような声を小さく漏らす。
「大丈夫ですか‥‥? あまりゆっくりしてると大丈夫じゃなくなりそうですね‥‥」
 御鑑が小さく呟き、スキルを使用しながらキメラへと接近する。そしてスキルを使用して攻撃を繰り出す――が1人の力では締め付けが緩まる事はなかった。
「続けて下さい!」
 高梨が御鑑に言葉を投げかけた後、彼女もスキルを使用しながら愛用の篭手で攻撃を仕掛ける。それと同時に布野のステュムの爪がキメラを攻撃しており、痛みを堪えきれなくなったキメラは締め付ける布野を開放するかのように胴体を緩めた。
「‥‥クスクス‥‥アハハ‥‥他人を傷つけるのは構わないけど‥‥自分が痛い思いするのは‥‥嫌なんだ?」
 それじゃ、仕事しようカナ――幽噛は戦闘狂じみた笑みを浮かべ、マーシナリーアックスで攻撃を仕掛ける。
「ううう、ネコタマも頑張ります。頑張ります、頑張って蛇に慣れます、そのうち蛇食べられるように――頑張れるかぁぁぁ!」
 1人でノリツッコミしながらネコタマは借り受けた銃を発砲する。
「にゃんタマ、その場のもので戦わなきゃならない場合もあるし、イロイロな武器に慣れといた方がヨイよ☆」
 ラウルがそういってフォルトゥナ・マヨールーを押し付ける。
「ぎゃあああああ! 無理無理無理無理あんなのに接近無理! ネコタマ、食べられる!」
「大丈夫大丈夫☆」
「その根拠のない言葉はやめてくださいいいいい!」
 ネコタマは再び叫び始める。
「どうでもええからさっさと倒そうや」
 キヨシが呆れたように呟く。無表情なのだけれど呆れていると判らせる事をするネコタマははっきり言って凄いと思う。
「戦いたくないなら後ろに下がっていてください、掃除の邪魔です」
 御剣がスキルを使用してキメラへと接近しながらネコタマへと言葉を投げかけ、バトルモップで攻撃を仕掛ける。
 結局、それからネコタマを除く8人の能力者達の働きによってキメラは無事に倒された――がネコタマは全くといっていいほど役にたたなかったのは言うまでもない。


―― 戦闘後 ――

「ほうら、今回の獲物だよー。いやぁ、でっかいねぇ。どう、持ってみる?」
 布野がキメラを指差しながら問いかけると「貴様は何を言ってるかぁ!」とネコタマが軍人ぽく言葉を返してくる。
「うははははは、なかなか体験できない事だよねー。どう、どんな感触?」
 蛇をネコタマの肩に乗せながら布野が問いかけるのだが――其の瞬間にネコタマの意識はぷっつりと途切れてしまう。
「ええ!? た、タマ!? うわちゃぁ、少しやりすぎたかな‥‥」
「蛇嫌いの人に今の行動はクリティカルヒットだよネ☆」
 布野の行動を見てラウルが苦笑気味に言葉を返す。ネコタマの意識が戻ったのはそれから数時間後で「大丈夫ですか?」と御鑑がミックスジュースをネコタマに差し出した。
「‥‥苦手な物はやはり精神的に良くないかもしれませんし‥‥ジュースで落ち着けるか判りませんけど‥‥」
「ううん、ありがとう。ネコタマ的感謝!」
 蛇から解放されたことによる安心からネコタマは泣き出し「えっと‥‥これで涙を拭いて下さい」と高梨がハンカチを差し出した。
「きっと明日は輝いています!」
 何の根拠もない言葉だけどネコタマは気持ちが嬉しくて「ありがとう」と言葉を返したのだった。
「次の任務も‥‥蛇なんじゃないか?」
「ぎゃああああ! もう蛇なんかいりません! もうやめて! いやだあああああ!」
 幽噛のややからかいの言葉に過剰反応してネコタマは言葉を返す、もとい叫ぶ。
「お前は狙撃とは無縁かもしれないな‥‥騒ぎすぎだ」
 キリルが呆れたように呟くと「でもでもそれも全て蛇がいけないのです! ネコタマ的に悪くない!」と意味のわからない言葉を返してくる。
「足元、蛇いるで」
「ほわっちゃああ!」
 ネコタマの足元の枯れた枝を指差しながらキヨシがからかうと、ネコタマは「凄いな‥‥」と能力者たちが呟くほどにジャンプして近くの木に飛びついたのだった。
 結局、ネコタマは苦手克服どころか更に悪化して本部へと戻る羽目になってしまったのだった‥‥。



END