●リプレイ本文
―― 災難記者と能力者達 ――
今回はクイーンズで唯一の男性記者・翔太の(無理矢理受けさせられた)取材の為に能力者達が集められた。
「あぁ‥‥もう来ちゃったよ‥‥記者仕事は嫌いじゃないけど、ああいう場所に行くのはマリさんだけでいいと思うんだよなぁ‥‥」
はぁ、と再び翔太はため息を吐きながらどんより空気で呟く。
「‥‥記者も大変だな」
そんな翔太の姿を見てホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)は苦笑しながら言葉を投げかける。
「あ、ご挨拶が遅れました。記者の翔太です、どうぞ宜しく」
ぺこりと頭を下げながら翔太が挨拶をすると「‥‥よろしくな‥‥」と絶斗(
ga9337)が言葉を返した。
「取材記者ってのはネタがありゃ火の中水の中に飽き足らずキメラにも突っ込んでいくものなのかい?」
大変だなぁ、と言葉を付け足しながら苦笑を浮かべて桂木穣治(
gb5595)が翔太に話しかける。
「いや、普通はこんな事しないッス。うちん所の編集長がちょっとおかしいだけッス」
翔太は即座にきっぱりはっきりと言葉を返す。
「まあほら、皆いるし最悪治療するから大船に乗ったつもりでどーんと構えときな」
可笑しそうににやにやと笑う桂木に「‥‥頼りにしてマス」と翔太は言葉を返したのだった。
「こんにちは、今回は宜しくお願いしますね。良い記事が書けるようにお手伝いさせていただきます」
ニュクス(
gb6067)が挨拶すると「あー、こっちこそ迷惑かけるかもしんないけど宜しくッス」と翔太が言葉を返した。
「翔太さんは記者さんなんだね。こんな所にまで来て、しかもキメラの取材なんて、大変だね」
鈴木悠司(
gc1251)が苦笑しながら呟くと「うちん所の雑誌はそういうのがモットーっていうかメインっていうか、そんな感じなんス。いつもは編集長が行くんスけどね」と何度目になるか分からないため息と共に翔太が言葉を返した。
「お前さんが今回の依頼者か?」
方丈 左慈(
gc1301)が翔太に話しかける。
「あー、そッス‥‥って言っても実際に頼んだのはうちの編集長なんスけどね」
(「‥‥っかしまぁ‥‥大丈夫か? この記者君は? 戦場レポートは初めてって奴なのかね。出来るだけ離れんようにしねぇとな‥‥死なれんのも寝覚めがわりぃ」)
方丈はじろじろと翔太を見ながら心の中で呟く。
(「それに戦場は慣れてるが‥‥この力を使って戦うのは初めてだからな。初心者って所は、俺もさして変わらんのだろうな」)
ふ、と小さく笑いながら方丈は心の中で呟いた。
「翔太さんはクイーンズの記者さんなんですよね? クイーンズというと、この前取材を受けた雑誌ですね」
有村隼人(
gc1736)は取材のお礼も含めて今回の任務に参加していた。
「あぁ、そういやマリさんが能力者達の取材してたっけ。きっとうちん所の編集長、無理難題な事聞いたんじゃねーの?」
翔太の言葉に「あはは‥‥いや」と曖昧に言葉を誤魔化す事しか出来なかった。
(「ふぅ、まだ任務には慣れないね‥‥」)
秦本 新(
gc3832)が小さくため息を漏らしながら心の中で呟く。その表情は新人らしくやや緊張した面持ちであった。
「えーと、そんじゃ俺って能力者じゃないし結構迷惑かけちゃうかもしんないスけど宜しくお願いします」
全員が揃ったところで能力者達に翔太が挨拶をして、能力者達はキメラ退治の為、そして翔太は取材の為に出発したのだった。
―― キメラ潜む山道で ――
今回のキメラは熊型――しかも動きは鈍いけれど熊と言う事で力はそれなりにありそうだと言う事から能力者達は戦闘班と翔太の護衛班の2つにわけて行動する事にしていた。
戦闘班・秦本、有村、ニュクス、鈴木の4人。
護衛班・絶斗、ホアキン、桂木、方丈の4人。
しかし戦闘班の秦本とニュクスの2人は斥候として他の能力者達よりも少しばかり先行して捜索を行う事になっている。
「‥‥融合‥‥」
ぽつりと呟きニュクスはAU−KVを装着する。
「今日は、良いお天気ですね」
AU−KVを装着しているにも関わらずニュクスは日傘を差しながら呟く。
「‥‥AU−KV装着してるのに日傘って、意味、あるんですか?」
秦本が素朴な疑問を投げかけると「あります」と言葉を返され「そうか」としかいえなかった。
それから捜索を始めて数十分が経過した頃、秦本がぴたりと足を止めた。
「どうかしましたか?」
ニュクスが不思議に思って立ち止まり、秦本に近づくと彼が立ち止まった理由を理解した。
「足跡がありますね‥‥しかもまだ新しい。そう遠くへは行っていないはず‥‥」
秦本は地面に残された足跡から冷静に分析して、ニュクスへ他の能力者達への連絡を頼む。
「こちらニュクスです。キメラの足跡と思しき物を発見し、恐らくまだ近辺にいるかと思いますので気をつけてください」
ニュクスが他の能力者達に連絡を終え「それでは、捜索を続けましょう」と秦本に言葉を投げかけ、捜索を再開し始めたのだった。
そしてその頃、斥候の2人から離れた所を捜索している戦闘班、そしてその後ろからやってくる護衛班たちはニュクスから連絡を受けて、更に警戒を強めていた。
「キメラの足跡は古いものではなかったそうですし、何処から襲ってくるか判らないので十分に気をつけた方が良さそうですね」
有村が呟くと「そうだね」と鈴木も言葉を返す。
「俺達では大丈夫な事でも、翔太さんは大丈夫じゃない事もあるだろうし‥‥今回は翔太さん優先で動いた方がいいだろうね」
鈴木もちらりと後ろからやってくる翔太を見ながら言葉を付け足した。
そして護衛班のほうでは‥‥。
(「今まで指噛んで耐えるしかなかった分の鬱憤、晴らしたい所だがよ。今回は守りに徹した方が良いのかもしれん」)
いつキメラと戦闘になっても良いように隼風を手に持ちながら方丈は心の中で呟く。攻撃に徹してもいいけれど、今回は一般人の翔太が一緒に同行している。その事がやはり彼に守りに入る事を考えさせていた。
「そういえばお前さん何でこんな事してんだ? ‥‥ぱっと見こんな事やりそうにねぇんだが‥‥」
方丈が問いかけると「あー、いつもはこういうのうちの編集長がするんス」と翔太が言葉を返す。
「最初は一般人に能力者達の戦いを見てもらおう、理解してもらおうって事で始めた企画らしいですけどね。今ではそれがもう無茶ばっかりして能力者達に迷惑ばかりかけてるッス」
翔太の言葉に「ふぅん」と方丈は言葉を返し「記者としての目標とかあるのか?」と問いかける。
「目標――スか? ぶっちゃけ俺ってクイーンズの中じゃ役に立ってないんで、これから役に立てるようになりたいッスね――でもこういう取材はちょっとやっぱり勘弁してほしいっすけど」
苦笑しながら翔太は言葉を返す。そんな翔太を見てホアキンは1つの事を思っていた。
(「彼に怪我はさせたくない――させたらさせたで彼の先輩は過激な事を言い出しそうだしな」)
ホアキンは彼の先輩――マリの事を想像する。きっとマシンガントークで「何うちの記者を怪我させてるのよ!」的な事を言ってくるだろう。
それだけは避けねばならない、でなければ確実に胃が痛くなる事になるのだから。
「む」
かさ、と何か物音がしたと同時に絶斗が持っていた拳銃・ジャッジメントを発砲する。しかし其の先にいたのはキメラではなくただの野兎であった。幸いにも弾丸が当たっている事はなく、驚いた野兎はそのまま逃げていってしまった。
「そういえば、戦闘の写真だけど――俺が撮るから観察に集中しとくか?」
桂木がカメラ型の超機械を見せながら翔太に言葉を投げかける。
「あー、お願いしていいっすか? 俺も遠くから皆が戦っている写真とか撮りたいですし」
翔太の言葉に「了解」と桂木は言葉を返す。
その時だった。ニュクスからの通信が入り、キメラを見つけたという連絡が戦闘班・護衛班、両方に入ったのは。
―― 戦闘開始・能力者VSキメラ そして記者翔太 ――
「此処からなら、巻き込まれる可能性も少ないだろう。あまり無理せずに取材頑張ってくれよ」
ホアキンが翔太に言葉を投げかける。彼はキメラ捜索と共に翔太が怪我をしないよう、戦闘に巻き込まれないように取材に適した場所も一緒に探していた。
「はぁ、ありがとーございます。それにしても次からも俺が行くのかなぁ」
がっくりとため息を吐きながら翔太が呟き「手強い先輩に勝てる経験を積むまでの辛抱だ、今回は諦めろよ」とホアキンが苦笑しながら言葉を返したのだった。
(「さて、彼はどんな取材をするのかな」)
「ウオオオオオオオオオオオオオ!!!」
獣の咆哮のような激しい声をあげながら絶斗が両手に持った拳銃・ジャッジメントをキメラに向けて発砲している。
「さて、翔太君もいる事だしさっさと戦闘を終わらせてあげないとな」
桂木は呟きながらスキルを使用し、戦闘班の武器を強化する。翔太はそんな桂木の姿、攻撃する絶斗の写真なども勿論撮る。
「ステップもご覧頂けるかしら?」
ニュクスはヒベルティアを構え、キメラの死角に入りながら足元を攻撃する。
「そっちばかりに気を取られてていいのかな?」
鈴木はスキルを使用してキメラとの距離を一気に詰め、キメラの腹部分にスキルを使用して攻撃を叩き込んだ。
「おっと、もうちょい下がってもらおうか? あんま離れてくれるなよー?」
おじさん年でね、体力ねぇのよ――とおどけたように方丈が翔太へと言葉を投げかける。言われた翔太は少し後ろへ下がりながら、再びカメラを構える。
「此方には近づけさせませんよ‥‥」
有村は小さく呟きながら拳銃でキメラが牽制攻撃を仕掛ける――が、キメラが近づいたのを確認すると蛇剋へと武器を持ち替えスキルを使用しながら攻撃を仕掛けた。
「近づけさせない、といいましたよね」
「熊の弱点といえば鼻面‥‥どうだ!」
有村の攻撃の後、追撃するように秦本が攻撃を仕掛けた。有村の攻撃のすぐ後だった為にキメラも避ける事は出来なかったのだろう。秦本の攻撃はまともにキメラへと入る。
だが、キメラも負けじとむちゃくちゃに攻撃を仕掛けてくる。痛みで眼を瞑っていたせいで能力者達に攻撃が当たる事はなかったけれど、キメラの攻撃を受けた木はズシンと音をたてて倒れてしまう。
「なんて怪力だ‥‥まともに受けたらヤバいかな‥‥」
秦本が倒れた木を見ながら呟く。確かにまともに受ければ重傷――とまでは行かないだろうがそれなりに厳しくなるだろうと彼は思う。
「余所見をしていていいんですか?」
くす、と妖艶に微笑んで見せ、ニュクスが攻撃を仕掛ける。
「翔太さんは――‥‥大丈夫かな」
鈴木はちらりと翔太を見ながら大丈夫な事を確認した後にキメラへと攻撃を仕掛ける。結局8名もの能力者を相手にただ単なる力だけのキメラが勝てる筈もなく、能力者達の攻撃を受け、キメラは地面に倒れたのだった。
―― 戦闘終了&取材終了 ――
「翔太さん、良い記事書けそうですか?」
有村が翔太に問いかけると「うーん、写真は凄くいいのが撮れたから後は俺の文章力の問題スね」と翔太は言葉を返す。
「完成した記事、楽しみにしてます」
有村が言葉を投げかけると翔太はやや緊張した表情で「ガンバリマス」と言葉を返した。
「先輩を超えるような、良い記事を書いてくれ」
ホアキンが翔太に言葉を投げかける。
「頑張りたいスけど、やっぱりこういう記事書くのはマリさんの方が慣れてますからね。さすがに超える記事は書けそうにないです」
精一杯書きますけどね、翔太は言葉を付け足してホアキンへと返した。
「なんとか終わりましたね‥‥」
はぁ、と安堵のため息を吐きながら秦本が呟く。まだ任務になれていない彼にとっては緊張続きの任務だったに違いない。
「そういえば‥‥どうして翔太さんはこんな危険なお仕事をなさっているんですか?」
ニュクスがずっと考えていた疑問を翔太に投げかける。
「んー、ぶっちゃけこういう危険ぽいのは好きじゃないってのが本音なんだけど‥‥でも俺達が書く記事で能力者のみんなの事をわかってもらえたらって思う気持ちがあるからやめられないんだよね。まぁ、俺は能力者じゃないから戦えないし、こういう事しか出来ないんだけど」
翔太の言葉に「でも、色々な経験が出来て楽しそうですね」とニュクスは言葉を返した。
「俺の撮った写真も後から渡すから好きに使ってくれ」
桂木が翔太に話しかける。しかし翔太は気づいていない。桂木が戦闘中にボタンを押し間違えて攻撃しかけていた事を――‥‥。
(「まぁ、知らぬが仏って言葉もあるしな」)
うん、と桂木は心の中で呟く。
その後、能力者達は他にキメラが潜んでいないかを確認した後、報告のために、翔太の場合は記事を書く為にLHへと帰還していったのだった。
後日、クイーンズの新刊が発売される――が桂木から貰った写真がマリに好評で「次からも翔太に行ってもらおうかな」と言っているのを聞いて、翔太は心の底から「勘弁してください」と土下座したのだとか‥‥。
END